アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2019春アニメは何を観る?

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公式Twitterより引用 @イクニラッパー/シリコマンダーズ

「2019年の春アニメが激減する」

3月初旬,こんなニュースが話題になったのをみなさんもご存じだろう。おそらく唯一のソースとなったのは,3月6日のこのツイートと思われる。

これに対して,ツイッター上では「今までが多すぎたのだからいいことだ」「いや市場の縮小だ」「原作が枯渇した」「やはりアニメーターの待遇改善を」などと様々な意見が飛びかった。

さしあたり事実関係を確認しておこう。過去のデータに依拠するわけにはいかないので,比較的更新頻度が高いと思われる「アニメイトタイムズ」を参照してみることにする。

www.animatetimes.com

www.animatetimes.com

これによれば,2018年春放送のアニメが70作品(2018/04/10最終更新)なのに対し,2019年春放送のアニメは55作品(2019/03/20更新)である(ともにショートアニメと続編を含む)。確かにかなり減少している。

複数の要因が絡み合っている複雑なアニメ業界において,この現象の原因を的確に特定する知識も能力も僕にはないのだが,ひとつ言えることは,「アニメ市場の終わりの始まり」という悲観的な捉え方をするのはやや早計だろうということだ。とりわけ,2019年は劇場アニメのラッシュで幕を開けた。すでに数年前から,2016年の『君の名は。』等の大ヒットによってブームを見込んだ企画立案が増加し,2019年に劇場アニメの乱発が起こるということが予想されており,現状を見るとあながち間違いとは言えない予想だったと言える。業界では「2019年クライシス」と呼ばれているらしいこの現象は,ただでさえ万年人員不足の制作現場を逼迫させる。*1

だとすれば,一種のトレードオフとしてテレビアニメの本数が減るのも当然だと言えまいか。少なくとも,僕ら消費者が市場縮小だ終わりの始まりだと言って悲観的になっても何もいいことはない。起こってもいない悲劇に惑溺するのは滑稽ですらある。アニメーター待遇の改善を影ながら後押ししつつ,市場を盛り上げるべく,一つ一つの作品を真摯に鑑賞していくことが,僕らにできる最善の貢献ではなかろうか。

というわけで,僕が注目する2019年春アニメを見てもらいたい。

ULTRAMAN

anime.heros-ultraman.com


アニメ『ULTRAMAN』最新PV解禁! 2019年4月1日より、Netflixにて世界同時独占配信!

2019年冬クールの『SSSS.GRIDMAN』放送中のCMで話題となった本作。「彼の名は、早田進次郎。かつてウルトラマンであった男,早田進の息子が,新世代のウルトラマンとなるべく奮闘する新たなる物語が,ここに幕を開ける!!」とあるように,この作品自体が〈オタク第1世代〉から〈オタク第4世代〉への架け橋のようになっており,たいへん興味深い。『SSSS.GRIDMAN』(2018)で特撮モノへの関心も上向きになってきたところなので,どう盛り上げくれるかが楽しみである。監督は『攻殻機動隊 S.A.C.』(2002)などの神山健治と『APPLESEED』(2004)などの荒牧伸志。2名体制の監督というのも面白い。

機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星

www.gundam-the-origin.net


「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」第1話プロモーション映像2

2015年から2018年に劇場公開されたアニメを再編集した作品。かつて『ファーストガンダム』のキャラクターデザインを担当した安彦良和の同名マンガが原作であり,安彦自らが総監督を務めている。劇場版にはなかったOP(担当はLUNA SEA)とEDが加わるなど,テレビシリーズ独自の楽しみもある。僕は劇場版をすべて鑑賞済み(かつ円盤購入済み)なのだが,非常に完成度が高いので是非オススメしたい。とりわけ安彦良和のファン(ちなみに僕はサイン会に行ったことがある)ならば,その〈安彦立ち〉の再現度の高さに感嘆すること間違いなしである。

鬼滅の刃

kimetsu.com


TVアニメ「鬼滅の刃」第1弾CM

吾峠呼世晴の同名マンガが原作。監督はufotableの外崎春雄。制作も当然ufotable。脚本もufotable。要するにufotableのアニメだ。劇場アニメ『Fate/stay night [Heaven's Feel]』で極めて高い制作力を見せつけたufotableの作品だけに,期待は自ずと高まる。上のPVを見るだけでもその完成度の高さが伺えるだろう。音楽担当に梶浦由記も参加し,まさに最強の布陣といった体である。

キャロル&チューズデイ

caroleandtuesday.com


TVアニメ「キャロル&チューズデイ」PV

今期の「+ULTRA」枠。海外市場を意識した枠ということもあり, やや“向こう”を意識したキャラクターデザインと言える。PVをご覧になればおわかりの通り,かなり雰囲気を重視したミュージック・アニメの要素もあるようだ。

監督は『残響のテロル』(2014)の渡辺信一郎,制作はボンズ,音楽はフライングドッグ。これは期待せざるを得ない。『ダーリン・イン・ザ・フランキス』のイチゴ役などで人気を博した市ノ瀬加那の健気な演技も楽しみである。

この世の果てで恋を唄う少女YU-NO

yuno-anime.com


TVアニメ「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」PV第2弾

期待と不安が入り交じる,とはこのことだ。原作は言わずと知れたPCゲーム。その独特のシステムで伝説となった作品で,すでにOVAでアダルトアニメ化(1998)もなされている。ゲームシステムをアニメ化するということでは,『CHAOS;CHILD』(2017)という失敗例がある。両作では,監督や制作は異なるが,ともにMAGESが原作に絡んでいる。不安で不安で楽しみだ。

 さらざんまい

sarazanmai.com


さらざんまい本PV

「ノイタミナ」枠。今期のイチオシ作品。なんと言っても,『少女革命ウテナ』(1997)の幾原邦彦が監督である。PVを見る限り一見ふわっと呑気なファンタジーといった体だが,幾原が手がけるとなれば,おそらくかなりの集中力と思考力を要求されるのではなかろうか。「つながっても,見失っても。手放すな,欲望は君の命だ。」というコピーもなにやら意味深で耳に残る。村瀬歩の透き通った神秘性のある演技にも期待である。

消滅都市

shoumetsutoshi-anime.com


TVアニメ「消滅都市」 PV第1弾

原作は2014年にサービスが始まった同名のスマートフォン用ゲームアプリ。監督は『鬼平』(2017)などの宮繁之。今期の花澤香菜枠(?)

Fairy gone フェアリーゴーン

www.fairygone.com


TVアニメ『Fairy gone フェアリーゴーン』PV

『SHIROBAKO』(2015)などのP.A.WORKS制作のオリジナルアニメ。「妖精兵」というのが設定の中心にある用語のようで,かなりダークで硬派な世界観である。やや洋モノっぽさのあるキャラクターデザイン。監督は『はたらく細胞』(2018)などの鈴木健一。

フリージ

freej.jp


TV アニメ『フリージ』 国内放送決定!!

UAE(アラブ首長国連邦)で大人気を博したという本作。中東で初めての3Dアニメで,かつ日本で初めて放送される中東アニメということらしい。世界のアニメ事情の変化を感じられる異色作であり,今後の日本アニメの可能性を考えるためにも,この手の作品には逐一触れておくのが得策だろう。主演の高畑淳子というキャスティングの妙にも注目だ。

 

現時点ではこんなところだろうか。もちろん,これ以外にも『進撃の巨人』や『続・終物語』などの続編もある。さらにこれに加えて劇場アニメも目白押し。そしてこれは毎度のことだが,アニメというのは,注目していなかった作品に限って傑作だったりすることがあるものだ。そんなことを考えると,とても「本数が減った」という実感はないのだが…

*1:増田弘道『アニメビジネス完全ガイド』p.29,星海社新書,2018年