アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2021年 秋アニメ 中間評価[おすすめアニメ]

*この記事にネタバレはありませんが,各作品の現時点までの話数の内容に言及しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。

2021年の最終クールとなる秋アニメも、早いもので半分ほどの話数の放送を終え,すでに折り返し地点に差しかかっている頃だ。今回の記事では,現時点までの当ブログ注目作品を五十音順にいくつか取り上げてみたい。

なお「2021年 秋アニメは何を観る?」の記事でピックアップした作品は,タイトルを茶色にしてある。 

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1. 王様ランキング

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正直,当初の期待以上にクオリティの高いアニメーション演出に毎話驚かされている。キッズアニメのようなシンプルな描線とは裏腹に,一つひとつのモーションが極めて丁寧に仕上げられており,比較的淡白な原作の世界観にぐっと深みと広がりを与えることに成功している。アニメオリジナルの演出も多く,原作勢も新鮮な目で楽しめる作品ではないだろうか。特に第二話「王子とカゲ」のラストシーンにおけるボッジの表情は,今期作品の中でもずば抜けて優れた演出だったと言える。

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2. 海賊王女

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キャラクターデザイン,作画,レイアウト,モーション,美術,どれをとっても今期作品の中でピカイチの作品だ。「海賊」「西洋人×サムライ」「石の謎」といった素材自体はありがちなものだが,その料理=演出の仕方がとにかくうまい。プレスコに近い収録で役者の芝居を優先しているため,*1 セリフとアニメーションのタイミングがバッチリ決まっている上,声優の演技が伸び伸びしている点も見どころの1つだ。特に花梨役の悠木碧のノリにノった演技や,第06話の雪丸役の鈴木崚汰の決まりに決まった演技などは特筆に値するだろう。

さらに,JUNNA×梶浦由記によるOPテーマ「海と真珠」も世界観にぴったりハマっており,作品をうまく盛り上げている。


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総じて,今期オリジナルアニメの中でもかなり高い評価となることは間違いなさそうだ。

3. 古見さんは,コミュ症です。

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僕は原作付きアニメで重要なのは,“原作をどう再現したか”ではなく,“原作をどう解釈したか“だと思っている。その意味で,渡辺歩総監督/川越一生監督の『古見さんは,コミュ症です』はなかなか面白い作品だと思う。特に第01話の冒頭のアニメオリジナルシーンや,古見さんと只野の「黒板での筆談」のシーンなどは,平均的なギャグアニメの水準をはるかに上回っているように思える。Realsoudにコラムを掲載したので参照頂きたい。

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4. 大正オトメ御伽話

taisho-otome.com

当初注目していなかった作品だが,いざ観始めてみると,そのほのぼのとした雰囲気と絶妙なキャラクター造形が後を引く良作だ。珠彦に対するユヅの無償の奉仕的な振る舞いには,やや時代遅れなジェンダー観念を感じることは確かだが,それも“大正”という時代にあり得たかもしれない「御伽話」である。ユヅの愛情豊かな振る舞いに癒されつつ,彼女自身が癒やされることを願いながら楽しむアニメなのかもしれない。

5. 見える子ちゃん

mierukochan.jp

「幽霊が見える/見えない」という,キャラクターの視点の差異をうまく利用したホラーコメディだ。この手の作品はややもすると毎話同じことの繰り返しになりがちだと思うが,本作は第四話の父親のエピソードや,第七話における“3人の登場人物の見えているものがそれぞれ違う”というより込み入った状況設定など,多様なシチュエーションで飽きさせない作りになっている。アニメ作品において「見える/見えない」という状況は1つの系譜を成しており,最近の作品で言えば幾原邦彦監督『輪るピングドラム』(2011年 夏・秋)『さらざんまい』(2019年 春)やloundraw監督の短編『サマーゴースト』(2021年)などにも見られるモチーフだ。この点を軸に複数の作品を比較するのも面白いかもしれない。

6. 無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜

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第1クールからまったくテンションの落ちていない丁寧な作りで,安心して観ていられるシリーズだ。これまでの目玉と言えば,ルーデウスと父パウロの再会シーンだろう。主人公が転生先の父親とここまで真剣に対峙する異世界転生モノも珍しいのではないか。ひょっとしたらこの作品の最大の魅力は,魔法や魔物といった設定以上に,“年下”の父親の胸に息子が飛び込むというような非日常的な日常にこそあるのかもしれない。また,疎外感から外に出ることができなかったルーデウスの前世に対し,疎外感から内へ戻ることができなかったロキシーを対応させるなど,キャラクターの布置の妙も大きな見どころだ。

 

以上「アニ録ブログ」が注目する秋アニメ6作品を挙げてみた。最終的なランキング記事は,全作品の放映終了後に掲載する予定である。