*この記事にネタバレはありませんが,各作品の内容に部分的に言及しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。
2023年夏アニメも早くも終盤の話数に差しかかっている。最終的なランキング記事の前に,ここでOP・ED のランキングを発表しておこう。タイトルの下にノンクレジットの映像を引用してあるので,ご覧になりながら記事をお読みいただければ幸いである。なお,通常のランキング記事と同様,一定の水準に達した作品を取り上げるため,ピックアップ数は毎回異なることをお断りしておく。
6位:『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』OP
【コメント】
ジャクソン・ポロックのようなランダムな色彩とKANA-BOONのアップテンポな主題歌「ソングオブザデッド」が,この作品の底抜けのオプティミズムをよく表している(ちなみに『さらざんまい』(2019年)の時にも感じたが,KANA-BOONはこの類のアニメのOPとして最適解かもしれない)。前回の話数の一部を活用するのも,“おさらい”的な意味もあってなかなかいいアイデアだ。







【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出:川越一生/原画:ウイリアム・リー,Håvard Skjeggestad DALE,中野悟史,上田華子
【主題歌】KANA-BOON「ソングオブザデッド」
作詞・作曲:谷口鮪/編曲:KANA-BOON
5位:『わたしの幸せな結婚』ED
【コメント】
本編と一味違ったテイストの,アナログ風味のある画風。暗がりの中,怪我をした足の小指をさする物憂げな美世の様子から始まる。しかし伊東歌詞太郎の主題歌「ヰタ・フィロソフィカ」のサビが始まるや,画面は一転して光量が増し,清霞の登場とともに美世の表情にも明るい笑顔が灯る。美世というキャラの心情変化を的確に要約したEDである。和テイストである一方で,大胆なパースや光の演出も見応えがある。






【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出・原画:辻彩夏/作画監督・原画:谷紫織
【主題歌】伊東歌詞太郎「ヰタ・フィロソフィカ」
作詞・作曲:伊東歌詞太郎/編曲:河野圭
4位:『デキる猫は今日も憂鬱』ED
【コメント】
本編のカッチリした作画とは対照的な,絵本風の温かみのあるデザイン。公園で諭吉が幸来に拾われる回想と,同じ公園で酔った幸来を諭吉が連れて帰るシーンとが重ね合わせられた,たいへん物語性の高いEDだ。かつて幸来にしてもらったのと同じように,諭吉が幸来の頭を撫でるカットがこの上なくエモい(通りすがる猫の親子を彼はどんな感情で見遣っているのか)。主題歌「破滅前夜のこと」を歌うasmiのアンニュイ気味のボイスもとても雰囲気がよい。







【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出:鈴木信吾,横峯克昌/作画監督:上條円己,坂元愛里,谷圭司,福永向日葵,室井大地
【主題歌】asmi「破滅前夜のこと」
作詞・作曲:asmi/編曲:Taro Ishida
3位:『幻日のヨハネ』OP
【コメント】
Aqoursの歌う主題歌「幻日ミステリウム」は,マイナーコードをうまく使ったドラマチックな楽曲。ヒーローもののテーマソングを思わせる疾走感もある。どちらかと言えばファンタジーアクションの側面を強調したアニメーションとのマッチングも完璧だ。アニメーションと楽曲,双方ともクオリティが極めて高いOPである。









【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出:山元隼一/作画監督:山本由美子
【主題歌】Aqours「幻日ミステリウム」
作詞:畑亜貴/作編曲:酒井拓也,山本恭平
2位:『呪術廻戦 渋谷事変』ED
【コメント】
羊文学「more than words」の詩的なメロディをバックに,虎杖,伏黒,釘崎の3人が渋谷の街をーそれも主に裏通りをー“写ルンです”で写しとっていく。彼らの撮るスナップショットは,指が写り込んだり構図がずれたりと,都度の瞬間の“生々しさ”を切り取っている。「事変」を前に偵察をしているのだろうか。しかしその様子は,まるで彼らが本来経験するはずだった“青春”を束の間楽しんでいるように見える。本編の血生臭い展開を洗い流すかのような,美しくアオハルなEDである。








【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出:御所園翔太/原画:MAPPA,庄一,三谷高史
【主題歌】羊文学「more than words」
作詞・作曲:塩塚モエカ/編曲:羊文学
1位:『ホリミヤ -piece-』OP
【コメント】
スタッフクレジットと映像を一体にした形の冒頭のシーンは,きわめてデザイン性が高くリッチに仕上がっている。書体のセンスもとてもいい。



Omoinotakeによる主題歌「幸せ」のサビに合わせて挿入される京子・由紀・レミ・桜のカットが非常によい。この作品の表面的な印象は“ラブコメ”だが,そこに潜在する青春の清涼感をこれらのカットが抽出しているかのようだ。




TVアニメというものがOPやEDを含めた形で完成するとすれば,このOPの清爽感と本編のコミカル要素が一体となったものこそ,『ホリミヤ』というアニメの魅力なのだろう。OP・EDの重要性を改めて認識させてくれる,非常に優れたOPである。



【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出:石浜真史/作画監督:飯塚晴子
【主題歌】Omoinotake「幸せ」
作詞:福島智朗/作曲:藤井怜央/編曲:Omoinotake,石井浩平
以上,当ブログが注目した2023年夏アニメOP・ED6作品を挙げた。アニメ再鑑賞の参考にしていただければ幸いである。