*この記事にネタバレはありませんが,各作品の内容に部分的に言及しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。
2022年最初のクールである冬アニメも,ほぼすべての作品が最終話を迎えた。今回の記事では,2022年冬アニメの中から,特にレベルの高かった7作品をランキング形式で振り返る。
なお,最終話までの評価によって,以前掲載した「2022年冬アニメ 中間報告」ではピックアップしなかったがランクインした作品,逆にビックアップしたが最終的にランクインしなかった作品が含まれることをお断りしておく。
7位:『明日ちゃんのセーラー服』
独特のキャラクターデザインは好き嫌いが分かれるところもあるだろうが,原作にはない背景美術の描き込みに合わせた的確なレイアウトや人物の繊細な関係性を画に落とし込んだ演出が光った。後述する『その着せ替え人形は恋をする』と併せて,制作会社CloverWorksの代表作となるだろう。
6位:『錆喰いビスコ』
「錆」や「キノコ」といった新奇な道具立ての割には,最終話の辺りは"セオリー通り"の展開だったのがやや残念だが,本作はなんと言っても碇谷敦のキャラクターデザインが光っていた。続編の制作を期待したい。
ほんといいアニメーションだな。前にも言いましたけど、アップの顔がむちゃくちゃかっこいい。特にビスコの場合、右目下の模様が真正面からのシンメトリーをかっこよく崩すんですよね。素晴らしいデザインだと思う。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年2月21日
#錆喰いビスコ pic.twitter.com/JrecbRBKR3
これまで多用されていた正面カットの意味がここでバシッと出てきたわけですね。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年3月14日
#錆喰いビスコ pic.twitter.com/yOHcPefhRu
5位:『からかい上手の高木さん 3』
異世界でもSFでも未来でも過去でもなく,〈今ここ〉の日常の中で起きるミニマルな物語。にもかかわらず,キャラクターデザインや声の演技など,この作品の魅力は実写ではなくアニメーションという媒体によってこそ輝く。原作の魅力を最大限に引き出した表現力を高く評価したい。6月に公開予定されている劇場版も楽しみだ。
4位:『鬼滅の刃 遊郭編』
「堕姫」のデザインやCV沢城みゆきの演技,迫力のアクションシーンなど,あらゆる点において平均値を遥かに上回るクオリティだった。流石のufotableと言わざるを得ない。1位にランクする価値が十分あるのだが,当ブログではすでにいくつかの記事で最上級の高評価をしている作品なので,今回は他作品に上位を譲るという意味で,この順位とした。
いやー堕姫のビジュアルは想像以上によかった。彩色完璧でしたね。回想シーンの粒子が荒い感じの画もよかった。そして何より沢城さんの演技がバッチリ。この1話だけで恐怖・雅・可憐をすべて見せてくれた感じですね。#鬼滅の刃 #鬼滅の刃遊郭編 pic.twitter.com/OhfcX8wVp2
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2021年12月19日
今回は伊之助を中心とした3人の連携シーンがむちゃくちゃいい。この3人の配列は見事としか言いようがない。普通に見れば3人のいでたちは決してかっこよくない(てか堕姫に「ブサイク」って言われてるし)のに、アクションとレイアウトで文句なしにかっこよくなってる。#鬼滅の刃 #鬼滅の刃遊郭編 pic.twitter.com/4mSNhCyJw9
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年1月30日
3位:『その着せ替え人形は恋をする』
AnimeJapanのステージで紗寿叶役の種﨑敦美も言及していたが,11話で心をざわつかせるシーンで引きを作り,12話(最終話)は比較的落ち着いた雰囲気で締めくくるという流れは,作品全体への句点の置き方として最適だったのではないかと思う。総じて,デザイン,演出,声優の演技を始め,視聴者に愛されるキャラクター造形と細やかな演出が際立った秀作であり,上述した『明日ちゃんのセーラー服』とともに,CloverWorksの存在感を印象付けた作品となった。是非とも続編の制作を期待したい作品だ。
一見シリアスに見えて実は軽いギャグ、のこのシーンで、モブに光を当てて、2人をほぼ全カゲにしたのなかなか面白かったですね(画像だとわかりづらいけど)。で、最後はばっちり陽光の中の2人。ビシッと決まった演出でした。#着せ恋 pic.twitter.com/H8giyDtmKm
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年3月12日
2位:『王様ランキング 第2クール』
最終話が終わって振り返ってみた時,この作品の最大の魅力はやはりキャラクターだったのではないかと思う。ボッジを好きになる人もいれば,ヒリングやデスパーに自分の身を重ねる人もいただろう。観る人によって感情移入の対象が異なり,様々な立場や価値観の人を引きこむ作品だったのではないかと思う。AnimeJapanのステージでも,メインキャストたちがそれぞれのキャラクターの魅力を熱く語る姿が印象的だった。本作も続編制作を大いに期待したい作品だ。
1位:『平家物語』
全11話という限られた尺の中で,びわと平家の日常的なふれあいを丁寧に描き,平家物語に内在する悲哀という叙情を際立たせた傑作であった。特に最終話,様々な色と音とが渾然一体となる「灌頂巻」の演出には目を見張るものがあり,アニメ史に残る名ラストシーンと言っても過言ではないだろう。また,本作を観た多くの人が『平家物語』の中に新たなポテンシャルを見出し,この古典作品への関心をいっそう高めたのではないかと推測される。その意味で,文化的な影響力の強い作品でもあった。
なお平家をめぐる物語は,5月に公開が予定されている湯浅政明監督『犬王』に引き継がれる。同じサイエンスSARUの制作だが,もちろんそのテイストはまったく異なるものになるはずだ。山田マジックと湯浅マジックを比較するのも面白いだろう。大いに期待したい。
● その他の鑑賞済み作品(50音順)
以上,当ブログが注目した2022年冬アニメ7作品を挙げた。
残念ながら前クールに引き続き,オリジナル・アニメのランクインはなかった。言うまでもなく,オリジナル作品の制作は難しい。しかしだからこそ,2021年の『Vivy』『SK∞』『SSSS.DYNAZENON』『Sonny Boy』『オッドタクシー』のようなユニークな傑作が生み出された時には,アニメの潜在的な表現力を確かに感じ,心が躍る。だから当ブログでは今後もオリジナル・アニメを応援していきたいと思う。
2022年春アニメのおすすめに関しては以下の記事を参照頂きたい。