アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2023年 秋アニメランキング[おすすめアニメ]

*この記事にネタバレはありませんが,各作品の内容に部分的に言及しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,作品を先にご覧になってから本記事をお読みください。

2023年の師走もあっと言う間に過ぎ,2023年秋アニメもほぼすべての作品が放送を終えた。今回の記事では,恒例通り2023年秋アニメの中から,当ブログが特にレベルが高いと判断した9作品をランキング形式で振り返ってみよう。コメントの後には,作品視聴時のTweetをいくつか掲載してある。なお,この記事は「一定の水準を満たした作品を挙げる」ことを主旨としているので,ピックアップ数は毎回異なることをお断りしておく。

www.otalog.jp

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9位:『新しい上司はど天然』

do-tennen.com

【コメント】
舞台は一般的な日本の会社だが,そこはまるで関係性のユートピアのように優しい世界である。ゆえにそれはあくまでも一種のファンタジーなのだが,それだけに,現実世界の僕らに不足している様々な価値を示してくれた作品だと思う。“現実逃避”ではなく,“現実治癒”型の作品と言えるだろうか。

 

8位:『カミエラビ』

kamierabi.com

【コメント】
3DCGの独特なキャラデザ,極端な色彩設計,エキセントリックな世界観。どれをとっても今の“売れ筋”の規格から外れているのだが,それだけにオリジナルアニメとして唯一無二の存在感を放っていたと思う。まだ完結していないため,最終的な判断は下せないが,現時点ではまずまずの評価をしていいだろう。2024年からの続編放送が発表されている。


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7位:『アンデッドアンラック』

undead-unluck.net

【コメント】
ジャンプ原作アニメとして単純に“面白い”と同時に,“絵”としての完成度が高い作品だ。要所で美しい構図や表情を挿入し,キャラクターや場面の情緒を的確に伝えてくる。またOPとEDのアニメーションと主題歌も素晴らしく,本編とは異なる趣向で本作の魅力を引き出し,作品全体に深みを与えている。本編とOP・EDとの理想的な関係を示す事例としても価値がある作品と言えるだろう。

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6位:『薬屋のひとりごと』

kusuriyanohitorigoto.jp

【コメント】
魅力的なデザインと悠木碧の演技によって,「薬屋の娘」というユニークなキャラが見事に仕上がっており,かつミステリーとしての物語も面白い秀作だ。作画的な見どころも多く,とくにちな演出回の「#4 恫喝」は演出家と作画担当の個性が遺憾無く発揮された名話数だった。欲を言えばこの手の個性的な話数がもっと観たかったのだが,来年からの第2クールで期待できるかもしれない。

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5位:『ミギとダリ』

migitodali.com

【コメント】
サスペンスとしての面白さに加え,美麗なキャラデザや奇抜なキャラモーションなど,アニメーション的な見どころも多い。また堀江瞬,村瀬歩,三石琴乃ら声優陣の演技も非常に面白く,アニメ化による付加価値が大変高い作品だ。しかし最大の評価ポイントは,作品の根底に明確なキャラクターアークの流れがある点だろう。identical twinsの復讐劇で始まった物語が,やがてそれぞれが自己のidentityを見出す物語へと変わって行き,最終話は大きな感動をもたらす。今年亡くなった原作者・佐野菜見への最高の手向けとなったに違いない。改めて,心よりご冥福をお祈りいたします。素晴らしい作品をありがとう。

 

4位:『進撃の巨人 The Final Season 完結編(後編)』

shingeki.tv

【コメント】
10年の歳月を経て結末を迎えた『進撃の巨人』。いくらかのーーしかし大きな意味を持つーーアニメオリジナルを盛り込みながら,この今世紀最大のダーク・ファンタジーに終止符を打った大傑作である。WIT制作時代にアクション作画を手がけた今井有文によるラストシーンは,「立体機動」 のアクションと物語の感動が渾然一体となった類まれな映像表現となった。制作会社の変更はとかくマイナスイメージで捉えられがちだが,こと本作に関しては,2つの制作会社の強みが活かされたことが成功をもたらしたと言えるだろう。

 

3位:『呪術廻戦 渋谷事変』

jujutsukaisen.jp

【コメント】
『呪術廻戦』は夏アニメのランキングでも1位として挙げた。通常,当ブログでは1つの作品を連続してランクインさせることはないのだが,今回ばかりは例外だ。数多くのアニメオリジナル演出を盛り込みつつ,各話担当の裁量に任せた個性的な話数を繰り出し,原作ファンのみならずコアなアニメファンをも惹きつける大傑作となった。前クールの「懐玉・玉折」は五条悟・夏油傑・天内理子を中心とした青春ドラマが主体だったわけだが,「渋谷事変」では徹底的な殺戮と破壊と絶望が描かれ,2クールの前半・後半の間に大きなコントラストが生まれている。全体的なシリーズ構成の点でも成功している作品である。続編も楽しみだ。

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2位:『PLUTO』

pluto-anime.com

【コメント】
「ロボットと心」
というテーマ自体は古典的だが,これを浦沢直樹の作画で物語にすると強い説得力が生まれる。それは彼の描く人物の顔(まさしく“Gesicht”)の,ある種のリアリズムに依るのだろう。この浦沢タッチを的確なキャラ芝居によって“生きた”作画として再現したアニメの功績は極めて大きい。原作は2003年から2009 年にかけて発表されたものだが,現代のアニメーション技術で命を与えられたことにより,新たなアクチュアリティをもった作品となった。本作を昨今の“AIモノ”作品の中に位置付け,再評価する機会を設けたという意味でも,原作付きアニメ作品として大きな成果を収めたと言えるだろう。

 

1位:『葬送のフリーレン』

『葬送のフリーレン』第1話「冒険の終わり」より引用 ©︎山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

frieren-anime.jp

【コメント】
空間と時間を“有”で埋めるのではなく,“空”で埋める。そこに深い情趣と感情が生まれる。そんな表現がぴったりの作品だ。フリーレン,フェルン,シュタルクを中心としたキャラやアクション作画も魅力だが,この作品の最大の評価ポイントはそうした“余白”の表現にこそある。豊かな青空が人々の心情に寄り添い,ゆったりとした足取りが内的な時間経過を表示する。“減算”が逆説的に生み出す“豊穣”。この豊かな時空間をベースに,キャラたちの日常芝居が丁寧に丁寧に描かれ,“その時その場所に確かに彼ら/彼女らがいた”という定位感が生まれている。hohobunによるEDアニメーションも,本編とは異なる作風でこの“豊穣”を描きだしている。単なる人気作品のアニメ化という以上に,アニメーションとしての表現力が評価されるべき作品だ。来年1月から第2クールが放送される。新たな展開も楽しみだ。

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● その他の鑑賞済み作品(50音順)
『ウマ娘 プリティーダービー Season3』『シャングリラ・フロンティア』『SPY×FAMILY』『ダークギャザリング』『はめつのおうこく』『星屑テレパス』

 

以上,当ブログが注目した2023年秋アニメ9作品を紹介した。

5位の『ミギとダリ』は,当初はもう少し下のランクだったのだが,最終話近辺の展開が素晴らしく急遽ランクアップした次第である。アニメは最終話まで観なければ正当に評価できないということを改めて実感した。1位の『葬送のフリーレン』と2位の『PLUTO』に関しては,いずれ作品レビューを執筆する予定である。

 

2023年冬アニメのおすすめに関しては以下の記事を参照頂きたい。

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