アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2024年 秋アニメランキング[おすすめアニメ]

*この記事にネタバレはありませんが,各作品の内容に部分的に言及しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。

今年も早くも年の瀬を迎え,2024年秋アニメの全作品が放送を終了した。今年も恒例通り,2024年秋アニメの中から当ブログが特にクオリティが高いと判断した8作品をランキング形式で振り返ってみたい。コメントの後には,作品視聴時のXのポストをいくつか掲載してある。今回は「中間評価」の記事でピックアップしなかった作品がランクインしている。なお,この記事は当ブログの評価基準において「一定の水準を満たした作品を挙げる」ことを主旨としているため,ピックアップ数は毎回異なることをお断りしておく。

www.otalog.jp

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8位:『魔王2099』

2099.world

【コメント】
“魔王の没落”という使い古されたモチーフを,“動画配信者”というキャラづけでアップデートしたユニークな作品。シリアスとギャグ,日常とファンタジーのバランスもよく,最後まで楽しめた。主演の日野聡,伊藤美来,菱川花菜の演技も耳心地良く,キャラがよく立っていた。作画・芝居の質がもう一段高ければ,さらに高い評価になっただろう。現時点では続編の報は出ていない。

 

7位:『メカウデ』(オリジナル)

『メカウデ』公式HP

【コメント】
アクション作画とギャグシーンのキレがとてもよく,“現代版リミテッド・アニメーション”の一解答例としてたいへん見応えのある作品だった。オカモト監督渾身のデビュー作として評価できるだろう。惜しむらくは,良くも悪くも“TRIGGERの追随”に見えてしまった点,またラスト近辺のストーリー展開に一捻り欲しかった点だろうか。ただいずれにせよ,オカモト監督には今後もこうした小気味のよいオリジナルアニメを期待したい。要注目の監督として記憶しておくべきだろう。

 

6位:『カミエラビ GOD.app シーズン2 完結編』(オリジナル)

kamierabi.com

【コメント】
“ポスト・アポカリプスSFもの”としてのヨコオタロウ・ワールドをしっかり堪能できた秀作。ゴリゴリのSF作品でありながら設定を“語る”だけに終始せず,エモーションをきっちり画で表現していた点も評価に値する。いくつかの謎が語られぬまま最終話を迎えたわけだが,さりとて不満の残る終わり方ではない。むしろその余白の残し方が心地よく,近年の“全部丁寧に説明します”的傾向に対するアンチテーゼとして面白い。日本のアニメレビュー界隈は,こうした作品を正当に評価する場になって欲しいと思う。

 

5位:『チ。-地球の運動について-

anime-chi.jp

【コメント】
科学の「知」というものの壮絶な推進力,その“善悪の彼岸”的なあり方,歴史的なあり様というテーマを,実直なアニメーションで過不足なく伝えた良作。原作マンガがすでに一定の評価を得ているだけに,SNS等での話題性も高い。純粋なストーリーアニメのはずだが,ファンの間でバデーニ,オクジー,ヨレンタを中心とした“キャラ推し”現象が発生しているのもとても面白い。連続2クールのため,次回第15話以降は年明けの冬クールから放送開始予定である。

 

4位:『ネガポジアングラー』(オリジナル)

np-angler.com

【コメント】
趣味系アニメとしてもやや渋めのテーマだが,魅力的なキャラとクオリティの高い作画・芝居によって,極めて質の高い作品に仕上がっていた。後述する谷口宏美のキャラクターデザインもとてもよい。主人公の鬱状態=「ネガ」を,前方への投企としてのキャスティング=「ポジ」が牽引するという物語構造が巧みで,「釣り」というモチーフに大きな説得力があったのも大きなポイントだ。最終話の「釣りって面白いな!」という素朴なセリフが心に響く。この手の,地味ではあるが質の高いオリジナルアニメが継続的に生み出されるところが日本アニメのストロングポイントだろう。

 

3位:『らんま1/2

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【コメント】
当ブログでは,すでに評価の定まっている作品のリメイクは評価を低めに抑えている(新作を優先するため)。したがってこの作品も「中間評価」ではピックアップしなかったのだが,第10話のシャンプー登場以降のわちゃわちゃ感がとてもよく,急遽ランクインさせた次第である。まとまりのよい背景美術とチャーミングな色彩設計に,『ネガポジアングラー』でも活躍した谷口宏美のキャラクターデザインが映える(個人的に谷口には今期のキャラデザ功労賞を進呈したい)。アクションや日常芝居も上手い。旧作(1989年)と比較すると,セルとデジタルそれぞれの特性が見えて面白いかもしれない。多くのキャストが旧作から続投したことも功を奏したと言える。総じて,過去作品の現代的アップデートとして大きな成功を収めたと言えるだろう。すでに続編制作の報が出ている。

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2位:『Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season

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【コメント】
制作スタッフ変更によるクオリティ低下の懸念などまさに杞憂。むしろこれまで以上に緊迫感を増した作画と演出は,『リゼロ』という作品のポテンシャルを一層引き出したと言えるかもしれない。特に佐川遥の手になるキャラクターデザインは,単に美麗であるというだけでなく,『リゼロ』特有の“絶望・希望・野望”という感情と絶妙なマッチングを見せている。各話のアニメーターの作画もレベルが高く,キャラの表情作画などは毎話惚れ惚れするくらいの出来栄えだった。前半の〈終劇編〉の放送はいったん8話まで(通算話数第58話)で終了しており,〈反撃編〉9話(通算話数第59話)以降は2025年2月5日(水)からの放送が予定されている。

 

1位:『ダンダダン』

『ダンダダン』OPアニメーションより引用 ©︎龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

anime-dandadan.com

【コメント】
「2024年 秋アニメは何を観る?」の記事でイチオシとしてピックアップした作品。

既存の幽霊・UMA・異星人をキャラ化し,随所にオマージュを仕込むなど,多くの人が反応しやすいフックをふんだんに盛り込んだ作品。それだけにSNS等での話題性も高く,モモとオカルンのラブコメ的な掛け合いも相まって,多くの視聴者を賑わせた。一方で,ターボババアやアクロバティックさらさらの出自に言及することで,敵役のキャラクター性にも寄り添うという真摯な側面を持った作品でもある。結果,喜劇性と悲劇性の振れ幅が本作の最大の持ち味となり,それ自体が話題性を生むという回路が生まれているのが面白い。

アニメーションとしての完成度も高い。アクションシーンにおける色彩や,瞳や眼鏡を用いた“反射”など,アニメ独自の演出が随所で光った。湯浅政明以来の“サイエンスSARUらしさ”も程よく画面に出ている。さらに話題となった第7話などでは,上述の喜劇性と悲劇性をきっちりと画に落とし込み,画作りそのものによってエモーションを描き出すことに成功している。Abel Gongoraが手がけたOPアニメーションも極めて独創的で,Creepy Nutsの「オトノケ」との相性も抜群だ。総じてアニメ化による付加価値の高い作品と言えるだろう。

すでに第2期制作の報が出ているが,最終話の内容から言えば,実質的には“分割2クール”と言える。次回“邪視編”は2025年7月からの放送が予定されている。


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● その他の鑑賞済み作品(50音順)
『アオのハコ』『株式会社マジルミエ』『君は冥土様。』『ドラゴンボール DAIMA』『ぷにるはかわいいスライム』『星降る王国のニナ』『妖怪学校の先生はじめました!』

 

以上,当ブログが注目した2024年秋アニメ8作品を紹介した。

今期は『メカウデ』カミエラビ GOD.app シーズン2 完結編『ネガポジアングラー』のオリジナル作品がランクインした。特に『ネガポジアングラー』はテーマも画作りも質が高く,日本のオリジナルアニメ制作力の底力を見せつけられた感がある。今後も,こうした堅実かつ魅力のあるオリジナル作品が作られることを願いたい。

上位を占めた『らんま1/2』『Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season』『ダンダダン』は原作付きだが,その圧巻の出来栄えに,日本アニメの水準の高さを改めて実感した。しかし同時に注目したいのは,すぐれて日本的な作品であるはずの『ダンダダン』の制作陣に外国人の割合が高いことだ。これは制作会社のサイエンスSARUが,立ち上げ当初から海外志向だったことが影響していると考えられるが,いずれにせよ,“日本のアニメは日本人が作るもの”というナショナリスティックな思考はすでに時代遅れになりつつある。今や日本のアニメは“世界”が作るものなのだと言えるかもしれない。

 

2024年冬アニメのおすすめに関しては以下の記事を参照頂きたい。

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