アニ録ブログ

あるオタクの思考と嗜好をキロクしたブログ。アニメとマンガを中心としたカルチャー雑記。

2021年 アニメランキング[おすすめアニメ]

*この記事にネタバレはありませんが,各作品について簡単なコメントを付しています。未見の作品を先入観なしで鑑賞されたい方は,下の目次から「ランキング表」へスキップするなどしてご覧ください。

2021年新作アニメの鑑賞数は,TVシリーズが42作品(『不滅のあなたへ』『無職転生』など2クールでタイトル名が変化しない作品は1作品としてカウント),劇場版が23作品だった(『プリンセス・プリンシパル』などシリーズものは1作品としてカウント。OVAに分類される作品でも,劇場で先行公開したものは「劇場版」としてカウント)。

以下,「TVアニメランキング」「劇場アニメランキング」「総合ランキング」に分け,当ブログの基準による2021年のランキングをカウントダウン方式で紹介する。視認性を高めるため,TVアニメは青字劇場アニメは赤字にしてある。また各セクションの最後にはコメントなしの「ランキング表」を掲載してある。未視聴の作品がある場合には,「ランキング表」だけをご覧になることをお勧めする。

 

TVアニメランキング

10位〜6位

10位:『古見さんは,コミュ症です』(秋)

komisan-official.com

【コメント】原作に忠実であるだけでなく,撮影効果,マンガ表現を効果的に取り入れたユニークな演出,的確な劇伴などによって,古見さんと只野を始めとするバラエティ豊かなキャラクターを魅力的に描いた秀作。その繊細なアニメーションは第01話から目を引き,最終話まで高いクオリティが保たれた完成度の高い作品だった。すでに第2期の制作が発表されている。

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『古見さんは,コミュ症です。』公式Twitterより引用 ©︎オダトモヒト・小学館/私立伊旦高校

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9位:『不滅のあなたへ』(春・夏)

www.anime-fumetsunoanatae.com

【コメント】不死の存在を主人公に据えることで限りある命の有り様を照射し,その尊さを描き出した作品。原作の魅力を過不足なく伝えつつ,要所にアニメオリジナルの演出を施すことで,繊細な叙情性を加味することに成功していた。特に#12「目覚め」におけるグーグーとリーンの悲哀に満ちた物語は,ネット上でも大きな話題となった。今後,かなりの"超展開"を見せる物語をアニメがどう料理してくるか。2022年秋より続編放送が予定されている。

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『不滅のあなたへ』公式Twitterより引用 ©︎⼤今良時・講談社/NHK・NEP

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8位:『Vivy -Fluorite Eye's Song-』(春)

vivy-portal.com

【コメント】時間遡行と歴史改変という古典的なモチーフを主軸としつつも,作り込まれた世界観やテンポのよい物語の運びによって,毎話飽きさせない秀作SF作品となった。ゴリゴリのSF的世界観を下地に"歌と心"というテーマを描いたことにより,"設定の妙"と"物語の叙情性"の両立に成功した作品と言える。最終話で示された「心=記憶」というテーゼは,今年公開された吉浦康裕監督の劇場アニメ『アイの歌声を聴かせて』とも共鳴する。"強いAI"という存在が必ずしも夢物語ではなくなりつつある現在,これらの作品は一定のアクチュアリティを持って僕らの心に迫ってくる。

 

7位:『SSSS.DYNAZENON』(春)

dynazenon.net

【コメント】ロボット×怪獣アニメであるにもかかわらず,抑え気味の劇伴,たっぷり間をとったセリフ回しなど,"空"を効果的に用いた演出が光った作品。人の「情動」を怪獣の発生要件として設定したのもユニークで面白かった。「GRIDMAN UNIVERSE」は今後もTRIGGERの代表的なコンテンツの1つとして展開されていくことだろう。差し当たりは,「GRIDMAN×DYNAZENON」完全新作劇場版(仮称)の制作が決定している。


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6位:『SK∞』(冬)

sk8-project.com

【コメント】「スケボー×バトル」という奇抜な設定の妙に加え,アクの強いキャラクターの面々が異彩を放つ快(怪)作だった。特に愛抱夢のキャラクター造形は2021年の全アニメ作品の中でも抜きん出てユニークかつ魅力的で,CV子安武人の経歴の中でもかなりのハマり役だったのではないかと思う。ほんのりBLフレーバーのある作品でもあったが,だからと言って視聴者を選ぶような排他性がなかったのは監督の力量というところだろう。このレベルの作品が不意に出現してくるのが,日本のオリジナルアニメの面白いところである。

 

TOP 5

5位:『王様ランキング』(秋)

osama-ranking.com

【コメント】主人公ボッジの身体的境遇と,それを乗り越えようとする彼の努力は,"強さ"というものについて視聴者に深い考察を促す。こうしたリアルなメッセージ性が根底にあることによって,本作は"ファンタジー+α"の作品になっているのだと言える。

バラエティに富んだキャラクターも魅力的だった。特に後半に登場したデスパーは,ボッジを導く師匠であると同時に,絶えず笑いをもたらす第一級のコメディアンでもあり,本作に欠かせない名バイプレイヤーとなった。このデスパーを始め,キャラの立った人物たちを的確にデザインしていた点も高い評価に値する。また,キッズアニメのようなキャラクターデザインからは想像できないようなゴリゴリのアクションシーンなど,全体的にモーションの作り方が洗練されていた。総じて,アニメ化による付加価値の高い作品だったと言えるだろう。2022年冬から第2クールの放送が決定している。今後も楽しみな作品だ。


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4位:『小林さんちのメイドラゴンS』(夏)

maidragon.jp

【コメント】カンナを始めとする子どもたちの愛らしい所作が実に丁寧かつ繊細に演出されており,京都アニメーションの技術力・表現力の高さを改めて見せつけた作品だった。アニメというのは,〈止め絵の美しさ=カメラワーク〉で見せる場合と,〈動画=モーション〉で見せる場合とがあるわけだが,京都アニメーションの作品はこの両者が共に高いクオリティで実現されていることが多く,『メイドラゴン』も間違いなくそうした作品の1つだ。Blu-ray(ちなみに「豪華版」を全巻購入済み)でコマ送りをしながら全カット味わい尽くしたいと思わせる圧巻の出来栄えである。

その一方で,異種族間の対立(ファンタジー)と融和(日常)の共在という原作のテーマもきっちり消化しており,脚本力の強さも伺わせる作品だった。田村睦心,桑原由気,長縄まりあ,高田憂希を中心としたキャスト陣の貢献度も極めて高い。続編の報はまだないが,原作が続く限り継続して視聴していきたいシリーズだ。

 

3位:『無職転生〜異世界行ったら本気だす〜』(冬・秋)

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『無職転生〜異世界行ったら本気本気だす〜』公式HPより引用 ©︎理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生」製作委員会

mushokutensei.jp

【コメント】周知の通り,原作は"なろう系ラノベ"のパイオニアと称されているわけだが,そのアニメ化作品も他の"なろう系異世界ファンタジー"とは一線を画すハイクオリティな出来栄えとなった。作画,モーション,色彩,音響など,あらゆる点で第1話から視聴者を魅了し,2クールの間ほぼクオリティを維持し切った制作陣の力量には感服する。"劇場版レベル"と評価されたその作画力・演出力は,京都アニメーションのそれに匹敵する水準だったと言えるだろう。とりわけ「前世の男」の疎外感や「フィットア領転移事件」のアフターマスなど,作品のネガティブな側面とその超克を描くにあたって,単に説明セリフだけで済ますのではなく,画作りによって丁寧に表現した点は高い評価に値する。

こうした高い水準の作りは,制作会社スタジオバインドが本作の制作に特化していたという特殊な事情も関係しているだろう。今のところ続編の報はないが,ぜひ最後まで制作を続けて欲しいと願う。

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2位:『Sonny Boy』(夏)

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『Sonny Boy』公式HPより引用 ©︎Sonny Boy committee

anime.shochiku.co.jp

【コメント】「漂流」や「超能力」といった古典的なモチーフをベースとしながらも,多次元世界や可能世界といった"理論物理学的SF要素"を盛り込んだ極めてユニークなオリジナル作品。通常の意味での理解を拒むその奇想天外な物語は,必ずしも一般的な人気を得たとは言えないかもしれない。しかし監督の"やりたいこと"に徹したその制作精神は,深夜アニメにおける制作者の"作家性"を見定める上で1つの指針となったのではないだろうか。また,世界観の同一性を破綻させるような美術やプロップのビジュアルは,ややもするとクリシェになりがちな深夜アニメにおいてある種の批評性を獲得したと言える。

もちろん,そうした作家性や批評性だけが本作の価値を高めているわけではない。〈複数の可能世界とその選択〉というテーマは,子どもと大人の間を不安に揺れ動くジュブナイルの実存と絶妙な親和性を見せており,特に最終話のラストシーンは,銀杏BOYZのアカペラ版「少年少女」ともあいまって,視聴者の心をひりつかせるエモーショナルな結末だった。12話という限られた話数の中で伝え切れていない消化不良の部分もあったが,総じて,アニメーション表現とテーマの両方において高い水準を実現した作品だったと言える。

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1位:『オッドタクシー』(春)

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『オッドタクシー』公式HPより引用 ©︎P.I.C.S./小戸川交通パートナーズ

oddtaxi.jp

【コメント】2021年TVアニメの第1位として『オッドタクシー』を選んだ。"動物擬人化"という日本のアニメにおける伝統をトリックとして用いるアイデア,絶妙な間合いの会話術,緻密なストーリーテリング,そして最終話のドラマチックなどんでん返し。深いメッセージ性があるわけではないものの,第一級の娯楽アニメとして他を圧倒したオリジナル作品だった。

そういう意味では2位の『Sonny Boy』と真逆の方向性を示したアニメだっただけに,この2作品を比較するのは極めて難しく,今年は『オッドタクシー』と『Sonny Boy』の順位で相当悩んだ。最終的に,エンターテインメント作品として1つの完成形を示したという意味で,『オッドタクシー』を1位に選んだ次第である。

監督の木下麦や脚本の此元和津也など,映像制作会社P.I.C.S.のメンバーを中心とした布陣も,アニメ界に新風を吹き込んだと言えるのではないだろうか。“老舗”のアニメ制作会社とは少し異なる感性を持った制作者(ただし共同制作のOLMは“老舗”である)がオリジナルアニメを手がけたことが,業界にとっていい刺激になったと予想できる。

来年2022年4月1日より『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』の公開が決定している。


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TVアニメランキング表

1位:『オッドタクシー』
2位:『Sonny Boy』
3位:『無職転生〜異世界行ったら本気だす〜』
4位:『小林さんちのメイドラゴンS』
5位:『王様ランキング
6位:『SK∞』
7位:『SSSS.DYNAZENON』
8位:『Vivy -Fluorite Eye's Song-』
9位:『不滅のあなたへ』
10位:『古見さんは,コミュ症です』

● その他の鑑賞済みTVアニメ作品(50音順)

『裏世界ピクニック』『海賊王女』『かげきしょうじょ!』『鬼滅の刃 無限列車編/遊郭編』(『遊郭編』は2022年冬アニメとして扱う)『吸血鬼すぐ死ぬ』『ゴジラSP〈シンギュラポイント〉』『さよなら私のクラマー』『シャドーハウス』『呪術廻戦』『白い砂のアクアトープ』『スーパーカブ』『戦闘員,派遣します!』『先輩がうざい後輩の話』『ゾンビランドサガ リベンジ』『大正オトメ御伽話』『でーじミーツガール』『天地創造デザイン部』『はたらく細胞!!』『はたらく細胞BLACK』『バック・アロウ』『美少年探偵団』『ひぐらしのなく頃に業・卒』『BEASTARS(第2期)』『ピーチボーイリバーサイド』『ブルーピリオド』『ぼくたちのリメイク』『ホリミヤ』『マギアレコード』『見える子ちゃん』『約束のネバーランド Season2』『ワンダーエッグ・プライオリティ』

 

劇場アニメランキング

10位〜6位

10位:『サマーゴースト』

summerghost.jp

【コメント】40分という短尺で,かつカット数もさほど多くないと思われる小品だが,死に触れることにって生の価値を見つめ直すというテーマは鑑賞者に深い考察を促す光と影を用いた美しい画作りも印象的だ。隅々まで描き尽くし,語り尽くすアニメがある一方で,俳句のように削ぎ落とした本作のようなアニメがあってもいい。

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9位:『漁港の肉子ちゃん』

29kochanmovie.com

【コメント】「明石家さんまプロデュース+吉本興業製作」という鳴り物入りで始まった企画だが,そうした外的な要因はさておき,渡辺歩×STUDIO4°Cの『海獣の子供』チームが描き出した哀愁漂う漁港と肉子≒トトロの直向きな姿はこの上なく美しい。個人的には主人公キクコの同級生の二宮というキャラが面白く,彼の箱庭療法の世界が現実の風景と重なるシーンには膝を打つ。もっと高い評価を得て然るべき作品だった。

 

8位:『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』

gundam-hathaway.net

【コメント】原作小説の独特な言い回しと向き合いながら,「ギギ・アンダルシア」という稀有なキャラクターを顕現させた本作。原作小説を併せて読むと,監督の村瀬修功が"富野節"といかに格闘したかがよくわかる。ただしそれは単なる忠実な再現ではない。オリジナルシーンを挿入しながらモビルスーツの巨大感を演出した一連のシーンなどは,アニメならではの見応えあるシーンに仕上がっている。続編の報が待たれる。

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7位:『プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第1章・第2章』

pripri-anime.jp

【コメント】TV版のその後を描いたシリーズだが,TV版よりも作画面・音響面において遥かにグレードアップしている。OVAに分類される作品ではあるが,劇場での鑑賞に最適化されたクオリティと言えるだろう。「第2章」ではリチャード王子という新たなキャラクターが加わることにより,これまでのパワーバランスが大きく変化する様が描かれた。「変わるのは世界か,少女か」キービジュアルのこのコピーが実に意味深だ。最後まで劇場鑑賞で見届けたい作品である。

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6位:『サイダーのように言葉が湧き上がる』

cider-kotoba.jp

【コメント】 タイトルを含め,劇中で使用される俳句に現役の高校生が創作したものを採用して主人公たちの声を代弁させたことにより,生の青春の声が響きわたる瑞々しい秀作となった。職業声優の水準から見ればまったく熟れていない市川染五郎の演技は,「言葉が湧き上がる」という生々しい青春のダイナミズムとむしろ相性がよく,非職業声優キャスティングの1つの可能性を提示したと言える。計算された美術とロケーションも見応えがあり,何度も繰り返し鑑賞したくなる作品だ。

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TOP 5

5位:『ガールズ&パンツァー最終章 第3話』

girls-und-panzer-finale.jp

【コメント】全6話のうち第3話目ということで,ようやく折り返し地点まで来たという段階だが,毎話の引きが見事でまったく飽きさせることがない。第3話は日常シーンが少なく,対戦シーンそのもので物語が作られている点が特徴的だ。ゲームエンジンを使用して制作されたという「乗組員視点の主観カット」は,ラストシーンで継続高校のヨウコが放った砲弾の視点へと繋がり,西住みほのⅣ号戦車に着弾した瞬間に第3話は終了する。極上の引きである。これだけ話数間の期間が空いてしまうと,並のアニメであれば前話の内容を忘れかけてしまうものだが,『ガルパン』シリーズは画の力が強いためか,カットの印象が強く脳裏に焼き付いている。さすがの水島努監督である。完成まで後数年かかるだろが,最後まで見届けたい作品である。

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4位:『呪術廻戦0』

jujutsukaisen-movie.jp

【コメント】〈純愛=乙骨 vs 大義=夏油〉という構図は,双方共に濁りのない純粋な動機に基づくが故に,決して折り合うことのない宿命的な対立だ。その意味でも,そして愛=呪いという特殊な設定においても,『呪術廻戦0』は本編とは少々異質なメッセージ性を持った作品だと言える。したがって,TVアニメとは異なる劇場版というフォーマットで本作をアニメ化したことには大きな意味があるだろう。朴性厚監督と,近年ますます注目を集める制作会社MAPPAは,オリジナルのシーンを加味することで得意のアクションシーンをボリュームアップしつつ,ラストの「純愛」のシーンを存分に盛り上げることに成功した。エンドロール後,そこかしこから啜り泣く声が聞こえたのが印象的である。何かとufotableの『鬼滅の刃』と比較される本作だが,あまり周りを見ずに,こちらはこちらで得意技を繰り出してもらえればいいと思う。

 

3位:『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』

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『エヴァンゲリオン』公式Twitterより引用 ©︎カラー/Project Eva. ©︎カラー/EVA製作委員会 ©︎カラー

www.evangelion.co.jp

 

【コメント】「第3村」を舞台に,これまでほとんど触れられてこなかった人々のミクロな生活世界に焦点を当て,レイを主体として様々な感覚体験を描き出した本作。そこは多様な匂い=他者の存在する豊かな世界であり,碇ゲンドウが「人類補完計画」によって目論んだ「浄化」の世界とは対照的な世界であった。最終的にシンジは「他者」を容認する。しかしそこには,「他者性の拒絶」という経路を一旦経てから「他者性の容認」に至るという,26年の歳月をかけた長大な迂回があったのだ。ひょっとしたら,これは庵野秀明自身の実存的体験と符号するのかもしれない。

しかし『エヴァ』というコンテンツは,"庵野秀明"という巨大な伝記的事実から相対的に自由になった時に,本当の意味で評価されるのかもしれない。作品を解釈するにあたって作者を唯一の参照先とするのであれば,解釈の正当性を保証するものが作者だけに限定されてしまうからだ。その意味で,『エヴァ』シリーズは『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』によって締めくくられはしたが,その正当な解釈は今後なされていくのだろう。

そういう意味では,当ブログの本作評価も現時点では留保されている。この順位も暫定的なものだ。今後,当ブログも『エヴァ』シリーズと様々な形で格闘し続けていくことになるだろう。

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2位:『アイの歌声を聴かせて』

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『アイの歌声を聴かせて』公式Twitterより引用 ©︎吉浦康裕・BNArts/アイ歌製作委員会

ainouta.jp

【コメント】AIは人間の似姿なのか,それとも他者なのか。人間とAIは本当の意味で共感し合えるのか。『アイの歌声を聴かせて』は,"ミュージカル青春群像劇"という体裁をとった第一級のエンターテインメント作品であると同時に,"強いAI"の到来が夢物語ではなくなった現代の我々に実存的とも言える深淵な問いを投げかけてもいる。おそらくそれは,吉浦康裕監督が『イヴの時間』(劇場版:2010年)以来,温め続けてきた問題意識なのかもしれない。またそれは手塚治虫のマンガ『火の鳥 復活編』(1970-1971年),CLAMPのマンガ『ちょびっツ』(2000-2002年,TVアニメ:2002年春・夏),カズオ・イシグロの小説『クララとお日さま』(2021年),エザキシンペイ監督のTVアニメ『Vivy -Fluorite Eye's Song-』(2021年春)などに描かれたテーマと同じ問題圏内にあると言える。こうした他作品との比較考察を促すという意味でも,高いメッセージ性を持つ作品と言えるだろう。

アニメーション技術の水準も極めて高い。話題となった「シオンとサンダーの乱取り」シーンを始め,キャラクターや衣服の細かいモーションが丁寧で観ていて心地がよい。土屋太鳳の歌唱も見事で,"ミュージカルアニメ"として1つの解を提供し得たのではないかと思われる。オリジナル劇場アニメの成功例として歴史に名を残す作品となるだろう。

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1位:『映画大好きポンポさん

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『映画大好きポンポさん』公式Twitterより引用 ©︎2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/ 映画大好きポンポさん製作委員会

pompo-the-cinephile.com

【コメント】現実を映画として知覚してしまうほどの超シネフィル・ジーンを主人公に据え,そこかしこにリアルと映画との関係を相対化する演出を施した本作は,クライマックスにおいて編集作業を"何かを犠牲にする決断"として ーそれもアクションシーンとしてー 示すことにより,〈映画=己の人生〉というテーマを強力に打ち出す。にもかかわらず唯我独尊のエゴイズムに堕すことがないのは,映画の中に自身の人生を見出しつつも,それを天才プロデューサー・ポンポさんに観てもらいたいというジーンの思いを描いていたからだ。そういう意味では,この映画は個性と個性との間の強烈なコミュニケーションを描きつつ,〈映画とは己のものであると同時に他者のものである〉というメッセージを伝えている。そして何より重要なのは,こうした強いメッセージに説得力を持たせるだけの技術力がこの作品にはあったということだ。

本作はマンガ原作のアニメ化ではあるが,監督の平尾隆之はアニメオリジナルのシーンやキャラクターを導入することによってかなり自由に再解釈をしている。原作に限りなく忠実なアニメももちろん評価に値するが,本作のように,原作を尊重しながらもそこに監督独自の解釈を上乗せするような作り方も面白い。平尾にはそれを敢行するだけの力量があったのだ。

やや大仰な言い方をすれば,本作はコロナ禍によって薄暗い影の差した映画界に一条の光明をもたらした作品と言える。本作を2021年劇場アニメの第1位として認定することに異論はないだろう。

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劇場アニメランキング表

1位:『映画大好きポンポさん』
2位:『アイの歌声を聴かせて』
3位:『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
4位:『呪術廻戦0』
5位:『ガールズ&パンツァー最終章 第3話』
6位:『サイダーのように言葉が湧き上がる』
7位:『プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第1章・第2章』
8位:『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』
9位:『漁港の肉子ちゃん』
10位:『サマーゴースト』

● その他の鑑賞済み劇場アニメ作品(50音順)

『映画 えんとつ町のプペル』『映画 クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』『劇場編集版かくしごと -ひめごとはなんですか-』『さよなら,ティラノ』『シドニアの騎士 あいつむぐほし』『白蛇:縁起』『美少女戦士セーラームーンEternal 前・後編』『100日間生きたワニ』『フラ・フラダンス』『Fate/Grand Order 終局特異点 冠位時間神殿ソロモン』『Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-後編 Paladin; Agateram』『岬のマヨイガ』『竜とそばかすの姫』

 

総合ランキング表

最後に,TVシリーズと劇場版を総合したランキングを紹介しよう。

1位:劇場アニメ『映画大好きポンポさん』
2位:劇場アニメ『アイの歌声を聴かせて』
3位:劇場アニメ『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
4位:TVアニメ『オッドタクシー』
5位:TVアニメ『Sonny Boy』
6位:劇場アニメ『呪術廻戦0』
7位:TVアニメ『無職転生〜異世界行ったら本気だす〜』
8位:TVアニメ『小林さんちのメイドラゴンS』
9位:劇場アニメ『ガールズ&パンツァー最終章 第3話』
10位:TVアニメ『王様ランキング』
11位:劇場アニメ『サイダーのように言葉が湧き上がる
12位:劇場アニメ『プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第1章・第2章』
13位:劇場アニメ『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』
14位:TVアニメ『SK∞』
15位:TVアニメ『SSSS.DYNAZENON』
16位:TVアニメ『Vivy -Fluorite Eye's Song-
17位:TVアニメ『不滅のあなたへ』
18位:劇場アニメ『漁港の肉子ちゃん
19位:TVアニメ『古見さんは,コミュ症です。』
20位:劇場アニメ『サマーゴースト』

 

総評

2021年のTVアニメは『オッドタクシー』『Sonny Boy』『SK∞』など,強烈な個性の作品が多かったように思う。オリジナルアニメ推しの当ブログとしても,大いに楽しめた1年だった。ただし,中には脚本力・構成力等の不足により,低い評価を下さざるを得なかったものもある。オリジナルアニメ制作の難しさを改めて感じた年でもあった。原作アニメに関しては,『無職転生』『小林さんちのメイドラゴンS』『王様ランキング』など,原作の再現にとどまることなく,アニメ作品固有の価値を付与することによって魅力を倍増させた作品が多く見られた。

一方の劇場アニメに関しても,『映画大好きポンポさん』『アイの歌声を聴かせて』『サイダーのように言葉が湧き上がる』『漁港の肉子ちゃん』など,ユニークな作品が続出した年だった。もちろん,純粋に興行成績だけで見た場合,これらの作品がより知名度の高い作品(原作ありの作品や監督の知名度が高い作品)と比べ,正当な評価がなされていたとは言い難い。しかしそんな中でも,『アイの歌声を聴かせて』などは,SNSでの口コミにより徐々に集客を増やしていったという事情がある。仮に知名度の点で後塵を拝していても,確実に面白いと言える作品を作り,的確な戦略に基づいて地道に宣伝すれば,十分に多くの観客にリーチする可能性はあるということだ。

2022年もコロナ禍の不安が完全に消えることはないだろうが,2020年と2021年と比べれば制作体制も安定し,正常状態に近づくのではないかと予想される。しかし問題はその先だ。アニメファンとしては,クリエイションの面でもマーケティングの面でも,コロナ禍前を上回る水準に到達して欲しいと思う。そういう意味でも,2022年は重要な年になるのだろう。

アニメ業界のさらなる躍進を祈念しつつ。皆さま,よいお年を。