- 2024年 春アニメ振返り
- ①『ATRI -My Dear Moments-』
- ②『異世界スーサイド・スクワッド』(オリジナル)
- ③『【推しの子】第2期』
- ④『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』
- ⑤『しかのこのこのここしたんたん』
- ⑥『小市民シリーズ』
- ⑦『先輩はおとこのこ』
- ⑧『天穂のサクナヒメ』
- ⑨『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』
- ⑩『菜なれ花なれ』(オリジナル)
- ⑪『逃げ上手の若君』
- ⑫『負けヒロインが多すぎる!』
- ⑬『真夜中ぱんチ』(オリジナル)
- ⑭『<物語>シリーズ オフ&モンスターシーズン』
- 2024年夏アニメのイチオシは…
2024年 春アニメ振返り
今クールの作品でとりわけ高いクオリティを示している作品は,『終末トレインどこへいく?』『ダンジョン飯』『響け!ユーフォニアム 3』の3作品だ。
水島努監督『終末トレインどこへいく?』は「2024年 春アニメは何を観る?」の記事でイチオシとしてピックアップした作品だ。その奇想天外な世界観と物語は,当初の期待の遥か上を行くインパクトを放っている。オリジナルアニメ推しの当ブログとしては,こうした作品に出会えることはこの上なく嬉しい。
九井諒子原作/宮島善博監督『ダンジョン飯』は「2024年 冬アニメランキング」でも2位としてピックアップした作品だ。「飯」という設定の日常感と緊張感のある作画。アニメ化におけるTRIGGERの貢献度は極めて高いと言えるだろう。本記事執筆時点ですでに第1期最終回の放送を終え,すでに第2期制作の報が出ている。今後の展開も期待しよう。
武田綾乃原作/石原立也監督『響け!ユーフォニアム 3』は,3年生のコンクール出場,久美子と真由の関係性,久美子の将来への不安といった,これまでのシリーズにはなかった緊迫感を卓越した脚本と演出で映像化した傑作だ。第1期・第2期以上に“画で見せる”という意志を強く感じさせる見事なアニメーションである。京都アニメーションの完全復活を宣言した作品とも言えるだろう。
この他,OPからEDまで“昭和感”をたっぷり盛り込んだオリジナルアニメ『アストロノオト』,迫力ある怪獣作画とスタイリッシュなアクションによって原作の魅力をブーストした『怪獣8号』,ufotableの的確なアニオリによって来たるべき最終決戦の有り様を予感させた『鬼滅の刃 柱稽古編』,これまで以上にエネルギッシュなギャグ作画で視聴者を飽きさせない『この素晴らしい世界に祝福を! 3』なども注目に値する。
2024年 春アニメの最終的なランキングは,全作品の最終話放送終了後に掲載する予定である。
では今回も2024年夏アニメのラインナップの中から,五十音順に注目作をピックアップしていこう。各作品タイトルの下に最新PVなどのリンクを貼ってあるので,ぜひご覧になりながら本記事をお読みいただきたい。なお,オリジナルアニメ(マンガ,ラノベ,ゲーム等の原作がない作品)のタイトルの末尾には「(オリジナル)」と付記してある。
①『ATRI -My Dear Moments-』
【スタッフ】
原作:『ATRI -My Dear Moments-』(ANIPLEX.EXE)/監督:加藤誠/シリーズ構成・脚本:花田十輝/ストーリー原案:紺野アスタ/キャラクター原案:ゆさの,基4/キャラクターデザイン・総作画監督:サトウミチオ/美術監督:内藤健/美術設定:滝口勝久/色彩設計:篠原真理子/CGディレクター:井口光隆/撮影監督:加藤友宜/編集:右山章太/音響監督:明田川仁/音楽:松本文紀/アニメーション制作:TROYCA
斑鳩夏生:小野賢章/アトリ:赤尾ひかる/神白水菜萌:髙橋ミナミ/野島竜司:細谷佳正/キャサリン:日笠陽子/名波凜々花:春野杏
原作は2020年にANIPLEX.EXE(ANIPLEXのノベルゲームブランド)より発売された同名ノベルゲーム。舞台は原因不明の海面上昇によって地表の大部分が海に沈んだ近未来。事故で片足を失った主人公が,祖母の遺産が眠るという海底の倉庫で「アトリ」という名のロボットを見つけるという話。
②『異世界スーサイド・スクワッド』(オリジナル)
【スタッフ】
監督:長田絵里/シリーズ構成・脚本:長月達平,梅原英司/キャラクターデザイン原案:天野明/キャラクターデザイン:細田直人/音楽:末廣健一郎/オープニングテーマ:布袋寅泰/エンディングテーマ:Mori Calliope/アニメーション制作:WIT STUDIO/プロデュース:Warner Bros. Japan
【キャスト】
ハーレイ・クイン:永瀬アンナ/ジョーカー:梅原裕一郎/デッドショット:山口令悟/ピースメイカー:子安武人/クレイフェイス:福山潤/キング・シャーク:木村昴/リック・フラッグ:八代拓/カタナ:安済知佳/アマンダ・ウォラー:くじら/フィオネ:上田麗奈/アルドラ:能登麻美子/セシル:福島潤
【コメント】
DCコミックス作品に登場する架空の組織「スーサイド・スクワット」を“原作”としつつ,日本の異世界モノの設定に鋳直した新作オリジナル作品。要はアメコミ×異世界モノのミックスということだが,果たして魅力的な化学反応を起こすか。
監督は『呪術廻戦 第1期』(2020-2021年)で絵コンテ・演出・総作監などを担当した長田絵里。今回が初監督となる。脚本は『Re:ゼロから始める異世界生活』(2014年-)原作の長月達平と梅原英司。長月と梅原はオリジナルアニメ『Vivy -Fluorite Eye's Song-』(2021年)でもタッグを組んでいる。WIT STUDIO制作というのも安心感がある。布袋寅泰の手がけるOP主題歌も楽しみだ。
③『【推しの子】第2期』
【スタッフ】
原作:赤坂アカ×横槍メンゴ/監督:平牧大輔/助監督:猫富ちゃお,仁科くにやす/シリーズ構成:田中仁/キャラクターデザイン:平山寛菜/サブキャラクターデザイン:澤井駿,渡部里美,横山穂乃花/総作画監督:平山寛菜,渡部里美,横山穂乃花,稲手遥香,堅物ケビン雄太/アクションアニメーター:あもーじー/メインアニメーター:早川麻美,水野公彰,室賀彩花/美術監督:宇佐美哲也(スタジオイースター)/美術設定:水本浩太(スタジオイースター)/色彩設計:石黒けい/撮影監督:桒野貴文/編集:坪根健太郎/音楽:伊賀拓郎/音響監督:高寺たけし/音響効果:川田清貴/アニメーション制作:動画工房
【キャスト】
アクア:大塚剛央/ルビー:伊駒ゆりえ/有馬かな:潘めぐみ/黒川あかね:石見舞菜香/MEMちょ:大久保瑠美/姫川大輝:内山昂輝/鳴嶋メルト:前田誠二/鴨志田朔夜:小林裕介/鮫島アビ子:佐倉綾音/吉祥寺頼子:伊藤静/雷田澄彰:鈴村健一/GOA:小野大輔/金田一敏郎:志村知幸/アイ:高橋李依
【コメント】
ビッグタイトルの続編。詳しい説明は不要だろう。2.5次元舞台「東京ブレイド」を中心とした物語とあって,その界隈のファンをも取り込みつつ,夏クールの話題作となることは間違いないだろう。スタッフに多少の異動はあるが,信頼のおける座組である。
④『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』
【スタッフ】
原作:藤原ここあ/監督:大橋明代/シリーズ構成・脚本:綾奈ゆにこ/キャラクターデザイン:飯塚晴子/音楽:MAYUKO/アニメーション制作:ボンズ
【キャスト】
ミラ:小野友樹/深森白夜:中原麻衣/御使い(猫):三木眞一郎/篝火花:伊瀬茉莉也/御使い(鳥):緑川光/フォーマルハウト:鈴村健一/ベラトリックス:川澄綾子/アルキオネ:下野紘/スピカ:東山奈央/サダルスウド:山崎たくみ/ベテルギウス:土師孝也
【コメント】
原作は藤原ここあ(2015年他界)の同名マンガ。悪の組織の参謀が魔法少女に一目惚れするというラブコメ作品だ。PVでは非常に美麗な変身バンクが披露されており,作画面でも期待できそうだ。
監督は『海辺のエトランゼ』(2020年) の大橋明代。『海辺のエトランゼ』ではきわめて繊細な演出術を見せただけに,本作も自ずと期待が高まる。『ホリミヤ』(2021年)などの飯塚晴子がキャラクターデザインを担当するのもポイントだ。
⑤『しかのこのこのここしたんたん』
【スタッフ】
原作:おしおしお/監督:太田雅彦/シリーズ構成・脚本:あおしまたかし/キャラクターデザイン:辻村歩/音楽:三澤康広/アニメーション制作:WIT STUDIO/製作:日野南高校シカ部
【キャスト】
鹿乃子のこ:潘めぐみ/虎視虎子:藤田咲/虎視餡子:田辺留依/馬車芽めめ:和泉風花/猫山田根子:久保ユリカ/狸小路絹:土屋李央/燕谷千春:赤﨑千夏/ナレーション:鳥海浩輔
【コメント】
原作はおしおしおの同名マンガ。元ヤンの主人公がシカのツノを生やした少女と出会うという「ガール・ミーツ・シカ」ストーリー。PVを見るだけでもこの上なくシュールなギャグテイストが伺える。夏クール最有望株のギャグアニメとなるだろう。
監督は『ゆるゆり』(2011年)『干物妹!うまるちゃん』(2015年)『うちのメイドがウザすぎる!』(2018年)『おにぱん!』(2022年)など,コメディ作品で定評のある太田雅彦,脚本は太田の全監督作品で脚本を手がけてきたあおしまたかし,制作はWIT STUDIOである。文句なしの座組だ。
⑥『小市民シリーズ』
【スタッフ】
原作:米澤穂信/監督:神戸守/シリーズ構成:大野敏哉/キャラクターデザイン:斎藤敦史/サブキャラクターデザイン・総作画監督:具志堅眞由/色彩設計:秋元由紀/美術監督:伊藤聖(スタジオARA)/美術設定:青木智由紀,イノセユキエ/撮影監督:塩川智幸(T2studio)/CGディレクター:越田祐史/編集:松原理恵/音楽:小畑貴裕/音響監督:清水勝則/音響効果:八十正太/アニメーションプロデューサー:渡部正和/ラインプロデューサー:荒尾匠/制作会社:ラパントラック
【キャスト】
小鳩常悟朗:梅田修一朗/小佐内ゆき:羊宮妃那/堂島健吾:古川慎
【コメント】
原作は米澤穂信の小説『〈小市民〉シリーズ』。米澤作品で高校生推理モノということで,京都アニメーション制作の『氷菓』(2012年)と多かれ少なかれ比較されることが予想されるが,PVを観るに,“劇場版クオリティ”と言えるほどの作画・演出が期待できそうだ。『僕の心のヤバイやつ』(2023年)などで注目を集めた羊宮妃那のキャスティングも要注目だ。
監督は『約束のネバーランド』(2019年)などの神戸守,脚本は同作品を手がけた大野敏哉。キャラクターデザインは京都アニメーション出身の斎藤敦史(『氷菓』には参加していない)が手がける。『さらざんまい』(2019年)『アンデッドガール・マーダーファルス』(2023年)などのラパントラックが制作というのも安心感がある。
⑦『先輩はおとこのこ』
【スタッフ】
原作:ぽむ/監督:柳伸亮/シリーズ構成:冨田頼子/キャラクターデザイン:新海翔斗/プロップデザイン:北山景子/美術監督:安田ゆかり(オリーブ)/美術設定:秋山健太郎(スタジオPablo)/色彩設計:鈴木ようこ/撮影監督:上條智也/編集:新沼奈美(グラフィニカ)/3D/CG:齋藤威志(WIRED)/音響監督:本山哲/音響制作:ビットグルーヴプロモーション/音楽:橋本由香利/アニメーション制作:project No.9
【キャスト】
花岡まこと:梅田修一朗/蒼井咲:関根明良/大我竜二:内田雄馬/花岡美香:中原麻衣/大我小夏:前田佳織里
【コメント】
原作はぽむの同名マンガ。「第5回アニメ化してほしいマンガランキング」(2022年)で1位を受賞している。可愛いものが大好きな男の娘・まこと,まことに告白をする咲,まことに特別な感情を抱く竜二の奇妙な関係を描いた学園物語。単なるコメディというよりは,3人の繊細な心理を描く良作となりそうだ。
監督は『りゅうおうのおしごと!』(2018年)『弱キャラ友崎くん』(2021年)などの柳伸亮が務める。
⑧『天穂のサクナヒメ』
【スタッフ】
原作:えーでるわいす/監督:吉原正行/シリーズ構成・脚本:花田十輝/副監督:藤井康雄/キャラクター原案:村山竜大/キャラクターデザイン:藤嶋未央/総作画監督:水野紗世/美術監督:神山瑤子/色彩設計:中野尚美/3D監督:市川元成/撮影監督:並木智/編集:髙橋歩/音響監督:明田川仁/音楽:藤澤慶昌/制作統括:堀川憲司/ラインプロデューサー:相馬紹二,伊藤翔太郎/アニメーション制作:P.A.WORKS
【キャスト】
サクナヒメ:大空直美/ココロワヒメ:衣川里佳/タマ爺:鳴海崇志/田右衛門:矢野龍太/ミルテ:久保田ひかり/きんた:前田聡馬/ゆい:古賀葵/かいまる:桃河りか/カムヒツキ:小日向みわ/アシグモ:各務立基/石丸:亀山雄慈
【コメント】
原作はえーでるわいすが開発した同名ゲーム。本格的な稲作シミュレーションが体験できるゲームとして話題になった作品だ。この作品の目玉と言えば,サクナヒメを演じる大空直美の演技だろう。PVからはすでに彼女の元気いっぱいの演技が伺える。この一点だけでも観る価値のあるアニメだ。
監督は『有頂天家族』(2013年)『駒田蒸留所へようこそ』(2023年)など,本作と同じP.A.WORKS制作作品を手がけた吉原正行。そして脚本は花田十輝である。期待しないわけにいかない。
⑨『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』
【スタッフ】
原作:燦々SUN/原作イラスト:ももこ/監督・シリーズ構成:伊藤良太/キャラクターデザイン・総作画監督:室田雄平/美術監督:若林里紗/色彩設計:伊藤裕香/撮影監督:杉浦誠一/編集:木村佳史子(MADBOX)/音響監督:高寺たけし/音楽:堤博明/制作プロデューサー:小林涼/アニメーション制作:動画工房
【キャスト】
久世政近:天﨑滉平/アリサ・ミハイロヴナ・九条:上坂すみれ/周防有希:丸岡和佳奈/マリヤ・ミハイロヴナ・九条:藤井ゆきよ/君嶋綾乃:会沢紗弥/更科茅咲:河瀬茉希/剣崎統也:石川界人/谷山沙也加:長谷川育美/宮前乃々亜:青山吉能/丸山毅:酒井広大/清宮光瑠:市川太一
【コメント】
原作は燦々SUNの同名小説。タイトルの通り,ヒロインのアリサ・ミハイロヴナ・九条がロシア語でデレるという話。大学でロシア語を専攻した経歴を持つ上坂すみれの演技に要注目だ。また,人気イラストレーターももこの煌びやかな原案がアニメーションでどこまで再現されるかも見どころである。
監督は『先輩がうざい後輩の話』(2021年)『可愛いだけじゃない式守さん』(2022年)などの伊藤良太。制作はこの両作品の他,『【推しの子】』(2023年)『夜のクラゲは泳げない』(2024年)などの動画工房である。
⑩『菜なれ花なれ』(オリジナル)
【スタッフ】
監督・シリーズ構成:柿本広大/脚本:柿本広大,後藤みどり,綾奈ゆにこ/キャラクター原案:髙田友美/キャラクターデザイン・総作画監督:関口可奈味,三浦菜奈/色彩設計:中野尚美/美術監督:竹田悠介,垣界司,GKセールス/3D監督:鈴木晴輝/撮影監督:朝日康平/編集:梅津朋美(エディッツ)/音楽:谷ナオキ(HANO)/音響監督:伊藤巧/音響制作:HALF H・P STUDIO/音楽プロデュース:北川悠仁(ゆず)/劇伴・挿入歌音楽プロデューサー:木皿陽平(Stray Cats)/振付・チアリーディング監修:チアクリエーション/アニメーション制作:P.A.WORKS
【キャスト】
美空かなた:中川梨花/小父内涼葉:中島由貴/杏那・アヴェイロ:武田羅梨沙多胡/大谷穏花:石見舞菜香/谷崎詩音:佳原萌枝/海音寺恵深:伊藤美来/伊沢野苺:田所あずさ/生天目華:北原侑奈/神崎柊:逢田梨香子/櫛田雅:芹澤優
【コメント】
P.A.WORKSオリジナルアニメ。チアリーディングで全国制覇を目指す6人の女子高生の姿を描く。女性の活躍を描いた内容であることに加え,『花咲くいろは』(2011年)『SHIROBAKO』(2014年)などの関口可奈味がキャラクターデザインを手がけていることもあり,いかにもP.A.らしい作品と言える。
監督は『BanG Dream! 2nd Season』(2019年)などの柿本広大が務める。
⑪『逃げ上手の若君』
【スタッフ】
原作:松井優征/監督:山﨑雄太/シリーズ構成:冨田頼子/キャラクターデザイン・総作画監督:西谷泰史/副監督:川上雄介/プロップデザイン:よごいぬ/サブキャラクターデザイン:高橋沙妃/色彩設計:中島和子/美術監督:小島あゆみ/美術設定:taracod,takao/建築考証:鴎利一/タイポグラフィ:濱祐斗/特殊効果:入佐芽詠美/撮影監督:佐久間悠也/CGディレクター:有沢包三,宮地克明/編集:平木大輔/音響監督:藤田亜紀子/音楽:GEMBI,立山秋航/音響効果:三井友和/制作:CloverWorks
【キャスト】
北条時行:結川あさき/雫:矢野妃菜喜/弧次郎:日野まり/亜也子:鈴代紗弓/風間玄蕃:悠木碧/吹雪:戸谷菊之介/諏訪頼重:中村悠一
【コメント】
原作は松井優征の同名マンガ。北条時行を主人公とした歴史ものということで,松井の前作『暗殺教室』(2012-2016年)とはかなり異なるテイストの作品だ。そして何より注目すべきはPVから伺える高い作画クオリティだ。「逃げ上手」がテーマということもあって,主人公・時行の飛翔・疾走の作画に注力されている印象がある。
監督は“作画アニメ”として語り継がれる『ワンダーエッグ・プライオリティ』(2021年)で副監督を務めた山﨑雄太。それだけでも期待感が高まるが,他にも川上雄介や高橋沙妃など両作品に名を連ねるスタッフが数名いる。制作も共にCloverWorksということもあり,かなり“作画寄り”の作品となることが予想される。アニメ『平家物語』(2021年)大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)と合わせて“平安・中世三部作”として観るのも一興かもしれない。
⑫『負けヒロインが多すぎる!』
【スタッフ】
原作:雨森たきび/キャラクター原案:いみぎむる/監督:北村翔太郎/シリーズ構成:横谷昌宏/キャラクターデザイン:川上哲也(A-1 Pictures)/サブキャラクターデザイン:齋藤悠(A-1 Pictures)/メインアニメーター:三浦琢光(A-1 Pictures),竹田茜(A-1 Pictures),原島未来(A-1 Pictures)/ビジュアルボード:大谷藍生,有原慧悟/プロップデザイン:木藤貴之/色彩設計:村上彩夏(A-1 Pictures)/美術設定:平義樹弥(A-1 Pictures)/美術監督:畠山佑貴/美術ボード協力:滕翀/美術:草薙/3D監督:栗林裕紀/撮影監督:宮脇洋平(A-1 Pictures)/音楽:うたたね歌菜/音響監督:吉田光平/音響効果:長谷川卓也/制作:A-1 Pictures
【キャスト】
温水和彦:梅田修一朗/八奈見杏菜:遠野ひかる/焼塩檸檬:若山詩音/小鞠知花:寺澤百花/温水佳樹:田中美海/月之木古都:種﨑敦美/玉木慎太郎:小林裕介
【コメント】
原作は雨森たきびの同名小説。「小学館ライトノベル大賞 ガガガ賞」受賞作とあって,物語面ではすでに評価はある程度定まっている。
監督は『かぐや様は告らせたい -ファーストキッスは終わらない-』(2023年)などに参加経歴のある北村翔太郎。今作が初監督と思われる。『リコリス・リコイル』(2022年)のキャラクターデザインを担当したいみぎむるの原案も楽しみだ。制作はA-1 Pictures。ルック面でも懸念はない。
⑬『真夜中ぱんチ』(オリジナル)
【スタッフ】
原作:動画投稿少女/監督:本間修/シリーズ構成:白坂英晃/キャラクター原案:ことぶきつかさ/キャラクターデザイン:有間涼太/総作画監督:有間涼太,さとう沙名栄,合田真さ美/メインアニメーター:鍋田香代子/美術設定:藤井祐太/美術監督:前田有紀/色彩設計:江口亜紗美/撮影監督:児玉純也/2Dworks:吉垣誠/3D監督:小川耕平/編集:髙橋歩/音楽:tepe,樂/音楽制作:ハートカンパニー/音響監督:飯田里樹/音響効果:小山恭正/録音調整:安齋歩/音響制作:dugout/アニメーション制作:P.A.WORKS/製作:「真夜中ぱんチ」製作委員会
【キャスト】
真咲:長谷川育美/りぶ:ファイルーズあい/苺子:伊藤ゆいな/譜風:羊宮妃那/十景:上田瞳/ゆき:茅野愛衣/橘花:安済知佳/乙美:近藤玲奈
【コメント】
P.A.WORKSオリジナルアニメPart2。動画投稿者として成功したい少女・真咲と,そんな彼女の前に突如現れたヴァンパイア・りぶがタッグを組むという物語。
注目すべきは,あの『パリピ孔明』(2022年)を手がけた本間修が監督を務める点だ。考えてみれば,りぶ=孔明,真咲=英子という構図も似ていなくもない。また,同じP.A.WORKSオリジナルとは言え,先述の『菜なれ花なれ』とはまったく方向性の異なる作品のため,P.A.WORKSの“2つの顔”を楽しめるクールになりそうだ。
⑭『<物語>シリーズ オフ&モンスターシーズン』
【スタッフ】
原作:西尾維新/キャラクター原案:VOFAN/総監督:新房昭之/監督:吉澤翠/シリーズ構成:東富耶子,新房昭之/脚本:大嶋実句/キャラクターデザイン・総作画監督:渡辺明夫/総作画監督:杉山延寬,宮井加奈/美術監督:飯島寿治/色彩設計:渡辺康子/CG監督:島久登/撮影監督:橋本日和,石川瑞帆/編集:松原理恵/音響監督:鶴岡陽太/音楽:神前暁/アニメーション制作:シャフト
【キャスト】
戦場ヶ原ひたぎ:斎藤千和/八九寺真宵:加藤英美里/神原駿河:沢城みゆき/千石撫子:花澤香菜/阿良々木月火:井口裕香/忍野扇:水橋かおり/老倉育:井上麻里奈/斧乃木余接:早見沙織/忍野忍:坂本真綾
【コメント】
「物語」は終わらない。終わるべきではない。常に「再始動」の可能性を孕んだ「物語」。そういう作品が世の中にはあるのだ。
2024年夏アニメのイチオシは…
2024年夏アニメの期待作として,今回は14作品をピックアップした。
今回のイチオシ作品として『逃げ上手の若君』を挙げる。山﨑雄太監督には,先輩・若林信監督の『ワンダーエッグ・プライオリティ』以上のものを提示してくることを期待したい。
次点として,太田雅彦監督『しかのこのこのここしたんたん』,神戸守監督『小市民シリーズ』,本間修監督『真夜中ぱんチ』にも注目したい。特にオリジナルアニメ推しの当ブログとしては,『真夜中ぱんチ』には是非とも成功してもらいたい。
以上,2024年夏アニメ視聴の参考にして頂ければ幸いである。