*この記事にネタバレはありませんが,各作品の内容に部分的に言及しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。
今回の記事では,2023年秋アニメの優れたOP・EDを紹介する。タイトルの下にノンクレジットの映像を引用してあるので,ご覧になりながら記事をお読みいただければ幸いである。なお,通常のランキング記事と同様,一定の水準に達した作品を取り上げるため,ピックアップ数は毎回異なることをお断りしておく。
- 5位:『SPY×FAMILY Season 2』 OP
- 4位:『葬送のフリーレン』特別ED
- 3位:『アンデッドアンラック』OP
- 2位:『アンデッドアンラック』ED
- 1位:『葬送のフリーレン』ED
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5位:『SPY×FAMILY Season 2』 OP
【コメント】
ポップなカラーとデフォルメされた身体。湯浅政明監督の独特な映像世界が『SPY×FAMILY』という作品にここまでマッチするというのは,ある意味で“大発見”だろう。“湯浅版『SPY×FAMILY』”を夢想してしまうが,いつかCパートなどで披露されないものだろうか。Adoのパンチの効いた主題歌も上手くはまっており,本作の楽しさを的確に伝えた名OPである。
【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出:湯浅政明/作画監督:嶋田和晃
【主題歌】Ado「クラクラ」
作詞・作曲:meiyo/編曲:菅野よう子×SEATBELTS
4位:『葬送のフリーレン』特別ED
【コメント】
「金曜ロードショー」初回放送時に使われた特別版ED。作風を観れば一見してわかるように,アニメーション担当はスタジオシルバー所属の名アニメーター,吉成鋼だ。吉成と言えば,『ヤマノススメ Next Summit』(2022年)のEDアニメーションも担当していたが,もはや“EDアニメの名手”と呼んで差し支えないだろう。その水彩画風の柔らかな作画は,特に女性キャラ同士のふれあいを抒情的に伝える。台詞がなくとも,フリーレンとフェルンの親密な関係性がわかる素晴らしいアニメーションだ。
【アニメーションスタッフ】
吉成鋼
【主題歌】milet「bliss」
作詞:milet/作曲:編曲:Evan Call
3位:『アンデッドアンラック』OP
【コメント】
万華鏡のイメージ,それと連動した“回転”の運動,彩度と明度を落とした作画。本作の持ち味であるアクション的な要素を盛り込みながらも,本編とはテイストの異なるシンボリックな表現が目を引く。そして何より女王蜂の主題歌だ。オーバードライブ感のあるアヴちゃんの歌唱と特徴的なギターリフが盛り上げている。
【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出:松浦力/作画監督:守岡英行
【主題歌】女王蜂「01」
作詞・作曲:薔薇園アヴ/編曲:女王蜂,塚田耕司
2位:『アンデッドアンラック』ED
【コメント】
棺に横たわるアンディ,枯葉=枯死のイメージ,喪服に身を包んだ女性。二人は彼岸への渡し船にようなものに乗っている。本編のポップなイメージと対極的な,“死”を強く喚起させるイメージ群だ。
その後,死のビジョンを“廃墟”が引き継ぐ。実写画像をキャプチャリングしたと思しき映像が挿入されることにより,アニメ的な作画と違ったドキュメンタリ的事実性が付与される。
満開の桜の木の下で,アンディが目を覚ます。それはヴィクトルとジュイスの記憶だったのだろうか。おそらく今後の物語を予示しているのだろう。それまでの寒々とした風景が一変し,画面いっぱいに豊かな桜色が満ちる。しかし梶井基次郎によれば,桜の樹の下には屍体が埋まっているのだ。“ジャンプ作品”の一般的なイメージをよい意味で裏切った,暗示性の強い名EDアニメーションである。
アニメーション担当の紺野大樹は,本作以外にも『炎炎ノ消防隊』(2019年)『約束のネバーランド Season 2』(2021年)『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』(2023年)などでもEDを手がけている。イラストレーション的に“見せる”作画が特徴的だ。
【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出・作画・背景・仕上:紺野大樹
【主題歌】八木海莉「know me...」
作詞・作曲:八木海莉/編曲:益田トッシュ,八木海莉
1位:『葬送のフリーレン』ED
【コメント】
hohobunとして活躍する高橋美帆は,切り紙アニメーションを用いて〈捕食〉や〈食物連鎖〉といったテーマを表現するアーティストだ。本作EDアニメーションでも,動物が植物を育み,植物が動物を育む円環が流れるようなイメージの連鎖によって表現されている。
冒頭のこのイメージ群は,本編第2話「別に魔法じゃなくたって…」の「蒼月草」のエピソードを彷彿とさせる。
色とりどりの植物や花はフリーレンの「花畑を出す魔法」を表している。二次元性を強調した切り絵は,通常のアニメーション作画とはまったく異なる魅力を放っている。
花々の作る図像の中に,フリーレンの顔が浮かび上がる。彼女の悠久の生が,動植物の生の連鎖の中に確かに定位していることを表しているかのようだ。
季節が移りゆく自然の中を,フリーレンが独りゆっくりとした足取りで歩く。独りだった彼女はやがて人々と出会い,歩みを共にする。
エルフの時間と人を含めた他の生物の時間はまったく異なる。しかし仮に束の間の時間だったとしても,その生は確かに重なり合い触れ合い連なり合っている。hohobunの死生観と本作のテーマは確かに共鳴していると言えるだろう。miletの主題歌「Anytime Anywhere」の歌詞「だから もう一度 生まれ変わろうとしても また 私はここを選ぶんだろう」も,この“生のふれあい”のかけがえのなさを示している。美しい絵と音楽と言葉で本作の本質を表現した,見事なOPである。
葬送のフリーレン通常EDでは、miletさん、Evan Callさんの素晴らしい楽曲のお供に映像を作らせていただきました。
— hohobun (@takaharashin) 2023年10月6日
フリーレンが歩む旅路の「時間経過」をテーマに、EDそのものが「綺麗な花畑を出す魔法」になれたらいいなと考えながら制作しております。(続く pic.twitter.com/FVdFKSmjsb
【アニメーションスタッフ】
ディレクター・アニメーション監修・イラスト監修:hohobun
【主題歌】milet「Anytime Anywhere」
作詞:milet/作曲:milet,野村陽一郎,中村泰輔/編曲:Evan Call
以上,当ブログが注目した2023年秋アニメOP・ED5作品を挙げた。秋アニメも残りわずかな話数となったが,今後の鑑賞の参考にしていただければ幸いである。
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