2019年夏アニメもクール終盤に入り,ほとんどの作品が数話を残すのみとなっている。注目すべき作品はいくつかあったが,中でも以前の記事でイチオシとして紹介した岡田麿里原作の『荒ぶる季節の乙女どもよ。』はやはり面白い。その他,『ヴィンランド・サガ』,『炎炎の消防隊』,『彼方のアストラ』,『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』など,当初から注目を集めた作品が健闘したクールだったと言えるだろう。
その一方で,春クールから続いている『鬼滅の刃』のように,視聴者の度肝を抜くようなクオリティの作品は少なかったように思う。良くも悪くも期待通り,というわけだ。日々制作技術が向上していくなか,突出した作品を作ることが難しくなっているという事情もあるだろうが,ある種の“突然変異”のようなものを待望してしまうのが視聴者の心理というものだろう。次クールに期待したい。
僕が来期に注目する作品は以下の通りである。いつもの通り,五十音順に紹介する。
- アズールレーン
- アフリカのサラリーマン
- 歌舞伎町シャーロック
- 警視庁 特務部 特殊凶悪犯対策室 第七課 -トクナナ-
- PSYCHO-PASS サイコパス 3
- ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld
- ハイスコアガール II
- BEASTARS
- Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-
- 星合の空
アズールレーン
- 監督:天衝(田中基樹)
- シリーズ構成:鋼屋ジン
- キャラクターデザイン・総作画監督:野中正幸
- 制作:バイブリーアニメーションスタジオ
原作は中国の上海蛮啾網絡科技有限公司(マンジュウ)と厦門勇仕網絡技術有限公司(ヨンシー)が共同開発し,Bilibiliが配信するスマホ向けゲームアプリ。中国発のコンテンツのアニメ化ということもあり,今後のアニメ原作の供給源という問題を考察する上でも注目しておきたいところだ。
監督は『きんいろモザイク』(2013年)や『グリザイアの果実』(2014年)の田中基樹。2011年より天衝という名義で活躍し,2017年に本作制作のバイブリーアニメーションスタジオを設立し,代表を務めている。
アフリカのサラリーマン
- 監督:畳谷哲也
- シリーズ構成・脚本:百瀬祐一郎
- 制作:HOTZIPANG
ケモノ系ギャグアニメ。正直,当初はピックアップする予定はなかったのだが,大塚明夫,津田健次郎,下野紘,木野日菜,石田彰,喜多村英梨,小倉唯,神谷浩史,鈴木達央,河西健吾といった主要キャラクターの豪華キャスティングを見れば,取り上げざるを得ないというものだ。声優オタク必見の作品になるだろう。
歌舞伎町シャーロック
- 監督:吉村愛
- シリーズ構成:岸本卓
- キャラクターデザイン:矢萩利幸
- アニメーション制作:Production I.G
架空の町・新宿區歌舞伎町を舞台にした,ミステリー&コメディ要素のオリジナルアニメ。監督は『銀魂』(2006-2010年),『黒執事』(2008-2009年),『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2011年)など,数々の作品で演出を務めてきた吉村愛。オリジナル作品ということもあり,Production I.G制作という点以外は未知数だが,それだけにダークホースとなる可能性がある。
警視庁 特務部 特殊凶悪犯対策室 第七課 -トクナナ-
- 総監督:栗山貴行
- 監督:小坂春女
- シリーズ構成:東出祐一郎
- 制作:未公表
TVアニメ「警視庁 特務部 特殊凶悪犯対策室 第七課 -トクナナ-」本PV
かつて世界の覇権を握っていたドラゴンの力を得ようと凶悪事件を引き起こす「ナイン」と,それに対抗すべく組織された「警視庁 特務部 特殊凶悪犯対策室 第七課」,通称「トクナナ」。異世界と現代の混交モノだが,これも完全オリジナルである。
総監督は『アンゴルモア元寇合戦記』(2018年)の栗山貴行,監督はかつて『美少女戦士セーラームーン』(1992-1997年)で絵コンテと演出を務めたことで知られる小坂春女,シリーズ構成は『Fate/Apocrypha』(2017年)の原作者・東出祐一郎。この布陣も注目ポイントだ。制作会社が公表されていないが,PVを見る限りクオリティは高そうだ。
PSYCHO-PASS サイコパス 3
- 監督:塩谷直義
- 制作:Production I.G
言わずと知れた傑作アニメの3期目。現時点で脚本家やシリーズ構成担当が公表されていないのがやや気になるが(まさか虚淵玄…ということもないだろうが),監督の塩谷直義を信じよう。
ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld
- 監督:小野学
- キャラクターデザイン:足立慎吾,鈴木豪,西口智也
- 撮影監督:脇顯太朗,林賢太
- 音響監督:岩浪美和
- 音楽:梶浦由記
- 制作:A-1 Pictures
SAOシリーズ第3期の分割2クールの後半ということで,前半のクオリティが継続されれば安定して視聴できる作品になるはずだ。各種エフェクトに力を入れた絵作りをしている作品なので,個人的には脇顯太朗と林賢太の撮影班の仕事にも注目したいところ。
ハイスコアガール II
- 監督:山川吉樹
- シリーズ構成:浦畑達彦
- アニメーション制作:J.C.STAFF
【10月放送開始予定】TVアニメ『ハイスコアガールⅡ』ティザーPV
90年代のアーケードゲームの状況をつぶさに描写し,“ちょっと懐かしいあの時代”を舞台に甘酸っぱい恋物語を描いた『ハイスコアガール』。その待望の2期目が10月からいよいよ始まる。押切蓮介による原作コミックは完結しており,僕は読了している。フル3DCGのクオリティが非常に高く,この作品の世界観にもマッチしている。2期目も楽しみの作品だ。過去記事のレビューを挙げておく。
BEASTARS
- 監督:松見真一
- 脚本:樋口七海
- 制作:オレンジ
板垣巴留による同名コミックが原作。「第11回マンガ大賞」で大賞を受賞するなど,極めて評価の高い原作のアニメ化とあり,期待が高まる。ケモノ要素を“ほのぼの”系ではなく,人の心の業の寓意として用いているところが面白く,深いテーマ性もある。「+Ultra」枠というのも興味深い。このテーマに対し,海外の視聴者がどう反応するか楽しみだ。
制作は『宝石の国』(2017年)のオレンジ。制作水準の高さは保証済みと言えるだろう。
Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-
- 監督:赤井俊文
- 制作:CloverWorks
TVアニメ「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」Episode 0 PV
TVアニメ「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」第1弾PV
『FGO』のマスター諸氏であれば,ゲーム内で公開された「Episode 0」の高いクオリティを覚えていることだろう。『FGO』の中でも特に人気の高い「バビロニア」をピックアップしてきただけあって,これまでのアニメ化以上に本腰を入れた企画であるように思える。
監督は『ヤマノススメ セカンドシーズン』(2014年)のエンディング絵コンテ,『ダーリン・イン・ザ・フランキス』(2018年)で副監督を務めた赤井俊文。
なお,「Episode 0」は以下のページ内の配信サイトで鑑賞可能だ。
星合の空
- 原作・脚本・監督:赤根和樹
- アニメーション制作:エイトビット
男子中学のソフトテニス部を舞台にした青春ストーリー。この手の物語にしては珍しく,完全オリジナルアニメだ。まず上掲のPVを観て頂きたい。派手な作品ではないが,『ヤマノススメ』シリーズを手がけたエイトビットの繊細な絵作りが心を打つ。この作品をもって,今回のイチオシとしたい。
原作・脚本・監督は『コードギアス 亡国のアキト』(2012-2016年)などの赤根和樹。制作はエイトビット。
現時点ではこんなところだろうか。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の外伝や『ハロー・ワールド』など劇場公開される作品もある。秋の夜長にアニメ三昧と行こうではないか。