＊この記事にネタバレはありませんが，各作品の内容に部分的に言及しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は，作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。
今回の記事では，現在放送中の2025年夏アニメの中から特に優れたOP・EDを紹介する。タイトルの下にノンクレジット映像を引用してある（『ダンダダン 第2期』OP，『SAKAMOTO DAYS 第2クール』OP，『その着せ替え人形は恋をする Season 2』OPはクレジットあり）ので，ぜひご覧になりながら記事をお読みいただきたい。なお，通常のランキング記事と同様，一定の水準に達した作品を取り上げるという方針のため，ピックアップ数は毎回異なることをお断りしておく。
- 6位：『ダンダダン 第2期』OP
- 5位：『SAKAMOTO DAYS 第2クール』op
- 4位：『タコピーの原罪』OP
- 3位：『タコピーの原罪』ED
- 2位：『その着せ替え人形は恋をする Season 2』OP
- 1位：『よふかしのうた Season 2』OP
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6位：『ダンダダン 第2期』OP
【コメント】
オカルンの主観カメラで始まるOPアニメーション。世界はモノクロだが，眼鏡を通した景色だけが色づいており，その先にはモモがいる。アイナ・ジ・エンドの主題歌「革命道中」の歌詞「血泥ついたって守りたい／革命道中だって君に夢中／暗闇染み込む世界で見つけた／センチメンタルな恋」がオカルンの心情を代弁する。第2期でますます深まっていくモモとオカルンの関係性を暗示する導入部だ。キャラクター紹介のパートは，Abel Gongoraが手がけた第1期OPアニメーションのカメラワークと色味を踏襲していると見られ，世界観に一貫性が感じられる。ラストの宙を舞うモモとオカルンのカットでは，サイエンスSARUらしい歪み作画が見られる。作画的にも見応えのあるOPだ。
【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出：湯団／作画監督：野田友美，Studio INK-Blue［銀茄子，休眠井盖，灰色菓兒，岩羊，阿鬼，湯団］
【主題歌】アイナ・ジ・エンド「革命道中」
作詞：アイナ・ジ・エンド／作曲：アイナ・ジ・エンド，Shin Sakiura／編曲：Shin Sakiura
5位：『SAKAMOTO DAYS 第2クール』op
【コメント】
シティポップ調の描線と色彩がスタイリッシュなアニメーション。最近よく見かける，スタッフクレジットが背景と一体化したタイプの映像だが，文字列が空間内に“実在”しているという体裁（下図上段・中ではナイフが文字列の手前にあり，坂本が投げ飛ばした敵の足が当たって「企」の字がずれている）になっている点がユニークだ。裂けた文字列がキャラの動きに合わせてスライドし，繋がっていくというギミック（下図中段・左と中）や，大佛の丸ノコに張り付いた文字列（下図中段・右）なども面白い。ラスト，デパートの屋上遊園地らしき場所で坂本が「監督 渡辺正樹」という文字列を武器に敵を倒すシーンは，最高に遊び心が効いている。
【アニメーションスタッフ】
画コンテ・演出：荒木哲郎／アクションビデオコンテ：園村健介／演出補佐：たなかまさあき
【主題歌】Kroi「Method」
作詞：内田怜央／作曲・編曲：Kroi
4位：『タコピーの原罪』OP
【コメント】
冒頭は本編でも語られていたタコピー地球来訪のシーンから始める。おもちゃのような世界観と，主題歌「ハッピーラッキーチャッピー」 のanoの歌声のマッチングが絶妙である。しかしそれと裏腹に，撃墜された宇宙船が火山の中に落ちて地球が爆発するという衝撃的なオチと「罰罰罰」「飢え飢え飢え飢え」「腐ってるのは地球のほう」という毒のある歌詞。ファンシーとポイズンの配合がユニークなOPである。
しずか，まりな，直樹の自宅シーンでは，本編ではあまり語られることのなかった大人たちの日常が目を引く。本編ではあくまでも“毒親”として描かれていた彼らの“事情”を匂わせる気の利いた演出だ。
「仲直りリボン」で強引にしずかとまりなを繋ごうとするタコピー。ほのかに微笑むしずかと，まんざらでもないまりな。本編の結末を6年分巻き戻した“架空”のシーンだ。
仮にタコピーが「仲直り」に成功していたら，タコピーも2人のこんな表情を見ることができただろうか。ラストはとびっきりの笑顔で華やぐ彼ら・彼女らの姿を，タコピーが「ハッピーカメラ」で写真に収める。これがこの「ハッピー道具」の本来の用途であることを思い出させるかのように。
【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出：小野寺蓮／作画監督：Weilin Zhang／総作画監督：長原圭太
【主題歌】ano「ハッピーラッキーチャッピー」
作詞：あの／作曲：あの，TAKU INOUE
3位：『タコピーの原罪』ED
【コメント】
先述した『タコピーの原罪』OPが情報量満載にして“能弁”だとすれば，このEDはまさしく“寡黙”である。
基本的には，とぼけたような表情のタコピーがそこに佇んでいるだけ。EDアニメーションのような賑やかさはない。ではなぜこれをOPアニメーションより上位に選んだかと言えば，タコピーのこの佇まいこそが，この作品のメッセージの本質を言い当てているからである。作品レビューにも書いたように（下記の記事リンクを参照），タコピーはしずかやまりなたちの過酷な現実を変える力はなかった。しかしその柔らかな存在そのものが，彼女たちの生を繋ぎ，彼女たちが未来を紡いでいく力となったのである。このEDアニメーションに描かれるタコピーのマスコット的身体と「仲直りリボン」は，タコピーの素朴だが〈繋ぐ力〉を持った存在性が見事に表現されている。
タコピーの顔の前を星が流れる（上図・左）。光に向かって何かが飛来する（上図・中）。大量の流星のようなものが夜空を落ちてくる（上図・右）。やや難解な描写だが，タコピーが地球に降り立つ場面だろうか。OPアニメーションと比べるとはるかに象徴的で暗示的だ。
輝く光の円の前に佇むタコピー。そこにしずからしき人影が現れる。物語冒頭の土管のシーンなのだろう。tele（谷口喜多朗）の主題歌「がらすの線」における「ほらね，もとどおりだよ。」という歌詞は，タコピーの球体の身体と光の円の描写と相まって，〈円環〉のイメージ，その未来への希望を想起させる。しかし同時に，「がらすの線」「ばらばら」という言葉が，この〈円環〉の脆さ，危うさを示唆しているようでもある。確かに本編で示されていたように，「仲直りリボン」はそう簡単に人と人とを繋ぐわけではないのだ。
【アニメーションスタッフ】
演出・作画：ちな／撮影・編集：神田智隆
【主題歌】Tele「がらすの線」
作詞・作曲・編曲：谷口喜多朗
2位：『その着せ替え人形は恋をする Season 2』OP
【コメント】
まさに『その着せ替え人形は恋をする』というタイトル通りのOPだ。
いつもの窓際の席に新菜がいない。少し寂しげな表情になる海夢。俄かに走り出し，学校内を探し始める。新菜に呼び止められたのか，海夢の表情がパッと華やぐ。しかしここで新菜の姿を敢えて出さず，奔走する海夢だけを描いたのは大きなポイントかもしれない。いないからこそ気になる，“不在の存在感”という効果がある。
この辺りのシーンでは，ライフサイズの海夢と巨大化した海夢が二重に映し出されるという構図も面白い。先ほどの『SAKAMOTO DAYS 第2クール』OPと同様，クレジットが背景と一体化したタイプの映像だが，画面内に“存在している”というより，“こっそり忍ばせてある”という体裁だ。とにかく色々な場所にクレジットの文字が隠れているので，それらを探し出すだけでも楽しい。
独りコス作りに精を出す海夢。しかしどうも上手く行かない。この辺りも“新菜の不在の存在感”を感じさせる。
麗様コスをした海夢が駆け出し，バニーの姿に変わって一瞬転けそうになる。この辺りの海夢の所作がスピラ・スピカの主題歌『アオとキラメキ』のリズムと完璧にマッチしている。こうした演出もあってか，海夢が主題歌を歌っているかのような気分にすらなる。アニメーションと主題歌との一体感が感じられる優れた演出だ。
そして“王子様”新菜，満を持しての登場である。彼は彼で人形の頭部にぞっこんなのだが，彼の「綺麗」はすでに海夢にも作用を及ぼしている。ラストの海夢の照れ顔は，『その着せ替え人形は恋をする』というタイトルを文字通り絵にしたような表情だ。恋と趣味。２つの“好き”を的確に取り合わせた素晴らしいOPである。
【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出：米森雄紀／作画監督：石田一将／原画：けろりら
【主題歌】スピラ・スピカ「アオとキラメキ」
作詞：幹葉／作曲・編曲：清家寛
1位：『よふかしのうた Season 2』OP
【コメント】
90年代によく見かけたタイプの高級カセットデッキ。そのウィンドウにCreepy Nutsの主題歌「Mirage」の文字が浮かび，“鶯餡子”が因縁のジッポーライターを弄ぶ。彼女とその過去がSeason 2の主旋律となることを暗示した導入部だ。
ラテンと言うべきか，アフロビートと言うべきか，そのどちらでもない“異国情緒”と言うべきか。Creepy Nutsの楽曲は，そんな湿度の高い混淆感と猥雑感と共に始まる。
「少年サンデー」公式サイトのインタビューで，R-指定は「Mirage」のコンセプトに関して次のように語っている。
Season1では，夜ふかしをし始めた頃のワクワク感とか，夜の持つカラッとした干渉してこない優しさが描かれている気がしていて。思春期の子供達の避難場所としての夜，みたいな側面が大きかったのかなと原作を読んで思ったんです。一方，Season2に登場する夜はもっとじっとりしているというか。さっき言ったワクワクの残りかすというか，燃えかすみたいなものが積もっていく場所でもあると思うんですよね。未練や後悔の投棄場所というか。まさにあれですよ，“切ない気持ちのゴミ捨て場”。 *1
要するに，Season 1の“夜”は夜守コウにとっての“夜”であり，Season 2の“夜”は，鶯餡子にとっての“夜”だというわけだ。確かに，Season 2で描かれる“夜”は，ハロウィンナイトのように騒々しく，都会の路地裏のように陰湿だ。それは彼女が最も嫌う吸血鬼が住まう“夜”であり，したがって彼女が決別しようとした“夜”なのかもしれない。
髪を結び，コートを纏い，丸眼鏡を装着する。“探偵さん”の完成だ。しかし「第11夜 んちゅ」が終わった今となっては，この装いが彼女にとって“作られた”キャラ，“無理”そのものだったことがわかる。
ジッポーの炎が地獄の業火のように燃え上がり，“餡子”を包み込む。吸血鬼への激しい憎悪。その一方で，走馬灯のように挿入される過去の回想。かつての目代キョウコの夜は，夜守コウの夜と同じくらい彩り豊かだったのだろう。
“餡子”とナズナを結ぶ赤い糸。その鮮やかな赤は，“血”の赤を連想させる。この2人だけでなく，他の吸血鬼たちをも繋いでいるのが意味深だ。
ラストシーンでは“餡子”とナズナの激しいバトルが描かれる。荒ぶるナズナの姿がラフな描線で描かれているのが印象的だ。激しい戦いであるにもかかわらず，“餡子”の表情はどこか満足げであり，むしろナズナとの“夜”を満喫しているようにすら見える。
“鶯餡子”を中心とした，きわめてストーリー性の高い映像であり，本編の内容を補完する優れたOPアニメーションと言える。
【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出：宮西哲也／作画監督：ライデンフィルム東京スタジオ［渡邉和夫］，佐川遥，しろくま
【主題歌】 Creepy Nuts「Mirage」
作詞：R-指定／作曲：DJ松永
以上，当ブログが注目した2025年夏アニメOP・ED6作品を挙げた。1位の『よふかしのうた Season 2』OPに関しては，ほとんど作品分析と言ってもいいくらいの分量になったが，それくらい本編とリンクしたストーリー性の高いOPだということだ。
すでに夏アニメもすでに終盤に差しかかっているが，今後の鑑賞の参考にしていただければ幸いである。
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