アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2020年 アニメランキング

*この記事にネタバレはありませんが,各作品について簡単なコメントを付しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,目次から「ランキング表」へスキップするなどしてご覧ください。

2020年新作アニメの鑑賞数は,TVシリーズが27作品,劇場版が14作品だった(並行して旧作も観ているが,ここではカウントしていない)。

以下,「TVアニメランキング」「劇場アニメランキング」「総合ランキング」に分け,2020年の個人的ランキングをカウントダウン方式で紹介する。視認性を高めるため,TVアニメは青字劇場アニメは赤字にしてある。また各セクションの最後には「ランキング表」を掲載してある。

TVアニメランキング

10位〜6位

 10位:『安達としまむら』(2020年秋)

www.tbs.co.jp

【コメント】百合&妹という主人公の関係性に,「ヤシロ」という不可思議な存在を挿入したことにより,独特の世界観を構築した。技術面での不足はあったが,2020年百合アニメの秀作。

9位:『ID: INVADED イド:インヴェイデッド』(2020年冬)

id-invaded-anime.com

【コメント】殺意を検知する「ミズハノメ」を用いて,犯罪者の深層心理の世界「イド」に潜り込み,事件を解決するという,ユニークな設定のSFミステリー。少々難解すぎるストーリーとなったが,裏を返せば,繰り返し視聴して考察を深めることができる作品。

8位:『BNA ビー・エヌ・エー』(2020年春)

bna-anime.com

【コメント】「人と獣人の対立と融和」という,シリーズ構成の中島かずきの持ち味を活かしたオリジナルアニメ。TRIGGER制作にしては割とおとなしめの作品となったが,リミテッド・アニメの楽しさを詰め込んだ秀作だ。特に第5話「Greedy Bears」の”野球回”は必見。

7位:『ドロヘドロ』(2020年冬)

dorohedoro.net

【コメント】魔法によってトカゲの顔にされてしまった主人公が,自分の顔と記憶を取り戻すダークファンタジー。独特の世界観とキャラクターを,作画と3DCGを見事に融合したアニメーションで表現している。3DCGアニメの1つの到達点と言えるだろう。

6位:『攻殻機動隊 SAC_2045』(2020年春Netflix)

www.ghostintheshell-sac2045.jp

【コメント】「ポストヒューマン」という超人的な知能と身体能力を持つ存在の出現により,再組織された公安9課が活躍する。シリーズ初のフル3DCG制作となった本作は,描画面に多少の難があったものの,魅力的なストーリーによって旧シリーズに劣らない秀作となった。

 

TOP 5

5位:『かぐや様は告らせたい? 天才たちの恋愛頭脳戦』(2020年春)

kaguya.love

【コメント】大胆な構図や演出,主演の古賀葵のキレのある演技など,2019年冬クールの第1期をはるかに凌ぐ出来栄えとなった。すでにOVAと第3期の制作が決定している。〈生徒会モノ〉の系譜に連なる作品として,今後も大いに期待できそうだ。


【緊急告知】「かぐや様は告らせたい」新作アニメ制作決定

4位:『ゴールデンカムイ』(2020年秋)

kamuy-anime.com

【コメント】こちらも,第1期と第2期に続き,ますますパワーアップし続けているシリーズだ。物語もクライマックスを迎えつつあるが,語りに急ぎすぎることなく,「スチェンカ」や食事シーンなど,『金カム』らしい場面を丁寧にアニメ化している。第三十五話の「白石のおしっこ」は,神々しいほどまでの名シーンである。

3位:『映像研には手を出すな!』(2020年冬)

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『映像研には手を出すな!』公式Twitterより引用 ©︎2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

eizouken-anime.com

【コメント】3人の個性的なキャラクターに負けないほどユニークな美術が印象的だった作品。彼女たちが住む日常世界がたちまちアニメになっていくワクワク感は,“アニメを作る”という行為の根源的な喜びを表していた。“アニメ制作をアニメで描く”という形式は『SHIROBAKO』とも共通しているが,今後,アニメ制作の現場をさらにリアルに描く作品が登場することを期待してもよいかもしれない。

realsound.jp

2位:『呪術廻戦』

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『呪術廻戦』公式HPより引用 ©︎芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

jujutsukaisen.jp

【コメント】「週刊少年ジャンプ」の人気マンガが原作ということもあり,すでに売れ筋が約束されたアニメではあるが,アクションシーンを初めとするアニメーション技術の水準は極めて高い。制作のMAPPAにとって,代表作となることは間違いないだろう。

1位『アクダマドライブ』

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『アクダマドライブ』公式Twitterより引用 ©ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会

akudama-drive.com

【コメント】当ブログの「2020年秋アニメは何を観る?」の記事でもイチオシにしていた作品ではあるが,当初の予想を軽々と超えた傑作となった。世界観の作り込み,キャラクターの過去を捨象した大胆な作劇,そしてほとんど宗教味すら帯びた最終話。標準的なアニメの作法とは異質な作りをしているが,それだけに,オリジナルアニメの新しい可能性の1つを示す作品となり得た。オリジナルアニメ贔屓の当ブログとして,この作品をTVアニメセクションの1位としたい。

www.otalog.jp

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TVアニメランキング表

1位:『アクダマドライブ』
2位:『呪術廻戦』
3位:『映像研には手を出すな!』
4位:『ゴールデンカムイ』
5位:『かぐや様は告らせたい?天才たちの恋愛頭脳戦
6位:『攻殻機動隊 SAC_2045』
7位:『ドロヘドロ』
8位:『BNA ビー・エヌ・エー』
9位:『ID: INVADED イド:インヴェイデッド』
10位:『安達としまむら』

● その他の鑑賞済みTVアニメ作品(50音順)
『天晴爛漫!』『イエスタデイをうたって』『池袋ウエストゲートパーク』『異種族レビュアーズ』『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』『宇崎ちゃんは遊びたい!』『かくしごと』『神様になった日』『空挺ドラゴンズ』『くまクマ熊ベアー』『グレイプニル』『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』『デカダンス』『日本沈没2020』『ひぐらしのなく頃に 業』『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』『Re:ゼロから始める異世界生活』

 

劇場アニメランキング

10位〜6位

10位:『泣きたい私は猫をかぶる』

nakineko-movie.com

【コメント】岡田麿里の脚本から生まれた,やや屈折率の高いキャラクターたちが魅力的な作品。「猫をかぶる=仮面をつける」という日常的行為を基に,独特なファンタジー世界を構築している点が面白い。

9位:『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』

psycho-pass.com

【コメント】多くの要素を盛り込んだ設定は,少々“欲張り”をし過ぎた感があるが,常守朱から慎導灼へと繋がる糸は,本作における真の〈正義〉の所在を予感させるものがあった。ドミネーターの「引き金」を重要なキーワードにしたのもとても面白い。

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8位:『ジョゼと虎と魚たち』

joseetora.jp

【コメント】ストーリーは王道のラブストーリーを軸としているが,主人公「ジョゼ」のキャラクターがとてもユニークな作品だ。とりわけ,ジョゼを演じる清原果耶の芝居が素晴らしく,大阪弁の魅力を再認識させられる。

7位:『どうにかなる日々』

dounikanaruhibi.com

【コメント】60分程度のオムニバス映画でありながら,〈不在の存在感〉というテーマをうまく料理した秀作。その淡白な語り口は,他の劇場アニメと比べれば地味ではあるものの,劇場作品のジャンルの多様化への道を開いたという点で,高く評価されるべき作品だ。

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6位:『劇場版 SHIROBAKO』

shirobako-movie.com

【コメント】2014年から2015年にかけて放送されたTVシリーズの続編。TVシリーズ以上に現実と空想の境界を曖昧にするような演出が目立ったのが面白い。 

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TOP 5

5位:『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』

kimetsu.com

【コメント】言うまでもなく,日本映画史上,最大の快挙となった作品だ。「列車」「夢の世界」という設定をうまく使いながら,煉獄杏寿郎の生き様を魅力的に描き出したufotable制作陣の手腕には脱帽である。

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4位:『メイドインアビス 深き魂の黎明』

miabyss.com

【コメント】原作の陰惨な描写から逃げることなく,リコとレグとボンドルドの〈狂気〉を対峙させた本作。彼ら/彼女らの狂気が強ければ強いほど,プルシュカの犠牲が美しく輝くというアイロニーは,〈善/悪〉〈正気/狂気〉といった二項対立が無効になったところに新たな「価値」が見出されるという,本作の哲学を反映している。

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3位:『海辺のエトランゼ』

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『海辺のエトランゼ』公式Twitterより引用 ©︎紀伊カンナ / 祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会

etranger-anime.com

【コメント】『どうにかなる日々』と同じく,60分のショートムービーでありながら,〈幻想〉と〈日常〉の世界を巧みに融合させた情景描写によって傑作となった作品。主人公の男性たちに加え,魅力的な女性も登場させることで,BLの世界にリアリズムを呼び込んでおり,あらゆる性志向の視聴者に訴えかける普遍的な価値を持っている。

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2位:『劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel]」III.spring song』

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『Fate/stay night』公式Twitterより引用 ©︎TYPE-MOON・ufotable・FSNPC ©︎TYPE-MOON

www.fate-sn.com

【コメント】『Heven's Feel』の最終章にして,『Fate/stay night』アニメシリーズの完結編ともなった本作。その堂々の出来栄えからは,ufotableの技術の粋を集めて制作されたことが手にとるようにわかる。〈正義〉と〈愛〉の間で揺れ動く男の生き様を描き続けたufotableは,間違いなく『Fate』シリーズ最大の功労者と言えるだろう。 

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1位:『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』

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『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公式HPより引用 ©︎暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

violet-evergarden.jp

【コメント】〈時間〉〈メディア〉といったテーマの処理,ロケーション,声優の芝居,どれを取っても他作品を寄せ付けない高水準を示した。人との絆や愛を真摯に描いた本作は,紛れもない感動アニメではあるが,いわゆる“泣き”以外の要素をこそ高く評価すべき作品だ。“京アニ復活“という要素を差し引いても,アニメ史上最高傑作の1つとなったことに異論はないだろう。

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劇場アニメランキング表

1位:『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』
2位:『劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel]」III.spring song』
3位:『海辺のエトランゼ』
4位:『メイドインアビス 深き魂の黎明』
5位:『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』
6位:『劇場版 SHIROBAKO』
7位:『どうにかなる日々』
8位:『ジョゼと虎と魚たち』
9位:『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』
10位:『泣きたい私は猫をかぶる』

● その他の鑑賞済み劇場アニメ作品(50音順)
『思い,思われ,ふり,ふられ』『君は彼方』『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット』『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』

総合ランキング表

最後に,TVシリーズと劇場版を総合したランキングを10位まで紹介しよう。

1位:劇場アニメ『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』
2位:劇場アニメ『劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel]」III.spring song』
3位:劇場アニメ『海辺のエトランゼ』
4位:劇場アニメ『メイドインアビス 深き魂の黎明』
5位:劇場アニメ『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』
6位:TVアニメ『アクダマドライブ』
7位:劇場アニメ『劇場版 SHIROBAKO』
8位:TVアニメ『呪術廻戦』
9位:劇場アニメ『どうにかなる日々』
10位:TVアニメ『映像研には手を出すな!』

今年は劇場作品の質が高かったために,上位5位を劇場アニメが占めることになったが,6位の『アクダマドライブ』の健闘は強調しておきたい。本作は,上位5位作品とは違った意味で“映画的”であり,劇場作品にしてもおかしくないくらいの見映えだった。条件さえあれば,最上位に食い込んだ可能性もある。今後もこれくらい大胆な作りのオリジナルアニメが登場することを期待したい。

総評

2020年は良くも悪くも『鬼滅の刃』のインパクトが強く,下半期は他の作品の印象が薄れてしまった感があるが,今年は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』『メイドインアビス』『Heaven's Feel』のような超弩級とも言える作品が量産されていたことを忘れてはならない。そしてまた一方で,『海辺のエトランゼ』や『どうにかなる日々』など,優れたショートムービーが目を引いた年でもある。これらの作品は,派手なアクションや号泣シーンこそないものの,劇場で鑑賞するに値する出来栄えだった。製作費と制作時間を節約しつつ,制作リソースをインテンシブに活用しながら良作を作る手段として,ショートムービーという形式は今後注目されていくかもしれない。

TVアニメに関してはとりわけコロナの影響が懸念され,実際に延期となった作品もあったが,現場制作陣の努力と工夫のおかげで,結果としてさほど大きな影響を感じることなく作品を楽しむことができた。アニメ制作者たちの底力を感じた年でもある。さらには,『ID:INVADED』や『アクダマドライブ』のようなオリジナルアニメの存在感も強く感じられた。来年も度肝を抜くようなオリジナル作品に出会えることを期待したい。

 

一刻も早くコロナ禍が終息し,日本のアニメ界に再び新しい光が刺すことを願いつつ。