
2026年2月8日(日)。ワンダーフェスティバル(通称「ワンフェス」)の日である。
しかし天気は雪。極寒の朝,降雪の少ない東京の空を大量の雪片が舞う光景を目にするのは,それだけで雪慣れしていない関東人に外出を渋らせるのに足る。この中をわざわざ幕張メッセまで遠出するのか。あるいはおとなしく家で録画したアニメを鑑賞するのがいいか。
しかしこの程度,“北から目線”で見れば“ちょっと雪が舞ってきた”くらいのもの。大騒ぎしていては失笑ものだ。逡巡するうちに朝の時間はみるみるうちに溶けていく。まるで積もる勢いもない東京の雪のように。こうした場合,行って後悔することはないが,行かずに後悔することはあるという経験則のもと,重い腰を上げることにした。

会場に到着したのは12:30頃。上の写真からもわかるように,雪は舞っているがコンクリート面に積もるほどではなかった。やはり来てよかった。ただグドンとツインテールに扮したワンダちゃんとリセットちゃんは,かなり露出の多い出で立ちで寒々しい。着ぐるみ姿にすればよかったのではとも思うが,色々と事情があるのだろう。
なぜグドンとツインテールかと言えば,今回の特別企画として「ウルトラ怪獣ワンフェス」が開催されるからだ。しかし正直言うと,僕はウルトラマンにはさほど興味がない。やはりこの「アニ録ブログ」運営する者である以上,最大のお目当ては2Dキャラのフィギュアである。
そう,2Dのキャラが3Dのフィギュアにディメンションアップするのがいいのだ。日頃モニター上を平面移動するだけのキャラが,立体物として空間を占めているという状況。これこそがフィギュアの醍醐味であり,それを大量に目にすることができる絶好の場が「ワンフェス」なのだ。もちろん「ウルトラマン」ファンを否定するつもりはないが,少なくとも“2Dから3Dへ”という感動はアニメ・ゲームのフィギュアの方に軍配が上がることは間違いない。



中:『ノーゲーム・ノーライフ』白(Prime 1 Studiio)
右:『勝利の女神:NIKKE』アリス(FREEing)
最近では等身大や1/2や1/3スケールのフィギュア(上図)なども増えてきたが,基本的には1/7くらいのスケールで部屋の一隅を飾る,というコンパクトさと身近さがいい。そうは言っても,気に行ったフィギュアを買い続ければあっという間に部屋の空間は埋め尽くされるわけで,多くのフィギュアファンが頭を悩ませているところだろう。フィギュアオタクにとって,時間不足と金欠も重大だが,空間不足こそが最大の悩みの種である。




いきなりアニメキャラではなくて恐縮だが,初音ミクはフィギュアキャラとして“汲めども尽きぬ源泉”という印象だ。上図はグッドスマイルカンパニーのミクだが,特に4枚目の雪ミクの造形が素晴らしい。



初音ミクと言えば,しばらく前に彼女と結婚された男性が話題になった。しかし彼が初音ミクを1つの人格として家に招き入れるのと,僕らが初音ミクをフィギュアとして所有するのとは似て非なることだ。そもそも「ワンフェス」 のようなイベントであちこち目移りしながら数十,数百の美少女フィギュアの写真を撮るのだ。浮気にも程がある。とてもではないが一途な“結婚”とは想いのレベルが違う。
ただ個人的にはそれでいいと思っている。著作権的に自分に所属しているわけでもないキャラを,擬似的に“所有”する欲望。1つのキャラを1/1の人格としてではなく,1/7の偶像として手の中に収める愉悦。複数の小さなキャラによって,徐々に己の空間が削られていく快楽。空間の不足はフィギュア趣味の悩み種だが,また同時にそれ自体が快楽でもある。そこにキャラが“在る”ことを物理的に実感できるからだ。“俺の嫁”はあくまでも比喩でいい。



中:『BanG Dream! Ave Mujica』オブリビオにすオブリビオニス
右:『ダンジョン飯』
(グッドスマイルカンパニー)
“コンパクト”というコンセプトで言えば,やはりグッドスマイルカンパニーの「ねんどろいど」シリーズは優秀だと思う。手のひらに乗る大きさでありながら,キャラの特徴と魅力をオミットせず,しっかり再現するデザイン力。日本人ならではの繊細な造形センスが詰まった商品形態だ。



中:『ウマ娘 シンデレラグレイ』(ファット・カンパニー)
右:『涼宮ハルヒの憂鬱』涼宮ハルヒ(KDcolle)
その一方で,スケールフィギュアの“リアル感”も捨てがたい。上図で言えば,『お兄ちゃんはおしまい!』のまひろは,キャラをうまく引き出したポージングになっていてとても面白い。『ウマ娘 シンデレラグレイ』のオグリキャップは,髪や衣服のなびきや皺の表現がリアルで,立ち姿にもかかわらず躍動感を放っている。『涼宮ハルヒの憂鬱』のハルヒは,表情・構図・ポージングの造形がうまく,リアルな実在感がある。ねんどろいどのようなミニフィギュアと比べ,スケールフィギュアにはポージングや造形に多彩な表情を付けることができるというメリットがある。


右:『銀河特急 ミルキー⭐︎サブウェイ』チハル&マキナ
(グッドスマイルカンパニー)
ただ造形が精巧になるほど,それだけ値段は高くなる。昨今の物価高騰の影響もあるのだろうが,最近にスケールフィギュアの相場は2〜3万が普通になってしまった。その意味では,グッドスマイルカンパニーの「POP UP PARADE(ポッパレ)」のシリーズなどは,数千円程度のラインナップが多く,幅広いライト層にリーチする商品展開と言える。


右:『CLANNAD』古河渚
(グッドスマイルカンパニー)
もちろんスケールフィギュアほどのクオリティは期待できないが,値段相応かそれ以上の仕上がりではある。“所有”することがフィギュア趣味の本質だとすれば,この手軽さもまたアリだと思う。

ところで,個人的に2025年は『BanG Dream! Ave Mujica』の年だった。放送中も夢中だったし,レビュー記事も相当に気合が入った。上図のFuryuのフィギュアはキービジュアルを元にしたもので,今のところ未彩色だが,ぜひ手に入れたいと思っている。
これまで企業ディーラーの完成品フィギュアばかり紹介してきたが,ワンフェスは本来,ガレージキットの展示と販売を主眼としたイベントだ。一般ディーラーのブースを訪れなければその魅力の半分以上を見逃すことになる。

そしてこちらも『Ave Mujica』が熱い。上図はMUSIC-BOX(点歌台)のオブリビオニスだが,先ほどのFuryuと同じ構図だ。


右:『Fate/Grand Order』ジャンヌ・ダルク(オルタ)
(東消社)
東消社のジャンヌ・ダルクとジャンヌ・ダルク(オルタ)。衣装・髪・槍・旗など,造形のしがいがあるキャラなのだろう。企業・一般どちらでもよく見かける。


右:『Fate/Grand Order』ジャンヌ・ダルク(オルタ)
(Cerberus Project)
Cerberus Projectのジャンヌとジャンヌオルタ。ここは出店がある時には必ず見にいくことにしているが,個性の出し方がとてもうまい。
これ以外にも紹介したいものがたくさんあるのだが,今回はここまでにしておこう。

閉会間際,ワンフェス実行委員会代表の宮脇修一氏(センム)からサプライズ告知があった。2027年冬の開催から,「2日間開催」が復活するというものだ。以前にも2日間開催されていたこともあったが,現在では1日のみだ。ワンフェスは現在,中国,タイ,韓国でも開催されており,2026年にはアメリカにも進出するということだが,どれも複数日の開催であり,日本でもこれに合わせる形で2日間開催を復活させるのだという。ディーラーにとっては“1日で捌く”という焦燥感が改善されるだろうし,僕のような一般客も余裕を持って見ることができるので,この決定は嬉しい限りだ。ちなみにこのニュースに関して,会場では「号外」が配られた。
さて,今年の物欲の祭典も幕を閉じた。僕は暑いのが苦手なので,夏のワンフェスはいつも遠慮することにしている。次回は2027年冬だ。来年はどんな素敵な立体造形物に出会えるだろうか。

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