アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2024年 夏アニメランキング[おすすめアニメ]

*この記事にネタバレはありませんが,各作品の内容に部分的に言及しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。

夏の気配がしつこく残る中,2024年夏アニメすべての作品が放送を終了した。今回の記事では,恒例通り2024年夏アニメの中から,当ブログが特にクオリティが高いと判断した5作品をランキング形式で振り返ってみたい。コメントの後には,作品視聴時のXのポストをいくつか掲載してある。今回は「中間評価」の記事でピックアップ作品と異同はない。なお,この記事は「一定の水準を満たした作品を挙げる」ことを主旨としているため,ピックアップ数は毎回異なることをお断りしておく。

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5位:『先輩はおとこのこ』

senpaiha-otokonoko.com

【コメント】
主人公らの心理に寄り添った,素朴な温かみのある作品だ。最終話で登場したまことの祖父は,彼に己の価値観を貫く意志を授け,そして彼自らが祖父にとっての“未来”となった。“まなざしの地獄”から解放された彼は,新たな光のもとで世界をまなざし返すのだろうか。その時,彼の目に竜二という無二の存在はどのように映るのか。また彼らの目にまことはどのように映るだろうか。続編として劇場版『映画 先輩はおとこのこ あめのち晴れ』の公開(2025年2月14日)が決定している。


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4位:『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』

mahoaku-anime.com

【コメント】
15分という短尺のアニメながら,“可愛さ”と“世知辛さ”と“エグさ”を絶妙な割合で配合した秀作。作画・芝居・色彩どの点においても,大橋明代監督の高いセンスを感じさせる作品だった。飯塚晴子によるキャラクターデザインも美麗。各キャラの魅力を十二分に伝えていた。さらに小野友樹中原麻衣三木眞一郎を中心とする声優陣の演技も耳心地良く,総じて目と耳を喜ばせるアニメーションに仕上がっていたと言える。今のところ続編の報はないが,ぜひ期待したいところである。

 

3位:『小市民シリーズ』

shoshimin-anime.com

【コメント】
小市民として世間に紛れ込むべく「互恵関係」にあった小鳩小佐内。友達でも恋人でもないその別れが,これほどまでに大きな喪失感を伴うものとは。アニメ制作班と声優陣が2人の関係性の描写に注力したからこそ,ここまで後を引く最終話となったのだろう。“日常を素材にした非日常”という形の演出が優れていたことはもはや言うまでもないが,やはり主役2人の立ち位置がきっちり描き込まれていたことが,本作に人間ドラマとしての品格を与えたことは間違いない。少々後味の悪い結末を迎えた本作だが,幸いと続編制作と放送予定(2025年4月)の報がすでに出ている。この2人の「互恵関係」の行く末を最後まで見届けよう。


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2位:『負けヒロインが多すぎる!』

makeine-anime.com

【コメント】
“ラブ”
コメなのにさほど恋愛恋愛しているわけではない。ラブ“コメ”なのに腹を抱えて笑うほどでもない。しかし一つのアニメ作品として完成されている。これはひとえに,作画・演出・声優陣の演技によるキャラクター作り,およびロケーションやライティングによる“場”の作りの妙によるものだ。いみぎむる原案・川上哲也デザインのキャラは,賑やかで生き生きとしたラブコメアニメらしい造形だが,学校の校内を中心とした舞台に置かれると不思議な実在感を醸し出す。アニメという媒体の面白さを改めて実感させてくれる作品だった。OPとEDのアニメーションも上々。OPで本編とのコントラストを狙いつつ,EDでヒロインたちの心情に寄り添うという,本編とは違った形で物語を語る作りになっていた。是非とも続編を期待したい作品である。

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1位:『逃げ上手の若君』

『逃げ上手の若君』第一回「5月22日」より引用 ©︎松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会

nigewaka.run

【コメント】
「2024年 夏アニメは何を観る?」の記事でイチオシとしてピックアップした作品。

日本史ベースのアニメということでは,近年では山田尚子監督のTVアニメ『平家物語』(2022年)や湯浅政明監督の劇場アニメ『犬王』(2022年)などがあった。これらの作品でも史実の中に独自のファンタジー(非現実性)を導入していたわけだが,『逃げ上手の若君』は一際ユニークな“偽史”を仮構している。それぞれの歴史上の人物は,史実をベースにしながらも強烈に戯画化され,主人公・北条時行に襲いかかる敵役ですら,極めて魅力的なキャラクターへとメタモルフォーゼされている。そうしたカリカチュアの世界をもとにしつつ,「逃げ=生きる価値」というポジティブなテーマをしっかりと伝えているのも好感度が高い。本来の意味でのコメディ(喜劇)の風格を備えた作品と言える。

アニメーションとしてのクオリティも極めて高い。ある程度各話演出の采配に委ねた演出方針をとっていると見られ,適度なアニオリ演出を盛り込みつつ,アニメ作品としての面白さを追求している。作画・芝居・色彩など,毎話飽きさせない作り込みがなされており,大変見応えがあった。歴史のアニメ化作品の一つの“解”を提示したと言えるだろう。この作品も現在のところ続編制作の報はないが,是非とも期待したい。

→その後,2024年10月7日0時に第二期の制作決定が発表された。続報を待とう。

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● その他の鑑賞済み作品(50音順)
『ATRI -My Dear Moments-』『異世界スーサイド・スクワッド』『【推しの子】』『しかのこのこのここしたんたん』『天穂のサクナヒメ』『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』『菜なれ花なれ』『真夜中ぱんチ』

 

以上,当ブログが注目した2024年夏アニメ5作品を紹介した。

今期は『異世界スーサイド・スクワッド』『真夜中ぱんチ』など,オリジナル作品の中にもそれなりに健闘したものがあったのだが,今ひとつパンチに欠けた。しかしその代わりに,『逃げ上手の若君』のように,原作付きでありながら独自路線を行く作品が観られたことはたいへん喜ばしい。原作とアニメの関係はしばしばデリケートな問題も孕むが,この作品のように大胆な解釈を施した作品が今後も生まれて欲しいものである。

2024年秋アニメのおすすめに関しては以下の記事を参照頂きたい。

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