アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2025年 春アニメランキング[おすすめアニメ]

*この記事は各作品の内容に関する部分的なネタバレを含みます。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。

不快に湿った猛暑が日本列島を襲う中,2025年春アニメもぼぼすべての作品が放送を終了した。今回も恒例通り,2025年春アニメの中から当ブログが特にクオリティが高いと判断した10作品をランキング形式で振り返ってみよう。コメントの後には,作品視聴時のXのポストをいくつか掲載してある。今回は「中間評価」の記事でピックアップしたものから異動はない。

なお,この記事は当ブログの評価基準において「一定の水準を満たした作品を挙げる」ことを主旨としているため,ピックアップ数は毎回異なることをお断りしておく。

www.otalog.jp

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10位:『Summer Pockets』

summerpockets-anime.jp

【コメント】
ヒロインはもちろんのこと,主人公・羽依里を含めたすべてのキャラクターの作画の安定度には驚くべきものがある。作画のブレは1ミリもなく,常に“眼福”状態で美麗な作画を楽しめる作品だ。物語面でも正に“The Key 作品”という王道の展開で,Keyの恋愛ゲームを美しくアニメ化するという点においては,これまでで最も成功していると言っても過言ではないだろう。しかしそれだけに,綺麗にまとまりすぎて新鮮味に欠けた感は否めない。連続2クール作品で,本記事執筆時点では中盤の話数なので,今後の展開に期待したいところだ。

 

9位:『九龍ジェネリックロマンス』

kowloongr.jp

【コメント】
まず第3の“主人公”とも言える「九龍」の美術が素晴らしい。この点を丁寧に描写した点だけでも,アニメ制作班の功績は大きいと言える。また,主演の白石晴香杉田智和の落ち着いた演技は,“大人のロマンス”という本作の醍醐味を十二分に伝えていた。さらにこれらが相俟って,この作品における「場所へのノスタルジー」「絶対の私」というライトモチーフを的確に表現し得ていたと言える。話数不足のためか,後半はやや急ぎ足になり,実写映画の“販促”という印象になってしまった感はあるが,原作者・眉月じゅんが作品に込めた思想を伝えることには一定の成功を収めたと言えるのではないか。

 

8位:『ロックは淑女の嗜みでして』

rocklady.rocks

【コメント】
ロック×お嬢様という“ミスマッチ”設定自体がすでに面白いが,そこにリアルな演奏と楽曲,そして関根明良島袋美由利のドラ声という天然の歪みエフェクトが加わり,アニメーションとしてとても楽しめる作品に仕上がっていた。また物語面においても,お嬢様という体面と本当に好きなこととの間の葛藤完璧な演奏と楽しむこととの乖離,そしてそこから1つのバンドへと進化していく過程がドラマチックに描かれていた。現時点で続編の報はないが,ぜひとも今後の展開を期待したい作品である。

 

7位:『ウマ娘シンデレラグレイ』

anime-cinderellagray.com

【コメント】
まず評価したいのは,ウマ娘一辺倒の描写ではなく,トレーナー・北原との関係性を重視し,これまでのシリーズ以上に人間関係の描写を深めた点だ。その意味でも,キャラクターの悲喜を的確に演じる小西克幸のキャスティングは正解だったと言える。また,オグリキャップの前傾姿勢を活かした構図や効果的な止め絵など,作画面でのクオリティも極めて高い。後半のタマモクロス登場による盛り上げ,オグリキャップの敗北による“引き”の作りなど,脚本面での完成度も高い。すでに続編の報が出ている。今後の展開を楽しみにしよう。


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6位:『mono』

mono-weekend.photo

【コメント】
オバケ,背動,極端な構図などの作りに遊び心が多く,作画面でとても楽しめた作品だった。この作品はもともと超広角の歪んだ構図が多いため,作画の遊びとの相性がいい。その点を存分に活かした演出が本作の面白さをブーストしていたと言える。“上手い”アニメーターが揃っていた印象だ。アニメーションの楽しさという点では,おなじあfろ原作の『ゆるキャン△』より優っていたと言っても過言ではない。また,三川華月古賀葵遠野ひかる上田麗奈ら主演のかけあいも楽しく,「玄熊先生」役・羊宮妃那のキャスティングも面白かった。総じて,今期の日常系アニメとして最も成功していたのではないだろうか。ぜひとも続編制作を期待したい作品だ。

 

5位:『LAZARUS ラザロ』(オリジナル)

lazarus.aniplex.co.jp

【コメント】
13話という限られた話数の中で適度に緩急を付けつつ,スキナーの壮大な企みを描き切った本作。渡辺信一郎監督らしい,重厚かつ音楽性を感じさせるアニメ作品だった。アクセルを中心としたアクション作画も実にユニークで見応えがあった。人類という種を罰する“神”の視点と,隣人としての個を愛する“イエス”の視点。この類のテーマ設定は,アニメでは決して珍しくはないが,本作は多くを詰め込みすぎず,コンパクトな脚本と魅力的なアニメーションと声優の卓越した演技とで,これを的確に伝えることに成功していたと言える。

 

4位:『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』

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【コメント】
新キャラにせよ旧作キャラにせよ,キャラク(ター)の(リ)メイクという点で群を抜いて優れた作品だった。特に第4話のみ登場したシイコ・スガイと,終始“狂言回し”として立ち回ったシャリア・ブルに関しては,近年のガンダムシリーズの中でも際立ってユニークなキャラ造形だったと言ってよいだろう。旧作の換骨奪胎によるサプライズも大変楽しませてもらった。しかし敢えて厳しい言い方をすれば,結局は“2次創作”の域を出なかったことは残念である。往年のファンの間に,瞬間最大風速的なお祭り騒ぎを引き起こしはしたが,肝心のマチュニャアンシュウジの扱いを掘り下げるには至っておらず,“新しいガンダム”を作りだせていたとは言い難い。それでもこの順位になったのは,ひとえに先述のキャラメイクの妙を評価してのことである。

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3位:『薬屋のひとりごと 第2期』

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【コメント】
第1期4話のような作画面での“サプライズ”は結局なかったが,後半の話数における子翠=楼蘭にまつわる描写が大変素晴らしかった。アクションのような派手な演出ではなく,表情作画と繊細な芝居で視聴者を惹きつけた演出力は,現代アニメの“日常芝居”の1つの到達点として高く評価されるべきだろう。また壬氏はもちろんのこと,羅漢羅半らワキの男性キャラを魅力的に描いていた点も評価に値する。特に第44話における羅漢の直願の所作(下記Xのポストを参照)は,CV・桐本拓哉の渋い演技とも相俟って,キャラの魅力を大いに高めるのに一役買った。すでに続編の報が出ている。今後も末長く楽しみたい作品だ。


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2位:『小市民シリーズ 第2期』

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【コメント】
前半の『秋期限定栗きんとん事件』によって,再び互いに向き合うことになった小鳩常悟朗小佐内ゆき。後半の『冬期限定ボンボンショコラ事件』では,推理小説の“謎解き”という体裁をとりつつも,2人の関係性の描写がメインテーマだったように思える。特にアニメ第21話では,小佐内が小鳩の手をとる所作と表情の作画,小鳩が泣く芝居など,これまでには見られなかった感情的な表現が多く見られた。文字媒体でロジカルに語られた原作小説に対して,アニメでは映像媒体でエモーショナルな成分の比率を上げてきた格好だ。それによって,この作品に対して多くの視聴者が抱く,“恋愛なのか,そうでないのか”というもどかしさのようなもの(いわゆる「付き合っちゃえよ!」という感情)がいっそう高められ,他作品にはない独特の爽やかさが生まれていたように思う。また,小佐内役の羊宮妃那の演技も素晴らしく,この“コケティッシュで神秘的で少し残酷”という多義的なキャラを上手く演じていた。イシグロキョウヘイ演出・ヨルシカ主題歌のOPのクオリティもきわめて高い。

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1位:『アポカリプスホテル』(オリジナル)

『アポカリプスホテル』「#12 銀河一のホテルを目指して」より引用 ©︎アポカリプスホテル製作委員会

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【コメント】
久しぶりのオリジナルアニメ1位である(2021年夏アニメの『Sonny Boy』以来)。オリジナルアニメとしての特性を存分に活かし,毎話予測のつかない展開によって視聴者を楽しませた傑作喜劇。時にナンセンスとも思えるエピソードを挿入しつつも,その根底には,人類の尺度を超えた時間に対するかけがえのない一時,人類文明の悲壮感,生と死,などといった深いテーマが流れていたように思う。特に「#11 穴は掘っても空けるなシフト!」は,11話という終盤の話数にもかかわらず敢えて物語を滞留させ,淀みのように静かな時の中で,主人公・ヤチヨの“感情”と“思想”の深まりを描写していた。近年のオリジナルアニメの中でも,群を抜いてクオリティの高い話数だったと言えるだろう。
ヤチヨというキャラの造形もたいへん面白かった。ホテリエでありながら少女のように愛らしく,ロボットでありながら人間以上に人間くさい。彼女の存在があったからこそ,人類不在の地球という極限的終末世界を楽しむことができたのかもしれない。最終話では,人類は広い宇宙の中のone of themとして相対化されたが,人類の灯火が消え去ったわけではない。仮に僕らが消え去ってしまったとしても,ヤチヨという“ヒューマノイド”が存在してくれていれば,この地球は楽しいのだ。ヤチヨの代が八千代に続かんことを。

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● その他の鑑賞済み作品(50音順)
『アン・シャーリー』『謎解きはディナーのあとで』『日々は過ぎれど飯うまし』『ユア・フォルマ』『リコリス・リコイル ショートムービー』

 

以上,当ブログが注目した2025年春アニメ10作品を紹介した。

当ブログは本来オリジナルアニメを推しているのだが,0から作り上げる作品が,原作付き作品の質を超えていくのはなかなか難しい。そんな中,『アポカリプスホテル』という素晴らしい作品と巡り会えたことを喜ばしく思う。

また当ブログでは,キャラメイキングや日常芝居が巧みな作品を高く評価することが多いが,特に2位以下の『小市民シリーズ 第2期』『薬屋のひとりごと 第2期』『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』などにそれが実現されていたように思う。さて,夏アニメではどの作品に優れたキャラと芝居を観ることができるだろうか。

2025年夏アニメのおすすめに関しては以下の記事を参照頂きたい。

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