*この記事にネタバレはありませんが,各作品の内容に部分的に言及しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。
真夏を先取りする酷暑の中,今年の春アニメもほぼすべての作品が最終話を迎えた。恒例通り,2022年春アニメの中から特にレベルの高かった8作品をランキング形式で振り返っておこう。なお,今回は以前掲載した「2022年春アニメ 中間報告」でピックアップした作品からほとんど異同はない。
- 8位:『ヒーラー・ガール』
- 7位:『プラック★★ロックシューター』
- 6位:『古見さんは,コミュ症です。』
- 5位:『であいもん』
- 4位:『パリピ孔明』
- 3位:『SPY×FAMILY』
- 2位:『サマータイムレンダ』
- 1位:『かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-』
8位:『ヒーラー・ガール』
当初はあまり注目していなかった作品だが,★歌唱3「お掃除,ラン・ラン・ラン」Bパートで,日常会話からため息に至るまで,主人公3人組の全セリフをミュージカル調にした演出がたいへん面白く,この辺りから一気に評価が高まった。画作りの面でも面白い話数が多く,アニメーションとしても十分楽しめる作品だった。『アイの歌声を聴かせて』『竜とそばかすの姫』『犬王』と,近年質の高いミュージカル・アニメが作られているが,その中でも際立った個性を持つ作品となったのではないだろうか。
面白かったなー。今回は特に画作りが面白かった。それとミュージカルアニメなんだけど、ミュージカル以外の台詞回しのテンポもとてもよくて、テンポ自体がコメディ要素になっていたところがすごい。この作品、侮れない。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年5月9日
#ヒーラー・ガール pic.twitter.com/AR30RZ0EdU
7位:『プラック★★ロックシューター』
本作も途中から評価が変わった作品である(「中間評価」の記事ではピックアップしていない)。"胸糞の悪さ"と"希望"の配分がうまく,ストーリー展開の面では今クールの中でも抜きん出て面白かったのではないかと思う(ただしAIをラスボスにした点はやや凡庸に感じてしまったが)。とりわけ評価したいのは,#8「Crossing Iron Oceans」のモニカ&イサナのサブストーリー。絶望的な状況の中の爽やでほろ苦いラブストーリーは,この2人の話だけで劇場版が作れてしまうのではないかと思わせるほどだった。
素晴らしくよくできたサブストーリーだった!モニカ&イサナの物語もよかったし、アクションとBGMの盛り上げ方も満点だった。この2人のスピンオフが観たいと思わせる名話数でした。脚本:吉上亮さん、絵コンテ:天衝さん、演出:青木youイチローさん。#ブラックロックシューター #BRSDF pic.twitter.com/SQwtftqGL0
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年5月22日
6位:『古見さんは,コミュ症です。』
第1期から高水準の作画と演出のテンションをほぼキープしており,TVシリーズとしてはかなりハイクオリティのアニメーションになった。この作品はギャグシーンも面白いのだが,それ以上に,古見さんと只野を中心とした登場人物の心情に寄り添った演出が光っていたと言える。特に最終話は,今期のアニメの中でももっとも美しい演出だっと言えるのではないだろうか。続編制作が待ち望まれる。
いやーBパートよかったですね。この曲がり角の使い方なんか最高。ここでもまた“光と影”なんですよ。中学時代の古見さんの心情を反映した“暗”と、それを照らそうとする只野くんの“明”。この時の古賀葵さんの演技の生っぽさも素晴らしい。古見さんの動揺の仄めかしも上品でよかった。#古見さん pic.twitter.com/cXL7C8GEln
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年5月18日
今期一番の綺麗な最終話かもしれない。詰め込まず、間をたっぷりとっていたのがこの作品らしくてよかったですね。この手の雨のシーンでは、最後に“雨上がりの空”を映すのが常套手段だけど、そうせずに「今は止まないけどいつか止む」という未来形にしたのもグッド。#古見さん pic.twitter.com/FSZ0EjLAZC
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年6月22日
ラストは1話のリピートに見えながら、実は2人の表情がまったく違っていて、あの頃から大きく変化してるんだという暗示。とても情緒豊かな演出でした。スタッフの皆様、お疲れ様でした!続編期待してます!#古見さん
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年6月22日
5位:『であいもん』
決してゴージャスなアニメではないのだが,水彩画のように柔らかい美術と京都の美しい自然を背景に繰り広げられる京なまりの人間模様,そしてそれと対照的なほんの少しほろ苦い親子・擬似親子関係は,今期一番の極上のドラマだった。偶然が産んだ一果と和の擬似親子関係は,通常の恋愛モノ以上にエモーショナルで胸を締め付ける"ボーイミーツガール"の亜種とも言える。個人的には和役の島崎信長の柔らかい演技が素晴らしく,一果役の結木梢との相性も抜群だった。続編を期待したい。
水彩画風の美術いいですねぇ。この作品の柔らかさにピッタリ。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年4月20日
#であいもん pic.twitter.com/awp9kwKrK1
しかしこの作品は、見た目の柔らかい雰囲気とは裏腹に、親と子の関係はほろ苦く時にシビアに描かれるんですよね。そしてそれと対照的に、血のつながりのない関係(一果と和、和と校長先生など)の方がより温かかったりする。この辺りの人間関係の絶妙な親和力の描き方がうまいなー。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年5月18日
#であいもん
いやー素晴らしい回だった。自然美、名前、言葉に込められた京の雅をとてもわかりやすい心情で伝えてくれるいい作品だと思います。この作品を見てると、日本の四季とそれに対する日本人の感性を何が何でも守りたいという気持ちになりますね。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年6月8日
#であいもん pic.twitter.com/7F6CIJk16H
4位:『パリピ孔明』
完全にダークホース。「何を観る?」の記事で取り上げなかったのを後悔した作品だ。「三国志」「英霊召喚」「アイドル育成」「仲間探し」といった一見バラバラの要素が絶妙に絡み合い,最終話まで綺麗な盛り上がりを見せた。関口可奈味のキャラクターデザインもバッチリ決まっており,アニメーションのクオリティも申し分なかった。アップの決まるアニメというのは観ていて気持ちのいいものだ。本作もぜひ続編を制作してもらいたい。
『パリピ孔明』3話鑑賞。今回も面白かった。Fate風英霊召喚とアイドル育成の設定に、孔明の歴史的逸話。バラバラに思える要素が絶妙にマッチしてるんですよね。加えて魅力的な作画が終始眼福。それと本渡楓さんと96猫さんの声質にほとんど違和感がないのもすごいですね。#パリピ孔明 pic.twitter.com/jOAxTwUjjM
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年4月19日
面白かった。ゴージャスに踊りながらも仮面の下で懊悩する七海と、確信と信頼に満ちた表情でフードを払う英子の対比。孔明の策はチートそのものだけど、その根底には「英子さんが歌えば、すべてひっくり返るからです」という、第1話で既に示されていた孔明の“感動”があるわけですね。#パリピ孔明 pic.twitter.com/Ji0MJVr2Ps
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年6月14日
『パリピ孔明』最終話鑑賞。素晴らしかった!これは英子のサクセスストーリーであると同時に、「命のやりとりをしない戦い」をするという、孔明の“逆異世界転生”なわけですね。唐澤というバイプレイヤーもよかった。11話のシーンのフリが効いてました。スタッフの皆様、お疲れ様でした!#パリピ孔明 pic.twitter.com/ow2HACQKMy
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年6月21日
3位:『SPY×FAMILY』
放送前から期待度の高かった作品だが,結果として期待を上回る出来栄えとなった。「子どもが泣かない世界」というテーマを中心に原作をややシリアス寄りに解釈した演出は,作品に程よい重厚感を与えている。おそらく制作の進度上,多めに挿入されたアニオリもうまくできており,原作既読勢も楽しませる作りとなっている。そして何より評価に値するのは,アーニャというキャラクターの作り込みである。丁寧に表現された愛らしいモーションは,原作のデザインの魅力をさらに引き出すと同時に,「子どもが泣かない世界」というテーマとも調和しながら作品世界を彩っている。種﨑敦美の演技も当初の予想以上に素晴らしく,もはやこのキャスト以外は考えられないというほどに完成度が高い。分割2クール(2クール目は10月から放送予定)のため,最終的な評価は未定だが,2022年のアニメの中でもかなり高い順位にランキングされる作品となるだろう。
この辺りアニオリでしたね。こういうのも含めてなんですけど、スラップスティック風の軽快なテンポで進む原作と違って、アニメはいろいろ時間をかけてじっくり話を進めていく演出方針なのかもしれませんね。ある意味、原作とは別物として観た方が楽しめるかも。#SPY_FAMILY #スパイファミリー pic.twitter.com/4XqNTpaikk
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年4月23日
たっぷりアニオリ面白かったです。おしろのシーンは原作も面白いんだけど、ちょっとあっさりめなのでこれくらい膨らませてくれたのはよかった。今回もアーニャ最高にかわいかった!
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年5月7日
#SPY_FAMILY
#スパイファミリー pic.twitter.com/LoKgxyCJls
ここのカメラワークすげえなあ。アーニャの真横のアングルから、やり過ごしていったん背中を写し、再度横に回って、ジャンプした後にぐるっと正面に回る。この不規則な動きが緊迫感をシリアスに伝えてる感じがしますね。#スパイファミリー #SPY_FAMILY pic.twitter.com/QdAu1eKVh8
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年6月18日
今回はとにかくこのシーンがよかった。アーニャという子どもをいかに子どもらしく動かすかに全力が注がれている。こういうところが丁寧に作られているからこそ、ロイドの「子どもが泣かない世界」という言葉にも説得力が出てくる。#アーニャ#SPY_FAMILY#スパイファミリー pic.twitter.com/jmtIQMIj3e
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年6月25日
2位:『サマータイムレンダ』
1話からまったくダレることのない作画。緩急のある演出。絶妙な引き。どれをとっても,近年のホラーファンタジー系アニメの中でも群を抜いてクオリティの高い作品と言えるだろう。"敵の力を借りて敵を倒す"の水着美少女バージョンという,『デビルマン』以来のモチーフの大胆なアレンジもユニークで面白い。この手の"人間と非人間""味方と敵"との間の境界が曖昧になる物語に触れると,必然的に"人間とは何か"という問いに直面させられる。#12「血の夜」における「人間なめんな!」というセリフの中に,はたして誰が含まれて誰が含まれないのか。最終話まで目が離せない。こちらは連続2クールということで,やはり最終的な評価は未定だが,最終話までの出来栄えによってはランキング上位に食い込む可能性が高い作品だ。
面白いねえ。『デビルマン』『寄生獣』的な「敵の力を借りて敵を倒す」の派生系でもあるんですよね。面白い。#サマータイムレンダ
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年6月9日
いいですねえ。アニメーションと芝居がこの水準で保たれてるホラーファンタジーって久しぶりな気がする。エンドクレジットのボカシもしっかり怖いし。2クールなんで最終的な評価はまだ先になりますけど、今のところかなり上位に入る作品ですね。#サマータイムレンダ pic.twitter.com/Jsc4O5htrM
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年6月23日
1位:『かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-』
本編とまったくテイストの違うエンディング・アニメーション,次々と変わるテクスチャや光源,歪むパース,ハイセンスなオマージュなどなど…毎話,次から次へと新しい表現が繰り出され,視聴者をまったく飽きさせない傑作であった。この貪欲とも言える演出方針は,ほとんど"エクスペリメンタル"と言っても過言ではないだろう。まさしくアニメの醍醐味を凝縮したような作品と言える。古賀葵,古川慎,小原好美,鈴木崚汰を中心とした声優陣の演技も素晴らしく,多彩なアニメーションが作る小気味のよいリズムをさらに豊かに彩っていた。そしてふざけるところはしっかりとふざけ,真面目に恋するところは真面目に恋する,というメリハリのよさもこの作品の魅力だろう。その辺りが明確に打ち出されていたのが最終話だった。すでに続編制作の報も出ている。今後のさらなるパワーアップを期待しつつ,今期アニメの第1位に選ばせてもらった。
いやーほんとこのEDすごいですね。絵コンテ・演出の大野仁愛さん、作画監督の久貝典史さんに拍手。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年4月15日
#かぐや様 pic.twitter.com/dTDlSugkUV
今回の演出も尖っててよかったですねー。空間歪ませたりテクスチャ変えたり。白銀と石上をスライドさせるカットや、ここでジャズ使う?って音響演出も面白かった。脚本:菅原雪絵さん、コンテ:畠山守さん、演出:池田愛彩さん。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年4月22日
#かぐや様 pic.twitter.com/bO9ahOYq8X
今回もまたむちゃくちゃ面白い画を見せてくれました。このシーンの効果がすごい。この光線とかもどうやって思いついたんだろう。こういう風にガンガン実験的な画をぶち込んでくるアニメは本当にいいですね。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年5月20日
#かぐや様 pic.twitter.com/KpxAGugP2J
今回も素晴らしかった。ラップ回のような派手さはないけど、その分、一切ごまさない作画・演出・脚本のうまさが出ていた感じがします。脚本:中西やすひろさん、絵コンテ:畠山守さん、演出:中西基樹さん、総作監:川上哲也さん、作監:川﨑玲奈さん、山崎浩平さん。拍手!
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年6月3日
#かぐや様 pic.twitter.com/PLYF9DZQVs
面白かった!異なるアスペクト比、照明、画風のカットが矢継ぎ早にモンタージュされていて視覚的な情報量がとても多い。画のテンポに声優のテンポがばっちりマッチしてる。傑作話数だと思います。最終話までもっともっと見せてください!絵コンテ:牛嶋新一郎さん、演出:北村翔太郎さん。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年6月10日
#かぐや様 pic.twitter.com/5HkWJughYp
波に乗った『かぐや様』制作チームは無敵でしたね。楽しいだけでなく、すばらしいアニメーションで彩られた最終話でした。ラブコメ作品でここまでアニメという媒体の面白さを活かした作品もそう多くないと思います。スタッフの皆様、素敵な作品をありがとうございました!ブラヴォー!
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年6月24日
#かぐや様
● その他の鑑賞済み作品(50音順)
以上,当ブログが注目した2022年春アニメ8作品を挙げた。
今期も原作アニメ化作品のクオリティの高さが目立った。これはいつも言っていることだが,原作アニメ化作品でもっとも面白いのは,"制作者が原作をどう解釈したか"という点だ。原作とアニメを比較しながら観るのが面白い。つまり"一粒で二度美味しい"。オリジナルアニメにはない楽しみと言えるだろう。
その一方で,やはり当ブログとしてはそろそろオリジナルアニメの躍進に期待したい。夏アニメはオリジナル作品が比較的多く,期待が高まる。2022年夏アニメのおすすめに関しては以下の記事を参照頂きたい。