アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

アニメをより深く観るためのツール:僕らがアニメをアーカイブする

アニメに限らず,ほぼすべての映像作品は“ただ観ている”だけでも十分に楽しめる媒体として作られている。だが同時にほぼすべての映像作品は,その表現の技法,クリエーターの思想,制作の背景などを知ることで,その楽しさがより深まるようにも作られているのだ。本記事では,「アニメをより深く観るために」役立つツールを紹介したいと思う。

 

「アニメスタイル」

animestyle.jp

雑誌「アニメスタイル」は,クリエーターとその仕事にスポットを当て,作品の制作にまつわる多くの情報を掲載した極めて濃度の高い雑誌である。編集長はアニメライターの小黒祐一郎 (@animesama) | Twitter。2000年に刊行を開始後,2度の休刊とリニューアルを経て,現在では不定期刊行されている。ネット上の「WEBアニメスタイル」でも,WEBマガジンの形式で様々な情報を提供している。

「アニメスタイル」の最大の特徴は,クリエーターのロングインタビュー,レイアウト,原画,設定資料など,非常に多くのコアな情報を掲載している点だ。インタビュアーの小黒はまさに“かゆいところに手が届く”質問でインタビュイーから貴重な情報を引き出す。レイアウトや原画などの資料には的確なコメントが付されており,すぐれた解剖図を閲覧しているような気になる。

当然のことながら,アニメは“制作者”という匿名の人格が作っているわけではない。個々のクリエーターには,それぞれの特技・特徴・手癖がある。そうした制作サイドの〈固有名〉を知る上でも役立つ雑誌だろう。アニメファンならば必須のアイテムだ。

雑誌は「アニメスタイルONLINE SHOP」で購入可能だが,一部売り切れになっている号もある(Amazonでの取り扱いもあるが,プレミア価格が付いている場合もある)。早めに手に入れておくことをお勧めする。

「MdN」

 「MdN」は株式会社エムディエヌコーポレーションが発刊する雑誌で,グラフィックデザインとWebデザインの情報提供を目的としている。2013年以降は,アニメ,ゲーム,マンガなどのビジュアル・カルチャー全般を扱うようになり,エンターテインメント色の濃い雑誌となった。

「MdN」の編集部はアニメ制作の内側にいる人たちではないので,その編集方針は「アニメスタイル」とは大いに異なるが,〈デザイン〉を主軸として諸分野を横断するそのフットワークの軽さは大いに好感が持てる。マンガとアニメのタイトル文字をテーマに特集を組める雑誌などそうそうないだろう。

そんなユニークな「MdN」だが,たいへん残念なことに,2019年4月号を以て休刊となった。ただし,バックナンバーは紙媒体・電子媒体ともにAmazonで購入可能だ。

以下,アニメを直接特集した号をリストアップしておく。記事が見づらくなって申し訳ないが,表紙のデザインも見所なので,あえて画像付きの商品情報をリストしておく。購入の参考にしてもらいたい。

月刊MdN 2013年 9月号(特集:マンガとアニメのグラフィックデザイン) [雑誌]

月刊MdN 2013年 9月号(特集:マンガとアニメのグラフィックデザイン) [雑誌]

 
月刊MdN 2014年 4月号(特集:タイポグラフィの現在) [雑誌]

月刊MdN 2014年 4月号(特集:タイポグラフィの現在) [雑誌]

 
月刊MdN 2014年 6月号(特集:キャラクターデザインの世界) [雑誌]

月刊MdN 2014年 6月号(特集:キャラクターデザインの世界) [雑誌]

 
月刊MdN 2014年 8月号(特集:アニメのグラフィックデザイン)[雑誌]

月刊MdN 2014年 8月号(特集:アニメのグラフィックデザイン)[雑誌]

 
月刊MdN 2015年 6月号(特集:漫画/アニメ/イラスト/アート 少女の表現史)[雑誌]

月刊MdN 2015年 6月号(特集:漫画/アニメ/イラスト/アート 少女の表現史)[雑誌]

 
月刊MdN 2015年 8月号(特集:制服―虚構とリアル、その狭間のデザイン)[雑誌]

月刊MdN 2015年 8月号(特集:制服―虚構とリアル、その狭間のデザイン)[雑誌]

 
月刊MdN 2015年 11月号(特集:エフェクト表現の物理学 爆発と液体と炎と煙と魔法と。)[雑誌]

月刊MdN 2015年 11月号(特集:エフェクト表現の物理学 爆発と液体と炎と煙と魔法と。)[雑誌]

 
月刊MdN 2015年 12月号(特集:デジタル/SNS以降の新時代デザイン)[雑誌]

月刊MdN 2015年 12月号(特集:デジタル/SNS以降の新時代デザイン)[雑誌]

 
月刊MdN 2016年 4月号(特集:おそ松さん)[雑誌]

月刊MdN 2016年 4月号(特集:おそ松さん)[雑誌]

 
月刊MdN 2016年10月号(特集:君の名は。 彼と彼女と、そして風景が紡ぐ物語 / 新海誠)[雑誌]

月刊MdN 2016年10月号(特集:君の名は。 彼と彼女と、そして風景が紡ぐ物語 / 新海誠)[雑誌]

 
月刊MdN 2017年4月号(特集:作品のスタッフ・クレジットから読み解けるもの)[雑誌]

月刊MdN 2017年4月号(特集:作品のスタッフ・クレジットから読み解けるもの)[雑誌]

 
月刊MdN 2017年5月号(特集:TRIGGER?若きアニメスタジオ「トリガー」の5年半史)[雑誌]

月刊MdN 2017年5月号(特集:TRIGGER?若きアニメスタジオ「トリガー」の5年半史)[雑誌]

 
月刊MdN 2018年3月号(特集:ダークヒーローの系譜、その最新形)[雑誌]

月刊MdN 2018年3月号(特集:ダークヒーローの系譜、その最新形)[雑誌]

 
月刊MdN 2018年5月号(特集:ポプテピピックの表現学)[雑誌]

月刊MdN 2018年5月号(特集:ポプテピピックの表現学)[雑誌]

 
月刊MdN 2018年10月号(特集:アニメの作画)

月刊MdN 2018年10月号(特集:アニメの作画)

 

星海社新書の各書

星海社新書から発行されている以下の4書は,アニメ作品そのものではなく,アニメ産業の動向や製作(制作)事情を取り扱ったものだが,そうした作品の外的な要素を知ることで,作品鑑賞に広がりが出ることは間違いない。

アニメプロデューサーになろう! アニメ「製作(ビジネス)」の仕組み (星海社新書)
 
製作委員会は悪なのか? アニメビジネス完全ガイド (星海社新書)

製作委員会は悪なのか? アニメビジネス完全ガイド (星海社新書)

 

上掲の3書に関しては,以前の記事で簡単にレビューしたのでご覧いただきたい。

www.otalog.jp

これらに加えて,株式会社Triggerの取締役・舛本和也の下掲書もたいへん面白い。

アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本 (星海社新書)

アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本 (星海社新書)

 

著者の舛本は2000年に制作進行としてキャリアをスタート。2006年に株式会社GAINAXに入社し,『天元突破グレンラガン』(2007年)などに携わり,その後2011年に今石洋之や大塚雅彦らとともに株式会社Triggerを設立。『リトルウィッチアカデミア』(第1作,2013年)や『キルラキル』(2013年)に携わる。舛本はこの間,制作進行からプロデューサーへとステップアップしている。

『アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本』は,そんな舛本の「制作進行」としての仕事の楽しさ厳しさを具体的に説明した書物である。「制作進行」と言えば, アニメ『SHIROBAKO』(2014年)の「宮森あおい」というキャラクターによってその仕事の内実が一般に知られるようになったが,本書はより具体的な仕事内容が舛本流の熱い語り口(さすがはTriggerである)で綴られている。そもそもアニメの仕事の中でも,「制作進行」は素人にはややわかりづらい役職だ。『SHIROBAKO』とあわせて本書を読めば,その仕事ぶりがよりはっきりとわかるだけでなく,『SHIROBAKO』という作品そのものを見直すことになるかもしれない。

日本動画協会「アニメ産業レポート」

「一般社団法人 日本動画協会」が「アニメビジネスの状況の把握と認知の向上を目的に,アニメ産業の調査を実施し,統計化等により各種データを発表・セミナーなどを実施」*1 し,その統計をまとめたもの。業界人や研究者向けのかなりマニアックな内容だが,アニメを産業として捉える上で欠かせない資料集である。過去記事のレビューを掲載しておく。

www.otalog.jp

毎年9月頃に紙媒体と電子媒体が発行される。日本動画協会内のページから購入することができる。当該ページにはサマリーもあるので,参考にしてみてはいかがだろうか。

Twitter

アニメーターの中にはTwitterアカウントをお持ちの方もいる。自ら制作に携わった作品への言及のほか,放映中の作品への“実況中継”的なコメント,はては社会情勢や政治への意見など,彼ら/彼女らの種々雑多な発言に触れることができる。アニメーター達のこうした“生の声”を聞けるのは,Twitterの醍醐味と言えるだろう。

以下,僕のTwitterアカウントで作成した「アニメーター」と「アニメ制作会社」のリストを掲載しておく。今後随時情報を更新していく予定である。

アニメーター:@alter_Ego_3_02/アニメーター on Twitter

アニメ制作会社:@alter_Ego_3_02/アニメ制作会社 on Twitter

さいごに:僕らがアニメをアーカイブする

アニメ作品が“カルチャー”としての地位を確立してから久しい。だとすれば,それはもはや一過性の消費財ではなく,〈アーカイブ〉されるべき文化財であるべきだ。今後は「特定非営利活動法人 アニメ特撮アーカイブ機構(ATAC)」などのNPOや「国立映画アーカイブ」などの公的機関によるアーカイブが充実していくことだろう。そしてアーカイブされることによって,過去の作品を観直し,その価値を再評価する機会がますます増えていくことだろう。

その意味で,「アニメスタイル」や「MdN」をはじめとする情報誌を買い揃え,手元に置き,常に参照できる状態にするということは,まさしくアニメを個人レベルで〈アーカイブ〉するということでもある。新作を持続的に鑑賞することももちろん必要だが,時に上掲の情報誌などを参考にしながら過去作品を観直してみるのもいいのではないだろうか。

追記

本記事を投稿後,2019年7月18日の午前,京都アニメーションにて痛ましい事件が起こった。

アニメーターは僕らにとって誇るべき文化そのものであり,貴重な財産であり,かげないのない命である。アニメを愛し,最高水準のアニメを作ろうと日々努力をしてきた人たちの命を奪ったことに怒りを禁じ得ない。

これから僕らにできることは,京都アニメーションの作品とその作り手を今まで以上によく知り,しっかりと心の中に〈アーカイブ〉していくことだ。奪われたものはあまりに大きいが,彼ら/彼女らが遺してくれたものも限りなく大きく尊い。

さいごに,京都アニメーションの一刻も早い復活を願うとともに,亡くなられた方には心からご冥福をお祈り申し上げたい。