アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2022年 冬アニメ 中間評価[おすすめアニメ]

*この記事にネタバレはありませんが,各作品の現時点までの話数の内容に言及しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。

年が明けたと思えばあっという間にもう2月。2022年冬アニメも早くも折り返し地点に差しかかろうとしている。今回の記事では,現時点までの当ブログ注目作品を五十音順に(ランキングではないことに注意)いくつか取り上げてみたい。

なお「2022年 冬アニメは何を観る?」の記事でピックアップした作品は,タイトルを水色にしてある。

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1. 王様ランキング(第2クール)

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2021年秋に放送された第1クールと同様,あるいはそれ以上に見事な出来栄えの『王様ランキング』第2クール。当ブログでも2クール連続で高評価となった。主人公ボッジの運命はさらに過酷さを極め,明暗の交錯した重厚な物語が展開されている。

本作の特徴の一つとして,キャラの多義性がある。非力でありながら剣の使い手として才能を発揮したボッジ,日陰者でありながら思いやりに溢れたカゲ,気高く厳格でありながらも心優しいヒリング,どこかインチキ臭いが頼もしいデスパー。こうした多重的なキャラ造形によって,物語にいっそう深みが増している

アニメーション技術の水準も依然として高い水準を保っている。『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『進撃の巨人』のような派手さはないが,丁寧かつ魅力的なアニメーションは,前述した深みのある物語を推進する確かな駆動力となっている。当ブログでは今の所,第二話の各話レビューしか掲載していないが,後日,作品全体を正式にレビューする予定だ。

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2. からかい上手の高木さん 3

takagi3.me

最初は「高木さんがかわいい」から始まり,しばらく観ていくと「これは実は西片がかわいいのでは」と思うようになる。ここまで来ると,キャラクターのビジュアルだけではなく,その内面にかなり感情移入している。そしてそこから「やっぱり高木さんがかわいいんだな」と思うに至る。そんな"心の視線誘導"がうまい作品だと個人的には思っている。この外面的・内面的な"かわいい"の決め手になっているのは,この作品独自のキャラクターの頭身だ。どのキャラクターも頭の鉢がやや大きく,手足や胴体はやや華奢なイメージにデザインされている。この絶妙なビジュアルを,キャラクターデザイナーの髙野綾が的確にアニメに落とし込んでいる。基本的に「高木さんがからかい,西片が引っかかる」という掛け合いの繰り返しでしかない〈日常系アニメ〉がすでに3シリーズ目を迎えているのは,この作品が視聴者大衆の感性のある部分にうまくヒットしているからなのだろう。

3. 鬼滅の刃 遊郭編

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もはやランキング入りして当たり前,というポジションなってしまった本作だが,やはり触れずには置くわけにはいかないだろう。第九話「上弦の鬼を倒したら」における炭治郎,伊之助,善逸の連携シーンは,レイアウト,スピード感,撮影効果どの点をとっても最高レベルであり,また第十話「絶対諦めない」のアクションはアニメ史上に残る水準と言っていいだろう。『無限列車編』の煉獄杏寿郎の死はすでに物語上の大きなクライマックスだったが,それに匹敵する山場をアクションで作るという大技を見せられた。また沢城みゆきは,堕姫というキャラクターの内面・外面両方において,当て書きしてのではないかと思えるほど完璧な演技を見せていた。

4. 錆喰いビスコ

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最初の話数の時系列シャッフルにはやや戸惑ったものの,理解不能というわけではなく,マイナスポイントにはなるほどの瑕疵ではない。何より碇谷敦監督のキャラクターデザインと演出が優れており,特にキャラのアップ時の表情やレイアウトがバシッと決まっていて気持ちがいい。個人的には『id:INVADED』(2020年冬)よりも碇谷のデザインがハマっているのではないかと思う。やはりアニメーションそのものに説得力のある作品は,それだけで見応えがある。

もちろんストーリーや世界観も面白い。「錆」は「寂」でもある。終末的な世界の中で錆に侵された構築物が立ち並ぶ様に,嫌悪感よりもむしろ愛着を感じるのは僕だけだろうか。そんな趣のある風景の中を,赤いビスコ,青いミロ,ピンクのチロル,そしてカニのアクタガワが,まるでロードムービーのように旅をする。その様を見るだけでも楽しい作品だ。

5. その着せ替え人形は恋をする

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表面的にはちょいエロ学園ラブコメなのだが,根底には"クリエーターの成長""他者の価値観承認"というテーマが流れているように思う。ジャンルとしては"青年向けマンガ・アニメ"なのだろうが,コスプレという文化がすっかり社会に浸透したこともあり,男女問わず楽しめる作品になっている。アニメーションの技術も高く,作画・モーション共に毎話目を楽しませてくれる。同クールで放映中の『明日ちゃんのセーラー服』と共に,CloverWorksの代表作となることは間違いないだろう。

6. 平家物語

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「びわ」というアニメオリジナルのキャラクターを創作することにより,古川日出男の現代語訳に見られる「複数の琵琶法師」を〈視聴者〉という統一的な視点として物語内に導入した本作。これにより,『平家物語』という古典を客観的な視点からだけではなく,1つの身体と情緒を伴った〈個〉の主観視点から捉える試みがなされている。『平家物語』を「叙事詩ではなく叙情詩」として描きたかったと述べる山田尚子監督の思想が,キャラクター造形のレベルで具体化されていると言ってよいだろう。山田流の被写界深度の浅いレンズ効果も〈主観視点〉の描出という点において効果的である。

また,個人的には維盛の描き方が興味深く,とりわけ「富士川の戦い」の場面を描くにあたり,不条理な戦に対する維盛の生々しい恐怖心をフォーカスしたことは高く評価したい。

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7. リーマンズクラブ

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正直に言うと,当初まったく注目していなかったのだが,すでに第1話にしてすっかり引き込まれてしまった。バドミントンのシーンの作画クオリティに加え,「サラリーマン」としての人間模様を丁寧に描いている点が目を引く。美形の男性キャラクターが多く,どちらかと言えば女性にターゲットした作品なのだろうが,かと言って視聴者を選ぶ排他性は感じられない。学生が主人公の“部活モノ”とは一味違ったリアリズムを感じさせる秀作だ。

 

以上「アニ録ブログ」が注目する2022年冬アニメ7作品を挙げた。最終的なランキング記事は,全作品の放映終了後に掲載する予定である。