アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

アニメ『ガン×ソード 』(2005)レビュー:愛すべきバカたちに

※このレビューはネタバレを含みます。

f:id:alterEgo:20190408125737j:plain

公式HPより引用 ©AIC・チームダンチェスター/ガンソードパートナーズ

http://gunsword.info/

 


「カギ爪」と非人称の世界 

「カギ爪の男」が実現しようとしていた世界は,〈平等と融合と微笑み〉の世界だった。彼は上下関係のない世界を実現すベく,自らを「同志」と呼ばせ,宇宙創生をやり直した後,すべての人類に自らの思想を共有させることを目指していた。その顔には,まるで楽園の少年のような笑顔が浮かんでいる。

この「カギ爪の男」の強烈なキャラクター性を考えた時,木村貴宏によるデザインは完璧だったと言っていいだろう。穏やかな眼差しの下には悠久の時の経過を思わせる深い皺。*1 肩まで流れる髪にはエキゾチックな髪飾り。およそ戦うことを知らぬように見える滑らかな撫で肩のシルエットと,常に子どもに語りかけるような穏やかな口調。そして,それらをすべて打ち消すような,不釣り合いなほどに巨大な黄金のカギ爪。キャストの堀内賢雄も,この異形のキャラクターを見事に演じ切っていた。

f:id:alterEgo:20190412124837j:plain

木村貴宏による「カギ爪の男」のイラスト(第13話後提供より) ©AIC・チームダンチェスター/ガンソードパートナーズ

「みんなで同じ夢を見ればいい」という言葉の中には,彼の不気味な理想のすべてが象徴されている。彼の「夢」の中では,個人の具体的な幸せは捨象され,「幸福」という概念の元にすべてが抽象化されている。「間違えているから力で創り直す」というエゴの元に成り立つ,偽りの世界。それは確かに幸せかもしれないが,具体的な幸福への希求が一切存在しない,非人称の世界だ。だからこそ彼は,仲間である「オリジナル7」のメンバーが命を落としても(その中には実子であるウーも含まれている),眉根ひとつ動かすことがない。

『ガン×ソード』の登場人物たちは,そして僕らは,そんなディストピアの体現者である「カギ爪の男」を心の底から嫌悪する。完全なる平等には豊かな競争がないし,対立のない融合には個の幸せがないし,永遠の微笑みには涙がない。心の壁が存在せず,互いが永遠に承認し合う世界。『劇場版エヴァンゲリオン』のアスカの言葉を借りて言えば,そんな世界は「キモチワルイ」のである。12話で自分が談笑していた老人が「カギ爪」だと知り,「私と夢を見ませんか」という言葉の不気味さを本能的に感じ取った時のウェンディの表情は,アスカと同じく,個が互いに溶け合う不自然な世界への嫌悪感をはっきりと示していたのだ。

f:id:alterEgo:20190412220255j:plain

12話より引用 ©AIC・チームダンチェスター/ガンソードパートナーズ

愛すべきバカたちに

ところが,22話における「デート」の際,「カギ爪の男」に再び「よろしければ私と夢を見ませんか」と問われた時,ウェンディは銃をしっかりと握った姿勢できっぱりと「それはできません」と拒絶する。彼女は生理的嫌悪感だけでなく,強い意志でディストピアに立ち向かうことを旅の中で学んだのであろう。彼女の強い表情は,単にディストピアを「キモチワルイ」と生理的に嫌悪し,“ごく普通の市井の人々”であることに甘んじるだけでは事足りないのだという決意を示しているようにも思える。それはちょうど,僕らが1995年の事件を起こした人々に対し「キモチワルイ」と拒絶しただけでは,何の解決にもならなかったのと同じだ。

f:id:alterEgo:20190412220310j:plain

22話より引用 ©AIC・チームダンチェスター/ガンソードパートナーズ

「カギ爪の男」やオリジナル7たちとは対照的に,ヴァン一行の行動原理には高邁な理想や夢はなく,動機もバラバラだ。愛する人を殺されたために怒りで全身を塗り固めた男。とにかくムカつく女を引っ叩いてやりたい女。ただただ家族を大事にしたいだけの少年と少女。男を追いかける女。いつまでも“正義の味方”を忘れられない老人たち。彼らは『機動戦士ガンダム』のホワイトベースのクルーなどまだ可愛く思えるくらいの,とんでもない烏合の集であり,「カギ爪の男」らから見れば,あまりにも矮小で低俗な小市民である。一言で言えば,“IQが違いすぎて対話が成立しない”相手だ。

しかしどれだけ矮小で低俗であったとしても,僕らは小さく大きな決意を抱いた彼ら/彼女らに,かけがえのない価値を持った〈争いと涙〉を委ねたいと感じる。高邁な理想と理知で隠蔽されたディストピアよりも,低俗な欲望をむき出しにした小市民的世界を望む。それはひょっとしたら,1995年のあの事件のおぞましさを経験した僕らの感性に他ならないのかもしれない。

小さな人間たちの,小さな物語

だからこの物語のプロットを“ある男の復讐劇”とまとめるのは本当は正しくないのかもしれない。いわゆる“復讐の鬼”というキャラにふさわしいのは,主人公のヴァンではなく,むしろレイだ。“愛する人を殺した男への復讐”という同じ動機を共有しながらも,レイが徹頭徹尾孤独なままその目的に愚直に邁進していくのに対し,ヴァンは(不本意ながらも)仲間や市民の欲求に翻弄され続ける。キャラクターを2人に分割することで,片方に典型的な〈復讐の鬼〉の役を担わせ,片方には〈復讐の鬼というにはあまりに人間的な男〉という役を担わせている。確かに物語の冒頭は“孤独な復讐鬼ヴァン”といった体で始まるが,この物語の本質はむしろ,“復讐劇”という重苦しさを霧散させるような,後半の愉快なドタバタ劇なのだ。彼らはそれぞれ,自分が守りたいものを守るべく当たり前のように行動しているだけであり,それは市井の人たちが半径1メートル以内のものを守ろうとした,小さな小さな物語なのである。

そもそも『ガン×ソード』の企画は,「イメージリーダー」のまさひろ山根の「『男はつらいよ』みたいなロボットモノ」という漠然としたアイディアから始まった。*2 確かにヴァンの不器用なふるまいは,「寅さん」のような風来坊を彷彿とさせる。ウェンディやカルメンやジョシュアが引き起こすドタバタ劇も「とらや」の面々を思わせるものがある。谷口監督によれば,最終話に登場する館の内装は「とらや」のそれに似せたそうだ。まさにこの物語の結末にふさわしい舞台と言えよう。

f:id:alterEgo:20190412232321j:plain

最終話より引用 ©AIC・チームダンチェスター/ガンソードパートナーズ

ところで,惑星エンドレス・イリュージョンは元々流刑星であり,「マザー(地球)」の監視者によって発展を抑制された未熟な星である。だからであろうか,マザーなき後も,この星には成熟した国家らしきものは存在していないようだ(だからこそ「カギ爪の男」らが付け入る隙があったのかもしれない)。やがて彼らの文明が成熟し,組織化と統制を担う為政者の存在が必要とされた時,果たして彼らの小さな物語はどう変質していくだろうか。抑圧された者,その組織化,力,その否定,戦争,そして平和。この大きなテーマは,やがて谷口監督の次回作『コードギアス』へと引き継がれて行くことになるだろう。

作品評価

キャラ モーション 美術・彩色 音響
4 4 4 4
声優 OP/ED ドラマ メッセージ
4.5 4.5 4 4
独自性 普遍性 平均
3.5 4 4.05
・各項目は5点満点で0.5点刻みの配点。
・各項目の詳細についてはこちらを参照。
TVアニメ「ガン×ソード」Blu-ray BOX (完全限定盤)

TVアニメ「ガン×ソード」Blu-ray BOX (完全限定盤)

 

*1:この〈目の下の皺〉については裏設定がある。木村は「監督や倉田さん(脚本の倉田英之)からカギ爪の生い立ちを聞いて,かつて涙が枯れ果てるるまで泣き続けたというエピソードから目尻に深いしわを何本もいれて,ある意味浄化されたかのような穏やかな顔つき,というラインに落ち着きました」と述べている。「ガン×ソード インタビュー」p.12。(『ガン×ソード』Blu-ray Box所収)

*2:同上,p.2

なぜここにアニメレビューを書くのか

僕は評論家でも研究者でもないので,これはあくまでも個人的な所懐に過ぎないのだが,僕は作品に対して“謎解き”という踏み込み方をするのが好きではない。

例えば「主人公の名前を数字に置き換えると◯◯になり,これは◯◯が起こった年だ」のような解釈。このように,作品の記号の背後に,作品には現れていない何ものかを読み込もうとすると,どんどん作品そのものの面白さから乖離していく。うまく嵌れば確かに面白いかもしれないが,下手をすると,作品世界の解釈ではなく,“自分ワールド”のお披露目会になってしまう。

僕が大事だと思っているのは,作品の表面に現れていて,誰の目にも見えている記号,あるいは意識的には見ていなくとも,無意識のうちに見えているはずの記号を分節し,相互に関連づけ,場合によっては他作品や時代・文化の背景との関連の中で意味を見出していく,ということだ。その時,場合によっては,監督を始めとするスタッフのインタビュー記事やオーディオコメンタリ,絵コンテなどの言葉を調べる必要も生じてくる(ただし僕は「制作者の発言が作品の真理である」という立場をとっていない)。作品中のモチーフを扱った書物などを参照する必要もあるかもしれない。一世代前の作品であれば,当時の時代背景を調べ直す必要もあるかもしれない。すべて,作品の中に顕在している記号を読むために行う。

そして何より大事だと思うのは,そうすることで自分以外の人にも作品を多様な見方で楽しんでもらうことなのだ。

“自分ワールド”を抑制するのは実は簡単なことではない。誰でも自分オリジナルの解釈というものを披露したいし,僕だってその欲望を抑えきれないことはしばしばある。だから常に,〈見た通りの解釈〉を意識している。〈視覚情報の言語化〉と言ってもいい。要するに,誰もが見ているものを言葉にするというだけのことなのだ。

そのようにして,作品の理解を深め,広げ,言語的に分節することで,作品の面白さを多くの人と共有したいと思うのだ。

僕がアニメのレビューを閉じた紙媒体ではなく,ブログという形でネット上に公開している訳はそこにある。無論,こんな弱小ブログに目を止める人などそう多くはないのだが,少なくとも“公開している”という事実の中に,僕の理想の可能性が留保されているはずだ。

 

いずれどこかの誰かが僕のレビューを読んで,数年前に買って棚にしまってある円盤を引っ張り出して観直してくれることを願いつつ,僕はここ=ネットの上にレビューを書き続ける。

 

フィギュア『Fate/stay night 間桐桜〜マキリの杯〜』(movic)レビュー

※このレビューには劇場版『Fate/stay night Heaven's feel』に関するネタバレが少々含まれます。気になる方は作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。

 

本日3月2日は,『Fate/stay night Heaven's feel』のヒロイン間桐桜の誕生日。劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel] II. lost butterfly』のラストカットでは,彼女が「アンリマユ(この世全ての悪)」と一体化した姿が披露された。このいわゆる「黒桜」は,おそらく『Fate』シリーズの中でも最も強烈なインパクトを持つキャラクターデザインであろう。

今回の記事では,夢のカグツチノ公国・戸田聡が原型を手がけた「黒桜」のフィギュアを紹介する。前回の「セイバーオルタ」と同様,もともと戸田がガレージキット用に製作したものをスケールアップした作品で,息を飲むような造形はまさしく傑作と言わざるを得ない。

www.otalog.jp

作品データ

メーカー:ムービック

発売年月:2011/4

サイズ:1/8(全高約200mm)

原型:戸田聡(夢のカグツチノ公国)

彩色:沙羅(蒼月少女)

価格:9,333円(税別)

作品レビュー

原型 彩色 ポージング
5 5 5
情報量 価格 平均
4.5 5 4.9
・各項目は5点満点で0.5点刻みの配点。

 

まずはいつもの通り全身を。

f:id:alterEgo:20190302204311j:plain

f:id:alterEgo:20190302204254j:plain

f:id:alterEgo:20190302204235j:plain

f:id:alterEgo:20190302204217j:plain

f:id:alterEgo:20190302203801j:plain

f:id:alterEgo:20190302203055j:plain

f:id:alterEgo:20190302203113j:plain

f:id:alterEgo:20190302203136j:plain

狂気に満ちた桜の表情や,血の塊のような「影」の造形の素晴らしさが一見しておわかり頂けると思う。特に顔の造形は,オリジナルのデザインよりも“恐ろしさ”を強調した解釈になっている。彩色担当の沙羅のセンスもずば抜けている。

 

f:id:alterEgo:20190302202618j:plain

f:id:alterEgo:20190302202638j:plain

f:id:alterEgo:20190302202658j:plain

血管のように禍々しく浮き出た魔術回路(?)。フィギュアなのだが,じっと見ていると心がザワザワしてくる…

 

f:id:alterEgo:20190302203155j:plain

f:id:alterEgo:20190302203216j:plain

背後でたなびいているような形になっている「影」の部分は,ややメタリック様の塗装になっている。

 

f:id:alterEgo:20190302202713j:plain

「桜」というキャラクターの持つエロティシズムもしっかり表現されている。

 

f:id:alterEgo:20190302202732j:plain

オリジナルの桜の頭部も付属。おわかりかと思うが,これはこれで大変怖い。

 

f:id:alterEgo:20190302202227j:plain

以前の記事で紹介した「セイバーオルタ」とジョイントできる仕様になっている。写真ではわかりづらいが,桜が左手をセイバーオルタの身体に回すような格好になる。このツーショット,どれだけ見続けていても永遠に飽きない(今まで何千枚写真を撮ってきたことか…)。

「桜」の多義性

f:id:alterEgo:20190302202156j:plain

f:id:alterEgo:20190302202212j:plain

『lost butterfly』のレビューでも言及したが,「間桐桜」は,〈愛嬌〉〈美〉〈醜〉〈慎み〉〈貪欲〉〈強さ〉〈脆さ〉〈聖〉〈邪〉〈純潔〉〈穢れ〉といった無数の記号を内包したキャラクターである。戸田の「黒桜」は,その中でも彼女の“暗黒面”を強調した作品として卓越していると言えるだろう。

www.otalog.jp

www.otalog.jp

これだけ素晴らしい作品だが,「セイバーオルタ」と同様,現在では正規販売がされておらず,転売屋が値をつり上げたものAmazonにあるのみだ。多くの人の手元に届くよう,グッドスマイルカンパニーには是非再販をお願いしたいところである。

劇場版第3章を待ち望みながら…

劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel] II. lost butterfly』の上映後,第3章の公開が来春(2020年)の4月であることが発表された。そこでこの「黒桜」がどんな狂気乱舞を見せてくれるか。今から楽しみでならない。

最後に。

桜,誕生日おめでとう。あなたの幸せを心より願いつつ。

 

www.fate-sn.com

TVアニメ『SSSS.GRIDMAN』(2018年秋)レビュー:2次元インカーネーション

※このレビューはネタバレを含みます。

f:id:alterEgo:20190228181553j:plain

公式HPより引用 Ⓒ円谷プロ Ⓒ2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

gridman.net

作品データ

(リンクはWikipedia,もしくはアットウィキの記事)

〈2次元インカーネーション〉

3次元の少女が2次元の世界を創造していた。

この驚くべき事実を,最終話のわずか数秒足らずの実写カットが示していた。

この〈2次元インカーネーション〉には2つの重要な意味がある。1つは,『SSSS.GRIDMAN』の世界が,実写で制作されていた『電光超人グリッドマン』の世界とクロスオーバーしていた可能性があるということ。もう1つは,このアニメ作品の鑑賞者は,通常のアニメ鑑賞のように2次元アニメを3次元の現実に読み換えて鑑賞していたのではなく,文字通り〈2次元アニメとして創造された世界〉を観察していたのだという驚くべき事実である。*1 実写原作の作品をアニメ化することから生じるある種の違和感を,むしろ演出の一部にしてしまうという卓越したアイディアだ。

ところで,僕らはすでに〈造物主が自ら創造した世界内に受肉(incarnation)する〉というプロットを“世界一のベストセラー"たる『聖書』の中ですでに知っている。それは文字通り〈肉を得ること〉であり,神のペルソナが〈carnalな(肉体的な;肉欲的な)〉世界に身をやつすということである。

興味深いのは,神の肉体が〈パンと葡萄酒〉というカニバリズム的な消費対象となったばかりか,時として性的な表象にすらなり得たということだ。キリストの身体性のビジュアル的な表象については,岡田温司『キリストの身体』に詳しい。岡田によれば,ロンギヌスの槍によってできたキリストの脇腹の傷は,「そこから信者が彼の身体へと入っていき合体を果たす扉口」 *2 としてイメージされることもあった。また「唇や女性器を連想させるかのように,大きく赤く描かれた」絵画作品も残されている。*3 それゆえ,『SSSS.GRIDMAN』第5話のいわゆる“水着回”においてエロティックに強調されたアカネの身体や同時期に販売された彼女の抱き枕は,制作スタッフの本意ではなかったにせよ,〈受肉〉という最古の物語プロットをなぞっていたことになる。

f:id:alterEgo:20190228191807j:plain

5話より引用 Ⓒ円谷プロ Ⓒ2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

もちろん,だからと言って『SSSS.GRIDMAN』がキリスト教の伝統に棹差していた,などということはない。むしろ〈受肉〉という伝統的モチーフを換骨奪胎し,3次元の少女が2次元のアニメ世界に受肉するというアクロバティックなプロットを作り上げたところにこの作品の価値がある。それはアニメファンならば誰もが憧れるであろう〈2次元インカーネーション〉であり,すべての人に愛される〈アニメ的美少女〉になるという,現代的楽園世界の創造であった。Blu-ray/DVD第2巻特典のブックレット「SSS.GRIDMAN SPECIAL NOTE VOL.2」に掲載された,キャラクターデザインの坂本勝のインタビューが興味深い。

アカネには,雨宮さんがなりたいイメージが詰まっているんです。「もし自分を女子高生にカスタマイズできるとしたら」ということを何度も話し合って,顔がかわいい,胸が大きいなどフルセットでデザインしたのがアカネなんです*4

だとすれば,アカネという〈神〉の願望は,雨宮哲監督という〈神〉の願望だったと言えるかもしれない。しかしこの願望は彼だけのものではない。もちろん,性差も関係ない。それは,このアニメの最終話を観た者であれば誰もが気づかされるであろう,己の内の願望だ。なぜなら,僕らは皆,アカネと同じように現実の中で満たされぬものを抱え,どこかの異世界に救いを求めたいと願っているからであり,世にアニメ・マンガ・ラノベ等による異世界の表象が溢れれば溢れるほど,そうした願望も増幅していくのだから。

バロックとビー玉

したがってアカネは己を完璧な美少女として“設定”し,誰もが彼女を好きになるという“設定”を作った。ところがこの作品が面白いのは,彼女がおそらく現実世界での何かを象徴しているであろう,様々な歪み―〈汚部屋〉〈割れたメガネ〉〈割れたスマホ画面〉―を抱えたまま受肉生活を送っていることである。

f:id:alterEgo:20190228194801j:plain

〈汚部屋〉(第2話より引用) Ⓒ円谷プロ Ⓒ2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

f:id:alterEgo:20190228194809j:plain

〈割れたメガネ〉(第2話より引用) Ⓒ円谷プロ Ⓒ2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

f:id:alterEgo:20190228194755j:plain

〈割れたスマホ画面〉(第4話より引用) Ⓒ円谷プロ Ⓒ2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

とりわけ〈歪んだ真珠(バロック)〉の象徴は注目に値する。*5 アカネの持つ〈歪んだ真珠〉は,高価だが決定的な歪みを孕むものとして,彼女の内面を表している。一方,裕太の持つ〈ラムネのビー玉〉は真球に近い形状をしており,グリッドマン≒裕太の真っ直ぐな正義感を表している。この対比の表し方も印象的だった。

f:id:alterEgo:20190228191821j:plain

アカネの〈バロック(歪んだ真珠)〉(第4話より引用) Ⓒ円谷プロ Ⓒ2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

f:id:alterEgo:20190228191814j:plain

裕太の〈ビー玉〉(OPより引用) Ⓒ円谷プロ Ⓒ2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

〈ユガミ〉と〈ヒビ〉を抱えた神が創世した世界は,アレクシスという文字通りの悪以外にも,アカネの管理を超えた様々な要素が入り込む隙のある,未熟な世界だったのである。

戯れる文字

『SSSS.GRIDMAN』の映像には,〈文字〉が溢れている。

映像表現における文字媒体は,それが作品のメッセージを直接担うにせよ担わないにせよ,映像そのものにとってある種の〈余剰〉である。それは視覚という,本質的に感性的な行為に,解読という異質な営為を付随させるからだ。

例えば映画の字幕は,よく知られているように,登場人物の台詞の逐語訳であるどころか,意訳ですらない場合も多い(限られた秒数に文字表現を圧縮しなければならないという技術上の制約がそこにあるのはもちろんである)。鑑賞者は映像表現とは別個に字幕を解読し,オリジナルにはない意味を人物の台詞の上に重ねるという,実にハイブリッドな体験をしている。

とりわけ表意文字は,図像としての装いを纏うことで映像表現の中に溶け込み,そうすることで解読の異質性を隠蔽する西尾維新の『物語シリーズ』のアニメにおいて画面を埋め尽くす膨大な漢字は,登場人物たちの内面を表したり,台詞そのものをなぞったりしていながらも,およそ一般的な人間の動体視力では追いきれない程の速度で移り変わり,解読を要求しながらもそれを拒否するという二重の仕掛けを潜ませていた。それはメッセージを補助していたというよりは,文字の横溢そのものが1つの演出だったのだと言える。

『SSSS.GRIDMAN』において,しばしばカメラフレームの中に現れては我々の周辺視野の一部を占め,メインビジュアルに絡みつきつつ,無意味に戯れる文字たち。それは正しく,この2次元アニメの世界を創った神=新条アカネにとっての余剰であり,彼女の世界に,彼女の管理が行き届かない綻びが生じる可能性を暗示する不吉な予兆なのだとも解釈できる。

f:id:alterEgo:20190228194336j:plain

第1話より引用 Ⓒ円谷プロ Ⓒ2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

f:id:alterEgo:20190228194305j:plain

第4話より引用 Ⓒ円谷プロ Ⓒ2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

f:id:alterEgo:20190228194249j:plain

第9話より引用 Ⓒ円谷プロ Ⓒ2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

事実,アカネの世界には,「裕太・六花・内海がアカネの思い通りにならない」という決定的な綻びが生じることになる。*6

しかしその綻びが広がり,アカネの世界が崩壊するところから,アカネ自身の〈救い〉が始まるのである。

反転する〈救い〉の物語

そもそも,アカネの受肉譚にはいくつかの転倒があった。まず,アカネはキリストのように悪魔の誘惑に打ち勝つのではなく,自らが悪魔のように裕太を魅惑しようとし,打ち負かされる。さらに,アカネは人類に救いをもたらすのではなく,裕太=グリッドマンに救われる。万能感ではなく,〈ユガミ〉と〈ヒビ〉を抱えて異世界に現れ,魂を救われるというプロット。それはまさしく〈俺TUEEE〉的設定の反転であり,世に氾濫する〈異世界転生モノ〉に飽きた視聴者のカタルシスを満足させる物語だったのだ。

 

果たしてアカネは,3次元の世界でも救われるのだろうか。

続編制作の予定はない以上,それは『SSSS.GRIDMAN』を観た一人一人が紡ぎ上げていくべき物語である。

 

【2021年3月29日追記】

2021年4月より関連作品である『SSSS.DYNAZENON』が放映される。2次元と3次元の入り混じった世界の“謎解き"に相当するものが提示されるか,あるいは全く異なる世界設定によって僕らを驚かせてくれるか。

評価

キャラ モーション 美術・彩色 音響
5 5 5 5
声優 OP/ED ドラマ メッセージ
5 5 5 3
独自性 普遍性 平均
4.5 4 4.65
・各項目は5点満点で0.5点刻みの配点。
・各項目の詳細についてはこちらを参照。

 

電光超人グリッドマン Blu-ray BOX

電光超人グリッドマン Blu-ray BOX

 
キリストの身体―血と肉と愛の傷 (中公新書)

キリストの身体―血と肉と愛の傷 (中公新書)

 

*1:「コンピュータワールド」が3次元の世界なのか2次元の世界なのか,という問うことはほとんど無意味だろう。その辺りの設定は原作においても『SSSS.GRIDMAN』においても明らかにされておらず,解釈はオープンだからである。純粋な〈情報〉の世界と解釈するのであれば,2次元でも3次元でも構成できる世界,ということになるだろうか。

*2:岡田温司『キリストの身体』p.237,中公新書,2009年

*3:同上,p.239

*4:Blu-ray/DVD第2巻特典ブックレット「SSS.GRIDMAN SPECIAL NOTE VOL.2」p.81

*5:歪んだ真珠や第9話に登場する「マウンテンガリバー5号」などから,アカネが実相寺昭雄のファンだったことがうかがえる。歪んだ真珠に関しては,ウルトラマンダイナの登場怪獣 - Wikipedia内の「バロック怪獣 ブンダー の項目を参照

*6:ちなみに第1話と第9話のTV放送において,「消化器」と「April」に関する誤表記があったというエピソードも面白い。アカネ=雨宮の思い通りにならない誤謬の出現だ(この2つの誤表記に関しては,Blu-ray/DVDでは修正されている)。

「映画を塗る仕事」展@三鷹の森ジブリ美術館レポート:変わる意志と変わらぬ遺産

f:id:alterEgo:20190224004625j:plain

公式HPより引用 ©︎Studio Ghibli ©︎Museo d’Arte Ghibli

www.ghibli-museum.jp

以前の記事でも紹介した「映画を塗る仕事」展@三鷹の森ジブリ美術館を訪れた。

本展示は故・高畑勲監督や宮崎駿監督を支えた色彩設計の故・保田道世の仕事を中心に,主にセル時代におけるジブリ作品の彩色解釈と技法の進化を紹介している。当時のセル画がふんだんに展示されており,それらを生で目にする大変貴重な機会でもある。www.otalog.jp

展示会データ

開催期間:2018年11月17日〜2019年11月(予定)

チケット:毎月10日より,翌月分の日時指定券を販売。詳しくはこちら

アクセス:詳しくはこちら

グッズ:本展示会用パンフレット販売あり[全32ページ,600円(税込)]

写真撮影:館内は全面禁止

その他:土日・祝祭日は大変混雑するので,できれば平日昼間辺りがゆったりと鑑賞できてよいだろう。また,「土星座」で上映される短編アニメはスケジュールが決まっているので,観たい作品に合せてスケジュールを決めるのが理想的。上映スケジュールの詳細はこちら。 

保田道世という「職人」

保田道世は東映動画(現・東映アニメーション)時代に高畑勲・宮崎駿と出会い,以来,両氏監督のほぼすべてのスタジオジブリ劇場作品の彩色を手がけた人物である。2016年10月に惜しまれながらこの世を去った。彼女の半生に関しては,柴口育子『アニメーションの色職人』に詳しい。〈女性としてアニメーションの世界を生きる〉という点にもスポットを当てつつ,保田という「職人」が誕生するまでを詳しく紹介した良書である。

アニメーションの色職人

アニメーションの色職人

 

当然のことながら,保田は高畑・宮崎両氏からは絶大の信頼を置かれていた。高畑には「センスも技術も抜群。あの職人気質が好きです。しかも,自分の仕事だけでなく全体を見ることもできる人だから,僕が映画をつくるときは運営の中心におきたい人です」 *1 と言わしめ,宮崎が「僕なんかの三倍は鋭敏でシビア。色指定から人の手配まで,仕上の仕事全部を背負ってくれるような人は,もうやっちん[引用者注:保田の愛称]が最後。やっちんしかいない」*2 と賛辞を惜しまない人物だったのである。

色を手塗りしていた時代

ジブリ作品の彩色は,『もののけ姫』(1997年)まで「セル絵具」を使用しており,それ以降の作品からはデジタル着彩になった。本展示の目玉は前者の「セル絵具」の時代の作品である。

「セル絵具」は,キャラクターなどの線画を転写したセルの裏側に専用の絵具を塗る方法で,この作業は「仕上げ」と呼ばれている。実は僕も中学生の頃に部活でまねごとをしたことがあるのだが,1枚塗るだけでも相当手間がかかる。これを数万枚という単位で作業するのだから,当時の仕上げ班の苦労のほどが伺える(と同時に,制作の効率を考えると,改めてセルからデジタルへの移行は必須だったのだろうと感じる)。

アニメ制作がフルデジタル化される以前の,こうした“超アナログ”時代にあって,高畑・宮崎・保田は,時刻ごとの色の変化,水,光など,〈色〉の表現を巡る様々な問題にチャレンジしていったのだ。

余談だが,ジブリ美術館には「映画の生まれる場所」と題した常設展示があり,セル時代のアニメーション制作の仕事場を紹介している。ここかしこに宮崎監督の直筆のコメントが貼られているのだが,その中に「昔,トレース彩色の女性達とアニメーターは仲良でした。追い込みにはアニメーターもトレース彩色を手伝ったので,ロマンスもずい分,生まれたのです。でも分業になった今は,ロマンスは生まれにくくなっています」というものがあって,なんとも微笑ましい時代だなと思った。展示会ポスター(本記事のアイキャッチに掲げてあるもの)の左の絵は,美術監督の男鹿和雄の手になる壁画なのだが,当時の仕上の現場の風景を偲ばせる作品である。

〈見えないもの〉を色にする

 『となりのトトロ』(1988年)は,真夏の昼の強い日差しと夕暮れ時の淡い光とのコントラストが印象的な作品である。展示会では,サツキとメイの肌色や影の色の変化や,「ネコバス」の色指定(本記事のアイキャッチに掲げた展示会ポスターの右)などによって,時刻や天候によって変化する色の表現を説明している。いわば,色分けによって〈時〉という目に見えないものの変化を表現する技術だ。

f:id:alterEgo:20190225001159j:plain

『映画を塗る仕事』展パンフレットより引用 ©2019 公益財団法人徳間記念アニメーション文化財団 ©Studio Ghibli ©Museo d'Arte Ghibli

さらに,アニメの彩色において一筋縄でいかないのは〈水〉の表現だ。周知の通り,宮崎監督の作品には水が頻出する。本来,透明である水をどう表現するのか。しかも“水”と一口に言っても,水しぶき,水たまり,波,川などなど,水には様々な表情がある。これには監督も相当に試行錯誤したようである。例えば『紅の豚』(1992年)に関して,監督は以下のような苦労話を披露している。

この『紅の豚』のダボハゼ号のカットは,どうやっていいかわからなくて本当に困りました。日曜出勤して自分でこのカットを描いたことが忘れられないです。水と飛行艇を別セルにせず1枚で描いたんですが,当時“ヤッチン”がよく塗り分けるなぁと感心しました。ぼくはそういうことを全然考えたくないタイプなのですが,ヤッチンは平気で読み解きますからね。複雑な動画をたどっていって突き止める。本当に頭がよいひとでした*3

f:id:alterEgo:20190225001149j:plain

『映画を塗る仕事』展パンフレットより引用 ©2019 公益財団法人徳間記念アニメーション文化財団 ©Studio Ghibli ©Museo d'Arte Ghibli

 〈時間〉と〈水〉という,目に見えないものをいかにしてアニメの色に落とし込むか。この展示会のもっともエキサイティングな部分でもあり,大変見ごたえがある。

アニメにとっての〈リアリティ〉

 展示会では,宮崎監督が影響を受けたという2つの作品が紹介されている。

その1つは,のジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(1849-1917)の『シャロットの女』(1888,ロンドン「テート・ブリテン」所蔵。『映画を塗る仕事』展では「シャーロット姫」として紹介)である。

f:id:alterEgo:20190224044801j:plain

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス『シャロットの女』(「テート」公式HPより引用)

https://www.tate.org.uk/art/artists/john-william-waterhouse-583

舟に乗るシャロットの表情の繊細な表情やタペストリーの鮮やかな色彩はもちろんのこと,前景の水草,後景の木々の緻密な描写,水の重く冷たい質感の描写などが目を引く作品である。宮崎はとりわけ「水をはじめ,空気の冷たさや湿り気が伝わり,織物の質感も伝わってくる描き方」に惹かれたそうである。「ヒロインやヒーローの後ろにある風景を軽視するのではなく克明に描くことこそ,目指していたものであった」*4

もう1つは,ロシアの挿絵作家イヴァン・ビリービン(1876-1942)の挿絵である。ロシアのおとぎ話を題材に数々の美麗な絵本をものした彼は,日本の浮世絵からも刺激を受けており,海の描写などにその影響が見て取れる。“Internet Archive”のページからいくつかの作品が閲覧可能なほか,近々(2019年2月27日)彼の作品を紹介する和書『ビリービンとロシア絵本の黄金時代 改訂版』が刊行される予定である。

ビリービンとロシア絵本の黄金時代 改訂版

ビリービンとロシア絵本の黄金時代 改訂版

 

この2つの作品から分かるのは,アニメーターにとって,自然物から学ぶことはもちろんのこと,「自然物を絵にするとはどういうことか」を絵画作品から学ぶことも重要だということだ。展示の説明の文言の中に「実在する乗りものの色はそっくりではなく,それらしい色で塗られている」「そのものの色ではなく,それらしく見えることが大切」(傍線は引用者による)という言葉がある。アニメーションにとっての〈リアリティ〉というのは,実在の中にあるというよりは,アニメとしての〈それらしさ〉の中にあるのかもしれない。そうした〈アニメ的リアリティ〉を表現するのに,色彩はもっとも重要なファクターであるということだ。 

変わろうとする意志と変わらぬ遺産

本展示の魅力はまだまだある。後は興味を持たれたみなさんが,ご自身の目で楽しむことをお勧めする。

ジブリ美術館は15年ぶりくらいの再訪だった。しかし,企画展示はもちろんのこと,常設展示や建物の内装もたびたび変えているにも関わらず,僕が抱いた感想は「基本的な佇まいは変わっていないな」というものだった。これはもちろん“停滞”ではない。そうではなく,「アニメという文化の歴史がこれまで積み上げてきたものを,記録としてしっかりと遺す」という,館主の宮崎を始め,美術館スタッフ達が胸に秘めた強い気持ちの表れだと思う。

以前の記事でも述べた通り,現代のアニメの演出において,彩色はますます大きな意味を持つようになり,キャラ(クター)の設定から作品の主題にまで関わるほどにまで洗練されつつある。そうした緻密かつ複雑化した色彩設計を可能にしたのがデジタル技術であることは間違いないだろう。しかし,〈色〉というものの解釈の礎を築いたのが,保田道世をはじめとする先人であったことも間違いない。

www.otalog.jp

 

要するに,ジブリ美術館自体がアニメーションの歴史と現状と未来を体現しているのだ。

 

変わろうとする意志は,変わらない遺産が支え,見守る。

 

ちょうど,風化しながらもそこに立ち続け,美術館を見守るロボット兵のように。

f:id:alterEgo:20190224020714j:plain

*1:柴口育子『アニメーションの色職人』p.12, 徳間書店,1997年

*2:同上

*3:『映画を塗る仕事』展パンフレット p.27

*4:『映画を塗る仕事』展パンフレット p.11

ワンダーフェスティバル 2019[冬]に行ってきました!

f:id:alterEgo:20190210222421j:plain

wf.kaiyodo.net

速いもので,もうこの時期がやって来ました。

僕は「ワンダーフェスティバル(略称「ワンフェス」)」には冬だけ来訪しているのですが,毎年,年明けからここまでの時間の流れがあまりにも速く感じています。きっと時空に歪みが生じているに違いありません。

フィギュアを中心とする国内のキャラクター商品が一堂に会する本フェスティバル。個人ブログがすべて扱うにはその量はあまりにも膨大すぎますので,網羅的なレポートに関しては「あみあみ」さん(@amiamihobbynews)や「電撃ホビーウェブ」さん(@hobby_magazine)のTwitterアカウントなどをご覧下さい。今回は僕個人が「欲しい」と思った商品を中心にピックアップしたいと思います。

企業ブース

アルタ-

f:id:alterEgo:20190210224216j:plain

『Fate/Grand Order』アルタ-エゴ/メルトリリス(アルタ-)

目玉はやはり『Fate / Grand Order』の「メルトリリス」。この“これでもか”という位に情報量の多いキャラを,アルタ-がどう料理してくるか。原型の段階でもワクワクしますが,彩色後のデコマス発表がとても楽しみです。

 

f:id:alterEgo:20190210224157j:plain

『Fate/Grand Order』ライダー/アルトリア・ペンドラゴン[オルタ](アルタ-)

「メイドオルタ」の原型。

 

f:id:alterEgo:20190210224141j:plain

『Fate/Grand Order』スカサハ 刺し穿つバニーVer.(アルタ-)

スカサハ姉さんのバニーバージョンです。これは確実に刺し穿たれますね。そして,相変わらずFGO強しです。

グッドスマイルカンパニー

グッスマブースは商品が多く目移りしてしまうのですが,中でも度肝を抜かれたのはこれです。

f:id:alterEgo:20190210230621j:plain

f:id:alterEgo:20190210230558j:plain

f:id:alterEgo:20190210230545j:plain

初音ミク Memorial Dress Ver.(グッドスマイルカンパニー)

この流れる髪の造形。すごい情報量ですよ。これは絶対買っちゃうだろうなぁ…彩色が楽しみです。

 

f:id:alterEgo:20190210232941j:plain

『カードキャプターさくら クリアカード編』木之本桜 Hello Brand New World(グッドスマイルカンパニー)

そしてまたもやゴージャスな「木之本桜」が出ます。キラッキラですね。

コトブキヤ

f:id:alterEgo:20190210231859j:plain

『ガールズ&パンツァー最終章』島田愛里寿(コトブキヤ)

f:id:alterEgo:20190210231845j:plain

『ガールズ&パンツァー最終章』ノンナ/カチューシャ(コトブキヤ)

『ガルパン』も強いですね。コトブキヤらしい,柔らかく優しい雰囲気の仕上がりです。

 

f:id:alterEgo:20190210231835j:plain

『SSSS.GRIDMAN』宝多六花(コトブキヤ)

そしてやはり今年は『SSSS.GRIDMAN』のキャラが目立ちました。コトブキヤからはヒロイン宝多六花。そう。この太ももです。

 

f:id:alterEgo:20190210231813j:plain

『Fate/Grand Order』ルーラー/ジャンヌ・ダルク キューポッシュ(コトブキヤ)

f:id:alterEgo:20190210231823j:plain

『Fate/Grand Order』アヴェンジャー/ジャンヌ・ダルク[オルタ] キューポッシュ(コトブキヤ)

グッスマの「ねんどろいど」の質が高いことは言うまでもありませんが,コトブキヤの「キューポッシュ」も負けず劣らず可愛くていいですね。このジャンヌたちもいい出来。買いですね。

ANIPLEX+

f:id:alterEgo:20190210233835j:plain

『ソードアート・オンライン アリシゼーション』アリス・シンセシス・サーティ(ANIPLEX+)

アニプレと言えばやはり『ソードアート・オンライン』。声優泣かせの「アリス・シンセシス・サーティ」の原型です。実に躍動的なポージングで,期待大です。

 

f:id:alterEgo:20190211000337j:plain

f:id:alterEgo:20190211000547j:plain

『約束のネバーランド』エマ/ノーマン/レイ(ANIPLEX+)

『約束のネバーランド』から,主人公3人の原型です。それぞれにミニフィギュアが付属するようですね(笑)

 

f:id:alterEgo:20190210233815j:plain

アニプレブースで最も気になったのはこれです。セイバーオルタとマキリの杯。Fateシリーズのゴールデンコンビです。絶対買います。

東京フィギュア

f:id:alterEgo:20190210235206j:plain

f:id:alterEgo:20190210235155j:plain

『ソードアート・オンライン』《絶剣》ユウキ《マザーズ・ロザリオ》ver.(東京フィギュア)

東京フィギュアのブースで目を引いたのは,まずこれ。僕もそうですが,『SAO』と言えば「ユウキ」という人も多いのではないでしょうか。見ているだけで目頭が熱くなります…

 

f:id:alterEgo:20190210235822j:plain

f:id:alterEgo:20190210235804j:plain

『ちょびっツ』ちぃ(東京フィギュア)

『ちょびっツ』から「ちぃ」です。これまた素晴らしい出来です。20年近くも前の作品にもかかわらず,いまだに作品化されているわけですから,「ちぃ」のデザインがいかに普遍的かということですね。汲めどもつきぬ源泉とはこのことです。

Freeing

f:id:alterEgo:20190211001300j:plain

『劇場版Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』イリヤスフィール・フォン・アインツベルン バニーVer.(FREEing)

これは…とにかく可愛いとしかいいようがありません。実は『FGO』の方でもイリヤの宝具レベルを5にしたくらいですから,まず間違いなく買います。

F:NEX

f:id:alterEgo:20190211005426j:plain

『Re:ゼロから始める異世界生活』レム 1/1胸像フィギュア(F:NEX)

そしてこれです。「レム」の1/1胸像。ちょっとまえの記事でも簡単に紹介しましたが,現物を見るのは今回が初めてでした。生で見てもやっぱりすごい出来です。というわけで,ついさきほどポチってきたところです。

www.otalog.jp

 

ディーラーブース

僕はディーラーブースの方は,蚤の市をぶらつくような感覚で無計画に歩くのが好きです。びっくりするような作品に偶然出会ったときの感動がいいんですよね。

f:id:alterEgo:20190211002647j:plain

f:id:alterEgo:20190211002632j:plain

f:id:alterEgo:20190211002615j:plain

f:id:alterEgo:20190211002559j:plain

「夢のカグツチノ公国」さんのブースより。原型はもちろん戸田聡さんです。やっぱりこの解釈,秀逸ですよねぇ。

f:id:alterEgo:20190211003033j:plain

f:id:alterEgo:20190211003013j:plain

「CHIKA」さんのブースより。こういう“サビロボ”系のキャラクターは大好物なんですよね。

 

f:id:alterEgo:20190211003740j:plain

「東菊花」さんのブースより。『この世界の片隅に』の一コマです。作品の雰囲気がぎゅっと詰まってる感じで,とても目を引きました。

 

f:id:alterEgo:20190211003833j:plain

f:id:alterEgo:20190211003815j:plain

f:id:alterEgo:20190211003758j:plain

f:id:alterEgo:20190211003851j:plain

「ArCray」さんのブースより。実に楽しいキャラと世界観です。欲しかったキャラが売り切れていたので,泣く泣く諦めました…

 

てなわけで,今年も物欲に思いっきり刺激された一日でした。

 

今回のレポートはここまでと致します。次回は夏ですが,僕は暑いのが苦手なのでおそらく行かないと思います…というわけで,1年後の冬のワンフェスで,また。

f:id:alterEgo:20190211004640j:plain

 

TVアニメ『やがて君になる』(2018年)レビュー[考察・感想]:“transfer”

※このレビューはネタバレを含みます。

f:id:alterEgo:20190130214700j:plain

公式HPより引用 ©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

yagakimi.com

いわゆる“百合”ものにカテゴライズされるが,丁寧で緻密な(“論理的な”と言ってもいい)心理描写,舞台とキャラ設定の妙,劇中劇の効果的利用など,様々な点で他とは一線を画す作品であり,かつ「人を好きになるとはどういうことか」という本質的な問いに真摯に向き合った作品でもある。とりわけアニメでは,原作にはない象徴的な演出が多用されており,原作の魅力をより引き出すことに成功していたと言えるだろう。

 

あらすじ

エイロマンティック(人に恋愛感情を抱かない恋愛的指向)を自認する女子高生・小糸侑は,ある日突然,生徒会長である七海燈子から告白される。彼女は戸惑いつつ逡巡しながらも,やがて心惹かれていく。

 

〈森の奥〉という特別な場所

アニメオリジナルの演出の1つが,本作の主要な舞台となる「生徒会室」の場所の設定である。

生徒会が登場するアニメは少なくない。そしてそのほとんどが,時に特権的であったり,時に奇異であったりと,他の活動とは異質な場として描かれている。『やがて君になる』は,生徒会のこの異質性を〈森の奥〉というトポスで表した点にその独自性があると言えるだろう。とりわけアニメでは,原作にはない地図と森の中の移動シーンのカットを挿入することにより,普段の教室から〈森の奥〉への移動が一種のイニシエーションとして描写されているところが興味深い。

f:id:alterEgo:20190130024245j:plain

生徒会室までの地図(第1話より引用) ©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

f:id:alterEgo:20190202003237j:plain

森の道(第1話より引用) ©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

f:id:alterEgo:20190202003743j:plain

森の道(第1話より引用) ©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

周知の通り,〈森の中を通り抜けると別世界がある〉という設定は,古来より物語表現の常套手段である。グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』,村上春樹の小説『海辺のカフカ』,宮崎駿監督のアニメ『となりのトトロ』,森見登美彦原作・石田祐康監督のアニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』と,有名作品だけでも枚挙にいとまがない。〈森の奥〉は日常世界から隔絶された特別な場所であり,そこには特別な存在が住み,そこでは特別な出来事が起こる。

さらに生徒会室の美術も特徴的である。まるで映画『西の魔女が死んだ』(2008年)に登場する「おばあちゃんの家」のような佇まい。床や窓枠の経年劣化は原作よりもはるかに細やかに描き込まれ,美しい“寂れ感”を強調した美術になっている。

f:id:alterEgo:20190202004222j:plain

生徒会室(第1話より引用) ©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

f:id:alterEgo:20190202005357j:plain

生徒会室(第1話より引用) ©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

生徒会室の大きな窓からは,美しい木々の緑と花が見える。さながら原始の楽園のような風景だ。この〈森〉と〈生徒会室〉という象徴的なトポスによって作られた一種の“異世界”で,小糸侑と七海燈子の密やかな関係は唐突に始まる。

f:id:alterEgo:20190202004827j:plain

第1話より引用 ©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

アニメならではのこの演出は,日常的な学園風景にわずかに幻想的なテイストを付与し,世界観に広がりと深みを与えたという点で評価できるだろう。このシーンによって,侑と燈子の内面に特別な出来事が生じたことが確かに感じられるのである。

 

多声的な〈異世界〉

しかし一方で,そうした“異世界”が決して排他的な空間になっていない点も本作の大きな特徴だ。舞台が共学の高校ということもあって,生徒会には男子も含まれており,男子が恋愛対象になる可能性が排除されているわけではない。*1 教師や間接的な関係者も自由に出入りし,様々な人間関係が生じる可能性を秘めた,開かれた楽園。こうした,いわばポリフォニックな場において,燈子はあえて侑を選び,侑はあえて燈子の気持ちを受け入れる。彼女たちは女子校のような外的環境ではなく,自らの内的要請から恋愛対象を選ぶのである。おそらくはこうしたところに,性別や世代を超えた様々な人の感情移入を可能にする土壌があるのだと言えよう。 

 

〈植物〉の象徴性

もう1つのアニメオリジナルの興味深い演出として,〈植物の描写〉がある。もちろん原作コミックにも植物は登場するが,アニメの方が圧倒的に細部の描き込みの度合いが高く,とりわけ前述の森の中のシーンは印象深いが,何気ない日常シーンにおいても顕著である。少なくともTVシリーズアニメに関しては,植物の群生をここまでこだわって描いた作品も珍しいだろう。

f:id:alterEgo:20190202011906j:plain

第3話より引用 ©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

さらに,主人公2人の心情が動く決定的なシーンでは,必ずといっていいほど緑の葉が舞う様子が描かれるのも印象的だ。

f:id:alterEgo:20190202012315j:plain

風に舞う木の葉(第3話より引用) ©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

こうした植物描写の利用には,いくつかの意味があるだろう。その1つは,もちろん〈季節感〉の演出だ。卒業式の頃の桜,入学直後の新緑,梅雨時の紫陽花など,四季に応じた植物描写の頻度は平均的なアニメ以上と言ってよいかもしれない。

 もう1つは,高校生たちの瑞々しく華やかな生の演出である。マンガと違い,鮮やかな色彩を演出に活用できるアニメ作品にとって,若々しい高校生活を緑や花々で彩る手法は専売特許と言ってもよい。

 

〈死〉のイメージ

ところが,植物の象徴性に関しては,上述のような躍動感とは対照的な要素がもう1つある。〈死〉の暗示だ。

オープニング映像では,彩り豊かな花々が咲き誇る映像の間に,それらが枯れる刹那のカットが挿入されている。また,侑と燈子が枯れ枝のように横たわる最後のカットも印象的だ。

f:id:alterEgo:20190202013817j:plain

〈枯死〉のイメージ(OPより引用) ©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

さらに最終話の墓参り以降のシークエンスでは,〈死〉の暗示がより克明に描かれる。

f:id:alterEgo:20190202023539j:plain

〈死〉の暗示(最終話より引用) ©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

そもそもこの作品の大きなテーマは,〈最愛の姉の死〉に囚われる燈子の苦悩である。本作のクライマックスである〈生徒会劇〉は,当初,記憶喪失の主人公≒燈子が,他者の記憶をもとに〈過去の自分になる〉というプロットであり,〈姉になる〉ことがすべてであった燈子の心情に同期するものだった。しかしそれでは,燈子が〈死〉という過去に向かっていることを意味してしまうだろう。侑は脚本作者のこよみと相談し,主人公が過去の自分になるのではなく,〈今の自分を生きる〉というプロットに改編することを提案する。燈子の内面と劇中劇のシンクロナイズ,そしてその2つに能動的に関わり,積極的に変えようとする侑の決断。本作がもっともドラマチックに展開する部分である。

f:id:alterEgo:20190202024448j:plain

最終話より引用 ©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

〈最愛の人の死〉という過去に束縛されるのではなく,それを受け入れつつも,今とこれからの自分を生きる。最終話の駅のホームで踏みとどまった燈子は,おそらくそう決断することになるのだろう。そしてその時,未来へと歩む燈子に寄り添うのは間違いなく侑なのだろう。本作に登場する数少ない大人たちの中でも,理子と都の関係は,燈子と侑にとっての理想的な未来の可能性をすでに提示している。後は,彼女たちが自ら勇気を出し,自分たちに最適な未来を選択するだけなのだ。

f:id:alterEgo:20190202024938j:plain

最終話より引用 ©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

 

"transfer"

先輩,そろそろ乗り換えですよ

 最終話のラストカットに据えられた侑のこの言葉は,2人の人生の軌道がゆっくりと変化しつつあることを暗示していたのかもしれない。

 様々な暗示に満ち,様々な解釈に対して開かれた素晴らしい最終回でアニメは結末を迎えた。僕らはこの結末に対し,様々に想いを巡らせながら余韻に浸ることもできるだろう。しかし物語はまだ終わっていない。そして2期の制作もそれとなく示唆されてもいる。とりわけ侑の想いに関しては,解釈をオープンにするよりも,はっきりとした結末を示してもらいたい。監督の加藤誠にはその責任がある。そして僕にはそれを要求する権利がある。何しろ僕は,Blu-rayを全巻購入したのだから。

 

作品評価

キャラ モーション 美術・彩色 音響
4.5 3.5 5 4.5
声優 OP/ED ドラマ メッセージ
5 5 5 4.5
独自性 普遍性 平均
4.5 4.5 4.6
・各項目は5点満点で0.5点刻みの配点。
・各項目の詳細についてはこちらを参照。

 

やがて君になる(1) (電撃コミックスNEXT)

やがて君になる(1) (電撃コミックスNEXT)

 

*1:もっとも槙に関しては,他者の恋愛を“観客”として鑑賞することにしか興味がなく,本当の意味でエイロマンティックであり,恋愛ドラマの舞台に上がることが決してないキャラとして描かれている。堂島の極めて類型的な“チャラ男”としての設定は,決して恋愛対象になり得ないことを視聴者に示すに十分である。

デジャヴュからジャメヴュへ:アニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』レビューに代えて

※このレビューはネタバレを含みます。

 

『ダーリン・イン・ザ・フランキス』は〈既視感〉という言葉がつきまとう作品だった。ネット上では「面白い」という意見が見られる一方で,常に「◯◯にあったシーンだ」といったような意見が飛び交っていた。


現代アニメにおいて〈既視感〉とはいったい何なのだろう。


それは〈オリジナリティの欠如〉ではないだろう。これだけ多くの作品が作られ続けてきたアニメ界で,作画・ストーリー・キャラクターどの点においても完全なオリジナルなどというものはあり得ないし,そもそも求められてもいない。むしろすぐれた現代作品はすぐれた引用の編み物である。高度な学術論文と同じように,過去の作品を真摯に研究し,敬意を持って引用する。


それが“コピペ”に堕すことがないのは,引用元に対して,作者の新たな解釈やリフレクション(あるいは戦略的誤読)が加わるからだ。『まどマギ』は「東映魔女っ子シリーズ」を引用しつつ,その世界観を完全に転倒させた。『化物語』は『ゲゲゲの鬼太郎』的な怪異譚を引用しつつ,その非日常性をマス・プロダクション的な〈反復〉の背景美術の中に布置した。

 

引用だろうがオマージュだろうがパクリだろうが,そこに自己という鏡によるre-flection(省察)が加われば,制作者のオリジナルになる。〈既視感〉を〈未視感〉に変える決定的な力だ。


さらに,これは特に昨今の大物布陣による高予算アニメに関して僕が感じていることなのだが,彼らはややもすると〈視聴者大衆が観たいと思うもの〉を(それこそ忖度して)作品にすることが多いように思う。確かにそれならある程度は売れるだろう。しかし大衆の顕在的な欲望を作品にしたところで,視聴者の意識上の欲望をなぞるだけだ。視聴者は既に自覚済みの欲望を見せられることになる。〈既視感〉の大部分を成しているのはこうした事態かもしれない。


おそらくすぐれた作品というのは,既成のモチーフを引用しながらも,大衆が自分では気付かないような〈潜在的欲望〉を掘り起こすのだろう。「そうなんだよ!俺たちはこういうのが観たかったんだよ!」というような,自らの意識下の欲望に気付かされる爽快感。見たことがあるはずなのに,初めて観るような〈未視〉の感覚だ。

 

はたして,『ダーリン・イン・ザ・フランキス』は僕らにジャメヴュを経験させてくれる作品になったのか。この問いに肯定的に答えることは,少なくとも80年代からアニメを観続けてきた僕には難しい。

 

いや,だがこうも思う。


ひょっとすると,アニメにおける“新しさ”というのは,ファッションと同じように反復回帰するものなのかもしれない。眉毛の太さやスカートの長さと同じように,太くなったり細くなったり長くなったり短くなったりを定期的に繰り返すのかもしれない。


世代は交代する。回帰だろうが反復だろうが模倣だろうがパクリだろうが,新しい世代はその都度“意外と新しいじゃん”と言ってくれる。そのように言ってくれる人が一定数いれば,評価は成立する。『ダーリン・イン・ザ・フランキス』という作品は,そのような“アニメ・ファッション”のカリカチュアとして,立派に成立していたのかもしれない。それはそれで,とても面白い現象だと思うのだ。ただ,それを作品の表現において〈発展〉と言えるかどうかはまた別の問題だ。


さて,次に二足歩行ロボットとドリルのモチーフを踏襲しながら,僕らに延髄斬りのような衝撃を与えてくれるのは,いったいどの作品になるだろうか。

フィギュア『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル 矢澤にこ&西木野真姫 バレンタイン編』(ALTER)レビュ

f:id:alterEgo:20190120182833j:plain

alter-web.jp

「スクールアイドルフェスティバル」の「矢澤にこ バレンタイン編」と「西木野真姫 バレンタイン編」を結合したイラストが元にした作品。やはりさすがのアルタ―,すばらしい仕上がりだ。

作品データ

メーカー:ALTER

発売年月:2019/01

サイズ:1/7(全高210mm)

原型:槙尾宗利

彩色:星名詠美

価格:20,800円(税別)

作品レビュー

原型 彩色 ポージング
4 4 4
情報量 価格 平均
4 3.5 3.9
・各項目は5点満点で0.5点刻みの配点。

 

f:id:alterEgo:20190120190008j:plain

ALTER製品によくある透明箱。箱のままディスプレイしても映える。 

 

まずは全身像を一通り。

f:id:alterEgo:20190120183013j:plain

f:id:alterEgo:20190120183028j:plain

f:id:alterEgo:20190120183047j:plain

f:id:alterEgo:20190120183110j:plain

f:id:alterEgo:20190120182732j:plain

f:id:alterEgo:20190120182748j:plain

f:id:alterEgo:20190120182803j:plain

f:id:alterEgo:20190120182818j:plain

ちなみにすべて俯角で撮影している。繰り返すが,俯角である。

f:id:alterEgo:20190120032525j:plain

f:id:alterEgo:20190120032107j:plain

困り顔のにこ&ウィンクをする真姫の対照的な表情が印象的。

 

f:id:alterEgo:20190120031915j:plain

f:id:alterEgo:20190120032124j:plain

にこと真姫のもつチョコも丁寧な造形。

 

f:id:alterEgo:20190120032509j:plain

台座はハート型。「Love Live! School idol festival」の文字。

 

f:id:alterEgo:20190120032142j:plain

f:id:alterEgo:20190120032159j:plain

にこのスカートと真姫の上着の裾には「Happy♥Valentine」の文字。

f:id:alterEgo:20190120031826j:plain

にこの上着はかなり短い。

f:id:alterEgo:20190120031843j:plainスカートはクリアパーツへの塗装になっている。

f:id:alterEgo:20190120031859j:plain

手をつなぐ仕様になっている。バレンタインにもかかわらず,ほんのり百合っぽいところもポイント。二人の表情といい,どういうシチュエーションなのか想像力をかき立てられる。

ALTERらしい質の高い造形と彩色なので,二人のキャラが好きな人にはオススメの商品である。