アニ録ブログ

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TVアニメ『王様ランキング』第2クール(2022年冬)第二十一話「王の剣」の演出について[考察・感想]

 *この記事は『王様ランキング』「第二十一話 王の剣」のネタバレを含みます。

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『王様ランキング』公式Twitterより引用 ©︎十日草輔・KADOKAWA刊/アニメ「王様ランキング」製作委員会

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『王様ランキング』という作品には2つの意味での驚きがある。1つはその奇想天外なストーリー。個々のキャラクターの根本の目論みが最後まで明かされずにいるため,その意外かつ先の読めない行動に毎話,意表を突かれる。それがとてつもなく楽しい。

そしてもう1つは,もちろんアニメーション技術である。本作はアクションシーンを中心に,カメラワークや構図の取り方の部分で随所にアニメオリジナルを取り入れており,原作をかなり自由に解釈しているようだ。今回の記事では,先日放映されたばかりの第二十一話「王の剣」の中から,特に目を引くシーンを取り上げてみよう。

 

うねるパース

まず驚かされたのがAパートのカメラワークとパースだ。

ボッスとミランジョの対話のカットでは,隣の椅子の下に置かれたカメラから覗き見るような構図がとられている。視界が遮られ,上下から圧迫されるような感覚がする。カットの最後で,椅子の足がボッスとミランジョを別つ構図になっているのが印象的だ。原作にはこうしたカメラワークはない。

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図①:第二十一話「王の剣」より引用 ©︎十日草輔・KADOKAWA刊/アニメ「王様ランキング」製作委員会

そしてこの場所を俯瞰から捉えたカット。画面の左右で違うレンズを使っているかのように,パースが非現実的に歪められているが,これがとても面白い。

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図②:第二十一話「王の剣」より引用 ©︎十日草輔・KADOKAWA刊/アニメ「王様ランキング」製作委員会

これは僕の個人的な解釈なのだが,こうした大胆な空間描写が,キッズアニメを思わせる本作のルックの背後に,ただならぬ物語の“うねり”の力が潜んでいることを表しているように思える。アニメという媒体の特性を最大限に活かした抜群の空間解釈だ。

極小 vs 極大の対決

次に注目すべきは,今回の話数の目玉と言えるボッジvsボッスの対決シーンだ。

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図③:第二十一話「王の剣」より引用 ©︎十日草輔・KADOKAWA刊/アニメ「王様ランキング」製作委員会

ボッジと対峙するやいなや,ボッスの身体が巨大化し(実際に巨大化しているわけではなく,ボッジ,あるいはこの対決を見ている他のキャラクターたちの印象を映像化したもの,ということなのだろう),ボッジめがけて棍棒を振り回す。ボッジは城壁を使いながら俊敏に身をかわす。

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図④:第二十一話「王の剣」より引用 ©︎十日草輔・KADOKAWA刊/アニメ「王様ランキング」製作委員会

落下して小さくなっていくボッジに代わり,ボッスの顔が画面にイン。巨大な棍棒がボッジに目がけて振り下ろされる。やがて小さなボッジは,デスパーから授かった技を駆使して父たる巨人を打ち倒す。ボッスの巨大化も含め,この対決シーンもほぼすべてアニメオリジナルである。

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図⑤:第二十一話「王の剣」より引用 ©︎十日草輔・KADOKAWA刊/アニメ「王様ランキング」製作委員会

この対決シーンには複数のアニメーターが参加しているが,ここでは上の図④の辺りの原画を手掛けたは今井有文を特記しておこう。

先述した通り,落下するボッジとボッスの顔のアップとの対比によって,その途方もない巨大感を演出した見事なシーンだ。今井と言えば,話題となった「リヴァイvsケニーの決闘シーン」など,WIT時代の『進撃の巨人』における数々の名アクションシーンを手がけたことで知られる。巨人を打倒するシーンは,ある意味で彼の十八番と言えるのかもしれない。

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図⑤:「E-SAKUGA進撃の巨人 立体機動線画集 –今井有文-」より引用 ©︎Onebilling Inc. ©︎諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会 ©︎WIT STUDIO

今井の『進撃の巨人』の仕事については,「E-SAKUGA進撃の巨人 立体機動線画集 –今井有文-」で細部まで確認することができる。紙媒体でも出版されているが,現在入手が難しくなっている。「E-SAKUGA」では,原画を動かしたり,コンテ・タイムシート・完成映像と対照させたりすることができるので,紙媒体よりも資料を効率よく堪能できる(ただしUIには慣れが必要)のでお勧めだ。

www.esakuga.net

本話数にはこれ以外にも数々の名場面がある。ここで触れなかった制作パートについても,絵コンテ・演出の御所園翔太Twitterで個々の作業を詳しく説明してくれている。ここまで一人ひとりの仕事を丁寧に労う様子を見ると,ファンとして感動すら覚える。この話数に心惹かれた方はぜひご覧にになるといいだろう。

何度も鑑賞したくなる名話数だ。御所園翔太をはじめ,この素晴らしい話数を手がけたすべての制作フタッフに惜しみない拍手を。

作品データ

*リンクはWikipedia,@wiki,企業HPなど

【スタッフ】原作:十日草輔/監督:八田洋介/シリーズ構成:岸本卓/キャラクターデザイン・総作画監督:野崎あつこ/サブキャラクターデザイン・総作画監督:河毛雅妃/副監督:今井有文/チーフ演出:渕上真/メインアニメーター:大城勝小笠原真藤井望/美術監督:金子雄司/美術設定:藤井一志/色彩設計:橋本賢/撮影監督:出水田和人上田程之/編集:廣瀬清志/音楽:MAYUKO/音響監督:えびなやすのり/音響効果:緒方康恭/アニメーションプロデューサー:岡田麻衣子/アニメーション制作:WIT STUDIO

【キャスト】ボッジ:日向未南/カゲ:村瀬歩/ダイダ:梶裕貴/ヒリング:佐藤利奈/ドーマス:江口拓也/ベビン:上田燿司/アピス:安元洋貴/ドルーシ:田所陽向/ホクロ:山下大輝/ボッス:三宅健太/シーナ:本田貴子/魔法の鏡:坂本真綾/デスハー:下山吉光/デスパー:櫻井孝宏

 

【第二十一話「王の剣」スタッフ】脚本:岸本卓/絵コンテ・演出:御所園翔太/演出補佐:田中洋之/総作画監督:野崎あつこ/作画監督:金採恩荒尾英幸山本祐子鴨居知世野田猛島袋奈津希野崎あつこ御所園翔太オスミン河内佑土上いつき桝田浩史

 

www.otalog.jp

 

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