2,000,000,000,000???
2017年,アニメ産業の市場規模はとうとう2兆円の大台を突破しました。
888888!!!ってなもんですが,「2兆円」と言われても,僕のような庶民には正直ピンと来ない数字です。また,近年低調と言われている円盤の売り上げはどうなのか,逆に伸張していると言われる配信事業の売り上げとはどれほどのものなのか,劇場アニメの内訳はどうなっているかなど,具体的な中身が分からないと,「2兆円」という数字も単なるバカでかい数字で終わってしまうわけです。
そこで今回,この「2兆円」という数字の内実を知るべく,「アニメ産業レポート」という資料を購入した次第です。
「アニメ産業レポート」とは?
「一般社団法人 日本動画協会」が前年のアニメ産業の統計データを分析した資料集で,「アニメビジネスの状況の把握と認知の向上を目的に,アニメ産業の調査を実施し,統計化等により各種データを発表・セミナーなどを実施」*1し,その統計をまとめたものです。
この説明からもお分かりのように,どちらかと言えばアニメ産業に直接関わる業界人や研究者,要するにクロウト向けの資料集なのですが,僕のようにアニメーターでもなければ制作や製作に関わるでもなく,純粋にアニメを趣味として楽しんでいる人間にとっても,とてもためになる本です。以前の記事でも書きましたが,アニメを「産業」という視点から見ることで,アニメの“読解”も変わってくるんじゃないかと僕は考えます。
2018年版の構成は以下のようになっています。
【本編】
はじめに
執筆者一覧
1. 2017年アニメ産業総括
1-1. 市場動向概観
-5年連続最高値更新が意味する産業的転換点
1-2. アニメ企業動向
-加速するアニメスタジオ再編と,製作体制の多様化-
2. 各分野解説
2-1. アニメ映像流通市場
(1)総論
-前年比93.2%,映画売上の減少がそのまま反映-
(2)TVアニメ
-テレビアニメ制作前年並みも,深夜アニメのシェアが急拡大-
(3)劇場アニメ
-「君の名は。」反動で2017年劇場アニメ興行収入は減少も堅調続く-
(4)ビデオパッケージ
-大ヒット『君の名は。』が下支えも2017年のビデオ市場の縮小続く-
(5)ネット配信
-売上高500億円突破:5年間で2倍,着実な成長を続ける配信市場-
2-2. アニメ商品化等二次利用
-メガヒット作品が誕生せず“踊り場”状態に陥った商品化市場-
2-3. 広告・販促プロモーション
-アニメキャラクター起用のCM,より多業種へ拡大-
2-4. アニメ音楽
-大ヒットタイトル不在に減少も,平均値に留まる-
2-5. ライブエンタテイメント
-拡大を続けるライブエンタテイメント市場-
3. 海外動向
3-1. 世界の中の日本のアニメ
-米メディア産業再編のなか,日本アニメ海外市場1兆円の大台へ-
4. 寄稿
4-1. 「働き方改革」は「創り方改革」
【付録:資料編】
【付録:2017年アニメ全作品 年間パーフェクト・データ】
TV 劇場 OVA
【巻末資料】
資料① 日本のアニメ市場(業界・産業)の推移
資料② 日本のアニメ業界・アニメ市場の近年の動向
資料③ 日本のアニメの海外展開
資料④ 日本のアニメ制作会社の分布*2
という感じで,盛りだくさんの全201ページです。かなりの情報量ですので僕もまだ全部は読んでいません。具体的なレビューは後日改めてご報告します。
購入について
購入はこちらから。書籍版とダウンロード版(PDF)がありますが,どちらも10,800円(税込)で値段は同じですので,閲覧できる環境をお持ちであれば,ダウンロード版をオススメします。この手の資料は毎年購入することになると思いますので,書籍版だとかなりかさばってしまうでしょう。ちなみに「2017/2018セット版」(14,040円)もあります(僕もセット版を購入しました)。ダウンロード版購入の決済はPayPalで行い,後日(僕の場合は翌日でした)PayPalに登録したメールに納品されます。2018年12月27日(木)から2019年1月6日(日)までは販売会社が休業期間で,対応していないようですのでご注意ください。
唯一のネックは値段ですね…しかも2017年版が6480円でしたので,かなり値上げしてるんです。これについては,編集統括の増田弘道さんが「はじめに」で「本年度から採算性の問題もあり大幅なアップを余儀なくされた。最近大学生や院生,個人の若手研究者の購読者が増えていることを考えると誠に不本意であるが,内容をより充実したものにするしかないと心得たい」と仰っていますので,僕としては今後にも大いに期待しつつ,快く投資した次第です。
サマリーもあります
繰り返しになりますが,これからアニメ業界に関わろうとしている方,アニメを専門的に研究している方などはもちろん,アニメ作品をもっと広く深く楽しみたい方にオススメの資料です。こちらに無料のサマリー(PDF)もありますので,まずは中身を覗いてみてください。
*2:「アニメ産業レポート」p.5。一般社団法人 日本動画協会,2018年