アニ録ブログ

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2024年 秋アニメOP・EDランキング[おすすめアニメ]

*この記事にネタバレはありませんが,各作品の内容に部分的に言及しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。

『ダンダダン』OPアニメーションより引用 ©︎龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

今回の記事では,現在放送中の2024年秋アニメの中から特に優れたOP・EDを紹介する。タイトルの下にノンクレジット映像を引用してあるので,ぜひご覧になりながら記事をお読みいただきたい。なお,通常のランキング記事と同様,一定の水準に達した作品を取り上げる方針のため,ピックアップ数は毎回異なることをお断りしておく。

 

5位:『Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season』OP


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【コメント】
冒頭,水門都市プリステラを真上から捉えた画がタイトルバックとして登場する。この独特な円形のトポスが今回の舞台の中心となることを印象付けている。王選の陣営ごとにキャラクターを紹介していくというオーソドックスな作りだが,主題歌「Reweave」との合わせ方がとてもかっこいい。また佐川遥の手になるキャラクターデザインがとにかく美麗で,特に表情作画は惚れ惚れするほど素晴らしい。廃墟と化した都市や大罪司教との戦いを映し出すことにより,『リゼロ』らしい“絶望感”も加味している。ラストカット,絶望と希望と野望を凝縮したようなスバルの表情がいい。

『Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season』OPアニメーションより引用 ©長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活3製作委員会

【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出:篠原正寛/総作画監督:佐川遥/作画監督:勝田悠

【主題歌】 鈴木このみ「Reweave」
作詞:烏屋茶房 /作編曲:Tom-H@ck

 

4位:『らんま 1/2』ED


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【コメント】
りりあ。の主題歌「あんたなんて。」は,乱馬に対するあかねの複雑な心情に寄り添った,とても温かい楽曲だ。この曲に合わせた北村みなみの素朴なアニメーションも,熟練の料理人の手になる“ガーニッシュ”のように本編に豊かな感情の彩りを添えている。素朴だが,それだけに却って温かみのあるこの主題歌とアニメーションのコンビネーションからは,まるでNHK「みんなのうた」のような趣すら感じる(実際,北村は「みんなのうた」の「ぼくはヒーロー のアニメーションを手がけている)。原作ともアニメとも違った風合いでキャラクターの心情を伝えた,心に残る名EDだ。

 

『らんま 1/2』EDアニメーションより引用 ©︎高橋留美子・小学館/「らんま1/2」製作委員会

【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・コンポジット北村みなみ /演出・作画:北村みなみ上原史之

【主題歌】りりあ。「あんたなんて。」
作詞・作曲:りりあ。/編曲:羽生まゐご

 

3位:『ダンダダン』ED


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【コメント】
第5話で招き猫の依代を得,すっかりマスコット化したターボババア。このEDアニメーションは,その猫的魅力に完全特化した“ターボババア専用ED”だ。一部のシーンは単行本巻末掲載の「おまけ」をベースとしており,壁にボールを当てるエピソードは第2巻,子猫を拾うエピソードは第7巻,オムライスのエピソードは第4巻に掲載されている(ストーリーは完全に同じというわけではない)。これらの「おまけ」はターボババアのユーモラスなキャラを補完的に際立たせる役割を持っているが,特に星子とのやりとりを描いた逸話は,ターボババアの心根にある“人間性”や優しさをうかがわせる心温まるストーリーになっている。「おまけ」は単行本(紙・電子)のみに掲載されているので,これを期に購入して読んでみるのもいいだろう。アニメ版のEDは,このターボババアの意外なほど人間味溢れた魅力をフィーチャーすることで,時にグロテスクだったり,時に過酷だったりする本作の物語に“まろみ”のようなものを加味している。

『ダンダダン』EDアニメーションより引用 ©︎龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出:黒木美幸作画監督:西谷泰史

【主題歌】 ずっと真夜中でいいのいに。:TAIDADA
作詞・作曲:ACAね編曲:煮ル果実100回嘔吐ZTMY

 

2位:『きみは冥土様。』OP


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【コメント】
フォトグラメトリ,2Dアニメーション,実写映像,3DCG,影絵。実に多様な表現媒体を用いた見応えのあるOPだ。最近の作品では,様々な表現手法を取り入れた実験的なOP・EDが珍しくなくなってきたが,ここまでバリエーションに富んだOPアニメーションも珍しいかもしれない。本作のモチーフである“血糊”と“ソース”のアソシエーションも面白い。しかしこのOPが優れているのは,単に技巧に走るだけでなく,ヒロイン・雪の悲哀と孤独,慣れない家事仕事への戸惑い,および人好との出会いによる多幸感などを過不足なく描いている点だ。もちろん,OPの役割としてそれは当然と言えば当然なのだが,1分半という短尺の中で,これだけ技巧的で複雑な映像表現と心情ストーリーを両立させるには,それ相応のセンスが必要だろう。なお,本OPの制作に携わった映像制作ユニットqootain河原雪花,及びフォトグラメトリと実写映像担当の寺本遥は,制作過程についてXのアカウントでコメントしている(画像下のリンク参照)。

『君は冥土様。』OPアニメーションより引用 ©︎しょたん/小学館/君は冥土様。製作委員会

【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出・原画南條沙歩qootain/切り絵アニメーション:河原雪花/フォトグラメトリ・実写撮影:寺本遥/プロップ撮影:熊野陽平

【主題歌】tricot「おとずれ」
作詞:中嶋イッキュウ作曲・編曲:tricot

 

1位:『ダンダダン』OP


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【コメント】
異論はないだろう。今期,いやここ数年で最もアニメファン沸かせたと言っても過言ではない。驚くべき名OPの爆誕である。

Creepy NutsR-指定による「ダンダダン」が機銃掃射のように鳴り響く中,強烈な色彩で彩られたキャラクターたちが矢継ぎ早に紹介されていく。

『ダンダダン』OPアニメーションより引用 ©︎龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

このOPアニメーションをディレクションしたのは,サイエンスSARU所属のスペイン人アニメーター,Abel Gongora(アベル・ゴンゴラ)だ。自ら撮影と編集まで手がけたというそのユニークな作画感性は,*1 やはり日本のアニメ表現のアベレージからはかなり逸脱している(サイエンスSARUという制作会社のワールドワイド性もうかがわせる)。しかしそれでいて,各キャラクターの特徴を的確に伝達してもいるのだ。そして何より,このインパクト絶大のOPを第1話の初手からぶつけてくる大胆さにも驚かされる。『ダンダダン』という作品の奇抜さ・奇天烈さにマッチした演出方針と言えよう。

『ダンダダン』OPアニメーションより引用 ©︎龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

宇宙人や悪霊の紹介カットは,『ウルトラマン』のOPをオマージュしている(この点に関してはすでに考察勢諸氏が詳しく分析しているので,本記事では割愛しよう)。彩度が高く,パキッとした作画が施されたカットは極めてデザイン性が高い。それだけでイラストとして完成しているほどだ。

『ダンダダン』OPアニメーションより引用 ©︎龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

本編に匹敵するほどの生真面目さでスピリチュアルな事物を捉えたかと思えば,シンボリックな星子のカット,ターボババアのドアップ,唐突なダンスカットが矢継ぎ早に繰り出される。この“手数の多さ”も本OPの見どころだ。

言うまでもないことだが,Creepy Nuts「オトノケ」の本OPへの貢献度は計り知れないほど高い。「ダンダダン」の音をベースに無限のように展開されるライム。この楽曲そのものがすでにシャーマニックな存在感を放っている。タイトルのインパクトを存分に活かした楽曲構成は,アニメタイアップの主題歌としてこれ以上ないほどの最適解と言えるだろう。

『ダンダダン』OPアニメーションより引用 ©︎龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

終盤,オカルンの変身をラフスケッチ風に描写したのもすこぶるかっこいい。高畑勲監督『かぐや姫の物語』(2013年)を思わせる躍動感がある。最後のカット(上図・右下)などは,先史時代の洞窟壁画のようなシャーマニズムを感じさせる。

『ダンダダン』OPアニメーションより引用 ©︎龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

ラスト,魑魅魍魎が跋扈する様を背景に,モモとオカルンの恋模様をちらつかせた甘めのカットで締めくくるのも心憎い。

アニメーターとアーティストの才能が見事にコラボレートした,奇跡のようなOPだ。

【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出;Abel Gongora/作画監督:野田友美 湯団灰色菓兒粉糸阿鬼

【主題歌】Creey Nuts「オトノケ」
作詞:R-指定/作曲:DJ松永

 

以上,当ブログが注目した2024年秋アニメOP・ED5作品を挙げた。今年の秋アニメもすでに終盤に差しかかっているが,今後の鑑賞の参考にしていただければ幸いである。

 

 

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*1:「Newtype」2024年12月号,p.22,KADOKAWA,2024年。