アニ録ブログ

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2024年 冬アニメOP・EDランキング[おすすめアニメ]

*この記事にネタバレはありませんが,各作品の内容に部分的に言及しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。

『僕の心のヤバイやつ』第2クールOPアニメーションより引用 ©︎桜井のりお(秋田書店)/僕ヤバ製作委員会

今回の記事では,現在放送中の2024年冬アニメの中から優れたOP・EDを紹介しよう。タイトルの下にノンクレジットの映像を引用してあるので,ご覧になりながら記事をお読みいただければ幸いである。なお,通常のランキング記事と同様,一定の水準に達した作品を取り上げるため,ピックアップ数は毎回異なることをお断りしておく。

 

6位:『アンデッドアンラック』第2クールED


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【コメント】
第1クールED に続き,OPEDの名手・紺野大樹がアニメーションを担当している。女郎蜘蛛,吊り橋のかかる渓谷,そこに佇む風子。季節は陽光豊かな夏のようだが,まもなく早送りのように秋へと移り変わる。ヴィクトルとジュイスが雪の降り頻る白の世界で寄り添う一方で,アンディと風子は彩り豊かな秋の山中を長閑に散策する。イメージの連鎖は暗示的だ。紺野の独創的な感性と描写力が光る。

『アンデッドアンラック』第2クールEDアニメーションより引用 ©︎戸塚慶文/集英社・アンデッドアンラック製作委員会

【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出・作画・背景・仕上げ:紺野大樹

【主題歌】OKAMOTO'S「この愛に敵うもんはない」
作詞:オカモトショウ作曲:オカモトショウ,オカモトコウキ/編曲:OKAMOTO'S

 

5位:『薬屋のひとりごと』 第2クールOP


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【コメント】
アニメーション担当は『四月は君の嘘』(2014-2015年)『サイダーのように言葉が湧き上がる』(2021年)などのイシグロキョウヘイ。猫猫の裏面としての“妖艶”を強調した第1クールOPとは打って変わって,第2クールOPでは後宮の穏やかな日常をメインに映し出している。特に前半の仕掛け絵本風の構図で切り取った日常風景が面白い。主題歌「アンビバレント」を歌うUruの柔らかい歌声もこの描写によく合っている。一方,第2クールの“裏のキーパーソン”である羅漢花の枯死のイメージと重ね合わせるなど,物語の仄暗い裏面も盛り込みつつ,陰と陽のコントラストを生み出している点も評価に値する。

『薬屋のひとりごと』第2クールOPアニメーションより引用 ©︎日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出:イシグロキョウヘイ/作画監督:中谷友紀子

【主題歌】Uru「アンビバレント」
作詞:Uru /作曲:YAS編曲:田上隼人

 

4位:『ぶっちぎり?!』ED


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【コメント】
“オリジナル・アニメ” の名に違わず独創性に富んだ『ぶっちぎり?!』。キャラ名などから分かる通り,この作品は『千夜一夜物語』をモチーフとしているが,EDではその要素をキャラの服装や美術によってヴィヴィッドにビジュアル化しつつ,本編に劣らずとてもユニークな画作りを行っている。極度のブラコン・まほろをメインキャラに,彼女に言い寄る男たちが袖にされていくというストーリー仕立てで,まほろのコケティッシュな魅力が全面に押し出されている。兄・摩利人のいないカットではほぼ無表情というキャラ付けもいい。甲田まひる「らぶじゅてーむ」とのマッチングも絶妙。中毒性の高い楽曲が本作のスパイスとして効いている。

『ぶっちぎり?!』EDアニメーションより引用 ©︎「ぶっちぎり?!」製作委員会

【アニメーションスタッフ】
絵コンテ:内海紘子演出:鴨居知世/キャラクターデザイン・総作画監督:ちゃまこう/作画監督:堀江由美

【主題歌】甲田まひる「らぶじゅてーむ」
作詞:甲田まひる/作曲:甲田まひる野村陽一郎 /編曲: 野村陽一郎

 

3位:『葬送のフリーレン』第2クールOP


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【コメント】
第1クールOPと同様,本編に登場するキャラクターを紹介していくというスタイルのアニメーション。上品だが豊かな色で彩られた景色やキャラクターが次々と現れては消えていく。単なる人物紹介を超えたアート性を持った画作りだ。

『葬送のフリーレン』第2クールOPアニメーションより引用 ©︎山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

そして今回のOPで何と言っても魅力的なのは,ヨルシカの主題歌「晴る」のアソシエーションだ。「ハル」の音で「春」を,そしてヒンメル(Himmel:天空)ハイター(Heiter:快晴の)といったキャラ名を連想させつつ,本作の基調色である“スカイブルー”と共鳴する。楽曲もそれらのイメージと絶妙にマッチした清爽感がある。

『葬送のフリーレン』第2クールOPアニメーションより引用 ©︎山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

気を衒わない優等生的な作りではあるが,それでいて“作品として伝えたいこと”を譲歩せずにしっかりと表現した優れたOPである。

【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出:斎藤圭一郎/総作画監督:長澤礼子/作画監督:瀬口泉

【主題歌】ヨルシカ「晴る」
作詞・作曲・編曲:n-buna

 

2位:『葬送のフリーレン』第2クールED


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【コメント】
誰かの墓標の前で独り横たわるフリーレン。幼いフェルンも同じように独り森の中に佇む。彼女の赤いリボンが宙に舞い,同じように赤いフリーレンの耳飾りが雫のように落下しながらフリーレンの身体を導く。赤い雫は赤いリボンに囲まれた“眼”の中に落ち,やがてそれはフリーレンがフェルンに贈った蝶の髪飾りに変化する。髪飾りから蝶が舞い飛び,森の中を彷徨う。フリーレンも同じように森の中を彷徨う。

『葬送のフリーレン』第2クールEDアニメーションより引用 ©︎山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

やがてフリーレンは蒼月草と思しき花にとまる蝶を目にする。俄かに蝶は少女へと変わり,フリーレンと手を取り合う。少女はフェルンのようにも見えるし,天から舞い降りた天使か女神のようにも見える。

『葬送のフリーレン』第2クールEDアニメーションより引用 ©︎山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

ラストカット。花畑に横になるフリーレン。しかし彼女はもはや独りではない。おそらく彼女の目には空が半分しか写っていないだろうが,おそらく彼女はそのことにとても満足しているはずだ。

『葬送のフリーレン』第2クールEDアニメーションより引用 ©︎山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

フリーレンとフェルンの出会いを柔らかいタッチの絵と人形のコマ撮りによって描いた美しいアニメーションだ。これを手がけたのは村松怜那。彼女はTwitterでこのようにコメントしている。

寂しさを一切言葉や態度に出さないフリーレンの1000年の孤独を表現するのは無謀ですがその巨大な孤独の穴に,小さな煌めきを投げ込むような作品になっていたら嬉しいです。

フリーレンの悠久の孤独に煌めく火を灯したフェルン。二人の心情を豊かなイメージで表現した優れたアニメーションだ。

【アニメーションスタッフ】
ディレクター:村松怜那/作画・着色:鵜飼ゆめ/造形:秋葉尚子小田普音佐藤華音当真一茂(UchuPeople)

【主題歌】milet「Anytime Anywhere」
作詞:milet作曲:milet野村陽一郎中村泰輔/編曲:Evan Call

 

1位:『僕の心のヤバイやつ 第2期』OP


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【コメント】
今期のアニメを観ている人たちの間では満場一致でこの作品だろう,と思わせるほどの圧倒的なクオリティだ。

とにかく山田の可愛さ,市川の初々しさがいい。“綺麗な山田”をつい盗み見てしまう市川。その山田を文字通り美麗な作画でまとめているのも見事としか言いようがない。視聴者を市川と同じ目線にぐっと引き込む作画力だ。

『僕の心のヤバイやつ』第2クールOPアニメーションより引用 ©︎桜井のりお(秋田書店)/僕ヤバ製作委員会

しかし単に“山田が可愛い”だけでは済まないのがこのOPが優れる所以だ。

まず注目すべきは圧倒的な量の色彩だろう。多くのカットで彩度と明度の高い花々の色を取り入れ,二人の恋の多幸感を演出している。特に後半,山田と市川が公園で出会うシーンでは,ほとんど“桃源郷”かと思うほどにヴィヴィッドな色が飽和する。

『僕の心のヤバイやつ』第2クールOPアニメーションより引用 ©︎桜井のりお(秋田書店)/僕ヤバ製作委員会

その一方で,電線,自転車,自動販売機など,二人の目に映る都市のリアルな事物をさりげなく挿入し,コントラストを構成してくるところなども心憎い。情報量は多いが,引くところは引く。押し付けがましさがない。

『僕の心のヤバイやつ』第2クールOPアニメーションより引用 ©︎桜井のりお(秋田書店)/僕ヤバ製作委員会

この優れたアニメーションを手がけたのは,あの荒木哲郎だ。荒木と言えば,『甲鉄城のカバネリ』(2016年),WIT STUDIO時代の『進撃の巨人』(2013年の第1期から2018年の第3期まで),『バブル』(2022年)などの監督として知られる。ラブコメのイメージがあまりない作家だが,このOPアニメーションで手数の多さを見せつけたと言えるだろう。

『僕ヤバ』のOPに戻ろう。後半,市川の言葉で舞い上がった山田が,文字通り宙に舞い上がって疾走するシーンがある。

『僕の心のヤバイやつ』第2クールOPアニメーションより引用 ©︎桜井のりお(秋田書店)/僕ヤバ製作委員会

それまで“可愛らしさ”という静的・平面的なフレームで捉えていたヒロイン・山田を敢えて背後から追い,飛躍・疾走・前進という立体感と奥行きのあるフレームで捉える。この辺り,さすが“『進撃』の立体機動アニメーションを産んだ男”という印象を抱かざるを得ない。円形のステージで踊る二人の周りをカメラが回り込んで写していくカットも面白い。

『僕の心のヤバイやつ』第2クールOPアニメーションより引用 ©︎桜井のりお(秋田書店)/僕ヤバ製作委員会

『僕の心のヤバイやつ』第2クールは,このOPのイメージの貢献度が極めて高いと言える。OP・EDアニメーションの意義を改めて感じさせる傑作だ。

【アニメーションスタッフ】
絵コンテ・演出:荒木哲郎/総作画監督:勝又聖人瀬川健寿/作画監督:田中紀衣

【主題歌】あたらよ「僕は…」
作詞:ひとみ作曲:ひとみ/編曲:まーしー

 

以上,当ブログが注目した2024年冬アニメOP・ED6作品を挙げた。冬アニメも折り返し地点に差しかかっているが,今後の鑑賞の参考にしていただければ幸いである。

 

 

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