*この記事にネタバレはありませんが,各作品の現時点までの話数の内容に言及しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。
2021年夏アニメも多くの作品が折り返し地点に差しかかっている頃だ。今回の記事では,現時点までの当ブログ注目作品を五十音順にいくつか取り上げてみたい。
なお「2021年 夏アニメは何を観る?」の記事でピックアップした作品は,タイトルを赤字にしてある。
- 1. かげきしょうじょ!
- 2. 小林さんちのメイドラゴンS
- 3. Sonny Boy
- 4. ひぐらしのなく頃に 卒
- 5. マギアレコード 魔法少女まどか⭐︎マギカ外伝 2nd SEASONー覚醒前夜ー
1. かげきしょうじょ!
当初あまり注目していなかったのだが,第三幕「クマのぬいぐるみ」で奈良田愛の過去が明かされて以降,面白さが加速している作品だ。渡辺さらさを中心に置くことで,女性だけの歌劇団の世界と男性だけの歌舞伎の世界を対比させると同時にその交点を示し,“舞台の世界”を重層的に描いている点がたいへん面白い。また,描線のタッチを微妙に変えることで,“表”であるきらびやかな歌劇の世界と,“裏”であるキャラクターの心の闇を描き出す演出も見応えがある。過度な撮影効果を避けたシンプルな画作りもこの作品には合っているだろう。今後も米田和弘監督の手腕に期待しつつ,最後まで見届けたい。
2. 小林さんちのメイドラゴンS
2019年の事件以降,初めての京アニ元請TVシリーズということもあり,当初は特別な感情を抱きながら観始めることになったわけだが,蓋を開けてみれば平常運転どころかフルスロットル,京アニの技術力が炸裂した超傑作だった。新監督の石原立也は第1期監督の武本康弘の流儀を踏襲しながらも,京アニらしい繊細な演出をより前面に押し出している印象がある。
毎回のように魅力的なカットを繰り出してくるので,Twitterで「注目カット」をツイートすることにしている。参考までにご覧頂きたい。
トールが小林さんとカンナを見送るときの一瞬の足元カットとかいいよなぁ。つなぎ方が丁寧。イルルに対するトールの内心もチラッと見える感じがするし。#小林さんちのメイドラゴン #maidragon pic.twitter.com/ILcQYkY7vr
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2021年7月14日
今週の注目カット。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2021年7月21日
①才川がトイレに行く時のここ。
②イルルの溜め笑顔。
③トールのギター運指。
特に①は、ここでそこまで丁寧に動かすかという感じで驚いた。絵コンテ・演出は北之原さん。#小林さんちのメイドラゴン #maidragon pic.twitter.com/6HnIsjqteV
今週の注目カット。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2021年7月28日
①トールが布巾を弄るところ。
とにかく手の動きが丁寧。まさに京アニクオリティ。
②龍を倒した時のトールの美しい立ち姿。もはやギャグアニメキャラのポージングではない。
絵コンテ・演出は澤真平さん。#小林さんちのメイドラゴン #maidragon pic.twitter.com/cW0YbjWsXy
今回の注目カット。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2021年8月4日
①古代トールのデザイン。
ワイルドさを残すトールを的確にデザインしてる。京アニはこういう感じの髪が本当にうまい。
②トールとエルマの旅出。
2人の距離感をセリフを使わず絵だけで表現。
③イルルの力こぶ。
ここはコマ送りで観たい。#小林さんちのメイドラゴン #maidragon pic.twitter.com/zkrMbwchoG
今回の注目カット
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2021年8月11日
①カンナが階段を降りるところ。
ここは駆け降りたりしたらダメなんですよね。この辿々しさが“小学生の冒険”という雰囲気を予告的に伝えている。
②才川の軽業。
よくこんなの思いつく…
絵コンテ:石原立也さん、演出:山村卓也さん。#小林さんちのメイドラゴン #maidragon pic.twitter.com/4z4AWmOFIz
もちろん,優れているのは画作りだけではない。日常と異世界が交代する際の空気感の転調が面白く,特に今回はトール,エルマ,イルルに関してキャラクターの二面性を楽しめる物語構造になっている。また“異種族間の相互理解”というテーマについても茶化すことなく丁寧に表現されており,単なるギャグアニメを超えた寓話作品としての品格も感じられる。
今期最注目の作品であると同時に,京都アニメーションの代表作の1つとなるであろうことは間違いない。
3. Sonny Boy
毎回,予想もつかないシュールな世界設定を繰り出してくる脚本には唯々驚くばかりだ。その奔放な発想は,どことなくミヒャエル・エンデの『はてしない物語』(1979年)の後半の展開を思わせるところがある。あるいは『serial experiments lain』(1998年夏)以来の“難解アニメ”と称してもいいかもしれない。
特筆すべきは美術設定だろう。アニメの世界観の同一性を保証するはずの背景美術をあえて各話ごとに断絶させることによって,この作品における“漂流”がただならぬものであることを暗示している。“異世界転生”ならぬ“非世界転送”とでも言うべきだろうか。登場人物たちが「世界のルール」を模索するという設定も面白い。
ただしいたずらに突飛な設定を撒き散らしているわけではなく,脚本や設定はかなり練られている印象だ。“極限状態に置かれた少年たちの群像劇”というテーマもしっかり語られている。文字通り未知数の多い作品だが,最後まで見届ける価値は十分にあるだろう。
4. ひぐらしのなく頃に 卒
『ひぐらしのなく頃に業』(2020年秋-2021年冬)に対する解答編。何といっても見どころは北条沙都子と北条鉄平の関係だ。旧作では絶対と思われた2人の力関係を逆転させたことにより,常に悲境の身の上にあった沙都子というキャラクターを完全に“ゲームマスター”に格上げしている。視聴者の度肝を抜きながらも,なるほどと思わせる脚本の説得力は高評価に値する。
作画の洗練度も数段増し,『業』よりも渡辺明夫のデザインがしっくりハマるようになったと思われる。また北条沙都子役のかないみか,園崎魅音・詩音役のゆきのさつき,竜宮レナ役の中原麻衣を筆頭に声優陣の演技がとても素晴らしく,旧作から15年を経て衰えるどころか格段にパワーアップしている。特に第1話から第3話の「鬼明し編」における中原麻衣の演技は特筆に値するだろう。
5. マギアレコード 魔法少女まどか⭐︎マギカ外伝 2nd SEASONー覚醒前夜ー
2021年冬クールに放映された1st SEASONに引き続き,劇団イヌカレーの描き出す独特な世界観が目を引く佳作だ。8月放映開始だったため,本記事執筆時点で第3話までしか放映されていないが,すでにハイクオリティなカットや名シーンがいくつも披露されている。特に第3話『持ちきれないほどあったでしょ』における七海やちよと環いろはの再会シーンは,キャラクターの動きの細部に至るまで繊細に作画されており,今期作品の中でも必見の名シーンだ。また,まどかを中心とする原作メインキャラの活躍も示唆されているため,原作ファンも見逃せない展開になりそうである。2021年末に『Final SEASON』の放映も予定されている。長く楽しめる作品になりそうだ。
以上「アニ録ブログ」が注目する5作品を挙げてみた。最終的なランキング記事は,全作品の放映終了後に掲載する予定である。