アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2024年 TVアニメ話数ランキング[おすすめアニメ]

*この記事にネタバレはありませんが,各作品の内容に部分的に言及しています。未見の作品を先入観なく鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。

今回の記事では,2024年に放送されたTVアニメの中から特に優れた話数を作品横断的に選び,ランキング形式で紹介する。各話数に関するレビュー記事も併せてご覧いただければ幸いである。

2023年と同様,今年もすべて原作付き作品である。マンガや小説を原作とする作品では,制作者が原作をどう“解釈”するかという点にこそ,アニメーションとしての媒体特性がはっきりと現れる。本記事のシリーズで原作付き作品がランクインしやすいのはそうした理由からだ(もちろん,オリジナルアニメから優れた話数が出た場合には,積極的にピックアップしていきたい)。今年も原作の魅力をブーストした個性的な話数が多く,作画・演出を深く考察するコアなファンにとっても楽しめた年だったではないだろうか。

それぞれのタイトルは,水色=冬アニメ桃色=春アニメ赤色=夏アニメ茶色=秋アニメのように色分けしてある。

 

10位:『小市民シリーズ』 第2話

第2話「おいしいココアの作り方」より引用 ©︎米澤穂信・東京創元社/小市民シリーズ製作委員会

【コメント】
正式タイトル:第2話「おいしいココアの作り方」
“シャフ度”,鏡の反映,劇中劇によって,日常風景の中に非日常を混入させるという演出。『化物語』(2009年)にも参加経歴のある武内宣之の技が冴える同じ米澤穂信作品を原作とした,京都アニメーション『氷菓』(2012年)とはまったく趣を異にした演出方針である。これを機に両作品を比較してみるのもいいだろう。

第2話「おいしいココアの作り方」より引用 ©︎米澤穂信・東京創元社/小市民シリーズ製作委員会

【スタッフ】
脚本:大野敏哉/絵コンテ・演出:武内宣之/演出補佐:高野やよい/総作画監督:具志堅眞由(Production I.G.新潟)/作画監督:西島央桐豊田暁子,[杭州神在動画王渝张曦萦周俊杰味增拉面,[Animore葛歓たけうちのぶゆき/作画監督補佐:迫江紗羅宮田かんち
原画:豊田暁子石川奨士宮田かんち中拓郎池津寿恵二瓶令暁谷口繁則大原和男香田知樹銀さんM Ali菊池一真土屋智義武内宣之,[志能美クリエイティブ]:DakogotenOrelRomuloStatice

【レビュー記事】

www.otalog.jp

 

9位:『ダンダダン』 第4話

第04話「ターボババアをぶっ飛ばそう」より引用 ©︎龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

【コメント】
正式タイトル:第04話「ターボババアをぶっ飛ばそう」
ユニークな色彩,ダイナミックなアクション,コミカルなデフォルメ作画によって,原作の魅力を最大限に引き出すことに成功した話数。モモの瞳やオカルンの眼鏡の反映を用いた演出は,前編を通して反復される“ライトモチーフ”でもある。また,ラストのトンネルの霊に対するモモとオカルンの真摯な振る舞いは,後述する第7話の展開を予示しているとも言える。

第04話「ターボババアをぶっ飛ばそう」より引用 ©︎龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

【スタッフ】
脚本:瀬古浩司絵コンテ・演出・副監督:モコちゃん/演出補佐:藤倉拓也作画監督:野田友美下條祐未ヤン チャン,[Studio INK-Blue]:湯団灰色菓兒粉糸阿鬼,[Fincrossed studio]:葛歡馮亦範

原画:西垣庄子長濱佑作吉原拓也力徳欽也えーてつ百藤下地なるみ姜周用早野正樹吉岡春野石守源太坂田駿神林荘汰李志龍Abel Gongoraヤン チャン菊池有騎エイデン グオほうわ堀内博之黒崎隼人宮川駿田中宏紀モコちゃん,[アニメアール]:吉田徹

【レビュー記事】

www.otalog.jp

 

8位:『響け!ユーフォニアム 3』 第7話

第七回「なついろフェルマータ」より引用 ©︎武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

【コメント】
正式タイトル:第七回「なついろフェルマータ」
〈見る/見られる〉という関係回路において,久美子と真由の心内に宿る〈無〉を描き出した話数。カメラアイによる隠喩も見事で,EDアニメーションとの連携が決まりに決まった話数でもある(本話数とEDアニメーションは共に山村卓也が絵コンテ・演出を手がけている)。久美子と真由の緊迫感に満ちた対話劇は,第12話の2人の対話劇と相似・対比を成している。

第七回「なついろフェルマータ」より引用 ©︎武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

【スタッフ】
脚本:花田十輝/絵コンテ・演出:山村卓也作画監督:髙橋真梨子
原画:浦田芳憲瀨崎利恵成松健吾隈嵜那美松尾翔平

【レビュー記事】

www.otalog.jp

 

7位:『ダンジョン飯』 第3話

第3話「動く鎧」より引用 ©︎九井諒子・KADOKAWA刊/「ダンジョン飯」製作委員会

【コメント】
正式タイトル:第3話「動く鎧」
アニメーターの個性を押し出しつつ,TRIGGERらしい躍動感に満ち溢れた話数。原作を大胆に解釈した話数として,本作の中でも独自の存在感を放っている。絵コンテ・演出を手がけた菅野一期と原画担当の五十嵐海(共にTRIGGER所属)は,“あの”『天国大魔境』(2023年)第10話にも参加している(絵コンテ・演出は五十嵐海)。

第3話「動く鎧」より引用 ©︎九井諒子・KADOKAWA刊/「ダンジョン飯」製作委員会

【スタッフ】
脚本:佐藤裕/絵コンテ:菅野一期/演出:中野広大/総作画監督:竹田直樹/作画監督:菅野一期佐藤皓宏/作画監督補佐:五十嵐海/モンスター作画監督:金子雄人

原画:黒崎知栄実岩﨑洋子須藤瑛仁千葉一希MYOUN大井翔森美咲小林優子真野佳孝齋藤拓矢じゅら阿部慎吾すしお菅野一期五十嵐海米田温鄭佳湄千田崇史竹内哲也川窪達郎丹波弘美浅利歩惟大成麻子林可爲はるき鳴海陽太Nogya

【レビュー記事】

www.otalog.jp

 

6位:『逃げ上手の若君』第1話

第一回「5月22日」より引用 ©︎松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会

【コメント】
正式タイトル:第一回「5月22日」
本作が“作画アニメ”であることを初手から印象付けた話数。担当パートの詳細は不明だが,『エロマンガ先生』(2017年)や『ワンダーエッグ・プライオリティ』(2021年)などで注目された小林恵祐が原画として参加しており,極めて質の高い日常芝居が披露されている。また色彩設計のセンスもずば抜けている。

第一回「5月22日」より引用 ©︎松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会

【スタッフ】
脚本:冨田頼子絵コンテ・演出:山﨑雄太/作画監督:西谷泰史/プロローグアニメーション:Takuan Paradise

原画:河本有聖鈴木咲花中村七左宮内祟三輪修平コーコラン健太沢田犬二菊地陽子西谷泰史Nogya小林恵祐濱口明冨田真理進藤麻耶佐藤利幸高野綾渡部さくら

【レビュー記事】

www.otalog.jp

 

5位:『響け!ユーフォニアム 3』第10話

第十回「つたえるアルペジオ」より引用 ©︎武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

【コメント】
正式タイトル:第十回「つたえるアルペジオ」
ユニークなカメラワークと構図で,田中あすかの特異な洞察力,彼女と中瀬古香織との関係性などを巧みに伝えた話数。2期第九回「ひびけ!ユーフォニアム」や1期第十二回「わたしのユーフォニアム」など,過去の話数のシーンを暗示した点も面白い。またラストの演説シーンにおける黒澤ともよの演技は絶品である。

第十回「つたえるアルペジオ」より引用 ©︎武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

【スタッフ】
脚本:花田十輝/絵コンテ:太田稔/演出:太田稔北之原孝將作画監督:岡村公平
原画:羽根邦広大野由里加疋田彩原島彩帆吉田愛夢舞

【レビュー記事】

www.otalog.jp

 

4位:『葬送のフリーレン』第26話

「#26 魔法の高み」より引用 ©︎山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

【コメント】
正式タイトル:「#26 魔法の高み」
アニメーターの個性を活かした盛り盛りのアクションシーン,キャラクター同士の〈対峙〉の演出など,〈静〉と〈動〉の緊迫感が巧みに表現された話数。フリーレンvsフェルンという,ありえないはずの“対決”をドラマチックに描いたという点も面白い。

「#26 魔法の高み」より引用 ©︎山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

【スタッフ】
脚本:鈴木智尋/絵コンテ:斎藤圭一郎原科大樹岩澤亨/演出:森大貴/総作画監督:長澤礼子/総作画監督補佐:藤中友里作画監督:廣江啓輔瀬口泉新井博慧八重樫優翼/アクション作画監督:岩澤亨

原画:阿部純子神取万由子亀澤蘭小橋弘侑西田達三廣江啓輔八重樫優翼山﨑絵美山脇僚太遠藤正明大橋実木曽勇太銀杏豆太郎渡邊啓一郎?),久保まさひこ三宮哲太湿気った皆絵馬前並武志?),下谷早苗橋本治奈ひらおかえみ平田有加松田隼人丸山修二芳山優AdityaMahmoudMichael SungSaucelotSaurabh SinghshipVercreek飛鴻動畫枼瀚文哈魯OUTLINEあいう

【レビュー記事】

www.otalog.jp

 

3位:『逃げ上手の若君』第6話

第六回「盗め綸旨,小笠原館の夜」より引用 ©︎松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会

【コメント】
正式タイトル:第六回「盗め綸旨,小笠原館の夜」
Aパートにおける異常な距離感覚の創出,Bパートにおける狂気の絵画性の演出。『逃げ上手の若君』という作品の“手数の多さ”が最も美麗かつ技巧的に表れた話数だ。原作に厳密に則りながらも,原作を大胆に解釈し直したこの話数は,“原作付きアニメ”のあり方の一つの解答例を示したと言えるかもしれない。

第六回「盗め綸旨,小笠原館の夜」より引用 ©︎松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会

【スタッフ】
脚本:山崎莉乃絵コンテ・演出:菊地陽子/作画監督:Nogya/作画監督補佐:高橋沙妃三輪修平宮内祟上武優也小室裕一郎中下美湖髙石まみ

原画:菊地陽子柴田志朗小磯沙矢香三輪和宏川原智弘近藤高光横山未来深海無名吉川由華36.5°C田中宏紀RaisuBS_kimHoodieboi繁澤敬ニAmphibiMuhammad Palmer佐竹秀幸

【レビュー記事】

www.otalog.jp

 

2位:『響け!ユーフォニアム』第12話

第十二回「さいごのソリスト」より引用 ©︎武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

【コメント】
正式タイトル:第十二回「さいごのソリスト」
原作改変という英断により,これまでにない豊な思想と感情を生み出した話数。シリーズ完結編にふさわしい強度を持った脚本と演出であった。久美子が貫いた〈正しさ〉,そこに伴う〈感情〉。この2つを描いたことによって,彼女が“今この瞬間”から“未来”へと自らを投企していく様がよりリアルにイメージできるようになった。アニメ史に残る改変と言っても過言ではないだろう。

第十二回「さいごのソリスト」より引用 ©︎武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

【スタッフ】
脚本:花田十輝/絵コンテ:小川太一/演出:山村卓也作画監督:髙橋真梨子引山佳代
原画:浦田芳憲瀨崎利恵安藤京平佐藤知美芳﨑桃代糸川駿松尾望生松尾翔平中田うの宮城良唐田洋山口平熊野誠也野尻

【レビュー記事】

www.otalog.jp

 

1位:『ダンダダン』第7話

第07話「優しい世界へ」より引用 ©︎龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

【コメント】
正式タイトル:第07話「優しい世界へ」
アクションとドラマの混在,喜劇性から悲劇性への転調。『ダンダダン』という作品の特徴が濃縮された話数だ。アクロバティックさらさらをめぐる悲哀と,それに対するアイラの純粋な想いが美しく演出された傑作話数である。なおこの話数の絵コンテ・作監を手がけた榎本柊斗は,「2023年 TVアニメ話数ランキング」で1位とした『天国大魔境』「〈#08〉それぞれの選択」にも原画として参加している。

第07話「優しい世界へ」より引用 ©︎龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

【スタッフ】
脚本:瀬古浩司絵コンテ・作画監督:榎本柊斗/演出:松永浩太郎/副監督:モコちゃん/作画監督補佐:奥谷花奈

原画:伊藤香奈奥谷花奈ゼロ柴田海今井史枝中村七左長濱佑作じゅら力徳欽也関口亮輔nasiijau姚杰善加藤ていいちえーてつ小琳姚松林早野正樹赤松香穂羅雄韜石守源太マッケルゴ ニックAbel Gongora榎本柊斗

【レビュー記事】

www.otalog.jp

 

以上,2024年TVアニメ名話数の中から,今年度は10作品を挙げた。この記事を参考に,改めて各作品を再鑑賞していただければ幸いである。

 

関連記事

www.otalog.jp

www.otalog.jp