アニ録ブログ

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TVアニメ『アクダマドライブ』(2020年 秋)「06 BROTHER」の演出について[考察・感想]

 *この記事は『アクダマドライブ』「06 BROTHER」までのネタバレを含みます。

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『アクダマドライブ』公式Twitterより引用 ©ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会

akudama-drive.com


TVアニメ「アクダマドライブ」PV第2弾

奇抜なストーリーとサイバーパンク風味の美術が異彩を放つオリジナルアニメ『アクダマドライブ』。先日放送された「06 BROTHER」は,スタイリッシュなアクションとエモーショナルな演出が一際目を引く“神回”であり,特筆に値するクオリティだったと言えるだろう。

作品データ(リンクはWikipediaもしくは@wiki)

【スタッフ】
原作:ぴえろToo Kyo Games/ストーリー原案:小高和剛/キャラクター原案:小松崎類/監督:田口智久/シリーズ構成:海法紀光/キャラクターデザイン:Cindy H. Yamauchi/メカニックデザイン:山本翔宮川治雄常木志伸/美術監督:谷岡善王/美術設定:青木薫/色彩設計:合田沙織/撮影監督:山田和弘/CG監督:藤谷秀法/音響監督:長崎行男/音楽:會田茂一/アニメーション制作:studioぴえろ

【キャスト】
一般人:黒沢ともよ/運び屋:梅原裕一郎/喧嘩屋:武内駿輔/ハッカー:堀江瞬/医者:緒方恵美/チンピラ:木村昴/殺人鬼:櫻井孝宏

【「06 BROTHER」スタッフ】
脚本:笹原嘉文,田口智久/絵コンテ:笹原嘉文/演出:笹原嘉文/作画監督:小澤早依子

シンメトリー

シンカンセンから「兄」と「妹」を奪取したアクダマたちの前に,再び「処刑課師匠」が立ちはだかる。決着の機会を得た「喧嘩屋」は,歓喜雀躍して師匠に襲いかかる。

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『アクダマドライブ』「06 BROTHER」より引用 ©ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会

この対決シーンの合間に,処刑課における師弟関係構築の秘密を「ボス」が「処刑課弟子」に明かすシーンが挿入される。それは構成員の心に「情」を芽生えさせることによって「生きる意味」を与え,生存率を高めるというものであった。この一連のクロスカットにより,これまで冷静冷酷にしか見えなかった師匠の心の根底に,弟子への「情」が潜んでいることを視聴者は知らされる。

その後,「カンサイ汚染地区 遊園地跡」の観覧車に落ちた雷を合図にBGMがカットインし,2人の決戦が最終局面に入ったことを告知する。

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『アクダマドライブ』「06 BROTHER」より引用 ©ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会

撮影効果をふんだんに使用したリッチなカットは,喧嘩屋と師匠の双方の“狂喜”をうまく現している。この辺りはBlu-rayで細部の処理を確認したいところだ。

決戦の場は「旧カンサイブリッジ」へと移る。「なぜお前はこんなことをやってるんだ」と問いかける師匠に,「大好きだからだよ!」と答える喧嘩屋。その時,師匠を追ってやって来た弟子の声が遠くから聞こえて来る。その声を聞き,何かに気付かされたように目を見開く師匠。その後,ほくそ笑みながら「なるほどな。俺はそんなお前らが,大嫌いだ!」と言い放つ。

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『アクダマドライブ』「06 BROTHER」より引用 ©ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会

2人はゆっくりと立ち上がり,意を決したかのように拳を握る。その後やにわに,カメラがはるか遠方から橋へ向かって高速でトラックアップし,激しくぶつかり合う2人を捉える。この時,師匠と喧嘩屋の所作から橋の構造に至るまで,すべてが左右対称に描かれているのがとても面白い。

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『アクダマドライブ』「06 BROTHER」より引用 ©ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会

闘いそのものに対し純粋な愉悦を感じる喧嘩屋と,アクダマ排除という正義感と弟子への情によって突き動かされる師匠。この2つの価値観の絶望的なまでのディスコミュニケーションが,物理的な力においてはシンメトリックに拮抗する。この奇妙な緊張感を,このシーンは見事に映像に落とし込んでいる。

エモーション

倒れる師匠の元に弟子が駆けつける。師匠は何かを弟子に伝えようと口を動かすが,すぐに事切れる。この時の弟子の表情をアップで捉えたカットが素晴らしい。師匠の遺体を前に呆然と見開かれたその目に雨粒が流れ込み,感情を失った彼女の心理を代弁するかのように頬を伝い落ちる。マチスモに支配されたシークエンスに代わり,繊細なセンチメントが画面を覆う。これをエモいと言わずに何と言おうか。

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『アクダマドライブ』「06 BROTHER」より引用 ©ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会

これまで専ら無機質だった風合いの作品中に効果的に仕込まれたエモーショナルな演出は,この作品の奥行きの深さを感じさせる。今クールも残すところ半分ほどとなったが,後半の展開にも大いに期待したいところだ。

 

『アクダマドライブ』は地上波放送の他,FODにて独占配信を行っている(2020年11月22日現在は期間限定無料配信)。

fod.fujitv.co.jp