アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2021年 夏アニメは何を観る?来期おすすめアニメの紹介ー2021年春アニメを振返りながらー

 

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『Sonny Boy』公式HPより引用 ©︎Sonny Boy committee

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2021年 春アニメ振返り

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2021年春アニメは脚本の力が突出した作品が多かったように感じられる。

なかでも木下麦監督『オッドタクシー』は,対話劇の面白さ,絶妙な伏線,緻密な物語展開によって,近年のアニメにはなかなか見られないユニークなアニメ体験を提供する作品となった。マンガ『セトウツミ』此元和津也の本領が発揮された傑作である。

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高橋敦史監督『ゴジラ S.P.〈シンギュラポイント〉』は,円城塔による緻密なSF世界観をベースにした新感覚ゴジラ・アニメだ。視聴者に媚びないその硬派な語り口は評価が分かれる可能性があるが,逆にそれこそが本作を唯一無二にしている持ち味でもある。対して雨宮哲監督『SSSS.DYNAZENON』長谷川圭一は,たっぷりと間をとった台詞回しや繊細な心理描写など,情感的な演出で作品を彩っており,まさしく「情動」を怪獣の出現要件にするなど,〈感情〉的なものを作品のライトモチーフにしているようである。言ってみれば前者が“叙事アニメ”,後者が“叙情アニメ”であり,同じ怪獣を題材としながらも好対照を成す2作品を比較しながら鑑賞できたクールだった。

その叙事性と叙情性の按配が秀でていたのがエザキシンペイ監督『Vivy -Fluorite Eye's Song-』だ。AIや世界分岐などゴリゴリのSF設定を基盤にする一方で,「心」や「愛」といった情緒的なテーマをたっぷりと盛り込むことで,“設定を楽しみながら感動できる”という,バランスのよい作品になっている。脚本を手がけるのは長月達平と梅原英司。長月は『Re:ゼロから始める異世界生活』(2012年)の原作者であり,梅原もそのアニメ版(2016年春-)の各話脚本を手がけているが,『Vivy』は『リゼロ』の“異世界設定”とはだいぶ趣を異にしており,彼らの間口の広さを伺わせる作品でもある。

なお,2021年春アニメのランキングは後日当ブログで発表する予定である。

では2021年夏アニメのラインナップの中から,五十音順に注目作をピックアップしていこう。

小林さんちのメイドラゴンS

【スタッフ】
原作:クール教信者/監督:石原立也/シリーズ監督武本康弘/シリーズ構成:山田由香/キャラクターデザイン:門脇未来/総作画監督:丸木宣明/美術監督:落合翔子/3D美術:鵜ノ口穣二/色彩設計:秦あずみ/撮影監督:植田弘貴/3D監督:冨板紀宏/音響監督:鶴岡陽太/音楽:伊藤真澄,近藤研二,コトリンゴ/音楽制作:ランティス,ハートカンパニー/アニメーション制作:京都アニメーション

【キャスト】
小林さん:田村睦心/トール:桑原由気/カンナ:長縄まりあ/エルマ:高田憂希/ルコア:髙橋ミナミ/イルル:嶺内ともみ/ファフニール:小野大輔/滝谷真:中村悠一/才川リコ:加藤英美里/ジョージー:後藤邑子/真ヶ土翔太:石原夏織

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クール教信者の同名マンガを原作とする『小林さんちのメイドラゴン』は,ドラゴンと人間の心温まる交流を描いた,いわば“日常系異種族もの”アニメだ。2017年冬に放映された第1期に続く待望の続編である。魅力的なキャラクター,的確なキャスティング(とりわけ長縄まりあのカンナは絶品),そして京都アニメーションならではの繊細な演出。どれを取っても近年のギャグマンガ原作アニメの平均値をはるかに超えるシリーズである。2期では新キャラのイルルが加わり,賑やかさが倍増した作品になることが期待できそうだ。

監督は『CLANNAD』(2007年秋-2008年冬)『響け!ユーフォニアム』(2015年春)などの石原立也。なお,第1期の監督は2019年に惜しくもこの世を去った武本康弘だが,第2期では「シリーズ監督」としてクレジットされている。同僚への深い敬意を示す京都アニメーションの心配りには心を打たれるものがある。

Sonny Boy

【スタッフ】
監督・脚本・原作:夏目真悟/キャラクター原案:江口寿史/キャラクターデザイン:久貝典史/美術監督:藤野真里(スタジオPablo)/色彩設計:橋本賢/撮影監督:伏原あかね/編集:木村佳史子/音響監督:はたしょう二/音楽アドバイザー:渡辺信一郎/アニメーション制作:マッドハウス

【キャスト】
長良:市川蒼/希:大西沙織/瑞穂:悠木碧/朝風:小林千晃


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「異次元を漂流する学校」と「超能力に目覚める少年少女」という設定には昔懐かしい風味を感じるが,『ワンパンマン』(第1期:2015年秋)『ACCA13区監察課』(2017年冬)『ブギーポップは笑わない』(2019年冬)などの夏目真悟が監督・脚本・原作を務めるというのが大いに興味をそそる。またキャラクター原案の江口寿史の画風もあってか,この手の作品にしては青春味を押し出した画作りになっているのも面白い。その一方で,キービジュアルでも表現されているように,真っ黒に塗り潰された背景からは異様な空気が漂う。一筋縄ではいかない作品であることを感じさせる。さらに『カウボーイビバップ』(1998年春)『残響のテロル』(2014年夏)を監督し,音楽に並々ならぬこだわりを持つ渡辺信一郎が「音楽アドバイザー」を務めるというのも注目に値する。オリジナル作品とあって今のところ情報は多くないが,ハイクオリティなアニメになることは間違いないだろう。

白い砂のアクアトープ

【スタッフ】
原作:projectティンガーラ/監督:篠原俊哉/キャラクター原案:U35/シリーズ構成:柿原優子/キャラクターデザイン・総作画監督:秋山有希/美術監督:鈴木くるみ/美術監修:東潤一/美術設定:塩澤良憲/撮影監督:並木智/色彩設計:中野尚美/3D監督:鈴木晴輝/編集:髙橋歩/特殊効果:村上正博/音楽:出羽良彰/音楽制作:ランティス/音響監督:山田陽/プロデュース:infinite/アニメーション制作:P.A.WORKS

【キャスト】
海咲野くくる:伊藤美来/宮沢風花:逢田梨香子/照屋月美:和氣あず未/久高夏凛:Lynn/仲村櫂:土屋神葉/屋嘉間志空也:阿座上洋平/おじい:家中宏

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恒例のP.A.WORKSオリジナル作品。監督は『凪のあすから』(2013年秋-2014年冬)『色づく世界の明日から』(2018年秋)などの篠原俊哉である。シリーズ構成の柿原優子キャラクターデザイン・総作画監督の秋山有希など,『色づく世界の明日から』と同じスタッフが多く参加しており,PVを見るとその画風もかなり近いことがわかる。ただし,『凪のあすから』や『色づく世界の明日から』に見られたファンタジー要素があるかどうかは現時点では不明である。「沖縄の小さな水族館」が舞台ということで,夏クールの季節感に合わせた作品となるのであろうか。 

天官賜福(読み:てんかんしふく)

【スタッフ】
原作:墨香銅臭/監督:李豪凌/キャラクターデザイン:イ・サンミ/サブキャラクターデザイン:キム・ミジン,パク・ミンジョン,ユ・ミンジ,ホン・インス/シリーズ構成・脚本:春日幽鈴/音楽:楊秉音/アニメーション制作:絵夢動画/日本版制作:株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ,株式会社アニプレックス

【キャスト】
謝憐(シエ・リェン):神谷浩史/三郎(サンラン):福山潤/霊文(リンウェン):日笠陽子/南風(ナンフォン):古川慎/扶揺(フーヤオ):小林千晃

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墨香銅臭(ぼっこうどうしゅう)の同名Web小説を原作とする中国アニメ。天賦の才に恵まれた謝憐は修行を積んで飛昇し武神となるが,天界から二度も追放されてしまい,ガラクタ集めをしながら徳を積みなおす…という中国らしい設定のアニメだ。

『羅小黒戦記』(2019年)以来,日本でも中国製のアニメは注目を集めている。PVを観る限り,日本のアニメに決して見劣りしないクオリティのようだ。現在の中国アニメの実力を知る上でも観ておくべき作品だろう。ただし,アニメはナショナリスティックな構えで鑑賞すべきものではない。近頃では“日本アニメvs中国アニメ”という論じ方をする報道も散見されるが,アニメの未来を国どうしの見栄の張り合いのようなものに矮小化するのではなく,純粋に作品の面白さを評価する態度を持ちたいものだ。 

ひぐらしのなく頃に卒

【スタッフ】
原作:竜騎士07,07th Expansion/監督:川口敬一郎/シリーズ構成:ハヤシナオキ/キャラクターデザイン:渡辺明夫/助監督:池端隆史/美術監督:井上一宏(草薙)/美術統括:山根左帆(草薙)/色彩設計:小松亜理沙/撮影監督:戸澤雄一朗(グラフィニカ)/編集:丹彩子(グラフィニカ)/音響監督:森下広人/音響効果:八十正太(スワラプロ)/音楽:川井憲次/音楽制作:フロンティアワークス/プロデュース:インフィニット/アニメーション制作:パッショーネ

【キャスト】
前原圭一:保志総一朗/竜宮レナ:中原麻衣/園崎魅音・詩音:ゆきのさつき/北条沙都子:かないみか/古手梨花:田村ゆかり/大石蔵人:茶風林/富竹ジロウ:大川透/鷹野三四:伊藤美紀/入江京介:関俊彦/北条鉄平:宝亀克寿/羽入:堀江由衣/知恵留美子:折笠富美子/エウア:日髙のり子

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旧作(2006年春・夏)のリメイクかと思わせつつ,話数後半で完全新作であることを明らかにし,まさしく“視聴者騙し”を仕掛けた『ひぐらしのなく頃に業』(2020年秋-2021年冬)。その続編が夏クールに放映される。PVには「物語は戦慄の解答編へ」の文字が見られ,レナがメインキャラとしてフィーチャーされていることから,『業』の「鬼騙し編」の解答編から始まることが推測できる。放映前に『業』を観直しておくのが得策かもしれない。

マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 2nd SEASON

【スタッフ】
原作:Magica Quartet/メインキャラクター原案:蒼樹うめ/キャラクターデザイン・総作画監督:谷口淳一郎/アクションディレクター:橋本敬史/美術監督:内藤健/編集:松原理恵/撮影監督:土屋康次/音楽:尾澤拓実/アニメーションスーパーバイザー:新房昭之/総監督・シリーズ構成:劇団イヌカレー(泥犬)/副監督:宮本幸裕/総作画監督:杉山延寛,山村洋貴/メインアニメーター:伊藤良明,高野晃久,宮井加奈/色彩設計:日比野仁/CG監督:島久登/脚本協力:エルスウェア/音響監督:鶴岡陽太/アニメーション制作:シャフト

【キャスト】
環いろは:麻倉もも/由比鶴乃:夏川椎菜/二葉さな:小倉唯/秋野かえで:大橋彩香/黒江:花澤香菜/七海やちよ:雨宮天/深月フェリシア:佐倉綾音/十咎ももこ:小松未可子/水波レナ:石原夏織

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『魔法少女まどか☆マギカ』(2011年冬)を原作とするスマートフォン向けゲームアプリ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』のアニメ第2期。第1期(2020年冬)は劇団イヌカレー(泥犬)のユニークな空間描写が光るたいへん見応えのある作品になっていただけに,2期にも大いに期待したい。『まどマギ』と言えば原作アニメが放映から10周年を迎え,『[新編]叛逆の物語』の続編『〈ワルプルギスの廻天〉』の制作が発表されたばかりだ。『まどマギ』ブームが再燃する中,『マギレコ』がいかに健闘するか,そして外伝である『マギレコ』のストーリーが今後,虚淵玄脚本の原作と関わってくることがあるかどうかなど,注目ポイントはいくつもある。現時点では公式HPにPVがアップされていないが,いろいろな意味で期待が高まる作品である。

RE-MAIN

【スタッフ】
原作:西田征史,バンダイナムコアーツ,MAPPA/総監督・シリーズ構成・脚本・音響監督:西田征史/監督:松田清/キャラクター原案:付藤加青浬/キャラクターデザイン:田中志穂/エフェクトアニメーション:村松尚雄/美術設定・美術監督:森川篤/撮影監督:朴孝圭/色彩設計:田辺香奈/編集:定松剛/音楽:うたたね歌菜(TaWaRa)/制作:MAPPA

【キャスト】
清水みなと:上村祐翔/岡栄太郎:西山宏太朗/城島譲:木村昴/網浜秀吾:斉藤壮馬/江尻武一:古川慎/猪俣ババヤロ豊:畠中祐/牛窓善晴:廣瀬大介/川窪ちぬ:Lynn/百崎陸:内田雄馬/垣花慶太:八代拓/渡久地光輝:宮里駿/富山健:花江夏樹/福井晃久:高杉真宙(特別出演)/石川則道:松岡禎丞/備前昭充:緑川光

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高校の水球部を舞台とするオリジナルアニメ。『TIGER & BUNNY』(2011年春・夏)でシリーズ構成を担当した西田征史が,原作・総監督・シリーズ構成・脚本・音響監督までを務めるのが注目ポイントだ。公式HPの西田のコメントによれば,自身の中高生時代の水泳と水球の経験が制作の原動力になったようだ。また同じコメントにもあるように,アニメでは難しい水の表現が中心となるため,アニメーション技術にも要注目の作品となるだろう。

2021年夏アニメのイチオシは…

2021年夏アニメの期待作として,今回は7作品をピックアップした。

イチオシは『Sonny Boy』だ。キービジュアルやPVから醸し出される,爽やかさと不穏さの共存が否応なしに目を引く。豪華な座組みにも期待が膨らむ作品だ。次点としては,『白い砂のアクアトープ』『小林さんちのメイドラゴン』『ひぐらしのなく頃に卒』を挙げておこう。

以上,夏アニメ視聴の参考にして頂ければ幸いである。