*この記事にネタバレはありませんが,各作品の現時点までの話数の内容に言及しています。未見の作品を先入観のない状態で鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。
つい先日まで感じられた夏の残り香もすっかり影を潜めた今日この頃,2024年秋アニメもすでに後半の話数に差し掛かり始めている。皆さんの評価も定まりつつあるタイミングで,当ブログ独自の観点から2024年秋アニメ注目の作品を振り返っておこう。これまで通り五十音順に(ランキングではないことに注意)注目作品をいくつか取り上げる。
なお「2024年 秋アニメは何を観る?」の記事でピックアップした作品は,タイトルを茶色にしてある。
- 1.『カミエラビ GOD.app シーズン2 完結編』(オリジナル)
- 2.『ダンダダン』
- 3.『チ。-地球の運動について-』
- 4.『ネガポジアングラー』(オリジナル)
- 5.『魔王2099』
- 6.『メカウデ』(オリジナル)
- 7.『Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season』
1.『カミエラビ GOD.app シーズン2 完結編』(オリジナル)
【コメント】
主人公不在のまま後半の話数を迎えた本作。世界の秘密も徐々に開示されつつあるが,「復活」の兆しは未だ見えない。しかしこの“見えなさ”こそがオリジナルアニメの醍醐味だろう。ゴリゴリのSF設定でありながら,徒に晦渋な展開に陥ることもなく,登場人物たちの感情を丁寧に描いている点も好感が持てる。強烈に独自路線を行った3DCGキャラデザも第2クールを迎えると愛着が湧いてくる。ユニークかつ“見やすい”オリジナルアニメとして高く評価できそうだ。
2.『ダンダダン』
【コメント】
原作の持つマンガとしての面白さの上にアニメとしての面白さが加わり,魅力が倍増した傑作。とりわけサイエンスSARUのユニークなアニメーション表現は,この作品の“オカルト風味”をよく引き出している。一方で,シリアスなエピソードに対してはしっかりシリアスに演出している点も好感度が高い。特に先日放送されたばかりの第7話は,この作品の評価を決定づけたとすら言えるだろう。キャストの若山詩音,花江夏樹,水樹奈々,佐倉綾音,田中真弓らの演技も,それぞれの個性の輪郭がはっきりと打ち出されていて聞き応えがある。
3.『チ。-地球の運動について-』
【コメント】
地と知と血をめぐるこの物語は,それだけですでにエキサイティングであり,アブノーマルであり,グロテスクである。制作会社マッドハウスのアニメーションは,そうした本作の魅力を原則として過不足なく伝えている。しかし夜闇に輝く満天の星の描写などは,アニメーションという媒体の特性を活かして大胆に“盛って”いる。歌舞伎の“見得”のような見せ場をよく心得た画作りだと言えるだろう。さて,アニメはこのまま原作に忠実なまま進むのか,あるいはどこかで何らかの改編をするのか,改編があるとすればどの程度か。そんなことも気になる作品だ。
4.『ネガポジアングラー』(オリジナル)
【コメント】
ちょっと押し付けがましいが,間違いなく優しい面々の,優しい物語。おばあちゃんの煮付けを頂いているような,昭和的安心感のあるアニメだ。あるいは『寅さん』のような,『釣りバカ日誌』のような,少し前の時代の“いいところ”を寄り集めたような作品と言ってもいい。それでいて,演出や芝居は非常に丁寧に施されており,熟練の技を見せられているような感覚をも覚える。『ダンダダン』のような派手な作りのアニメがある一方で,本作のような,地味ではあるが確かな存在感を持った作品を楽しめるのは,アニメファンとして喜ばしいことだ。
5.『魔王2099』
【コメント】
魔王の“dethrone”,動画配信者,サイバーパンク。一つひとつは珍しくないモチーフだが,巧みなストーリーテリングとキャラメイクによって,ユニークな物語を生み出している。特に魔王のキャラクターが面白く,“魔王による支配”という状況を“悪”から“正義”へと鮮やかに転じる小気味よさがよい。また,ボーイミーツガールとセカイ系のアレンジ展開(セカイと彼女の両方を救う)がそれとなく仕込まれているのも面白い。「何を観る?」の記事ではピックアップしていないが,要注目の作品だ。
6.『メカウデ』(オリジナル)
【コメント】
一見するとキッズアニメのような趣のアニメだが,その実,程よく重曹的な物語構成で飽きさせない作りだ。作画にもTRIGGER作品のようなキレとスピード感があり,たいへん見応えのあるアニメーションだ。また,ギャグパートのテンポ感がとても小気味よく,オカモト監督のセンスのよさが窺える。オリジナルアニメということで,最終話まで予断を許さないが,現時点では十分満足感のある仕上がりと言える。
7.『Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season』
【コメント】
今期より,監督を始め多くの制作スタッフが変更となった本作。『リゼロ』らしさはそのままに,作画面でのクオリティはかなり向上したと言える。特に佐川遥によるキャラクターデザインは極めて美麗で,特に各キャラクターの表情作画は,第3期「襲撃編」にマッチした緊張感を放っている。脚本のテンポ感も非常によく,絶望と希望が目まぐるしく交代する展開は,毎話“体感秒”を感じさせてくれる。長期展開が予想される作品なだけに,シリーズを追うごとに“進化”していく様を見るのも楽しい。
* 9話以降の「反撃編」は2025年2月からの放送のため,今クールでは暫定的な評価とする(最終的な評価は全話数放送後に行う)。
以上,「アニ録ブログ」が注目する2024年秋アニメ7作品を挙げた。
今回は期待のオリジナル作品として,『カミエラビ GOD.app シーズン2 完結編』『ネガポジアングラー』『メカウデ』の3作品を挙げた。ゴリゴリのSFアニメ,ノスタルジックな趣味アニメ,スタイリッシュなアクションアニメと,今クールのオリジナル作品はいかにも日本アニメらしい多様な魅力を披露している。コンテンツの“強度”としては『ダンダダン』のような原作付きには及ばないかもしれないが,日本の多彩なアニメ文化を改めて感じさせてくれるラインナップとして,最終話まで応援したいと思う。
最終的なランキング記事は,全作品の放映終了後に掲載する予定である。