アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2023年 秋アニメ 中間評価[おすすめアニメ]

*この記事にネタバレはありませんが,各作品の現時点までの話数の内容に言及しています。未見の作品を先入観のない状態で鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。

 

異常な酷暑に悩まされた今年も残りわずかとなり,2023年秋アニメはほとんどの作品がクール半ばまでの放送を終えた。ここで当ブログ独自の観点から注目の作品を振り返っておこう。これまで通り五十音順に(ランキングではないことに注意)注目作品をいくつか取り上げる。

なお「2023年 秋アニメは何を観る?」の記事でピックアップした作品は,タイトルを茶色にしてある。

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1. 『新しい上司はど天然』

do-tennen.com

【コメント】
パラハラという名の暴力からの解放,ほんのりBL風味,ふんわりゆるい物語。男性キャラの多い作品でありながら,醜悪なマチスモをきれいに脱臭した癒しのアニメだ。一方で,主人公桃瀬の徹底した“パラハラ上司忌避”と“ど天然上司”白崎への全幅の信頼は,いまだ世に蔓延るブラック企業への周到な批判になっているとも言える。その意味で優れた風刺アニメとも言えるだろう。

 

2. 『アンデッドアンラック』

undead-unluck.net

【コメント】
「un-」という否定極性が逆説的に強力な異能を付与する,というキャラ設定がとても面白い。それもあってか,とりわけ風子とアンディをめぐる運命には悲哀感が伴う。王道のジャンプ作品でありながら,どこかビターな風味のある作品だ。キャラデザやアクションを中心としたアニメーションも非常に魅力的で見応えがある。風子役の佳原萌枝とアンディ役の中村悠一のコンビネーションもいい。

 

3. 『カミエラビ』(オリジナル)

kamierabi.com

【コメント】
3DCG独特のキャラデザ,ドギツイ色彩設計,個性的すぎる衣装デザイン,エキセントリックな世界観。どの点をとっても万人受けとは程遠い強烈なユニークネスを放っているが,それだけに凡百の多作品から一線を画す強い存在感を持った作品だ。ヨコオタロウの一筋縄ではいかないストーリーテリングに目が離せない逸品である。

 

4. 『薬屋のひとりごと』

kusuriyanohitorigoto.jp

【コメント】
主人公・猫猫を中心としたキャラ造形が魅力的で,かつ衣装デザインや中国王朝を模した宮殿内の美術も秀でている。猫猫と悠木碧のマッチングも申し分なく,やや低めのピッチのモノローグが毎話耳に心地いい。演出やキャラの芝居も丁寧だ。意外にも各話毎の個性が強く出る演出方針で,とりわけちな演出の「# 恫喝」の個性的な演出が目を引いた。コアなアニメファンの目も満足させる作品である。

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5.『呪術廻戦 懐玉・玉折/渋谷事変』

jujutsukaisen.jp

【コメント】
前クールからの続きなので「何を観る?」の記事では挙げなかったが,言うまでもなく傑作である。「懐玉・玉折」のややマイルドな演出から打って変わって,「渋谷事変」では文字通り地獄絵図のような世界が繰り広げられている。そしてやはりこの作品でも,各話担当の演出家の個性が前面に出る話数が多く,とりわけ荒井和人砂小原巧が手がけた「#37 赫鱗」は,現代の渋谷という個性的なトポスをうまく利用した優れた話数となった。

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6. 『進撃の巨人 The Final Season 完結編(後編)』

shingeki.tv

【コメント】
10年の歳月を経て完結となった本作。エレンアルミンのシーンにおけるセリフ改変を含めたアニオリや,最後の立体機動シーンの“猛烈”とも言える作画など,原作を単になぞるだけで終わらず,アニメ班の解釈を媒介として,より高いステージへと至った傑作となった。WIT時代に参加していた今井有文が,監督の林祐一郎と並んで絵コンテ担当してクレジットされていたのも印象深い。間違いなくアニメ史に残る大作である。

 

7. 『葬送のフリーレン』

frieren-anime.jp

【コメント】
当初から期待値が高く,当ブログでもイチオシとして挙げていた作品だが,その期待を遥かに上回る優れた作品だ。構図の余白,ゆったりとした歩行速度,丁寧な日常芝居,美しい劇伴などが原作の独特な時間感覚をうまく再現しており,アニメ化による付加価値が非常に高い作品である。岩澤亨らの手がけるアクションも小気味よく,スローテンポな世界観において,よいアクセントになっている。

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8. 『PLUTO』

pluto-anime.com

【コメント】
何より浦沢直樹のキャラクターを完璧に再現したキャラデザが画面の緊張感を否応なく高めている。そこに優れた脚本と演出が加わり,第一級のサスペンスに仕上がった傑作だ。Netflix限定配信ということもあり,SNSでの賑わいはおとなしめだが,紛れもない大作である。古典作品のリメイク(あるいは翻案)の方法として,偉大なる“解”を提示した作品と言えるのではないだろうか。

 

9. 『ミギとダリ』

migitodali.com

【コメント】
ミギとダリという強烈なキャラの強烈な奇行を見事にアニメーションに落とし込み,さらにその2人の主役をすら食うほどの強烈なサブキャラを配置した絶妙なキャラ造形。今期で言えば上述の『カミエラビ』と張る“個性派アニメ”であり,そのような“個性派アニメ”として大きな成功を収めた作品だ。今年8月に他界した原作者・佐野菜見に観せてあげられなかったことが改めて悔やまれる。

 

以上,「アニ録ブログ」が注目する2023年秋アニメ9作品を挙げた。『呪術廻戦』『進撃の巨人』『葬送のフリーレン』といった“ビッグタイトル”に並び,『カミエラビ』や『ミギとダリ』のような個性派アニメが存在感を放ったクールだ。

最終的なランキング記事は,全作品の放映終了後に掲載する予定である。