アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

なぜここにアニメレビューを書くのか

僕は評論家でも研究者でもないので,これはあくまでも個人的な所懐に過ぎないのだが,僕は作品に対して“謎解き”という踏み込み方をするのが好きではない。

例えば「主人公の名前を数字に置き換えると◯◯になり,これは◯◯が起こった年だ」のような解釈。このように,作品の記号の背後に,作品には現れていない何ものかを読み込もうとすると,どんどん作品そのものの面白さから乖離していく。うまく嵌れば確かに面白いかもしれないが,下手をすると,作品世界の解釈ではなく,“自分ワールド”のお披露目会になってしまう。

僕が大事だと思っているのは,作品の表面に現れていて,誰の目にも見えている記号,あるいは意識的には見ていなくとも,無意識のうちに見えているはずの記号を分節し,相互に関連づけ,場合によっては他作品や時代・文化の背景との関連の中で意味を見出していく,ということだ。その時,場合によっては,監督を始めとするスタッフのインタビュー記事やオーディオコメンタリ,絵コンテなどの言葉を調べる必要も生じてくる(ただし僕は「制作者の発言が作品の真理である」という立場をとっていない)。作品中のモチーフを扱った書物などを参照する必要もあるかもしれない。一世代前の作品であれば,当時の時代背景を調べ直す必要もあるかもしれない。すべて,作品の中に顕在している記号を読むために行う。

そして何より大事だと思うのは,そうすることで自分以外の人にも作品を多様な見方で楽しんでもらうことなのだ。

“自分ワールド”を抑制するのは実は簡単なことではない。誰でも自分オリジナルの解釈というものを披露したいし,僕だってその欲望を抑えきれないことはしばしばある。だから常に,〈見た通りの解釈〉を意識している。〈視覚情報の言語化〉と言ってもいい。要するに,誰もが見ているものを言葉にするというだけのことなのだ。

そのようにして,作品の理解を深め,広げ,言語的に分節することで,作品の面白さを多くの人と共有したいと思うのだ。

僕がアニメのレビューを閉じた紙媒体ではなく,ブログという形でネット上に公開している訳はそこにある。無論,こんな弱小ブログに目を止める人などそう多くはないのだが,少なくとも“公開している”という事実の中に,僕の理想の可能性が留保されているはずだ。

 

いずれどこかの誰かが僕のレビューを読んで,数年前に買って棚にしまってある円盤を引っ張り出して観直してくれることを願いつつ,僕はここ=ネットの上にレビューを書き続ける。