アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2025年 アニメランキング[おすすめアニメ]

*この記事に大きなネタバレはありませんが,各作品について簡単なコメントを付しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,下の目次から「ランキング表」へスキップするなどしてご覧ください。

2025年アニメの鑑賞数は,TVシリーズが67作品(2クールにまたがる作品は別作品としてカウント,配信アニメもTVアニメとしてカウント),劇場版が23作品(リバイバル上映含む)だった。

以下,「TVアニメランキング(10作品)」「劇場アニメランキング(10作品)」「総合ランキング(20作品)」に分け,当ブログの基準による2025年のランキングをカウントダウン方式で紹介する。視認性を考慮し,TVアニメは青字劇場アニメは赤字にしてある。また各セクションの最後にはコメントなしの「ランキング表」を掲載してある。未視聴の作品がある場合には,「ランキング表」だけをご覧になることをお勧めする。

 

TVアニメランキング

10位〜6位

10位:『メダリスト』(冬)

medalist-pr.com

【コメント】
冬アニメランキング第2位
として挙げた作品。
フィギュアスケートというポピュラーなモチーフを扱い,結束いのり=子どもと明浦路司=大人の視点を盛り込んだことなどによって,幅広い層にリーチすることに成功している。アニメでは,演技シーンにおいて3DCGならではの滑らかかつ迫力のある描写が光った。制作会社ENGIの技術力の高さを見せつけた作品と言えるだろう。アニメオリジナルの要素も的確,春瀬なつみ大塚剛央ら主演陣の演技も良好だった。2026年冬クール(次クール)からの放送が決定している。

 

9位:『ガチアクタ』(夏・秋)

gachiakuta-anime.com

【コメント】
夏アニメランキング第5位,秋アニメランキング第2位として挙げた作品。
すでに原作において完成されたデザインをいっそうブーストし,スタイリッシュなアニメ作品に仕上げることに成功している。声優の演技を含めたキャラメイクも大変魅力的で,特に第10話以降に登場したアモは,奇抜な衣装・メンヘラ気質・彼女を取り巻く醜悪な事情・花澤香菜の演技が上手く配合し,エキセントリックな魅力を放つキャラ(クター)に仕上がっていた。こうした要素もあって,彼女を思いやるルドとの関係性も説得力のあるものになっている。アモは現時点では一旦退場したが,今後の続編での活躍に期待したい。

 

8位:『その着せ替え人形は恋をする Season 2』(夏)

bisquedoll-anime.com

【コメント】
夏アニメランキング第3位として挙げた作品。
“好きなことを貫く”という価値観とピュアなラブコメの配合がモダンで,現代の視聴者に愛好されるテーマ性を備えた作品だ。しかしそれだけではない。当ブログでよく言及する〈日常芝居〉の価値を体現した作品でもある。特に各話レビューでも取り上げた第18話などは,物語のテーマ性と日常芝居との密接な関係性が示されていた点が注目に値する。ジャンルの性質上,派手なアクションなどはないが,すでに“作画アニメ”としての風格を備えていると言っても過言ではないだろう。

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7位:『薬屋のひとりごと 第2期』(冬・春)

kusuriyanohitorigoto.jp

【コメント】
冬アニメランキング6位,春アニメランキング3位
として挙げた作品。
冬クールにおける猫猫×壬氏の関係性の変化の描写,および春クールにおける子翠=楼蘭にまつわる描写は,SNSでの反響も大きく,この作品の評価を一段押し上げる結果となったと言える。特に終盤の子翠=楼蘭の演出は際立っていた。楼蘭=人形としての化粧,それを否定するかのような黒い煤,「悪女」としての返り血,そして瀬戸麻沙美の演技。それが相まって,子翠=楼蘭というキャラクターが背負った壮絶な生き様が見事にアニメーションとして表現されていた。今後の続編や劇場版にも大いに期待したい。

 

6位:『瑠璃の宝石』(夏)

rurinohouseki.com

【コメント】
夏アニメランキング第2位として挙げた作品。
“鉱物学×ガールズトーク”というユニークな取り合わせだが,この手の作品は下手に作ると平凡なアニメになりかねない。藤井慎吾監督は,『お兄ちゃんはおしまい!』(2023年)でも披露したガーリーなキャラメイクを本作のルックの軸に据えることで,硬派なテーマと可愛らしさの融合を実現させた。それも,単に硬いテーマを表面的な煌びやかさで取り繕ったというわけでは決してない。例えば第9話では,主人公・谷川瑠璃の「キラキラしたもの好き」という一見ミーハーな嗜好は,世界の探究心の初期衝動として示されていた。学究とガーリー嗜好は本作の中で有機的に結合していたと言える。藤井は監督を務めた2作品とも高い評価を得たということになる。次作も楽しみだ。

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TOP 5

5位:『小市民シリーズ 第2期』(春)

shoshimin-anime.com

【コメント】
春アニメランキング第2位
として挙げた作品。
当然のことながら,小説のアニメ化においては,キャラクター原案(デザイン)や物語構成の変更などの工程が入ることにより,制作者の“解釈”が作品内により多く取り込まれることになる。それをどこまで成功させるかが,監督初めアニメ班の腕の見せどころだ。
本作では,小鳩常悟朗小佐内ゆきを中心に,淡白だが確実に視聴者の目を引くデザインを実現しつつ,2人の間の「互恵関係」という微妙な距離感を見事に表現し得ていた。特に第2期では,小佐内ゆきの謎めいた行動に合わせて,CV・羊宮妃那の演技もミステリアスの度合いを高めていた。これに関しては,羊宮をディレクションした音響監督の貢献度も高いだろう。さらに第21話などでは,“手を握る”という芝居により,当初の「互恵関係」をより叙情的な関係性に転調させていた点が面白い。小説アニメ化の一成功例として評価されるべき作品だろう。

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4位:『アポカリプスホテル』(春/オリジナル)

apocalypse-hotel.jp

【コメント】
春アニメランキング第1位として挙げた作品。
人類不在となった地球と,人類帰還を待ち侘びるホテリエロボットという設定の妙。毎話予測のつかないドタバタギャグと,どぎついブラックジョーク。オリジナルアニメとしての利点を最大限に活かした脚本構成が見事だった。
ヤチヨポン子を中心とした魅力的なキャラクターメイクが功を奏してか,やや突拍子もない展開も痛快なスラップスティックとして楽しめた。コメディテイストのオリジナルアニメとして,理想的な作りをしていたと言えるのではないか。
その一方で,人類不在の哀愁や,不在であるが故に際立ってくる人の営みの価値といったテーマが,押し付けがましくならない程度の強度で示されていた点も評価に値する。特に第11話は,最終話手前の話数というタイミングでほぼ全編セリフなしというサプライズを見せつつ,人と命の価値を美しく表現していた。まるで
映画のように上質な時間の流れを感じる話数だった春藤佳奈はこれが初監督だが,今後の活躍に大いに期待したい。

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3位:『藤本タツキ 17-26』(秋)

『藤本タツキ 17-26』公式Xより引用 ©︎藤本タツキ/集英社・「藤本タツキ 17-26」製作委員会

fujimototatsuki17-26.com

【コメント】
秋アニメランキング第1位として挙げた作品。
個々の作品が優れているというのもあるが,それぞれを異なる監督・制作会社のもとで制作し,異なる個性を押し出すというコンセプトが何より面白い。すでに秋アニメランキングの記事でも触れたように,個別の作品評価で言えば『庭には二羽ニワトリがいた。』『恋は盲目』『目が覚めたら女の子になっていた病』『予言のナユタ』『妹の姉』のクオリティが一際高いが,やはりこの作品は『藤本タツキ 17-26』というユニットで楽しむべき作品なのだろうと思う。
現在の『チェンソーマン』の展開を見ていても感じるのだが,藤本タツキという作り手の中には,一貫性に抗う複数性のようなものが潜んでいるように思える。あるいは現在進行形で変化・進化しているのかもしれない。いずれにせよ,『藤本タツキ 17-26』の制作コンセプトは,藤本の非-均質性とうまく相応したのかもしれない。
その上で,あえて作品に通底する何ものかを探り当てるとすれば(これも何度か言及しているが),“血の温もり”とでも呼べるものなのかもしれない。あるいは,それ以外の何かを,藤本は今後の作品で表現していくのかもしれない。

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2位:『タコピーの罪』(夏)

『タコピーの原罪』公式Xより引用 ©︎タイザン5/集英社・「タコピーの原罪」製作委員会

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【コメント】
夏アニメランキング第1位として挙げた作品。
わざわざ指摘するまでもなく,僕らの周りには暴力が溢れている。身近で比較的無害な暴力から,国同士の致死的な戦争に至るまで。規模の大小はあれど,暴力は暴力だ。マンガ・アニメはそこから距離を置き,暴力とは無縁の世界を仮構することもできる。あるいは逆に,暴力をあえて主題化し,そこからの救済を描くこともできる。『タコピーの原罪』は後者をあえて選択した作品である。
アニメ制作班は,配信という放送形態をとることで原作者・タイザン5の“覚悟”と正面から向き合い,キャラの主線,芝居,コマ間を埋めるアニオリに至るまで,過酷な現実を妥協なく描き出した。飯野慎也監督の英断に拍手を送りたい。
そしてこの妥協なき描写があったからこそ,タコピーという〈マスコット〉的存在による“救済”の物語が美しく描かれ得たのだ。決して純粋はハッピーエンドでないとは言え,そこに示された穏やかな温もりのある結末は,多くの人の心に強い印象を残したことは間違いない。

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1位:『BanG Dream! Ave Mujica』(冬)

『バンドリ! BanG Dream!』公式Xより引用 ©︎BanG Dream! Project

『BanG Dream! Ave Mujica』公式サイト

【コメント】
冬アニメランキング第1位
として挙げた作品。
メンバー同士の“絆”ではなく,“不和”をこそ物語の駆動力にするというアイディア。若葉睦という特異なキャラ(クター)。そして楽曲のインパクト。これまでの『バンドリ』を予想・期待したファンにとっては,毎話がサプライズに満ちていた。
“ガールズバンドアニメ”というジャンルも飽和状態にある中,そろそろマンネリズムを避けられない時代になりつつある。それを打開するような作品が,ガールズバンドの“総本山”たる『バンドリ』シリーズから生まれたというのが面白い。『バンドリ』という伝統を無闇に解体すれば,既存のファンの間で賛否を巻き起こすリスクが高い。しかしそうすることで,ジャンルの新たな可能性を切り開く期待もある。それを敢行した柿本広大監督の英断に,惜しみない拍手を送りたい。
制作会社サンジゲンの手がける3DCG描画もたいへん優れていた。サンジゲンと言えば,『ID-0』(2017年)で村田蓮爾の丸みのある原案を見事にデザインに落とし込んでおり,痛く感心した記憶がある。『バンドリ』シリーズでも,主線の一本一本に至るまでこだわり抜くことで,魅力的な美少女作画を実現している。しかしとりわけ『Ave Mujica』では,そこに“鬱顔”をあえて多く盛り込むことで,作品全体を支配する“歪み”を巧みに表現している。作画面で考察されることはあまり多くない作品だが,3DCG美少女描画の伝統にも一石を投じたと言えるだろう。
すでに続編制作の報が出ている。『Ave Mujica』という作品は,そして『バンドリ』というシリーズは,今後僕らに何を見せてくれるだろうか。


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TVアニメランキング表

1位:『BanG Dream! Ave Mujica』
2位:『タコピーの原罪
3位:『藤本タツキ 17-26』
4位:『アポカリプスホテル』
5位:『小市民シリーズ 第2期
6位:『瑠璃の宝石』
7位:『薬屋のひとりごと 第2期』
8位:『その着せ替え人形は恋をする Season 2』
9位:『ガチアクタ』
10位:『メダリスト』

● その他の鑑賞済みTVアニメ作品(50音順)
『アオのハコ』『悪役令嬢転生おじさん』『天久鷹央の推理カルテ』『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』『俺だけレベルアップな件 Season2』『薬屋のひとりごと 第2期』『SAKAMOTO DAYS』『全修。』『空色ユーティリティ』『チ。-地球の運動について-』『ドラゴンボール DAIMA』『ハニーレモンソーダ』『花は咲く,修羅の如く』『ババンババンバンバンパイア』『もめんたりー・リリィ』『妖怪学校の先生はじめました!』『Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season』『わたしの幸せな結婚 第二期』
『アン・シャーリー』『ウマ娘 シンデレラグレイ』『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』『九龍ジェネリックロマンス』『Summer Pockets』『謎解きはディナーのあとで』『日々は過ぎれど飯うまし』『mono』『ユア・フォルマ』『LAZARUS ラザロ』『リコリス・リコイル ショートムービー』『ロックは淑女の嗜みでして』
『アン・シャーリー』『薫る花は凛と咲く』『ガチアクタ』『神椿市建設中。』『SAKAMOTO DAYS 第2クール』『Summer Pockets』『CITY THE ANIMATION』『地獄先生ぬ〜べ〜』『ダンダダン 第2期』『New PANTY & STOCKING with GARTERBELT』『光が死んだ夏』『フードコートで,また明日。』『ぷにるはかわいいスライム 第2期』『よふかしのうた Season 2』
『ウマ娘 シンデレラグレイ 第2クール』『グノーシア』『SANDA』『しゃばけ』『SPY×FAMILY Season 3』『千歳くんはラムネ瓶のなか』『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』『永久のユウグレ』『とんでもスキルで異世界放浪メシ 2』『不滅のあなたへ Season 3』『らんま1/2 第2期』『羅小黒戦記』『私を喰べたい,ひとでなし』

 

 

劇場アニメランキング

10位〜6位

10位:『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』第4章(オリジナル)

pripri-anime.jp

【コメント】
グラハム・ターナーの過酷な運命を描くことにより,この世界における“血と分断”を象徴的に伝えるという巧みなストーリーテリングを見せた作品。チーム「白鳩」の内部にも亀裂が走り,不穏な空気と共に物語は幕を閉じる。全6章から成るシリーズもいよいよ佳境に入りつつある。この分断を,プリンセスの“愛”は克服できるのか。
なお,ノルマンディー公を演じた土師孝也さんが今年8月に逝去された。改めてご冥福をお祈りしたい。

 

9位:『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』

peleliu-movie.jp

【コメント】
万物の中で,互いに殺し合う人間だけがまるでカリカチュアのように記号化されている。しかしそこに示されているものは,カリカチュアでも記号でもなく,人の業の残酷な現実だ。“三頭身の骸骨”という,記号と現実を接合した奇妙な描写がそれを如実に示している。記号的身体と暴力・死の関係という問題は,日本のマンガ・アニメにおける大きなテーマとして,これからも再提起され続けるだろう。

 

8位:『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』(オリジナル)

www.mononoke-movie.com

【コメント】
2024年公開の『唐傘』に続く,劇場版三部作の2作目。組織の中で殺される個の命と想いを描いている。『唐傘』よりもシンプルでわかりやすいメッセージと構成にすることによって,“緩急”のようなものが生まれているのが面白い。第一章に続き,和の素材をもとに膨大な量のカット割りでスピード感を出し,大胆なカメラワークで迫力ある3D空間を創出している。日本アニメの1つの到達点として誇るべき作品だろう。

 

7位:映画『ホウセンカ』(オリジナル)

anime-housenka.com

【コメント】
「喋るホウセンカ」という永遠の命が照らし出す,人の限られた命。長い後悔と大逆転。そして大逆転の本当の意味。派手なことをやらずとも,伏線の仕込みと回収でアニメのドラマは作れる。それによって観客から深い感情を引き出すことができる。しかし“ただのいい話”にするだけでは面白くない。そこにホウセンカの諧謔をスパイスとして含み入れ,グルメを唸らせる逸品を作る。さすがの木下麦× 此元和津也タッグである。

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6位:『Flow』(オリジナル)

flow-movie.com

【コメント】
単なる猫の冒険物語と侮ってはいけない。『けものフレンズ』(2017年)のような世界観に,アンドレイ・タルコフスキーを思わせる静謐感『海獣の子供』(2019年)のような神秘性。セリフがまったくないにもかかわらず,まるで言葉を話していると思わせるほどの“キャラ”の立ち具合。劇伴を含めた音響もとてもいい。日本のTVアニメとはまったく異なる作劇法だが,だからこそ多くのアニメファンが観るべき作品である。

 

TOP 5

5位:映画『トリツカレ男』

toritsukareotoko-movie.com

【コメント】
全方位全力マニア男・ジュゼッペと,悲しい風船売りのペチカとの哀と愛を描いた,とても魅力的な作品。ドラマチックな伏線回収を含め,脚本・構成が優れた秀作である。アニメーションとしてもたいへん面白い作りで,あの手のキャラクターデザインを最新の技術でアニメ化するとこうなるのか,という純粋な驚きがある。『輪るピングドラム』(2011年)などを手がけた秋山健太郎の美術も素晴らしい。ペチカ役・上白石萌香の演技力も高く,すでにアニメ声優としてベテランの風格があるとすら言える。
この作品も,いわゆる深夜アニメ帯の人気作とは異なる作劇法のためか,興行収入という観点から見れば話題性は限定的だった。しかしSNS等での評価は高く,興行収入のみで作品の質を測るべきではないということを改めて実感した。先ほどの『ホウセンカ』にしてもそうだが,こうした作品がもっと積極的に観られれば,日本のアニメファンの評価の“軸”はより豊かになるだろう。

 

4位:『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』

luoxiaohei-movie.com

【コメント】
新と旧,技術と伝統,革新と保守,種族と種族の「共存」というテーマが,物語のレベルにおいてもアニメーションのレベルにおいても見事な形で実現されていた傑作。前作では妖精・小黒と人間・無限との間に生まれた絆によってシンプルな「共存」が実現していたわけだが,今作では,妖精・鹿野と人間・無限との間の微妙な距離感が,「共存」という問題のより現実的な有り様を示していたように思う。価値観も生活文化も異なる存在同士,その差異を忘却し解消することはできないとしても,適度な距離を置いて時折対話をすることで「共存」を図ることは不可能ではない。ラストシーンにおける無限と鹿野の距離感は,そうした真理を物語っていたように思う。
木頭(MTJJ)監督は,日本のマンガ・アニメの要素を吸収し,中国人ならではの感性で作品作りをするクリエイターだ。今回の作品でも,日本アニメが培った表現と中国アニメ固有の技術とが美しく「共存」していた。そもそも,人類史の中で異文化と混交しなかった“純粋な”文化などない。文化は常に混ざり合って進化してきたのだ。僕らがこの映画から学ぶことは少なくないはずだ。

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3位:『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』

『鬼滅の刃』公式Xより引用 ©︎吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

kimetsu.com

【コメント】
胡蝶しのぶ
の激しい怒り,我妻善逸の灼熱の怒り,そして竈門炭治郎の絶対零度の怒り。鬼という存在に対する人の積年の“怒り”が,それぞれのキャラクターの過去と重なり合いながら,圧倒的なアニメーション表現の強度で表現されていた。そして何より,猗窩座の運命を不足なく描いたことによって,鬼の“悲哀”が克明に示されていた点が高評価に値する。猗窩座の回想シーンに関して「長すぎる」という意見が散見されるが,むしろあの尺感が正しい。偽りの永遠を手にしようとした鬼たちが,今際の際で過去に連れ戻され,過去によって浄化される。これは過去に滅する鬼と,未来を紡ぐ人たちの物語なのだ。
一流の声優たちによる朗読劇のようなモノローグ,ほぼ全編にわたる劇伴とSEの連続,3DCGによる「無限城」の完璧な再現。もはや作画の巧拙がどうのというレベルを超えた,完全総合芸術である。すでに世間的にも評価の定まったシリーズだが,やはりここまで完成度の高い傑作に触れないわけにはいかないと判断し,選出した次第である。おそらく今後の章でも,ufotableは僕らの予想を軽々と超えてくるに違いない。次作を楽しみに待とう。

 

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2位:劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』(オリジナル)

劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』公式サイトより引用 ©︎劇場版ゾンビランドサガ製作委員会

zombielandsaga-movie.com

【コメント】
ゾンビ×アイドル
という取り合わせがすでにユニークすぎるほどにユニークなのだが,そこから次々と新しいストーリーを生み出すアニメ制作班の想像力・創造力には脱帽である。特に今回は,SF要素と満を持しての山田たえ“覚醒”という出来事を盛り込んだ,ボリュームたっぷりの展開である。よくもこれだけの要素をここまで上手くまとめたものだと感服する。見事な脚本・構成・演出である。
そしてこの作品は,“アイドルアニメ”として,個々のキャラ(クター)の描写を重視しているのも特筆すべき点だ。特に今回は,SF仕立ての超展開だけに終始することなく,源さくら山田たえの関係性を丁寧に描いた点が高評価に値する。だからこそ,“ゾンビが頭をかじる”という突拍子もない場面で涙を誘うのだ。また巽幸太郎は,おそらく宮野真守史上,指折りのエキセントリックキャラだと思われるが,そのキャラ(クター)がしっかり作り込まれているため,彼を通して観客の感情移入を誘うというキャラメイクになっている。脇キャラの使い方も面白い。
制作会社MAPPA発のオリジナルアニメとして,今後の展開も楽しみな作品である。続編の報を待とう。

 

 

1位:劇場版『チェンソーマン レゼ篇』

『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』公式HPより引用 ©︎藤本タツキ/集英社・MAPPA

chainsawman.dog

【コメント】
2024年の劇場アニメランキングと総合ランキングでは,藤本タツキの『ルックバック』をピックアップした。今回の2025年のTVアニメランキングでも『藤本タツキ17-26』を第3位として挙げている。振り返ってみれば,去年と今年は“藤本タツキの年”だった。もちろん,Jジャンプ側の宣伝戦略にうまく乗せられているということもあるが,これだけの傑作揃いであればそれも悪い気はしない。
しかし同じ藤本作品とは言え,制作会社とその方針が異なる以上,まったくと言ってよいほど印象の異なる作品に仕上がる。それぞれに作り手の個性が強力に打ち出されているため,例えばアニメの『ルックバック』と『レゼ篇』を観て,一目で同じ原作者の作品であることを見抜ける人はそう多くないかもしれない。“藤本タツキ”というコンテンツは,それほど多彩な側面を見せている。
『レゼ篇』では,𠮷原達矢率いる制作班と制作会社MAPPAが見事な作品解釈を披露してみせた。繊細な日常芝居と壮大なアクションは,この作品に内在する静と動のダイナミズムをよく表していたし,牛尾憲輔の劇伴は,レゼとデンジの閉ざされた“心”に寄り添うように鳴り響いていた。結果,ラストに登場したパワーの“温もり”が,ほのかだが確かに感じられる結末となった。

『藤本タツキ 17-26』のコメントでも述べたように,藤本タツキは現在進行形で変化・進化している作家だ。これから彼がどんなアイディアを繰り出してくるか,そしてそれをどのクリエイターがどう解釈し,どのようなアニメーションを作るか。これからも“藤本タツキ”という才能に注目していきたい。

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劇場アニメランキング表

1位:劇場版『チェンソーマン レゼ篇』
2位:劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』
3位:『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来
4位:『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』
5位:映画『トリツカレ男』
6位:『Flow』
7位:『ホウセンカ
8位:『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』
9位:『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』
10位:『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』第4章

● その他の鑑賞済み劇場アニメ作品(50音順)
『アルドノア・ゼロ(Re+)』映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』『映画 先輩はおとこのこ あめのち晴れ』映画『ChaO』映画『ひゃくえむ』劇場アニメ『映画大好きポンポさん』劇場アニメ『ベルサイユのばら』劇場アニメ『メイクアガール』劇場先行版『機動戦士 Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』『この素晴らしい世界に祝福を!3ーBONUS STAGEー』『天使のたまご』『果てしなきスカーレット』

 

総合ランキング表

最後に,TVシリーズと劇場版を総合したランキングを紹介しよう。

1位:『BanG Dream! Ave Mujica』
2位:『タコピーの原罪』
3位:劇場版『チェンソーマン レゼ篇』
4位:劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』
5位:『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』
6位:『藤本タツキ 17-26』
7位:『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』
8位:映画『トリツカレ男』
9位:『Flow』
10位:映画『ホウセンカ』
11位:『アポカリプスホテル』
12位:『小市民シリーズ 第2期』
13位:『瑠璃の宝石』
14位:『薬屋のひとりごと 第2期』
15位:『その着せ替え人形は恋をする Season 2』
16位:『ガチアクタ』
17位:『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』
18位:『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』
19位:『メダリスト』
20位:『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』第4章

 

総評

2025年のTVアニメでは,『BanG Dream! Ave Mujica』『アポカリプスホテル』における予測不能な物語展開が目を引いた。ジャンルもルックもストーリーも何もかもが別ベクトルの作品だが,毎話サプライズを仕掛けた作品として,優れたエンターテインメント性を備えていたと思う。『アポカリプスホテル』は,ピックアップしたTVアニメの中では唯一のオリジナルアニメだが,やや大袈裟な言い方をすれば,このような優れたオリジナル作品が新人監督の手によって作られたことに大きな希望を感じる。また『Ave Mujica』は『バンドリ』シリーズ枠内の作品だが,オリジナルアニメと同様,毎話の作劇の妙を楽しむことができた。2026年もこうした独創的な作品が生まれることを期待したい。
原作付きTVアニメとしては,やはり『タコピーの原罪』が突出していた。“TVアニメでは自粛せざるを得ない表現を配信で実現する”という判断は,“逃げ”ではなくむしろ“挑戦”なのだということを改めて実感させられた。プラットフォームの利点を活かした作品提供のあり方として,1つの模範を示したと言えるだろう。
劇場アニメでは,やはり劇場版『チェンソーマン レゼ篇』『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』という2つのビッグタイトルの存在感が大きかった。本記事執筆時点で『レゼ篇』の興行収入は100億を突破したが,それも納得のクオリティである。そんな中,オリジナル作品である劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』が健闘したことが喜ばしい。エンターテインメントはかくあるべし,という潔さが感じられる作品だった。その一方で,映画『トリツカレ男』『Flow』映画『ホウセンカ』『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』のような,やや上の年齢層にターゲティングした作品も目を引いた。
アニメは多様だ。幅広いジャンルをカバーする方針で鑑賞した方が面白いし,鑑賞眼と評価軸が多様になる。2026年も可能な限り多くのアニメ作品に触れ,この場で紹介していきたいと思う。

 

窓の外を見ると,遥か彼方で富士山が薄赤く染まりつつある。テレビはすでに年越し仕様のばかりになった。2026年,僕らはどんなアニメと出会い,どんな感想を抱くだろうか。このブログをご覧になる皆さんが,来年も素晴らしいアニメと出会えることを祈念しつつ。皆さま,よいお年を。