*この記事にネタバレはありませんが,各作品の内容に部分的に言及しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。
©︎つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会
秋が急激に深まる中,今年の夏アニメも最終話の放送がほぼ終了し,すでに秋アニメの放送が始まっている。ここで恒例通り,2022年夏アニメの中から特にレベルの高かった7作品をランキング形式で振り返っておこう。
7位:『ちみも』
カナヘイ原案によるかわいいキャラクターデザイン,うえのきみこのコメディ,そして監督ぴのあるとの柔らかな演出が見事にマッチした良作。丸みを帯びたキャラクターが細やかに動く様は,アニメーションの本来的な楽しさを伝えていた。惜しむらくは放送時間。夕方や日曜の朝など,キッズアニメの時間帯に放送した方が評価は高かったのではないだろうか。ともあれ,ロングラン作品として長く楽しめるポテンシャルを持った作品なので,続編をぜひ期待したいところだ。
6位:『組長娘と世話係』
八重花(お嬢)と霧島が回を増すごとに絆を深めていく様子,そして2人がそれぞれに重要な変化を遂げていく姿が繊細に描かれていた。“幼女と野獣”というコンビは,それ自体としては珍しくはないが,丁寧な演出と細谷佳正と和多田美咲の抜群の演技力により,非常に魅力的な作品に仕上がっていたと言える。本作も続編が待ち望まれる。
『組長娘と世話係』7話鑑賞。とてもいい回でした。まず霧島とお嬢の内緒話がかわいい。不意に挿入された恵の過去話も味わい深く、霧島との関係をお嬢の似顔絵でまとめたのも綺麗でした。脚本:川崎逸朗監督、絵コンテ演出:渡邊哲哉さん、演出補佐:今井翔太さん、吉澤太智さん。#組長娘と世話係 pic.twitter.com/kRERGyk5yS
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年8月18日
今回のお嬢と霧島もよかったですね。この作品は擬似家族と血縁家族のありようがごく自然に重なりあっていて、〈家族〉というものの本質的な価値を伝える強いメッセージ性があると思います。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年8月25日
#組長娘と世話係 pic.twitter.com/Bvv5mmlb0F
『組長娘と世話係』9話。いやーよかったですね。そわそわしてる時にお花が出てしまうお嬢が最高に可愛い。霧島の袖を掴んでるのも、むしろ霧島への好きな気持ちを表していていい。そして「お嬢の絵」の涙腺崩壊力。“10年後のお嬢”のようなお母さん、早く目が覚めるといいですね。#組長娘と世話係 pic.twitter.com/9B091CcWS7
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年9月1日
5位:『シャインポスト』
本記事執筆時点ではまだ最終話が放送されていないが,第11話の段階でランクインが妥当と判断した。当ブログでは当初注目していなかったのだが,各所での評価が高かったため試聴を始めたところ,その表現力の高さに驚かされた。特に歌唱シーンにおける表情やモーションの作り込みは,近年のアイドルアニメの中でも抜きん出てクオリティが高いと言える。グループアイドルが「絶対アイドル」としてのソロアイドル=偶像に憧れる,という構図もユニークだ。及川啓監督の代表作となることは間違いないだろう。
『シャインポスト』8話まで鑑賞。とても面白い。作画だけでなく芝居がいいですね。不可解な動作とか表情とかがなく、すべてのカットが“見せる”ために丁寧に作り込まれてる感じ。正直、声優さんの演技には未熟なところがあると思うんだけど、それが“成長過程のアイドル”というテーマと#シャインポスト
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年9月4日
蛍の「絶対アイドル」というネーミングが絶妙なんですよね。ソロなので、その魅力は他のメンバーとの相対的価値とは無関係に「絶対」的に決まる立場。本来の意味でのアイドル=偶像としての造形という感じがする。この子たちにとって、蛍はまさしくモノテイズム的な“神”なんですね。#シャインポスト
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年10月11日
4位:『サマータイムレンダ』
抜群の作画力,読者の心をつかむ演出,そして的確な引きと,多くの点で高いクオリティを見せた秀作。途中の展開でややダレた感も否めないが,全25話をたっぷり使った構成は原作の魅力を不足なく伝えたと言える。特に最終話では,丸々1話を使って“勝利”の後の世界を描いていたのがよかった。話数の制約のせいで最終話近辺で走り気味になる近年の作品と比べ,余韻をたっぷり味わえる最終話になったことは評価に値するだろう。
慎平の能力が低下していくにつれループの幅が狭まり、クライマックスに向けて物語のテンポも早まってく感じですかね。にしても白ハイネの美少女っぷりは破壊力あった。#サマータイムレンダ pic.twitter.com/oYfl8EtYJv
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年7月14日
あーすごい。面白い。毎回ほとんど息しないで観てるんで、今回の話はある意味没入感凄まじかった。前髪下りた潮よかったですね。この2人には幸せになってもらいたいが…次回のタイトルは「オリジナル」。#サマータイムレンダ pic.twitter.com/m1OO27QAKt
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年7月21日
3位:『よふかしのうた』
サイバーパンクのような輝度の高い色彩によって,原作の「夜」の魅力を一味違う形で伝えたアニメ。アニメが色で伝える媒体であることを再認識させてくれる傑作だった。夜守コウ役の佐藤元と朝井アキラ役の花守ゆみりの落ち着いた演技と,七草ナズナ役の雨宮天のダミ声との相性も絶妙だった。この3人の奏でるハーモニーが,彼ら/彼女らの“友だち”とも“恋人”ともつかない距離感をうまく表現していた。エモいアニメとはこういう作品のことだろう。原作もまだ続いている作品だ。「探偵さん」の活躍を見届けるためにも,ぜひ続編を制作してもらいたい。
このアニメほんと好き。吸血鬼物語の伝統では首筋の吸血がエロティシズムなんだけど、その形式を“恋愛ぽさ”で崩してくるのがいい。それと並行して、濃密で美しい夜が朝日で徐々に“侵食”されていく様がいいですね。なんか全体にアンビヴァレントなんですよ。3枚目のカットとか特に。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年7月21日
#よふかしのうた pic.twitter.com/Zjb1mGKMd4
夜の公園はいいんですよ。子ども向けにビビッドに彩色された遊具が、グッと彩度を落として不思議な存在感になる。不気味というか妖しいというか寂しいというか。2枚目の構図とか最高。こういう色をちょいちょい入れてくるのがいいですね。最後の手つなぎのシーンのBGMもよかった。#よふかしのうた pic.twitter.com/R4r3PHj6Gj
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年8月25日
『よふかしのうた』11話。探偵さん登場によって新たに加わる沢城みゆきさんの声とブラウンの色味。聴覚と視覚に訴えるアニメならではの要素ですね。ココアのように甘くも苦くもある色彩は、同時にセピア色として“過去”を暗示する。ここから物語は“時の流れ”を語り始めます。#よふかしのうた pic.twitter.com/wOhgKT5tb3
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年9月15日
『よふかしのうた』最終話。ほんとに素晴らしいアニメでした。原作勢ですが、この辺りのシーンがここまでエモのピークになるとは思わなかった。芝居と構図と色彩の勝利。アニメ化されて本当によかった。もちろん続編も期待してますが、スタッフの皆様、ひとまずお疲れさまでした!
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年9月29日
#よふかしのうた pic.twitter.com/wn8YtKWse2
2位:『リコリス・リコイル』
錦木千束×井ノ上たきなのバディを中心としたキャラ(クター)の魅力に加え,第1話から最終話まで,一瞬たりとも視聴者を飽きさせない脚本力。おそらく近年のオリジナルアニメの中でも,最も大衆的な成功を収めた作品と言えるだろう。華やかなルックとは対照的に,後半の「人工心臓」をめぐる緊迫した物語が適度なシリアス味を加えつつ,最終話ではきっちりおどけてくるといった“オチ”も絶妙だった。過度な鬱展開をあえて避け,“ハッピーエンド”で終止符を打ったのも,制作者が現代の視聴者の感性を的確に捉えていた証拠だろう。SNSでの盛り上げ方も実にうまく,ネットでの考察祭りの規模で言えば,2011年の『魔法少女まどか☆マギカ』に匹敵するのではないだろうか。その意味でも稀有なオリジナルアニメとなったことは間違いない。
“鼓動のない心臓”は、千束が既に生と死の堺にいて、その存在が危うくはかないものであることを暗示していた。しかしラストの親密なカットで温かみを持たせたところはさすが。“百合”というよりは“姉妹”の関係を打ち出していましたね。1話のアイキャッチとの落差は…#リコリコ #リコリス・リコイル pic.twitter.com/t5WtO08dBC
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年7月30日
幼い子どもが大の男を優しく抱擁するというこのシーン。千束の〈聖性〉というキャラクター特性をよく表している。そして「救世主」という言葉を(敢えて)誤用した吉松シンジと、それを正しく理解した千束。願わくば、彼が彼女の抱擁の温もりを思い出しますように。#リコリコ #リコリス・リコイル pic.twitter.com/GPxb8I2Vwu
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年8月27日
本当に素晴らしいアニメでした。最終回はまさしくこの作品らしい結末。これが20年くらい前のアニメだったら、もっと違ったーひょっとしたら悲壮で陰鬱なー結末になったかもしれない。千束というキャラが象徴していた、いい意味での“陽気さ”がこの作品の本質であり、#リコリコ #リコリス・リコイル
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年9月24日
1位:『メイドインアビス 烈日の黄金郷』
「温かい闇」というヴエコの言葉がすべてを物語っていた『烈日の黄金郷』。これほど凄まじい「憧れ」と「絶望」を描き切ることができるアニメ制作環境は,おそらく日本以外ではあまり見られないだろう。特に第7話と第8話における「成れ果ての村」の呪われた成り立ち,および第10話から最終話までの,喰らわれつつ喰らい尽くすファプタの「烈日」の姿は,制作陣自身が「憧れ」という名の狂気に憑依されているのではないかと思わせる迫力だった。その一方で,第10話ではレグとファプタの〈涙〉のアニオリ演出で盛り上げるなど,エモーショナルな表現の繊細さも際立っていた。そして『烈日の黄金郷』で特筆すべきは,やはりファプタ≒イルミューイ役の久野美咲の演技だろう。イルミューイの苦悩とファプタの怨嗟を見事に演じ切った彼女は,文句なしに今年のMVPである。
いやーすごかった。アニメーションチームやはりすごいですね。原作読んでいても予想を遥かに上回る画を見せてくれる。もうちょっと暗い世界を想像してたけど、これが正しい光量なんだろうと思わせる説得力がある。通約不可能な価値観の世界が見事なアニメーションになってると思います。
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年7月13日
#miabyss pic.twitter.com/1Ifqy636Ig
成れ果て村に関しては彩色担当の方グッジョブとしか言いようがない。原作の印象よりも明るいと思うんですけど、絶妙な按配で彩度を落としてあるので情報過多になってない。色彩情報の交通整理ができている。しかもこんな色ちょっと思いつかんよなぁという独創性もある。#miabyss #メイドインアビス pic.twitter.com/9Uoue9TQdV
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年7月27日
凄まじかった。今回は久野美咲さんとケビン・ペンキンさんの圧倒的な力量に感服。僕は原作勢ですが、今回の音響・音楽面の演出にはとんでもなく心を揺さぶられました。そしてラストの「不気味に微笑む神がかり」と「戦慄する母」の対比。これぞ『メイドインアビス』。#miabyss #メイドインアビス pic.twitter.com/7FSnbwWVkk
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年8月17日
今回も素晴らしかった。他者の「欲望」を搾取することで生まれた秩序を、より強い「欲望」が破壊する。アビスの内部に内部/外部という場が生じているのも面白い。それと「成れ果ての村」の最大の特徴は、まるで散文詩のようなヴエコのモノローグですね。#miabyss #メイドインアビス pic.twitter.com/r6gEBu3ZMV
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年8月24日
『メイドインアビス』10話。とてもとてもとても素晴らしかった。まずファプタとレグの回想を涙でつないだ演出。これにはやられた。機械的にフラッシュバックを入れるのではなく、エモを加味してきたわけですね。さすがメイアビアニメ班!#miabyss#メイドインアビス pic.twitter.com/bgCF6pHuR3
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年9月7日
『メイドインアビス』最終話。とてもとてもとても素晴らしい物語でした。ヴエコとイルミューイの魂は、ファプタの手によって永遠に一緒になる。改めて、この村=イルミューイの優しいピンク色が意義深いものだったことがわかるカットでした。「温かい闇」の色は、#miabyss #メイドインアビス pic.twitter.com/vbIKtrkpHq
— 🐾オフレット🐾 (@alter_Ego_3_02) 2022年9月28日
● その他の鑑賞済み作品(50音順)
『Engage Kiss』『RWBY』『ユーレイデコ』『シャドーハウス』『プリマドール』
以上,当ブログが注目した2022年夏アニメ7作品を挙げた。
実は1位の『メイドインアビス』と2位の『リコリス・リコイル』の順位は大いに悩んだ。中盤の話数まではほぼタイの評価をしており,最終的にはオリジナルである『リコリス・リコイル』に軍配が上がるだろうという心算だったのだが,上述の通り,『メイドインアビス』の第7話以降の演出が並外れてよかったために,最終的にこの順になった次第である。
次の秋クールは,当ブログが推すオリジナル作品は少ないが,続編や原作付き作品に期待大のものが多い。2022年秋アニメのおすすめに関しては以下の記事を参照頂きたい。