アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2025年 夏アニメランキング[おすすめアニメ]

*この記事は各作品の内容に関する部分的なネタバレを含みます。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。

夏に泥んでいた季節がようやく秋へ移ろう気配を見せる中,2025年夏アニメも全作品の放送が終了した。今回も恒例通り,2025年夏アニメの中から当ブログが特にクオリティが高いと判断した11作品をランキング形式で振り返ってみよう。コメントの後には,作品視聴時のXのポストをいくつか掲載してある。今回は「中間評価」の記事でピックアップしたものから異動はない。

なお,この記事は当ブログの評価基準において「一定の水準を満たした作品を挙げる」ことを主旨としているため,ピックアップ数は毎回異なることをお断りしておく。

www.otalog.jp

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11位:『フードコートで,また明日。』

www.foodcourtjk-anime.com

【コメント】
話数を追うごとに和田と山本のキャラへの愛着が沸く。独特な対話劇の妙味がクセになっていく。大きな事件が起こるわけでもないのに毎話が楽しみになる。目立った作品ではなかったが,“日常系ガールズトークアニメ”としてここまで成功した作品もそう多くないだろう。アニメにおける〈日常芝居〉を重視する当ブログとしては,この作品を評価しないわけにいかない。こういう作品にこそ,実写には真似できない,アニメ独自の魅力が詰まっているのだ。 

 

10位:『よふかしのうた Season 2』

yofukashi-no-uta.com

【コメント】
OPアニメーションと連携しつつ,探偵さん≒鶯餡子≒目代キョウコの葛藤と諦念と安堵を描き切ったSeason 2。彼女以外にも,星見キク本田カブラなど,主役以外のキャラを立たせる演出が多かったように思う。そもそも『よふかしのうた』は,ナズナコウの関係を中心としながらも,その脇を固めるバイプレイヤーのキャラが魅力的な作品であり,そのことを証明するかのようなシリーズだったと言える。続編の報はまだ出ていないが,是非とも完結編までアニメ化して欲しい作品である(原作はすでに完結している)。

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9位:『薫る花は凛と咲く』

kaoruhana-anime.com

【コメント】
“現代版『ロミオとジュリエット』を”ベースとしながら,薫子と出会った凛太郎が徐々に内的な成長を遂げ,周囲との関わり方を変化させていく様を丁寧に描いた秀作。特にとの対話,クラスメイトとの友情の育み方,そして両親との関わり方など,“凛太郎”という人格を成り立たせるキャラクター環境がじっくりと描写されていたことにより,単なる“恋愛モノ”以上の作品価値を得ていた点が高評価に値する。キャラクターデザインや芝居もクオリティが高く,黒木美幸監督の手腕が遺憾無く発揮された作品となった。

 

8位:『光が死んだ夏』

hikanatsu-anime.com

【コメント】
反復される“合唱”のシーン,蝉の羽化,向日葵,実写の風景など,数々のアニオリ演出を盛り込むことにより,本作の魅力を増幅させることに成功していた。「ドロドロ」などの描写によってホラー感を高める一方で,よしきのヒカルに対する想いや,閉鎖的な村社会への密かな反発など,丁寧な内面描写が成されていたことが評価に値する。この作品が単なるホラーマンガ以上の価値を持つことが,このアニメ化でも明確に示されたと言えるだろう。すでに続編の報も出ている。完結編まで見届けよう。

『光が死んだ夏』公式HPより引用 ©︎モクモクれん/KADOKAWA・「光が死んだ夏」製作委員会

 

7位:『New PANTY & STOCKING with GARTERBELT』(オリジナル)

newpsg.com

【コメント】
デイモン姉妹ポリポリ兄弟を加え,キャラの幅がぐっと広がった『Newパンスト』。特に本来敵同士のはずのパンスト姉妹とデイモン姉妹の関係が,まるで“四姉妹”のように微笑ましく描かれていたのが面白い。1話に2〜3つのエピソードを盛り込む構成は必ずしも見やすくはなかったが,最終話の盛り上がりは流石の脚本力。民主的ポリセイズムを滅ぼし,独裁的モノセイズムを目論んだラミー。それを打ち倒す天使・人間・悪魔のノイジーなポリフォニー。“ミッシュマッシュだからこそ面白い”という本作の持ち味を完璧に要約した最終話だった。詳細は不明だが,続編を匂わせる終わり方をしている。

 

6位:『ダンダダン 第2期』

anime-dandadan.com

【コメント】
ジジの“スポーツマン”としての身体性能を活かしたアクション作画や,音楽室での修行における巨人やロボットの巨大感など,アニメの媒体特性を活かした演出が目を引いた。特にアクションシーンにおける作画の“崩し”は,サイエンスSARU創設以来の“湯浅政明調”が存分に発揮されていると言えるだろう。またモモオカルンの恋模様も抒情味たっぷりに演出されており,全体としてたいへんバランスのよいエンタメ作品に仕上がっている。名実ともにサイエンスSARUの代表作となるに違いない。第3期制作の報もすでに出ている。長期展開になるだろうが,最後まで見届けたい作品だ。

『ダンダダン』公式HPより引用 ©︎龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

 

5位:『ガチアクタ』

gachiakuta-anime.com

【コメント】
“ハードボイルドアクション×もったいない精神”というユニークな取り合わせの妙に加え,優れたキャラデザ,アクション芝居,ルド役・市川蒼を始めとする声優陣の熱演など,他作品を圧倒する要素満載の傑作アニメである。実は本作のランクは当初もう少し低かったのだが,第10話以降に登場するアモのデザインとキャラが抜群に優れており,最終話近辺で評価がぐっと高まったという経緯がある。アモ役・花澤香菜の演技もずば抜けていた。すでに評価の確立した役者だが,“人気声優”としての風格を改めて示したと言えるだろう。連続2クール放送のため,本記事執筆時中(秋クール)も放送中だ。今後の展開にも期待したい。

 

4位:『CITY THE ANIMATION』

city-the-animation.com

【コメント】
あらゐけいいち×京都アニメーションのコンビネーションの圧倒的な力を再証明した傑作。シュールなギャグのオンパレードももちろん面白いのだが,「CITY」の風景の中を雑多なキャラたちが所狭しと動き回る様子を俯瞰するのは,生きた箱庭を覗き込むような不思議な快楽がある。どの話数も高いクオリティを示していたが,とりわけ「#5」のスプリットスクリーンや特殊EDの演出はSNSを大いに賑わせた。京アニの高カロリー作画の処理能力には恐れ入る。また『日常』(2011年)の石原立也監督からバトンを受け取った石立太一監督にとっても,間違いなく代表作の1つとなることだろう。

 

3位:『その着せ替え人形は恋をする Season 2』

bisquedoll-anime.com

【コメント】
“日常芝居こそアニメの真髄”。そう考える当ブログにとって,『着せ恋』という作品は理想形の1つだ。特にSeason 2「#18 俺が絶対に 俺の手で」における“脇役”たちの日常芝居は,単にリアルであるということを超え,アニメにおける日常芝居の意味を再考するきっかけとなった。日常芝居に限らないが,アニメの作画は物語やメッセージと調和したときにこそ大きな意義を持つ。第18話は,その点で1つの模範解答例を示したとすら言えるだろう。またこの第18話を含め,いくつかの話数で小林恵祐の“匠”を味わうことができたのも喜悦至極である。
もちろん作画だけではない。“好き”を追求する若者たちのエネルギッシュな価値観,「#15 日常パートめっちゃすこ〰〰〰〰♡♡♡」における「姫野あまね」役・村瀬歩の技,主題歌とアニメーションとの完璧なマッチングを成し遂げたOPなど,評価すべき点が多い作品である。続編の報は今のところないが,ぜひ完結編まで見届けたいところだ。

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2位:『瑠璃の宝石』

rurinohouseki.com

【コメント】
「“好き”を追求する」
ということで言えば,この『瑠璃の宝石』も『着せ恋』と同じテーマを共有している。「キラキラしたものが好き」という瑠璃のナイーブな初期衝動は,やがて「キラキラしたもの」の背後に広がる世界・歴史・科学の探究心へと変わっていく。“可愛い”という要素と“学究”というテーマを見事にマッチさせた傑作であり,その意味では『お兄ちゃんはおしまい!』(2023年)の藤井慎吾監督の手腕が遺憾無く発揮されたと言えるだろう。
特に『おにまい』でメインアニメーターを務めたみとん演出による「第9話 190万トンのタイムカプセル」は,〈可愛い〉〈人工物〉〈自然〉というモチーフの美しい連鎖を示した傑作回となった。“自然/人工”という安直な対立構図ではなく,“人工物(ダム)が人と自然を媒介する”というテーマは,この作品の根底にある思想を見事に伝えている。さらにそこに〈可愛い〉〈キラキラ〉をトッピングすることにより,“鉱物研究”をより身近に感じさせている。ニッチなテーマの作品だが,夏クールで最も成功したアニメ化の1つと言ってよいだろう。

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1位:『タコピーの原罪』

『タコピーの原罪』「第6話 2016年のきみたちへ」より引用 ©︎タイザン5/集英社・「タコピーの原罪」製作委員会

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【コメント】
すでに原作の時点で話題性の高かった作品だけに,アニメ作品としての付加価値を模索するのには相当な苦労があったろう。飯野慎也監督を始めとするアニメ制作班は,原作のいささか気難しい描線を再現しつつ,そこに妥協のない芝居を加味することでこれに応えた。原作に真摯に向き合い,そうした丁寧な作画・演出が施されたからこそ,逆にタコピーのシンプルなデザインが引き立ち,このキャラクターの“マスコット性”が原作以上に深い意味を持ったように思う。
一方で,随所に盛り込まれたアニメオリジナルの演出も目を引いた。とりわけ飯野監督演出「第1話 2016年のきみへ」における影の演出,立華演出「第3話 タコピーの告解」における主観視点,大島塔也演出「第4話 東くんの救済」における背動や特殊効果などは,物語とも密接に関わりながら,各話のメッセージを的確に伝達していた。各話演出家の采配に任せる演出方針も功を奏したように感じる。
間宮くるみ(タコピー),上田麗奈(しずか),小原好美(まりな),永瀬アンナ(直樹)ら主演声優陣の演技もたいへん素晴らしかった。特に「第6話 2016年のきみたちへ」(最終話)におけるタコピー役・間宮は,タコピーの独特な口調で悲哀感を出すという難しい役所を見事に演じ切って見せた。
総じて,近年のマンガ原作アニメ化として最も成功した作品と言えるだろう。この作品をもって夏クールの第1位としたい。

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● その他の鑑賞済み作品(50音順)
『アン・シャーリー』『神椿市建設中。』『SAKAMOTO DAYS 第2クール』『Summer Pockets』『地獄先生ぬ〜べ〜』『ぷにるはかわいいスライム 第2期』

 

以上,当ブログが注目した2025年 夏アニメ11作品を紹介した。

繰り返すが,“日常芝居こそがアニメの真髄”だ。もちろんアクション作画が魅力の作品はごまんとあるし,当ブログでもそうした作品を数多く評価してきた。しかしアクションを活かすためには,キャラの日常芝居がその基底を成していなければならない。日常がしっかり描かれているからこそ,非日常が際立つのだ。

さらに言えば,日常芝居そのものが意味を持つ作品もある。その点では,今回ピックアップした『フードコートで,また明日。』『その着せ替え人形は恋をする Season 2』『瑠璃の宝石』などは格好の例だろう。これらの作品では,日常芝居そのものが物語とリンクし,それ自体としての価値を持っている。“日常系”という言葉が使われるようになってから久しいが,本当の意味での日常系アニメとはこうした作品を言うのかもしれない。

また日常性ということで言えば,今回1位として取り上げた『タコピーの原罪』も同様だ。しずかやまりなを救ったのは,魔法でも異世界転生でもなければ,「ハッピー道具」ですらなかった。タコピーというごくシンプルなマスコット的身体が彼女たちに寄り添ったのである。“異星人の到来”をモチーフにしていながら,あくまでも日常性において物語を構築している。これも“日常系”の1つの在り方なのかもしれない。

さて,秋クールではどんな日常芝居を堪能できるだろうか。

2025年 秋アニメのおすすめに関しては以下の記事を参照頂きたい。

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