＊この記事にネタバレはありませんが，各作品の現時点までの話数の内容に言及しています。未見の作品を先入観のない状態で鑑賞されたい方は，作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。
日本列島では相変わらず終わりの見えない酷暑が続く中，2023年夏アニメはほとんどの作品がクール半ばまでの放送を終えた。ここで当ブログ独自の観点から注目の作品を振り返っておこう。これまで通り五十音順に（ランキングではないことに注意）注目作品をいくつか取り上げる。
なお「2023年 春アニメは何を観る？」の記事でピックアップした作品は，タイトルを赤色にしてある。
- 1 『AIの遺電子』
- 2 『アンデッドガール・マーダーファルス』
- 3 『いきものさん』
- 4 『幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-』
- 5 『呪術廻戦 懐玉・玉折／渋谷事変』
- 6. 『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』
- 7. 『ホリミヤ -piece-』
- 8. 『わたしの幸せな結婚』
1 『AIの遺電子』
【コメント】
従来型の“人間対AI”あるいは“人間対ロボット”という対立構図ではなく，“人間ーAIーロボット”というスペクトルで心の在処を問う。アニメーションという面では特筆すべきものはないが，当ブログでも何度か言及している〈AIと心〉をめぐる文化表象の1サンプルとして注目すべき作品だ。
2 『アンデッドガール・マーダーファルス』
【コメント】
なんと言っても，輪堂鴉夜役の黒沢ともよと真打津軽役の八代拓の掛け合いが耳心地よく，声優の技を全面に押し出した作品と言える。黒沢にせよ八代にせよ，これまでの傾向からすると少々珍しい“人外”という役どころなわけだが，すでにこの両名でなければ，と思わせるほどの説得力ある演技をしている。首だけのヒロインとその“弟子”としての半人半鬼というキャラコンビネーションも面白く，デザインも美麗。リズム感のある演出も見応えがある。
3 『いきものさん』
【コメント】
1分半程度の超短尺ながら，ユニークなキャラ，シュールな展開，そして魅力的なアニメーションが癖になる作品。アニメの世界では，シンプルで丸みのあるキャラはむしろ難しいと言われることがあるが，この作品の主人公いがぐりと犬の絡みなども，非常にハイセンスなアニメーションを駆使していることが伺える。アニメファンならば，こうした作品は無視すべきではない。
4 『幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-』
【コメント】
まず『ラブライブ!』というアイドル・コンテンツをファンタジーものとしてスピンオフ化するというアイデアが面白い。マンネリ化しやすいコンテンツの“リサイクル”の方法として1つの解を提示したと言えるだろう。また，キャラクターデザイン，各話の作画，歌唱シーンの演出など多くの点で今期作品の中でも抜きん出ている上，話数ごとのクオリティの変化もまったく見られない点なども評価に値する。
5 『呪術廻戦 懐玉・玉折／渋谷事変』
【コメント】
監督交代によって作画や演出の方針が大きく変わったものの，概ね高評価を得ているようだ。個人的には，絵コンテ：御所園翔太監督／演出：なかがわあつしによる「#29 玉折」がたいへん面白く，後半の「渋谷事変」への繋ぎとしても優れた話数だったのではないかと思う。うまいアニメーターたちの“技”を堪能できる良質な作品だ。
6. 『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』
【コメント】
第1話の超ハイクオリティ演出が視聴者の度肝を抜いた本作だが，その後も息切れを起こすことなく，優れた話数を連発している。“ゾンビ”という絶望的な状況にアキラという超絶ポジティブなキャラをぶつけることで，生と死，笑いと絶望，喜劇と悲劇を隣り合わせにした点が本作の魅力だ。アニメでは，そうした矛盾した状況をビビッドな色彩やキャラの疾走感などで的確にアニメートしている。
7. 『ホリミヤ -piece-』
【コメント】
リニアなストーリー展開という“枷”から解放されたからか，第1期よりも伸び伸びとした雰囲気に仕上がっている印象がある。特にpage.6「お泊まり会」やpage.4「堀こたつ」などの場面設定がたいへん面白く，学園ものというよりはシチュエーションコメディのような趣だ。爽やかなオープニングアニメーションも好印象。
8. 『わたしの幸せな結婚』
【コメント】
『メイドインアビス』（2017年-）のキネマシトラス制作とあって，当初から期待された作品だが，その美麗な作画と演出は期待を大きく上回る出来栄えと言っていいだろう。特に絵コンテ・演出：小出卓史の「第六話 決意と雷鳴」は，美麗な作画とシンボリックな演出で大向こうを唸らせる見事な話数だった。後半の話数も期待したい。
以上，「アニ録ブログ」が注目する2023年夏アニメ8作品を挙げた。今回もほぼすべてが原作付きである。オリジナルアニメの難しさを痛感する。
今回の記事では挙げなかったが，この他に第1期からのクオリティダウンが心配された『無職転生Ⅱ〜異世界行ったら本気だす〜』がクール半ばから“復活”の兆しを見せており，後半の話数が楽しみだ。ひょっとしたら番狂せを期待できるかもしれない。
最終的なランキング記事は，全作品の放映終了後に掲載する予定である。
