アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2020年 夏アニメは何を観る?ー2020年 春アニメを振返りながらー

f:id:alterEgo:20200620231221p:plain

『デカダンス』公式HPより引用 ©DECA-DENCE PROJECT

www.animatetimes.com

uzurainfo.han-be.com

 

2020年 春アニメ振返り

2020年春アニメは,コロナ禍による制作遅延により,放送延期の憂き目にあった作品が多く発生したことが残念至極であった。アニメ制作のスケジュールやシステムについて図らずも再考を迫られることとなったクールだが,そんな中でも光を放つ作品が少なからず存在したことは,日本アニメの底力を見せつけられたようで心強い。

冬目景原作/藤原佳幸監督の『イエスタデイをうたって』は,卓越した作画,アニメーション技術,色彩設計によって,登場人物の心理の機微を情景に投影させる丁寧な作りが注目の作品だ。ストーリーに派手さはないものの,“画で見せる”というアニメの本質に迫る作品として高評価に値する。また,主演の小林親弘,宮本侑芽,花澤香菜,花江夏樹らの繊細な演技が,原作に潜在する空気感をうまく引き出していた。本作のレビューに関しては,「リアルサウンド映画部」に掲載した以下の記事をご覧頂きたい。

www.otalog.jp

久米田康治原作/ 村野佑太監督『かくしごと』は,独特のギャグセンスとシリアス展開のバランスが絶妙なハートフルコメディだ。”マンガ家がマンガ家を描く”という再帰的な設定ではあるが,マスターベーション的な自己満足に堕すことなく,家族愛や仲間どうしの連帯感など,「かくしごと(描く仕事)」の先にある価値観をシンプルに伝えた秀作であった。

シリーズ第2期となる赤坂アカ原作/畠山守監督『かぐや様は告らせたい? 天才たちの恋愛頭脳戦は,第1期にも増してギャグのセンスとテンポが洗練され,この種の作品がややもすると陥りがちなマンネリを軽々と回避している。とりわけ主演の古賀葵の演技は第1期以上にパワーアップしており,声優歴6年でありながら,「第14回声優アワード主演女優賞」受賞も納得の威風である。また,”生徒会”という舞台の特異性をうまく利用しつつ,シビアな世界構成に制約されないギャグアニメの特性を活かした実験的な演出も見所だ。総じて,近年のギャグアニメの代表作と言ってよい仕上がりとなっている。

吉成曜監督『BNA ビー・エヌ・エー』は,TRIGGER制作のアニメとしては淡泊な印象となった作品だが,「獣人vs人間」という対立構図の中に獣人どうしの個性のぶつかり合いを導入した状況設定や,「獣人の人化」を否定する決断など,同じ中島かずき脚本の『プロメア』(2019年)に対する一種の”返歌”にもなっていると言える。また,うえのきみこが脚本を手がけた第5話「Greedy Bears」は,TRIGGER流のパロディとうえののギャグセンスが遺憾なく発揮され,SNSをも賑わせた極上のコメディ回となっている。

realsound.jp

 

以下,夏クール期待のアニメを五十音順に紹介する。なお,過去作の再放送と思われる作品(『A.I.C.O. Incarnation』(2018年)など)は除外している。本来春クール放送であったものが,コロナ過により夏クールに延期となった作品については,前回の「何を観る?」記事の記述をそのまま再掲した上で,タイトルの後に「(再掲)」と記してある。前回の記事については以下をご覧頂きたい。

www.otalog.jp

天晴爛漫!(再掲)

【スタッフ】
原作:APPERRACING/監督・シリーズ構成・ストーリー原案:橋本昌和/キャラクター原案:アントンシク/キャラクターデザイン・総作画監督:大東百合恵/美術監督:杉浦美穂/制作:P.A.WORKS

【キャスト】
空乃天晴:花江夏樹/一色小雨:山下誠一郎/ホトト:悠木碧/ジン・シャーレン:雨宮天/アル・リオン:斉藤壮馬/ソフィア・テイラー:折笠富美子/ディラン・G・オルディン:櫻井孝宏/TJ:杉田智和/セス・リッチー・カッター:興津和幸

appareranman.com


「天晴爛漫!」PV第2弾!

twitter.com

上映中の『劇場版SHIROBAKO』も高評価を受けているP.A.WORK制作のオリジナルアニメである。PVではユニークな形状のマシーンによるカーレースが見られるが,その辺りのアクションが見所ということになるのだろう。

『劇場版クレヨンしんちゃんシリーズ』(2008年-),『TARI TARI』(2012年)の橋本昌和が監督を務める。

宇崎ちゃんは遊びたい!

【スタッフ】
原作:/監督:三浦和也/シリーズ構成:あおしまたかし/ キャラクターデザイン・総作画監督:栗原学/美術設定・美術監督:渡邊聡/色彩設計:相原彩子/撮影監督:松向寿/編集:小口理菜(IMAGICA Lab.)/音響監督:えびなやすのり/音響効果:川田清貴/音楽:五十嵐聡/音楽制作:インクストゥエンター/アニメーション制作:ENGI

【キャスト】
宇崎 花:大空直美/桜井真一:赤羽根健治/亜細亜実:竹達彩奈/榊󠄀逸仁:髙木朋弥/亜細亜紀彦:秋元羊介/宇崎月:早見沙織

uzakichan.com


TVアニメ「宇崎ちゃんは遊びたい!」PV第3弾

 

mobile.twitter.com

”献血コラボ事件”によって注目された丈の同名マンガ(2017年-)が原作だが,僕を含めた原作未読勢は,このアニメ化を機に作品をフラットに評価すべきなのではないかと思う。大げさな物言いになるが,それが良くも悪くも”ツイフェミ論争”に作品を巻き込んだ者の義務だろう。

監督は『旗揚!けものみち』(2019年秋)の三浦和也。『かくしごと』(2020年春)のあおしまたかしがシリーズ構成・脚本を担当するのもポイントだ。

GREAT PRETENDER

【スタッフ】
監督:鏑木ひろ/脚本・シリーズ構成:古沢良太/キャラクターデザイン:貞本義行/サブキャラクターデザイン・総作画監督:加藤寛崇/総作画監督:浅野恭司/デザインワークス:奥田明世,清水慶太,石橋翔祐/コンセプトデザイン:丹地陽子/副監督:益山亮司/美術監督:竹田悠介/美術設定:藤井一志/色彩設計:小針裕子/撮影監督:出水田和人/編集:今井大介/音楽:やまだ豊/音響監督:はたしょう二/ミュージックエディター:千田耕平/アニメーション制作:WIT STUDIO

【キャスト】
枝村真人:小林千晃/ローラン・ティエリー:諏訪部順一/アビゲイル・ジョーンズ:藤原夏海/ポーラ・ディキンス:園崎未恵

www.greatpretender.jp

youtu.be

mobile.twitter.com

今クール「+Ultra」枠のオリジナルアニメ。詐欺師達を主人公とした「痛快クライム・エンタテインメント」(公式HPより)とのことだ。ティザー等を見れば一目でわかるが,ここまで純度の高い貞本キャラが最新技術のアニメで動くのは嬉しい限りだ。イラスト風の背景美術も面白い。

監督は『91Days』(2016年夏)などの鏑木ひろ。総作画監督は『PSYCHO-PASS』(2012年),『進撃の巨人』(2013年),『甲鉄城のカバネリ』(2016年)などの浅野恭司。脚本は映画『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)やテレビドラマ『コンフィデンスマンJP』(2018年)などの古沢良太。古沢は本作が初アニメ脚本となる。文句なしの豪華制作陣である。前クール「+Ultra」枠の『BNA』と同様,Netflixで順次先行配信している。

デカダンス

【スタッフ】
監督:立川譲/構成・脚本:瀬古浩司/キャラクターデザイン・総作画監督:栗田新一/キャラクターコンセプトデザイン:pomodorosa/サイボーグデザイン:押山清高(スタジオドリアン)/デカダンスデザイン:シュウ浩嵩/ガドルデザイン:松浦聖/サブキャラクターデザイン:谷口宏美,緒方歩惟/バトルコンセプトデザイン:増田哲弥/プロップデザイン:月田文律,秋篠Denforword日和(Aki Production)/ビジュアルコンセプト:村上泉/美術監督:市倉敬/色彩設計:中村千穂/撮影監督:魚山真志/3DCGIディレクター:高橋将人/編集:神宮司由美/音楽:得田真裕/音響監督:郷文裕貴/アニメーション制作:NUT

【キャスト】
カブラギ:小西克幸/ナツメ:楠木ともり/ミナト:鳥海浩輔/クレナイ:喜多村英梨/フェイ:柴田芽衣/リンメイ:青山吉能/フェンネル:竹内栄治/パイプ:???

decadence-anime.com


TVアニメ「デカダンス」本PV

mobile.twitter.com

『モブサイコ100』(2016年夏)の立川譲(監督)と瀬古浩司(脚本)のタッグが手がけるオリジナルアニメ。PVを見る限り,かなりゴリゴリのSFアクションのようだ。緻密な背景美術やメカデザイン,栗田新一による魅力的なキャラクターデザインなど,作画面でも見応えのある作品になりそうだ。制作のNUTはまだ若い会社のようだが,『幼女戦記』(2017年)を手がけており,クオリティは保証されていると言えるだろう。

 

日本沈没2020

【スタッフ】

原作:小松左京/監督:湯浅政明/音楽:牛尾憲輔/脚本:吉高寿男/アニメーションプロデューサー:Eunyoung Choi/シリーズディレクター:許平康/キャラクターデザイン:和田直也/フラッシュアニメーションチーフ:Abel Gongora/美術監督:赤井文尚,伊東広道/色彩設計:橋本賢/撮影監督:久野利和/編集:廣瀬清志/音響監督:木村絵理/アニメーション制作:サイエンスSARU

【キャスト】

武藤歩:上田麗奈/武藤剛:村中知/武藤マリ:佐々木優子/武藤航一郎:てらそままさき/古賀春生:吉野裕行/三浦七海:森なな子/カイト:小野賢章/⽦田国夫:佐々木梅治

japansinks2020.com


『日本沈没2020』予告編 - Netflix

mobile.twitter.com

言わずと知れた日本SF小説の金字塔,小松左京の『日本沈没』(1973年)が原作である。これまで実写映画やテレビドラマで映像化されてきたが,今回が初のアニメ化となる。人によっては正視に耐えないシーンも多くあると思われるが,”地震大国日本”に住む者として,災害をストレートに扱った表象文化を受容すべき時に来ているのかもしれない。

監督は『四畳半神話大系』(2010年),『夜は短し歩けよ乙女』(2017年),『夜明け告げるルーのうた』(2017年),『映像研には手を出すな!』(2020年)など数々の傑作を世に送り出した湯浅政明。PVからは,彼のこれまでの作品よりもシリアスな作風であることが伺える。

富豪刑事 Balance:UNLIMITED(再掲)

【スタッフ】
原作:筒井康隆/ストーリー原案:TEAM B.U.L/監督:伊藤智彦/シリーズ構成・脚本:岸本 卓/キャラクターデザイン:佐々木啓悟/制作:CloverWorks

【キャスト】
神戸大助:大貫勇輔/加藤 春:宮野真守

fugoukeiji-bul.com


「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」 アニメ化決定PV

twitter.com

筒井康隆のミステリ小説『富豪刑事』(1975-1977年)が原作。ライトノベル以外の小説を原作とするという点が注目だ。

監督に『僕だけがいない街』(2016年)『HELLO WORLD』(2019年)などの伊藤智彦が,シリーズ構成・脚本に『ハイキュー!!』(2014年-)『僕だけがいない街』などの岸本卓, キャラクターデザインに『僕だけがいない街』などの佐々木啓悟が就く。”『僕街』トリオ”の復活というわけだ。

A-1 Picturesの「高円寺スタジオ」を2018年に新ブランドとして立ち上げたCloverWorksが制作。すでに『約束のネバーランド』(2019年)や『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』(2019年)などでの実績があるだけに,一定のクオリティは期待できる作品である。

Re:ゼロから始める異世界生活 第2期

【スタッフ】
原作:長月達平/キャラクター原案:大塚真一郎/監督:渡邊政治/シリーズ構成:横谷昌宏/キャラクターデザイン・総作画監督:坂井久太/モンスターデザイン:小柳達也/アクション監修:大田和寛/プロップデザイン:鈴木典孝,岩畑剛一/デザインワークス:加藤千恵,コレサワシゲユキ,灯夢,坂井ユウスケ/美術設定:青木薫(美峰)/美術監督:高峯義人(美峰)/色彩設計:坂本いづみ/撮影監督:峰岸健太郎(T2studio)/3Dディレクター:軽部優(T2studio)/編集:須藤瞳(REAL-T)/音響監督:明田川仁/音響効果:古谷友二(スワラ・プロ)/音楽:末廣健一郎/音楽制作:KADOKAWA/アニメーション制作:WHITE FOX

【キャスト】
ナツキ・スバル:小林裕介/エミリア:高橋李依/パック:内山夕実/レム:水瀬いのり/ラム:村川梨衣/ベアトリス:新井里美/ロズワール・L・メイザース:子安武人/ガーフィール・テンゼル:岡本信彦/オットー・スーウェン:天崎滉平/フレデリカ・バウマン:名塚佳織/ペトラ・レイテ:高野麻里佳/リューズ・ビルマ:田中あいみ/エルザ・グランヒルテ:能登麻美子/エキドナ:坂本真綾

re-zero-anime.jp


TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』2nd season PV|2020.7.8 ON AIR START

mobile.twitter.com

もはや多くを語る必要はないだろう。待望のビッグタイトル第2期の登場である。異世界転生,美少女キャラ,タイムリープなどの”テンプレ”的な要素を詰め込みながら,主人公の過酷な運命と強い意志を主旋律にシリアスなストーリーを展開した本作は,数々のメディアミックスによって多くのファンを獲得した。第1期を超える盛り上がりを見せることを期待したい。

2020年 夏アニメのイチオシは…

2020年 夏アニメの期待作として,今回は7作品を挙げた。イチオシとしては,オリジナル作品である『デカダンス』を挙げておこう。立川譲と瀬古浩司のタッグに期待したい。次点は『GREAT PRETENDER』『日本沈没2020』『Re:ゼロから始める異世界生活 第2期』といったところだろうか。

コロナ禍によるアニメ制作への影響はまだまだ続くだろう。一刻も早く制作現場が正常化することを祈りつつ,今回の記事を終えることにする。