アニ録ブログ

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アニメ『ガールズ&パンツァー最終章 第2話』(2019年)レビュー:華麗なるマリー,多彩なるもんじゃ

 ※このレビューはネタバレを含みます。

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公式HPより ©GIRLS und PANZER Finale Projekt

girls-und-panzer-finale.jp

なにせ前回の第1話から一年半を経ての,待ちに待った第2話公開である。

第1話は,河嶋桃のAO入試を実現すべく参加した「無限軌道杯」初戦「対BC自由学園戦」の途中で終了していた。BC自由学園の「エスカレーター組」と「外部生組」の間に対立があり,チームワークに難ありと思い込んだ大洗女子学園が裏をかかれ,橋上で反撃を食らうが,新規参入のサメさんチームの活躍で辛くも危機を脱し…というクライマックスのど真ん中で幕を引いた最終章第1話は,その後一年半もの間僕らを放置して来たのである。誰もが「ここまで待たせたのだから…」という半ば殺気にも近い気分で劇場に足を運んだことだろう。

さて蓋を開けてみれば,〈美少女とミリタリーのマッチング〉,〈エゲツないほどの音響〉,〈チームワーク(仲間意識)〉といった,僕らガルパンファンが求める要素をすべて盛り込んだ極上のエンターテインメントがスクリーンいっぱいに映し出されていた。ここまで待たせて,ここまで満足させる。稀有な作品としてアニメ界に登場した『ガルパン』は,幕引きまでも稀有な作品であろうとしているのかもしれない。

 

華麗なるマリー

BC自由学園の隊長・マリーは,常に羽扇を手にし,常にスイーツを食べている。仲間のチームが迎撃する間もケーキを食べ,ボカージュに潜んで大洗女子学園を待ち受ける間もケーキを食べる(そんな彼女のモデルは間違いなくマリー・アントワネットなのだろう)。しかし,いざという時の彼女の行動力には目を見張るものがある。エスカレーター組代表の押田と外部生組代表の安藤が同士討ちをしていることに気付いたマリーは,即座に自車ルノーFT-17に乗り込み,まるで舞うような身のこなしで二人の間に入って仲裁する。初戦で敗退することが約束されている弱小チームの隊長で,かつ掴みどころのないマイペースキャラでありながら,ダージリンとはまた違う華やかさをもった魅力的なキャラだ。

この華やかなキャラが華やかに舞い,華やかに歌い,華やかにケーキを食す一方で,それと綺麗なコントラストを成すように,鼓膜をつんざくエゲツない戦車の砲撃音が鳴り響く。第2話の前半は,この美少女と砲撃音の妙なるマッチングが劇場空間を支配する。これぞ『ガルパン』の醍醐味,音響監督・岩浪美和の面目躍如と言うべき演出だ。

〈チームワーク〉至上主義の物語

『ガルパン』は戦闘シーンや砲撃音のエゲツない描写とは裏腹に,視聴者が悪感情を抱くようなキャラを(少なくとも生徒たちの中には)作らないようにしていると思われる。それはキャラクターたちが「戦車道」という「道」の精神に則った行動をし,悪意を行動原理にしないという設定が背景にあるというだけでなく,この作品がいわゆる〈日常系アニメ〉の流れを汲む“優しい世界”の描出を心がけているからではないかと思われる。これも『ガルパン』という作品を魅力的にしている要素の1つだ。

例えば秋山優花里。

BC自由学園の「エスカレーター組」と「外部生組」が仲違いをしており,チームワークに難があるという判断は,秋山優花里の諜報活動に基づくものであり,大洗はそれが原因で窮地に立たされた。しかしそこで当の秋山が「やはりBC自由学園は本当に仲違いをしているのではないか」と推測,大洗は「同士討ち」という策を講じ,大逆転の契機を得る。「秋山のせいで負けそうになった」という悪感情を,ほんのわずかばかりでも視聴者に抱かせない繊細な演出である。脚本の吉田玲子の細やかな配慮が伺えるシーンだ。

例えば河嶋桃。

「無限軌道杯」参加のきっかけとなった河嶋桃の素性を詳らかにしたのは,第2話の大きなポイントだろう。河嶋の実家は文房具店を経営しているが,その見るからに貧しい店構えと兄弟姉妹の多い家族構成から,河嶋家が決して楽な暮らしぶりでないことが伺える。それを目にした武部沙織らは,河嶋を是が非でも公立大学に合格させようと決意する。重要なのは,この時点で視聴者である僕らも武部と同じ心情になっているということだ。ここに至り,河嶋は小うるさい元生徒会役員というより,守るべき〈仲間〉としての存在感を増した。全6回という大長編だからこそできる,丁寧なキャラクター作りだ。

多彩な「もんじゃ」

さて前半が「スイーツ」の話だったとすれば,後半は「もんじゃ」の話だ。

アヒルさんチームともんじゃ焼きを食べていた知波単学園の福田は,もんじゃに色々な焼き方・食べ方があることを知り,大洗との第2戦において一計を案じるに至る。それまで「突撃」一辺倒だった彼女らは,「足踏み突撃」(要するに待機)や「さよなら突撃」(要するに後退)といった多彩な作戦行動を取る。もちろんこれは単なる詭弁に過ぎないのだが,突撃一辺倒の知波単しか知らない大洗を翻弄するには十分な作戦だったのだ。

思えば『ガルパン』はTVシリーズの頃から,様々な〈食事〉が登場する作品だった。今回,スイーツともんじゃ焼きがある種のアクセサリとして用いられていたのも,『ガルパン』ならではの面白い演出だったと言える。

 

さて第2話は,こともあろうにこの対知波単戦のクライマックスど真ん中で終了してしまった。そう,第1話と同じ引き方なのだ。もちろん,引きの作り方としてはうますぎるくらいだろう。不安なのは,僕らが次の第3話まで,またどれくらいの間待たされるのだろうかということだ。しかしその不安はあるとしても,今回の第2話で,監督の水島努も脚本の吉田玲子も音響の岩浪美和も,1ミリたりとも観客を裏切ることはないということが証明されたのだ。僕らに大人しく待つ以外のことができるとすれば,グッズを購入したりイベントに参加したりするくらいのことである(そして,それはそれで非常に楽しいことであることは言うまでもない)。

7.1chの威力

最後に,本作の卓越した音響について改めて触れておこう。

先述した通り,『ガルパン』ではそのエゲツないまでの音作りが最も大きな魅力の1つであり,本作でも音響監督・岩浪美和の力量が存分に発揮されていた。驚くべきは初戦と第2戦との間に描かれた「ボコミュージアム」のシーンだ。ともに無類のボコ好きである西住みほと島田愛里寿が一緒に仲良くボコミュージアムのアトラクションを楽しむのだが,そのシーンにも,戦車の対戦シーンに負けないほどの音響が施されているのだ。作品の隅々まで一切手を抜かないその音作りには感服するばかりだ。

近頃,音響監督の岩浪はTwitterで7.1chの音作りの重要性についてツイートしていた。

ちなみに今回僕は,ここに言及されている立川シネマシティの「aスタジオ」で鑑賞したが,その迫力には度肝を抜かれた。まさに「家庭じゃ聞けない音」である。これから再鑑賞する予定の方は,ぜひ7.1chの環境がある劇場で観ることをお勧めする。

作品評価

キャラ モーション 美術・彩色 音響
5 5 5 5
声優 OP/ED ドラマ メッセージ
4 4 5 3.5
独自性 普遍性 平均
5 4 4.6
・各項目は5点満点で0.5点刻みの配点。
・各項目の詳細についてはこちらを参照。

 

www.otalog.jp

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