アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2025年 春アニメ 中間評価[おすすめアニメ]

*この記事にネタバレはありませんが,各作品の現時点までの話数の内容に言及しています。未見の作品を先入観のない状態で鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。

 

2025年春アニメも後半の話数に差し掛かかり,この重苦しい天気を吹き飛ばすような傑作話数がいくつかの作品から繰り出されている。今回の記事では,当ブログ独自の観点から2025年春アニメ注目の作品を振り返りたい。これまで通り五十音順に(ランキングではないことに注意)作品を紹介していく。

なお「2025年 春アニメは何を観る?」の記事でピックアップした作品は,タイトルを桃色にしてある。

www.otalog.jp

 

1.『アポカリプスホテル』(オリジナル)

apocalypse-hotel.jp

【コメント】
タイトル通りのポストアポカリプス的な世界観に,『21エモン』的“ゲスト出演”の賑やかな楽しさ。予測のつかない展開はほとんどカオスとも言えるほどだが,にもかかわらず,それぞれの話数にはしっかりとテーマがある。脚本の妙が光る作品だ。竹本泉(原案)と横山なつき(デザイン)手になる,シンプルだが的確なキャラクターデザインも大変魅力的で,特に主人公のホテリエロボット・ヤチヨのキャラメイキングが面白い。脚本面でも作画面でも,オリジナルアニメとして相当に高い水準を示している作品と言える。後半の話数も楽しみだ。

 

2.『ウマ娘 シンデレラグレイ』

anime-cinderellagray.com

【コメント】
「芦毛の怪物」,満を持しての『ウマ娘』登場である。オグリキャップの天然&天才っぷりの描き方も上手いが,トレーナー・北原の掘り下げ方,2人の関係性の描写もとてもいい。小西克幸の高めのハスキーボイスは,作品に“張り”と“勢い”を添えると同時に,北原というキャラクターが担う悲哀を的確に伝えている。構図の取り方や止め絵の使い方も上手く,作画面でのクオリティも高い。特に第6話はTV版『ウマ娘』の話数としては最高レベルの出来栄えだったと言えるだろう。後半の話数も楽しみだ。

 

3.『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』

www.gundam.info

【コメント】
旧作の“換骨奪胎”としてきわめてユニークな脚本に,魅力的なキャラクターメイキング。特に荒木哲郎が演出を手がけた第4話は,1話のみ登場のシイコ・スガイの掘り下げが深く,まるで短編映画を観るかのように印象深い話数だった。旧作のキャラクターの“リメイク”も秀逸で,特にシャリア・ブルのジェントルだが狂気を孕んだキャラはとても面白い。主人公のマチュ,ニャアン,シュウジを中心に,その脇を固めるキャラを丁寧に描いている印象だ。竹によるキャラクターデザインや作画・芝居も見応えがある。最終的な総合点は相当高くなるだろう。

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4.『薬屋のひとりごと 第2期』

kusuriyanohitorigoto.jp

【コメント】
前クールで壬氏が宦官でないことを猫猫が知ったことにより,2人の関係性に変化が生じ,物語は徐々に加速しつつある。第41話では,子翠の正体が明かされる場面での表情作画・芝居が光った。第42話壬氏羅漢羅半の正面からの表情作画も印象的だった。やはり1期第4話のような“サプライズ”演出は見られないが,作画の安定と物語の面白さで見せていくということなのだろう。いずれにせよ,今後もこのまま高いクオリティを保ち続けていって欲しい作品である。

 

5.『九龍ジェネリックロマンス』

kowloongr.jp

【コメント】
希釈されるアイデンティティ,それに抗う「絶対の自分」という決意と愛。昨今のアニメではあまり見られなくなった大人の「ロマンス」を,男と女,そしてそれを超えたアイデンティティの絶対性において示した作品。設定そのものは一種のSFだが,作品のメッセージ性はほとんど哲学的なものに近い。それを伝える主演の白石晴香杉田智和の落ち着いた演技もいい。そして何より,登場人物たちのノスタルジーの対象である「九龍」というトポスを美しく描いた美術の功績が大きい。総じて,とても質の高いSF恋愛ミステリだ。

 

6.『Summer Pockets』

summerpockets-anime.jp

【コメント】
僕は「AnimeJapan 2025」で小林智樹監督,原作シナリオの,プロデューサーの中島直人のトークを観覧する機会を得たのだが,この手のステージには珍しくスタッフのみの登壇という形式に,むしろ製作陣の自信の程が伺えた。そしてその印象に違わず,キャラクターデザイン,作画,美術等,相当に高い水準を示した作品に仕上がっている。ボーイミーツガール,美少女の不可知性,少年=プレイヤーの不完全な優しさ。Key十八番の美少女ゲーム要素がぎっしり詰まった秀作アニメだ。その独自の美意識を堪能し尽くそう。

 

7.『小市民シリーズ 第2期』

shoshimin-anime.com

【コメント】
本記事執筆時点で『秋期限定栗きんとん事件』が放送終了。小佐内のミステリアスな行動によってミスリードしつつ,放火事件は一通りの解決を迎えた。小佐内&瓜野/小鳩&仲丸という親和関係が解消され,再び小佐内&小鳩という親和関係に回帰した。第1期同様,アニメーションとしての見せ方(演出)が非常に上手く,映像作品としての洗練度が高い作品である。また,小佐内役・羊宮妃那の演技も第1期以上に印象深い。第2期の全体的な雰囲気は,その大部分が彼女の演技によって醸されていたと言っても過言ではないだろう。イシグロキョウヘイによるOPアニメーションもたいへん素晴らしい。後半の『冬期限定ボンボンショコラ事件』への期待も高まる。

 

8.『mono』

mono-weekend.photo

【コメント】
同じあfろ原作『ゆるキャン△』よりもややスピード感があり,ギャグのキレもなかなかいい。もともとカメラレンズを通した画面構成が楽しい作品ということもあり,画作りの面でもかなり凝った演出が多い。キャラの芝居も丁寧で面白く,第4話の原画には『ぼっち・ざ・ろっく』(2022年)『葬送のフリーレン』(2023年)監督の斎藤圭一郎が参加するなど,全体的に作画・演出の上手いスタッフが揃っている印象だ。物語やキャラの妙味もさることながら,作画面での見どころも多い作品である。

 

9.『LAZARUS ラザロ』(オリジナル)

lazarus.aniplex.co.jp

【コメント】
スキナーという人物をめぐるミステリーの仕込みが上手く,オリジナルアニメとして非常に見応えのある作品に仕上がっている。アクセルのアクションを中心とした作画・芝居もたいへん面白い。渡辺信一郎監督によれば,スタントマンの芝居を実写で撮影したものをアニメに落とし込んでいる(IGNJapan「オリジナルアニメ『LAZARUS ラザロ』渡辺信一郎監督インタビュー」より)とのことで,モーションキャプチャやロトスコープとは違った味わいがある。また,休符のように挿入されるゆったりとしたシーンが独特のテンポ感を生み出しており,渡辺監督作品のリズムが感じられる作品だ。

 

10.『ロックは淑女の嗜みでして』

rocklady.rocks

【コメント】
“ロック×お嬢様”というタイトル通りの“ミスマッチ”に加え,そこはかとない百合要素が感じられる点がたいへん面白い。しかしそこに安直なジャンブルを感じないのは,ボーカル=フロントマンに依存しない楽器奏者としての矜持,“好きなものに貴族も平民もない”という価値観,そして演奏への直向きさというメッセージが,“芯”として作品の中心部に存在しているからだろう。前クールの『BanG Dream! Ave Mujica』に続いて,ガールズバンドアニメの新機軸となる作品かもしれない。

 

以上,「アニ録ブログ」が注目する2025年春アニメ10作品を挙げた。

今回はオリジナル作品として『アポカリプスホテル』『LAZARUS ラザロ』を挙げた。まったく方向性の異なる2作品だが,どちらも脚本面・作画面でたいへん見応えがある。どちらも最終話までの仕上がりによっては,今期のランキングの最上位に位置する可能性がある。

『2025年 春アニメは何を観る?』でイチオシとしてピックアップした『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』も,期待に違わず傑作話数を次々と繰り出している。やや情報量過多の嫌いはあるものの,新・旧両方の“ガノタ”を満足させる仕上がりと言ってよいだろう。

 

最終的なランキング記事は,全作品の放映終了後に掲載する予定である。